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[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の1本
『マッチポイント』

今週の1本<br>『マッチポイント』
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テーマ:事件
 

映画を観ていると、ふと会議室が頭に浮かんでしまうことがある。映像翻訳者なら字幕や翻訳のことを考えるのが普通だろう。でも僕の場合は翻訳とは全然関係がなくて、おじさんたちが会議室での打ち合わせをしている風景が浮かんでしまう。
 

例えばホラー映画だと、殺人鬼はいろんな現れ方をするし、人はいろんな死に方をする。ということは、どこかにその現れ方や死に方を考え出した人たちがいるということだ。となると、きっと会社の会議室みたいなところに人が集まって「ここはいきなり天井からだよな」とか、「首をすぱっと切り落としちゃおう」とか、「それより尻をプスッといくほうがよくない?」とか、そういう打ち合わせが行われているはずだ(たぶん)。そんなふうに、ホラー映画でもサスペンス映画でも、どうやって観客をもっと怖がらせるか、ドキドキさせるかを背広姿の大人たちが知恵をしぼって考えている――そんなイメージが浮かんでしまうのだ。
 

実際にやってみればわかるけれど、会議室を思い浮かべながら恐怖を感じるのはなかなか難しい。だから、そういう“しかけ”で怖がらせる映画よりも、ウディ・アレンの『マッチポイント』のような映画のほうが純粋に「怖いなあ…」と感じる。
 

『マッチポイント』は、ひとことで言えば不倫劇だ。元プロテニスプレーヤーの男が大富豪一家の長男と親しくなり、やがてその妹と結婚する。男は順風満帆な人生を送っていたかに見えたが、長男の結婚相手だった女性と出会って不倫の関係に陥ったことから、ある事件が起きることになる。
 

問題の「事件」は淡々とした描かれ方をしているけれど、それだけに空恐ろしさがある。事件を起こした者にとっても予期せぬ行為であり、手はがたがたと震えている。会議室で考え抜かれたようなアトラクション的な恐怖とは異なり、日常生活の延長線上で起きた事件だからこそ、誰もがじんわりとした深い恐怖を覚えるのだ。
 

とはいっても、この映画での一番の事件であり恐怖なのは、不倫相手役のスカーレット・ヨハンソンだと思う。あんなすてきな女性と親しくなってしまったら、まずい事態になることは目に見えている。くれぐれも気をつけたい(何の話だ)。
 

『マッチポイント』
監督:ウディ・アレン
出演:ジョナサン・リス・マイヤーズ、スカーレット・ヨハンソン
製作国:イギリス/アメリカ/ルクセンブルク
製作年:2005年
 
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Written by 桜井徹二(サクライ・テツジ)MTCディレクター
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[JVTA発] 今週の1本☆
 
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

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