News
NEWS
[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の1本 『ブルーベルベット』

今週の1本 『ブルーベルベット』
Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page

6月のテーマ:STRANGE
 

ドキュメンタリー作品は別として、そもそも映画というものは創作物であるがゆえ、どこかしら常識を逸脱した“strange”な要素を備えているものだ。不思議な映画がありすぎて、どの作品を紹介しようかと悩んだ挙句、今回は私の大好きなデヴィッド・リンチ監督の“不思議映画”『ブルーベルベット』を紹介したいと思う。
 

ノース・キャロライナ州ランバートン。大学生のジェフリー(カイル・マクラクラン)は、庭仕事をしていて突如発作に襲われた父を見舞いに病院に行く。そして、その帰り道に野原で異様な物を見つける。手に取ってみると、それはなんと切り落とされた人間の耳だった。
 

恐る恐る耳を拾ったジェフリーは、ウィリアムズ刑事の元にそれを届け、その訪問が縁でジェフリーはウィリアムズ刑事の娘サンディ(ローラ・ダーン)と知り合う。父親であるウィリアムズ刑事の話を盗み聞きしたサンディによると、この事件には、ドロシー・ヴァレンズ(イザベラ・ロッセリーニ)というクラブ歌手が関係しているとのこと。好奇心を覚えたジェフリーは事件解決の手がかりを得るため、サンディの協力で、ドロシーが住むディープ・リヴァー・アパートの710号室に忍び込む。そして、そこでジェフリーが見たものは…。
 

本編が始まって間もなく、草むらの中に転がる人間の耳に度肝を抜かれる。我々が暮らす現実の世界では、あり得ないシチュエーションだ。そしてその耳の存在に勝るとも劣らない、強烈な個性を放つキャラクターたちがシュールレアリスムを盛り上げる。カルト映画の巨匠と呼ばれるデヴィッド・リンチの作品にしては、比較的、話の筋がしっかりとしている本作だが、確たる軸は見えず、ストーリーは終始おぼろげなベールに包まれている。ただし、不思議な雰囲気が漂うものの、そこには恐怖や不気味さはない(観る人によるだろうが)。むしろデヴィッド・リンチ特有のポップで、コミカルな要素が散りばめられていて、思わずクスっと笑えたりする。本編の中、登場人物たちがつぶやく“It’s a strange world, isn’t it ?”というセリフが意味深だ。「君たちが考えるまともな世界ってやつこそ、実はこれ以上ない奇妙な世界なのだよ」。デヴィッド・リンチが嘲笑っているかのようだ。
 

==================
監督:デヴィッド・リンチ
出演:カイル・マクラクラン、イザベラ・ロッセリーニ、デニス・ホッパー
製作年:1986年
製作国:アメリカ
 
==================
 

──────────────────────────────
Written by 藤田庸司
──────────────────────────────
 

[JVTA発] 今週の1本☆ 6月のテーマ:STRANGE
 
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page