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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
第3回「“Chicago Fire” & “Chicago P.D.”」

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ<br />第3回「“Chicago Fire” & “Chicago P.D.”」
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“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

 第3回 『“Chicago Fire” & “Chicago P.D.”』 

“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

 
今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社にその道の才人たちが集結し、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。


その昔、ヒューストンに駐在していた頃の話だ。車を運転していると、交差点で長靴を手にする消防士を何人も見かけた。彼らは非番の時に、白血病の子供たちのために寄付を募っているのだった。運転席の窓を開けて、差し出された長靴に10ドル札を入れると、その消防士は黙って頷いた。


“City of Chicago”の守護者たち
“Chicago Fire”は、シカゴ市第51分署の消防隊員(消防隊・レスキュー隊・救急隊から成る)の活躍を描く勇気と感動の人間ドラマだ。「勇気と感動」なんて陳腐に響くが、映画でも小説でも今どきあまりお目にかかれないぞ。

 
消防隊長のケーシーを演じるのはジェシー・スペンサー。「DR.HOUSE」(“House M.D.”)のチェイス医師役ではルックスが甘過ぎて損をしていたが、それでもシーズンを重ねるごとに存在感を増していた。本作ではぐっと渋みと貫録が出て、消防隊のリーダーとして堂々たる演技を見せる。レスキュー隊長のセベライドに扮するのはテイラー・キニー(実生活ではレディー・ガガの恋人というのはご愛嬌だ)。マッチョだが意外と精神的に脆いセベライドのキャラクターに、キニーはぴたりとハマった。これに救急隊員のドーソン(モニカ・レイマンド)とシェイ(ローレン・ジャーマン)のペア、生粋の消防士で頼れる署長のボーデン(イーモン・ウォーカ-)、見習い消防士のミルズ(チャーリー・バーネット)たちが絡む。

 
本作のアンサンブル・ドラマとしての魅力、ケミストリー(人と人との出会いやその相性によって化学反応のように新たな価値や状況が生まれること)の強さは最近のアメリカン・ドラマの中でも群を抜く。消防隊員という職業は、常に危険と隣り合わせで、人命を預かるという重責を担い、肉体的・精神的にきわめて過酷で、経済的にも報われることが少ない。どんな状況においてもひとたび署内のサイレンが鳴れば、彼らは毅然として現場に駆けつける。言い訳は許されない。家族の問題に翻弄され、孤独やロマンスと葛藤しながらも、仕事に誇りと使命感を持って懸命に生きるその姿は、純粋に観る者の心を打つ。

 
アメリカで最も尊敬されている職業は消防隊員だ。彼らを美化するつもりはないが、3千人に及んだ9・11の米国同時多発テロ事件の犠牲者の内、およそ350人が消防士だったことは覚えておこう。

 
一方の“Chicago P.D.”は“Chicago Fire”からのスピンオフで、“NYPD Blue”の流れをくむ刑事ドラマだ。主人公はシカゴ市警21分署の汚職刑事ハンク・ヴォイト(ジェイソン・ベギー)。“Chicago Fire”のエピソードで脇役として登場し、散々ケーシーをいたぶった。ベギーは悪役ながら圧倒的な存在感で人気を博し、ヴォイト役で本作の主役に大抜擢された。主人公が筋金入りのダーティーコップ(汚職刑事)という点では、マイケル・チクリスが悪徳刑事ヴィックを快演した“The Shield”と似通った設定だが、ヴォイトの魅力も強烈だ。彼の信念は「わが街シカゴはオレが守る。そのためには手段を問わない」。ワイロは取る、容疑者は拷問する、殺人も辞さない。一方で、足抜けしようとするティーンエイジャーのギャングを助けたりする。

 
ヴォイトが率いるインテリジェンス・ユニットの面々も多彩だ。元はヤク中でヴォイトのCI(情報提供者)だったエリン・リンゼイ(タフでセクシーなソフィア・ブッシュに一目ぼれ!)。ヴォイトの強引なやり方に懐疑的な正義感あふれるアントニオ(ジョン・セダ)、ベテラン覆面捜査官のアルヴィン(エリアス・コテアス)、陸軍特殊部隊出身のジェイ(ジェシー・リー・ソファー)など、絶妙のキャスティングだ。

 
ヴォイトのダーティーコップぶりは民放系ドラマとしてはかなり危険水域に入っている。だがシンジケート系でセンサーシップの緩い“The Shield”や“True Detective”と違って、ダークサイドには踏み込んでいない。製作者・脚本家の程良いサジ加減と充実した脇役陣のおかげで、勧善懲悪ドラマとして成立しているから爽快感があるのだ。

 
オリジナルとスピンオフの間でもケミストリーが!
この2作品はよくあるオリジナルとスピンオフという関係に留まらず、登場人物が常時相互乗り入れしている。片方の主要メンバーがもう一方の準レギュラーになっていて、例えばドーソンとアントニオは兄妹で、セベライドとエリンは恋人同士だ。51分署メンバーが経営するバーにはインテリジェンス・ユニットの面々が頻繁に立ち寄る。また、国内テロリストによる病院爆破事件を描いたクロスオーバー・エピソード(姉妹番組の主要メンバーが共演するエピソード)が秀逸で、救助活動と捜査活動、それぞれのストーリーが展開する。登場人物同士のみならず、オリジナルとスピンオフという番組間でもケミストリーが働いた結果、双方の魅力がさらに増している。

 
両作品とも製作はディック・ウルフ。80年代警察ドラマの傑作“Hill Street Blues”の脚本でキャリアをスタートしたウルフは、法廷ドラマの金字塔となった“Law & Order”のクリエーターとして大成功した。
現在本国ではNBCが“Chicago Fire”のシーズン3を、“Chicago P.D.”のシーズン2を放映中だ。この2作品に買い手がつかないとは、日本もまだまだエンタテインメント発展途上国だね。

 
<今月のおまけ>「心に残るテレビドラマのテーマ」② “Hill Street Blues” (1981-1987)

(フルバージョンでどうぞ)

 
写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。

 
◆バックナンバーはこちら
http://www.jvta.net/blog/5724/


 

 

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