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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第12回 ”How to Get Away with Murder”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ  第12回 ”How to Get Away with Murder”
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今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第12回“How to Get Away with Murder”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社にその道の才人たちが集結し、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

Warning!
”Weeds”と”Breaking Bad”、”Sons of Anarchy”と”Game of Thrones”、”24”と”MI-5”、これらの組み合わせは同時並行で観続けると、アドレナリンの過剰分泌を引き起こす(筆者もこれで何度か心臓が止まりかけた)。”Scandal”(第7回参照)と今回紹介する”How to Get Away with Murder”(以下”HTGAWM”)も同様に危険なので十分注意したい。
 
どんでん返しを繰り返しながら突き進むストーリー!

舞台はフィラデルフィアの名門ミドルトン法科大学院。アナ・キーティング(ヴィオラ・ディヴィス)は同校のカリスマ教授だが、本職はトップクラスの刑事弁護士だ。アナは教壇で法学ではなく、現在進行中の殺人事件を題材にして’無罪を勝ち取る方法’を教える。
学生たちは、まず陪審員に’疑惑’(”doubt”)を植えつける以下の3つのテクニックを叩きこまれる:

① ‘証人はおとしめる’(”Discredit the witness)

② ‘容疑者を創り出す’(”Introduce the new suspect”)

③ ‘証拠は葬る’(”Bury the evidence”)

(こんな授業なら毎日学校へ行くのに!)
 
アナはマスコミで騒がれる大事件(”high profile case”)の被告人を弁護するので、彼女の講義は一番人気だ。そして最優秀な学生数名をインターンとして自分の法律事務所に迎えて、徹底的に鍛える。選ばれた学生たちはアナに認めてもらうべく、死に物狂いで働く。
 
ストーリーは一話完結型で、絶体絶命の依頼人(”client”)をあらゆる手段を使って無罪にするアナとそのチームの活躍が活写される。だがトリッキーなのはこれらのエピソードがサブストーリーだという点。本筋はシーズンの根底に不気味に横たわる、ミドルトンで起きた2つの未解決の殺人事件なのだ。エピソードが進むに連れてアナと若いインターンたちはこれらの事件に深く関わり、抜き差しならない立場におちいる。序盤はフラッシュバックの挿入だけだが、やがて2つの事件がフルストーリーとして描かれ、二重三重のどんでん返しで観る者を撹乱しながらシーズンフィナーレへ突き進む。この手法は極めて効果的で、推理ドラマにありがちな部分的な退屈さが排除され、ストレスなしでローラーコースター・ライドが楽しめる。
 
‘二匹目のドジョウ’も大きかった

クリエーターはションダ・ライムスで、”HTGAWM”は彼女の大ヒット作”Scandal”とプラットフォームを共有している。簡単に言うと、”Scandal”が“sexy legal political soap opera”なのに対し、”HTGAWM”は“sexy legal mystery soap opera”なのだ。”soap opera”は’昼メロ’の意味だが、ライムスは出世作”Grey’s Anatomy”で、既にプライムタイム(東海岸の夜8-11時の時間帯)のドラマに昼メロの要素を巧みに取り入れている。
さらに”HTGAWM”と”Scandal”との類似点として、①黒人女性が主人公で法律事務所を経営する、②部下たちはいずれも主人公に対して過去に大きな借りがあり献身的、③主人公の恋愛沙汰がストーリーにも重大な影響を与える、④メロドラマ調(”soapy”)なラブシーンが頻出する、⑤重要な役割を担うゲイのカップルが登場する、などが挙げられる。
”HTGAWM”はリーガルドラマとしての’志’においては”Law & Order”の対極に位置する。だが推理ドラマとしてのオリジナリティは確保されているし、’ちょっと低俗だけど下品ではない知的エンターテインメント’なんて、とても斬新ではないか!
 
 
化けるヴィオラ・ディヴィス
アナ・キーティングを演じるヴィオラ・ディヴィスは、本役で2015年度エミー賞ドラマ部門の主演女優賞(最激戦区)を受賞した。またアカデミー賞では過去2度のノミネートを受け(2008年の『ダウト』、2011年の『ヘルプ』)、さらに若いころにはトニー賞(ミュージカル)とオビー賞(演劇)まで獲っている。演技力は折り紙つきだ。
 
現在50歳のディヴィスは、劇中アナが自宅でストレートのヘアウィッグを外し、完璧で思い切り濃いメーキャップを落とす場面をワンショットで演じてみせる。妖艶な熟女が人生に疲れたフツーのおばさんに変貌するこのシーンはかなり怖い(”American Horror Story”のジェシカ・ラングより怖い)。
 

脇役の中ではインターンの一人ウェス・ギビンズ役のアルフレッド・イーノックの存在感が抜きんでている。”The Fresh Prince of Bel-Air”(1990-1996)のころのウィル・スミスをシャープにしたようで、将来大スターになるかも知れない。
 
Thank God, It’s Thursday!”

本国では9月末からシーズン2が始まった。日本ではDlifeが『殺人を無罪にする方法』の邦題でシーズン1を放送済みだ。
現在大手民放のABCは、毎週木曜日のプライムタイムにションダ・ライムス3本立て(”Grey’s Anatomy”、”Scandal”、”HTGAWM”)を放映中で、”TGIT”(”TGIF”の木曜版)と銘打ってキャンペーンを展開している。
か、考えただけでアドレナリンが…。
 

<今月のおまけ> 「心に残るテレビドラマのテーマ」⑪ ”MacGyvar” (1985-1992)

決して銃に触れない『冒険野郎マクガイバー』(邦題)は、米国PTA公認のヒーローだった
 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 

 
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