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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ  第7回  Scandal”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ  第7回 <strong>“</strong> Scandal”
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今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

 第7回“Scandal” 

“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

 
今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社にその道の才人たちが集結し、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

 

“This is my guilty pleasure”
‘guilty pleasure’とは、「少し後ろめたいけど罪のない密かな楽しみ」という意味。例えば、「いまダイエット中だけど、1日ひと粒ゴディバのチョコを食べるの。これが私のguilty pleasureよ」という感じで使う。
 

テレビドラマの話をしているとしよう。相手がインテリのアメリカ人か業界に詳しい人であれば、玄人受けする“Mad Men”、“House of Cards”、“Breaking Bad”あたりが好みだと言うと、好印象を与えるはずだ。気のおけない仲間となら、“The Walking Dead”、“Sons of Anarchy”、“Game of Thrones”で盛り上がるだろう(注意:女性が入っていたら“Sons of Anarchy”、“Game of Thrones”は引っ込めて、“True Blood”と”Glee”にしておくと安全)。
 

だが間違っても、「オレ、実は“Scandal”が好きなんだ」とは言わないこと。あなたはその瞬間に(“Scandal”を低俗とみなしている人たちから)底の浅い人間だと思われてしまう。“Scandal”はあくまで、われわれの‘guilty pleasure’として留めておかねばならない。
なぜか?
 

“ワシントンD.C.最高のリスクマネージメント・チーム”

主人公の黒人女性、オリヴィア・ポープ(ケリー・ワシントン)は才色兼備のスーパーウーマン。元ホワイトハウスの広報担当で、今はセレブや政治家のスキャンダルの揉み消しを専門とするコンサルタント会社“Olivia Pope & Associates” (OPA)のCEOだ。
 

オリヴィアに忠誠を捧げるOPAのメンバーは少数精鋭だ。リーダー格のハリスン(コロンバス・ショート)は切れ者の法廷弁護士。アビー(ダービー・スタンチフィールド)は有能な調査員だ。クイン(ケイティ・ロウズ)は後々とんでもない才能を開花させる新人。そして出色のキャラが、元CIA特殊工作員のハック(“Weeds”で憎めないメキシカン・マフィアを好演したギレルモ・ディアス)。いずれもリスクマネージメントのプロだが、全員例外なくオリヴィアに助けられた過去を持つ。彼らとオリヴィアとの係わり合いはフラッシュバックで語られるが、これだけでも充分楽しめる。
 

OPAは高額のコンサルタント料と引き換えに傲慢な権力者・富豪・著名人のスキャンダルを闇に葬る一方で、被害者からの依頼も受ける。合法的に解決するかどうかは状況次第。この世界は諜報戦・神経戦で、常に時間との戦いだ。各エピソードはハイピッチで展開され、しかもスパイ・スリラーと法廷ドラマを兼ね合わせたような面白さでゾクゾクさせられる。
 

だが、真のお楽しみはこれからだ。
 

必ずハマる、究極のポリティカル・メロドラマ!
オリヴィアはなぜホワイトハウスを去ったのか?
彼女はグラント大統領(トニー・ゴールドウィン)が州知事時代のキャンペーン・マネージャーで、当時から二人は強く魅かれ合っていた。しかしグラントは既に元弁護士の白人女性、メリー(ベラニー・ヤング)と結婚していた。オリヴィアは大統領と距離を置こうとするが、グラントは彼女を諦めきれない。世界一の権力者が、なぜ好きな女性と一緒になれない? しかも現政権を取り巻く問題は後を絶たず、グラントが頼りにできるのはOPAだけ。結局、オリヴィアもグラントを置き去りにはできない。生き馬の目を抜くゆがんだ政治の世界に翻弄されながらも、二人の切ない恋物語は続く…。
 

もし白人の現職大統領と黒人の元広報官とのスキャンダルが表ざたになったら、そのインパクトはクリントンの’モニカ・ルインスキー事件’の比ではない。一筋縄ではいかない大統領夫人のメリーも黙っていないだろう。つまり、スキャンダル揉み消しのプロであるオリヴィア自身が、とんでもない時限爆弾=スキャンダルなのだ!
 

“Scandal”は、政治スリラーとしての魅力、ゴシップ誌や三流紙的な低俗さ、さらに昼メロ的な中毒性を併せ持っている。その中心にいるのが、魔性の魅力を放つケリー・ワシントンが演じるオリヴィア・ポープだ。
 

クリエーターは、爆発的ヒット作“Grey’s Anatomy”を世に送りだしたションダ・ライムス。大手民放(ABC)の製作なのでさほどお下劣ではないが、かといって政治ドラマとしての高尚さもない。ライムスは「ファンの見たいものをお見せしましょう」という立ち位置を貫いている。だからサイドストーリーがファンに受ければ極限まで話を展開(脱線)させ、ハックやクインのようなサブキャラに人気が出ると際限なく彼らの露出度を増やす。徹底して視聴者目線なのだ。後世の評価はともかくこれが面白くないはずがなく、“Scandal”は必ずハマる究極のポリティカル・メロドラマとなった。
 

本作は「スキャンダル 託された秘密」の邦題名で、WOWOWでシーズン3まで放映済みだ(DVDも発売中)。本国アメリカでは、今月ABCでシーズン4の放送が終わったところで、視聴率はシーズンを重ねるごとに上昇している。
これだけ人気が出ると、もう‘guilty pleasure’とは言えないね。
 

 
<今月のおまけ>「心に残るテレビドラマのテーマ」⑥ ”Miami Vice” (1984-1989)

 
(グレン・フライやフィル・コリンズの挿入歌もクールだった)

 
写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。

 

 
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https://www.jvta.net/blog/5724/

 

 

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