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[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

インド出身のメジャーリーガーの デビュー秘話が待望の映画化

インド出身のメジャーリーガーの デビュー秘話が待望の映画化
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ブラッド・ピッド主演の『マネーボール』、黒人初のMLB選手ジャッキー・ロビンソンを描いた『42』に続く、実話に基づいた野球映画を紹介しよう。この作品は、インド出身の初のメジャーリーガーとして話題を集めたディネシュ・パテル選手とリンク・シン選手のデビューまでの道のりを描いている。

 
主人公のスポーツエージェント、J.B.バーンスタインは、自分が代理人を務める選手を他のエージェント事務所に奪われ、廃業寸前に陥る。失意の中、彼はテレビでふと目にしたクリケットの試合から、インドでのクリケット人気に着目。大胆なアイディアを思いつく。それはインドで、素人のクリケットのピッチャーが自慢の肩を競い合うリアリティ番組 『ミリオン・ダラー・アーム』を立ち上げて、メジャーで通用するピッチャーを発掘するというものだった。早速、彼はムンバイに渡り、約4万人の応募者の中から、最速球を投げたディネシュ・パテルとリンク・シンをアメリカに連れて帰る。厳しいトレーニングや、言葉の壁を乗り越え、野球をまったく知らなかった2人が、メジャーリーガーを目指して、奮闘する。

 
バーンスタインを演じるのは、人気テレビドラマ『MAD MEN マッドメン』や映画『ザ・タウン』でブレイクしたジョン・ハム。リンク・シン選手を演じるのはアカデミー賞受賞作『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』で俳優デビューを飾ったスラージ・シャルマ、そしてディネシュ・パテル選手を演じるのはアカデミー賞受賞作『スラムドッグ・ミリオネア』のマドゥル・ミッタルと、最近活躍中の若手俳優の熱演が見られるのも魅力的だ。

 
この映画は、エグゼクティブ・プロデューサーを務めているインド系アメリカ人のパラク・パテルの情熱によって実現した。彼が通常、プロデュースするのは100億ドル以上の超大作映画だが、この作品はそういったものとは違う比較的低予算の映画だ(それでも日本映画の制作費とはケタが違うが)。実際に彼の友人から聞いた話だが、プロデュースにおける彼の考えは「Two for them, one for me」。つまり、「スタジオの望む儲かる商業的映画を2本作るかわりに、自分の作りたい映画を1本作る」ということ。そうすることで、意義のあるストーリーだがなかなか資金が集まらないという作品の映画化を実現できる可能性が高まるのだそうだ。今回も「この感動のスポーツドラマを世界に伝えたい」と思い、映画化に向けて奔走したという。

 
実際、彼がエグゼクティブ・プロデューサーを務めたアンジェリーナ・ジョリーの主演の映画『マレフィセント』は、この作品の翌週に公開され、週末の全米興行成績が7000万ドルでトップを飾った。世界35カ国の興行を含めると合計1.7億ドルを稼ぎ出している。『Million Dollar Arm』も、全米興行成績は2800万ドルと、まずまずの結果。両作とも、現在も全米の劇場で上映中だ。

 
不景気の影響で、ハリウッドのスタジオは昔のようにリスクを取らなくなった。その結果、すでに原作があるストーリーか、旧作のリメイク以外は映画化が実現しない。近年オリジナルストーリーが少ないのはそのためだ。CGIを駆使した超大作ばかりの現在のハリウッドにおいて、感動的なヒューマンドラマやメッセージ性の強い映画を実現することは容易ではない。そんな中で彼の、ハーフ&ハーフならぬ、2:1の法則は、うまく機能していると言えよう。

 
そんなプロデューサの情熱と信念が詰まった本作。野球ファンはもちろん、そうでない人も勇気と元気をもらえるはず。日本公開は未定だが、ぜひ日本でも公開してほしい作品だ。
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『Million Dollar Arm』(原題)
監督:クレイグ・ギレスピー
出演:ジョン・ハム、レイク・ベル、スラージ・シャルマ、マドゥル・ミッタル
製作国:アメリカ
製作年:2014年
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Written by 藤田 彩乃(フジタ・アヤノ)
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[JVTA発] 今週の1本☆
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。


 

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