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発見!キラリ★
ユートピアを夢見て

発見!キラリ★<Br>ユートピアを夢見て
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3月のテーマ:空気
 

たとえば英語で作られた作品を日本で公開するとき、日本語の字幕や吹き替えがつくのはなぜだろう? 英語のまま公開しても内容を理解できない人がいるということを、皆が知っているからだ。そして、翻訳者を含め日本語版を制作するスタッフは、観る人が楽しみや知識を享受できる姿を想像して、何とかいい翻訳をつけようと全力を尽くしている。
 

何を当然のことを…? と思ったことだろう。
 

しかし、観客の対象が「英語を理解できない人」から「視覚や聴覚で情報を得ることが困難な人」に変わったらどうだろう? 同じように理解をサポートするために努力をする、という思考になるだろうか? “素のままの映像では内容理解が困難”という条件は同じなのに、一方には当然のように字幕なり吹き替えなりがつき、もう一方は考慮すらされないケースが多い。いや、たとえ制作側であっても考慮しなければいけないということすら知らない、と言うほうが正しいだろう。
 

2014年の映画公開本数1184本(邦画615本、洋画569本)に対して、公開時に視覚障害者や聴覚障害者向けに日本語字幕・音声ガイド付きでバリアフリー上映をされた作品はわずか8作品(邦画6、洋画2)。
邦画は615本のうち、公開時に日本語字幕付き上映があった作品は66本というデータがある。(メディア・アクセス・サポートセンター調べ)つまり、映画館で字幕付きで観られる邦画作品は10%少々、音声ガイドにいたっては1%以下ということだ。
 

現在、地上波放送では多くの番組にバリアフリー字幕がついている。また、先日、メールマガジンで紹介した『シンプル・シモン』のように、バリアフリー字幕と音声ガイドを収録して発売するDVDやBlu-rayも徐々に増えてきてはいる。しかし、その必要性に対する認知度の低さと制作費などといった諸問題がまだまだあり、急激に普及するというわけにはいかないのが現状だ。
 

聴こえない(聴こえづらい)、見えない(見えづらい)という理由で、私たちが当たり前のように楽しんでいる映画やドラマに親しめないという方がたくさんいる、ということを知ってほしい。そして、この現状を少しでも打破するために、劇場公開用の映画ではなかなかつかないが、テレビ番組では言葉のプロたちが日夜、バリアフリー字幕や音声ガイドを作っていることも知ってほしい。
 

近い将来、翻訳字幕や吹き替えがついているのと同じ感覚で、映画やドラマなどのビジュアルメディア・コンテンツには、バリアフリー字幕や音声ガイドがまるで空気のように当たり前についていて違和感なく受け入れられる日がくることを信じている。
 

そして、そこには映像翻訳者がそっと寄り添っていることも。
 

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Written by 浅野 一郎
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[JVTA発] 発見!キラリ☆  3月のテーマ:空気
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマをヒントに「キラリ☆と光るヒト・コト・モノ」について綴るリレー・コラム。同じ目標を見つめる修了生・受講生にたくさんのヒントや共感を提供しています。

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