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[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の一本
『箱入り息子の恋』

今週の一本<br>『箱入り息子の恋』
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 兵庫県議の会見、W杯、ゲリラ豪雨、都議会のヤジのその後、ネットを騒がせたいくつかの事件など、今週コラムを書くなら書き出しのネタには困らないはずと思ったが、いざ書きはじめるとどれもピンと来ない。どうしよう。忙しくて、原稿書いてる場合じゃないのに~と思っていたら、キタ───(´∀`)───!! 遠野なぎこさん(34)のスピード離婚! 最初の結婚は2か月、今回の再婚は55日と、芸能メディアの期待を裏切らないパフォーマンスぶり。離婚の理由や経緯は、ご自分で調べて頂きたいのですが(興味のある方はですが)、僕がこのニュースに注目したワケは、彼女が自身のブログに掲載した離婚を詫びる言葉に興味を引かれたからだ。彼女は「“妻”という形」「究極の形」「“夫婦”という形」「“幸せのカタチ”」ととにかく「かたち」という言葉を何回も使っていた。

 
皆さんはとてもそう思えないだろうが、僕はこの言葉を見て、「この人は根がマジメなんだろうな」と思った。目に見えないものの「かたち」にこだわる人というのは、自分の中に‘譲れない一線’みたいなものがあって、それを絶対に受け入れることができない人だと僕は思っている。不真面目でいい加減な人間は、‘受け入れない’という決断にともなって巻き起こる軋轢や非難を避けたくて、それを黙って受け入れている場合が多い。また、受け入れることが大人だと、物わかりのいいフリをしていることもある。かくゆう僕もそういった人間の一人だ。もちろん、「かたち」にこだわる人が、人間的に魅力的かというとそう単純ではない。むしろ周りからは「うっとうしいヤツ」と思われ、好きな人から敬遠されるということもあるかもしれない。

 
 マジメすぎる2人の恋愛の「かたち」を描いたのが『箱入り息子の恋』だ。主人公は35年間、女の子と付き合ったことがないという童貞の公務員、天雫健太郎(星野源)。内気で愛想がない健太郎を見かねた父の寿男(平泉成)と母のフミ(森山良子)は、ある日、健太郎に内緒で、親同士が婚活する‘代理見合い’に出かける。そして、そこで知り合った今井晃(大杉漣)とその妻の玲子(黒木瞳)の一人娘、奈穂子(夏帆)との正式なお見合いが決まる。一人息子の初のお見合いに浮かれる天雫家だったが、実は奈穂子は病気のせいで視力を失くしていた。それでも健太郎と奈穂子は少しずつ少しずつ互いの距離を近づけていく。彼らの一途でひたむきな恋は果たして成就するのか!?

 
 芸達者な役者が多い上に、随所に笑いが仕込まれていて、117分間はあっという間。そして何より奈穂子に恋をしてどんどん逞しくなっていく健太郎と、過保護な両親のもとから初めて飛び立とうとあがく奈穂子に心打たれる。誰かを心から好きになるってホントに素敵だときっとあなたも思うはずだ。

 
 余計なお世話だが、こんなときだからこそ遠野さんにもこの作品を見て欲しい。報道によると、嫌いになって別れたわけではなく、彼女は離婚後も毎日のように元夫と会っているらしい。結婚生活は上手くいかなったけれど、彼女の心には彼への‘好き’という気持ちが確かに残っているのだろう。遠野さんはメディアのインタビューに、「お互いが笑顔でいられるならお付き合いは続いたほうがいい」と答えている。ならば、この作品で恋の素晴らしさと、恋の持つ大きなパワーを再認識して、「新しい幸せのかたち」を作って欲しい。そんな彼女の姿を見ることができたら、やっぱりマジメなヤツが結局は「勝つ」と、少なくとも僕は思う。

 
何はともあれ、この映画はホントにオススメです! 大事な人とちょっとマンネリだ。仕事がツライ。翻訳が上手くいかない。そんなオチてるときに見れば、きっと心が軽くなって、元気がでるはずです。

 
あっ、テーマの「熱」って使えなかった……。 (人´∩`)スイマセン

 
『箱入り息子の恋』
監督:市井昌秀
出演:星野源、夏帆、平泉成、森山良子、大杉漣、黒木瞳
製作国:日本
公開:2013年

 

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Written by 丸山 雄一郎(マルヤマ・ユウイチロウ)
学生時代から本校代表である新楽直樹に師事し、ライターとしてデビュー。小学館などで活躍後、現在は『週刊現代』『FRIDAY』(講談社)などで編集、ライターとして活動中。JVTAでは米メディアサイトの日本版の最終チェック、日本語表現力強化コースの主任講師などを担当。
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[JVTA発] 今週の1本☆
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

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