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[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の1本 『ゾディアック』

今週の1本 『ゾディアック』
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今月のテーマは、事件。ということで、実際に起きた事件をもとにした作品をもう一度観てみることにした。1960年代後半から70年代にかけて、カリフォルニアを震撼させた連続殺人事件を描いた『ゾディアック』だ。
 

すべての始まりは、1969年にサンフランシスコ・クロニクル紙に届いた1通の手紙。その前年にカリフォルニア州バレーホでカップルを殺害したと告白する犯人からの犯行声明文だった。犯人は自らをゾディアックと名乗り、ギリシャ記号やモールス記号を使った暗号文を手紙に同封する。事件に惹きつけられた風刺漫画家のロバート・グレイスミス(ジェイク・ギレンホール)や新聞記者ポール・エイブリー(ロバート・ダウニー・Jr)が暗号文に隠された謎を解こうと奔走する中、ゾディアックによる新たな殺人事件が起きる。
 

ゾディアックから送りつけられる手紙や手がかりによって、真相に迫ったかと思えば、裏切られることを繰り返すグレイスミスやエイブリー。彼らは事件にのめり込むあまり、やがてそれぞれの人生を崩壊させていく。
 

DVDに収録されているインタビューの中でデビッド・フィンチャー監督も語っているが、この作品は犯人の正体に迫るというよりも、この事件に関わった男たちがゾディアックからどのような影響を受け、その後どういった人生を送ったかにフォーカスを当てている。犯人探しに没頭するあまり妻や子どもに逃げられた風刺漫画家、酒とドラッグに溺れ廃人同然になる新聞記者、気持ちに折り合いをつけて事件を忘れようとする刑事など、彼らがたどる道はさまざまだ。
 

有力な容疑者がいるとはいえ、いまだに真犯人が逮捕されていないという実際の未解決事件なので、作品も多くの謎を残したまま終わるのだが、“真犯人は誰なんだろう? もっとゾディアックについて知りたい!”と思うほど、事件に惹きつけられる。登場人物や当時その報道を見ていた一般市民が夢中になった気持ちが分かる気がした。
 

この作品は、主人公のグレイスミスが事件についてまとめた書籍をもとに製作されているが、フィンチャー監督は撮影前に綿密な調査を行い、当時の状況を忠実に再現している。ジェイクが作中で使用しているペンはグレイスミス本人の物だし、マーク・ラファロ演じるトースキー刑事のちょっと洒落たレトロな服装も本人に直接取材して選んだものだという。こういった細かなこだわりも見どころのひとつだろう。
 

ちなみにこの作品の字幕翻訳を手がけたのは、以前、JVTAで講師を務められていた三田眞由美さんである。まだ観ていない方にはぜひおすすめしたい1本だ。
 
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『ゾディアック』
監督:デビッド・フィンチャー
出演:ジェイク・ギレンホール、マーク・ラファロ、ロバート・ダウニー・Jr
製作国:アメリカ
製作年:2006年
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Written by 野口 博美(ノグチ・ヒロミ) MTCディレクター
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[JVTA発] 今週の1本☆ 10月のテーマ:事件
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

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