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[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の1本
『ニキータ』

今週の1本<Br>『ニキータ』
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学生時分にアルバイトをしていた工事現場に女性の鳶職人がいた。“ニッカポッカ”と呼ばれるダボっとした作業着に身を包み、高所で工事用の足場を手際よく組んでいく彼女は、ほとんど男性しかいない埃だらけの建築現場で髭面の男たちの中、ひときわ輝き、カッコいいなと思ったものである。サーファーやロックバンドのベーシスト、トラック運転手など、どちらかといえば男性的なイメージが強い職業や役割を女性(それも華奢であれば華奢であるほど効果が表れる)が担うと、そこに不思議なカッコよさや艶やかさが生まれると感じるのは僕だけではないはずだ。今日紹介する作品のヒロイン、“ニキータ”にもそんな魅力が感じられる。訓練に訓練を積んだプロの殺し屋、任務に忠実で冷血な殺戮マシーンであるニキータには、よくあるギャング映画に登場する男の殺し屋とは一線を画す、不思議な魅力が漂うのだ。
 

『ニキータ』
 

ニキータ(アンヌ・パリロー)はパリのストリートに生きる破滅的な不良娘。ある夜、麻薬中毒の仲間たちと薬局を襲撃し3人の警官を射殺してしまう。特殊部隊に身柄を拘束されたニキータは無期懲役刑を言い渡されるが、その生存能力の高さに目を付けた政府の秘密機関により工作員として国のために働くことを命じられる。断った場合は死が待つのみ。選択肢のないニキータは、教育係のボブ(チェッキー・カリョ)による厳しい訓練に耐え、一人前の女殺し屋、工作員に変貌していくのであった。コードネームを授かり、次々と任務を片付けていくニキータだが、ある日、スーパーマーケットで働く一般人のマルコ(ジャン=ユーグ・アングラード)と恋に落ちる。婚約までするも、マルコに自分の秘密を打ち明けることのできないニキータは、やがて組織、任務からの逃亡を切に願うようになる。しかし、それは最愛の恋人マルコとの別れを意味するのだった…。
 

バスルームの外から恋人マルコがニキータにプロポーズしたとき、中では彼女が鍵をかけて標的にライフルを向けていた。ニキータは涙を流しながら引き金を引く。恋から芽生えた乙女心と、逃れられない運命の狭間で悩み、もがき苦しむのだ。タフな外見とは裏腹な、ガラスのように繊細な内面。そのコントラストがニキータというキャラクターをより魅力的なヒロインに仕立て上げていく。その過程には元工作員で、ニキータに武器としての女性らしさ、女性としての振る舞いや作法を教え込むアマンドを演じるジャンヌ・モローの存在も大きい。ジャンヌ・モローの“マダム”としての圧倒的な存在感が、アンヌ・パリローの“マドモアゼル”な雰囲気をより一層引き出している。鏡台を前に、アマンドがニキータに手ほどきしながら語るセリフが詩的で最高にカッコいい。「限界のないものが二つあるわ。女の美しさとそれを乱用することよ」。他ならぬジャンヌ・モローの気品と美しさがあってこそ説得力を持つ名台詞だと思う。
 

『ニキータ』
監督:リュック・ベッソン
出演:アンヌ・パリロー、ジャン=ユーグ・アングラード、ジャンヌ・モロー
製作国:フランス
製作年:1990年
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Written by 藤田 庸司(フジタ・ヨウジ)MTCディレクター
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[JVTA発] 今週の1本☆
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

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