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[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の1本 『ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂』

今週の1本 『ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂』
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10月のテーマ:アウトドア
 

先週の10月20日、世界最高峰のエベレストに女性として世界初の登頂に成功した登山家、田部井淳子さんが亡くなった。77歳だった。田部井さんは大学卒業とともに登山に没頭し、昭和50年にエベレストに登頂、今年7月には東北の高校生と富士山に登っていたという、まさに山に魅せられ続けた人生だった。
 

今回紹介する映画『ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂』は、人類で初のエベレスト登頂に成功したニュージーランド人の登山家エドモンド・ヒラリーとエベレスト山麓出身のシェルパ、テンジン・ノルゲイの実話に基づくドキュドラマだ。1953年、エドモンドはエベレスト初登頂を目指すイギリスの遠征隊に加わる。スイスやアメリカなど、各国が競って登頂を目指していたこの時代、7回の失敗を経て再び遠征に臨んだイギリスにとっては、この年が最後のチャンスだった。
 

遠征隊は全部で13人。食糧や酸素、その他必要となる物資およそ7.5トンを443個の荷に分け、シェルパ30人とポーター300人の力を借りて17日間かけてベースキャンプまで運ぶ。その後は、数人が登山ルートを整え、他の隊員とシェルパが後に続くという工程を繰り返す。出発は3月初旬、モンスーンが来る5月末がタイムリミットとなる。
 

私が特に好きなのはシェルパのテンジンだ。シェルパやポーターとして働く現地の人々は大抵が生活費を稼ぐために山を登るが、テンジンは違う。テンジンにとってエベレストの登頂はロマンあふれる冒険だった。テンジンは、登山ルートの整備を通じてエドモンドと強いきずなを築いていく。不安定にたたずむ巨大な氷の塊や、底の見えないクレバスなど、危険に満ちた場では互いに命を預け合うのだ。エベレストの標高は8848メートル、高度8000メートルを超えた地点からはデスゾーンと呼ばれ、もはや人間が普通に存在することのできない領域となる。映画の終盤、最後の難所にさしかかり酸素ボンベを付けて二人きりで登るエドモンドとテンジンにとっては、まさに互いだけが頼りだった。そして、ついに制覇した頂上。そこにいたのはわずか15分。それでもロマンを求めて不可能に挑戦し、登頂を果たした瞬間の喜びは想像を超えるものだっただろう。
 

最近では、エベレストは登山者の増加で「渋滞」に悩んでいるという。人が増えればゴミも増える。山の怖さを知らない登山者が増えれば事故も増える。エドモンドとテンジンが分かち合ったようなロマンは、もうそこにはないのだろうか、とふと思う。
 

『ビヨンド・ザ・エッジ 歴史を変えたエベレスト初登頂』
監督: リアン・プーリー
出演: チャド・モフィット、ソナム・シェルパ
製作国: ニュージーランド
製作年: 2013年
 

Written by 板垣 七重
 

[JVTA発] 今週の1本☆ 10月のテーマ:アウトドア
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

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