News
NEWS
[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の1本 『ラ・ラ・ランド』

今週の1本  『ラ・ラ・ランド』
Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page

1月のテーマ:TRY
 

ラ・ラ・ランド(La La Land)とは、ロサンゼルスの愛称で(略称「LA」がもとになっている)、特にハリウッドのことを指し、「夢の国」とか「陶酔」といったニュアンスもある。地元住民が日常生活の中で使う名称ではなく、他所の人に向けてあるいは他所の人がロサンゼルス/ハリウッドについて、きらきらした感じを出して言う時に使われているイメージの言葉である。
 

ミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』は、ネバダ州からロサンゼルスに出てきて女優を目指し日々オーディションを受けているミア(エマ・ストーン)と、売れないジャズ・ピアニストでいつか自分のジャズ・バーを開き、好きな音楽を存分に演奏したいという夢を持つセバスチャン(ライアン・ゴズリング)が出会って恋に落ちるロマンティックで切ないラブ・ストーリーだ。
 

※トップの写真は、デイミアン・チャゼル監督とプロデューサーのジョーダン・ホロウィッツのサイン入りポスター
 

2_Ryan - コピー
Q&Aセッション中のライアン・ゴズリング

 
映画業界では、オリジナルの新作ミュージカル映画は成功しないと言われてきた中で、デイミアン・チャゼル監督は、映画会社から「ノー」と言われ続けても、この作品を撮る夢をあきらめずに数年間トライし続けたそうだ。その結果、2015年についに制作が実現し、先日のゴールデン・グローブ賞では史上最多7部門で受賞、アカデミー賞では、『タイタニック』(1997)と『イヴの総て』(1950)に並び歴代最多14ノミネートを獲得、興行的にも成功を収めている。
 

デイミアンとは『セッション』の頃から何度か会える機会があり、今回は全米公開前に、デイミアンのみならず、エマ・ストーンやライアン・ゴズリング、音楽のジャスティン・ハーウィッツ、プロデューサーのジョーダン・ホロウィッツなどから話を聞く機会があった。
 

4_Damien - コピー
Q&Aセッション中のデイミアン・チャゼル監督

 

物語はデイミアン自身のストーリーと重なる部分が多い。アメリカの東海岸で生まれ育ったデイミアンは、映画を作りたいという希望を抱いてロサンゼルスに引っ越してきた。そこに果てしなく広がる大空と、空にも届きそうな背の高いヤシの木を見て、あんなに細い木があんなに高くまっすぐに立っていられるはずがない! と衝撃を受け、その光景は現実ではなく夢のものだと思ったそうだ。Dream Factoryであると同時に、その夢や希望を容赦なく潰す街でもあるロサンゼルスで、何年もの間デイミアンは、ハリウッドはガラス越しに見るだけで触ることのできないものだと感じていたという。さらに、仕事と私生活や、夢と現実のバランスをどう取るかという部分でも、この作品はとてもパーソナルな映画だと語っていた。(デイミアンは、大学時代に知り合って、後に結婚した映画プロデューサー/監督の妻と『セッション』が成功したあたりに離婚している。)『ラ・ラ・ランド』では、そんなロサンゼルスの夢のような部分と、夢を追いかける者たちの希望や喜び、挫折や痛みを、現実とファンタジーの境界線にあるミュージカルという手法を使って表現したかったそうだ。
 

エマがこの作品でゴールデン・グローブ賞主演女優賞(ミュージカル/コメディ映画)を受賞した時のスピーチは、そうした夢を追う人たちへの応援メッセージになっていたのが感動的だった。
 

3_Emma - コピー
Q&Aセッション中のエマ・ストーン

“This is a film for dreamers. And I think that hope and creativity are two of the most important things in the world and that’s what this movie is about. So, to any creative person who’s had a door slammed in their face, either metaphorically or physically, or actors who have had their auditions cut off, or have waited for a callback that didn’t come, or anybody anywhere really that feels like giving up sometimes but finds it in themselves to get up and keep moving forward, I share this with you.”
 

この作品の音楽は、『セッション』に続き、ジャスティン・ハーウィッツが担当。デイミアンがハーバード大学1年生の時に同じ大学のジャスティンのバンドにドラマーとして応募、加入して知り合った。後にルームメイトになった二人は、映画好き、ミュージカル好きということで意気投合したという。
 

『ラ・ラ・ランド』の撮影は、ロサンゼルス市内とその近郊で行われ、ハモサ・ビーチなど、JVTAロサンゼルス校の近くでもロケ撮影されている。映画のオープニング・シーンは、昔のハリウッド・ミュージカルの大スペクタクル・ダンス・ナンバーを思わせるもので、今年のゴールデン・グローブ賞授賞式は、このシーンのパロディで開幕したほどインパクトがある。フリーウェイの大渋滞の中で大勢の人が一斉にダンスをするこの場面は、110番フリーウェイと105番フリーウェイを繋ぐ立体交差を閉鎖して2日間で撮影された。そこはロサンゼルス校から車で(渋滞がなければ)15分くらいのところに位置するのだが、私は、この撮影の日に110番フリーウェイを運転していて、実際に現場を見ていたのだった。プロデューサーのジョーダンと直接話した時に、撮影は2015年9月26日(土)、27日(日)だったことを確認。その週末は、ちょうどJVTAがスポンサーした映画祭がダウンタウンで開催されていて、27日にはJVTAが英語字幕を付けた『新撰組』が上映されたので、それを観にいった帰りに撮影現場に遭遇したのだ。(朝から撮影していただろうが、往路では見えにくく気づかなかった。)デイミアンにそのことを伝えると、「撮影を見たの?! すぐに映画の撮影だってわかったかい?」と、とても驚いていた。このシーンでフリーウェイを走る車の1台は私かもしれないと二人で笑った。
 

L
オープニングのフリーウェイでのシーン: 2015年9月26日、27日にフリーウェイを閉鎖して撮影された。(The cast of LA LA LAND. Photo Credit: Dale Robinette)

 
さて、この作品を観た人からよく聞かれる質問のうちネタバレにならないものについて、本人たちから聞いた回答をご紹介する。
 

Q: オープニングのフリーウェイのシーンは、ワンショットか?
A:3ショットだとデイミアンが教えてくれた。
 

Q: ライアンのピアノ演奏は、本人によるものか、ダブルによるものか?
A: 手のアップも含めて、映像はライアンが実際にピアノを弾いているところを撮影したものだが、ピアノの音はプロのピアニストが演奏したもの。ライアンは撮影開始前の準備期間に、3カ月ほどレッスンを受け、毎日何時間もピアノを練習したと言っていた。
 

Q: 歌のシーンは、ライブで歌っているところを撮影したものか、それとも事前にスタジオ録音した歌に合わせた口パクか?
A: エマの『Audition (The Fools Who Dream)』と、エマとライアンのデュエット『City of Stars』は、ライブで歌っているところを現場で撮影し、後から歌に伴奏を合わせた。俳優たちが自由に感情を表現して演技できるようにライブで撮影したそうだ。2曲ともアカデミー賞主題歌賞にノミネートされている。ゴールデン・グローブ賞では、『City of Stars』が候補になり受賞を果たした。
 

6_衣装 - コピー

<おまけ>
あまり知られていないトリビア: 映画の最後のほうに出てくる金髪の巻き毛のかわいい男の子の赤ちゃんは、この作品でオスカー候補になっているプロデューサーのジョーダン・ホロウィッツの息子さん、アーサーくん。試写会の後に駐車場の前でジョーダンと立ち話をしていたら、奥さんとアーサーくんが来てびっくり。本物もとてもかわいい。
 

日本では、2月24日の公開に先駆けて、昨夜1月26日にジャパン・プレミアが開催され、デイミアンとライアンが訪日、舞台挨拶をした。デイミアンは本当に優しく、これまでロサンゼルス校留学生にもとてもよくしてくれたし、二人とも時間と状況が許せば、ファン対応してくれる人たちなので、もし会えるチャンスがあったら、話しかけてみてください。
 

──────────────────────────────
『ラ・ラ・ランド』
監督・脚本: デイミアン・チャゼル
製作:フレッド・バーガー、ジョーダン・ホロウィッツ、マーク・プラットほか
音楽: ジャスティン・ハーウィッツ
出演: エマ・ストーン、ライアン・ゴズリング、ジョン・レジェンドほか
アメリカ公開年:2016年
製作国: アメリカ
──────────────────────────────
 

Written by 黒澤 桂子
 

[JVTA発] 今週の1本☆ 1月のテーマ:TRY
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page