4月のテーマ:ひだまり

 
「暇がそいつを作るんや！」

 
当時高校生だった私に、恩師は満面の笑みと明るい声でこう言った。だが、そのとき私は意味を理解できなくてそのままつられて笑うしかなかった。

 
あれから何年も経ったが、未だにこの言葉の意味を理解できている自信がない。休みの日は縁側にできたひだまりの中でよくその言葉について考える。暇なときの過ごし方のことを指しているのか、はたまた「暇」のとらえ方なのか。あのときどういう意味なのか聞けばよかったと今になって思うが、恩師からの一生の宿題なのかなと思うと、「聞かなくてもよかったな」とも思う。こうしていつしか私は暇さえあれば「暇」について考えるようになったのだ。

 
趣味がある人や、やることがたくさんある人は、休日に縁側でこんなことを考えながら、何もしないでぼんやり過ごしている私を、「なんて時間を無駄にしているんだろう」と思うかもしれない。

 
ただ私にとって、この時間は大切だ。たとえ数分間でも、この言葉について考えている間は、自分に向き合っていた時間になる。実はいろいろ考えているんだなと、自分の気づかない一面に気付くことができるのだ。そう、これは完全に自己満足の話である。

 
もし数分でも時間があったら、ぜひ「暇」について考えてみてほしい。自分でも意識していなかった価値観に気づけるかもしれない。もちろん、「そんな時間はない」という意見でもいい。それがあなたの「暇」に対する価値観なのだから。そして、私はこれからもひだまりの中で恩師の言葉の意味を考え続けていくのだろう。

 

Written　by　日比野紅翠

 
[JVTA発] 発見！キラリ☆ 　4月のテーマ:ひだまり
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマをヒントに「キラリ☆と光るヒト・コト・モノ」について綴るリレー・コラム。修了生・受講生にたくさんのヒントや共感を提供しています。

 
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