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[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の1本 『ナミヤ雑貨店の奇蹟』

今週の1本 『ナミヤ雑貨店の奇蹟』
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6月のテーマ:雨

 
毎朝、InterFMを聞きながら雑務をしています。InterFMはもともと外国人向けの外国語放送局でした。今もバイリンガル放送にこだわり、トピックも音楽もとてもグローバルです。静かな早朝に耳から入る情報はTVよりも刺激がなく、まだ半稼働の頭に響く感じがとても心地よい。気付いたら目覚めとともにラジオをONにすることが長年の日課となっていました。そんなわけで寝起きからしばらくは洗面台の前で、ラジオとともにぼーっとしています。半分ラジオを聞きながら、残り半分は頭の中の情報整理(昨日今日これからのこと)をしながら。

 
ある朝、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』の主題歌だという、山下達郎さんの『REBORN』が流れてきました。ちょうど映画公開を控え、プロモーションを強化していた時期だったようです。

 
<生きることを教えてくれた あなたを忘れないよ >

 
台風シーズン真っ只中の、気だるい雨の朝にラジオから突如と流れてきたフレーズは、独特の世界観を放ち、美しい旋律と言葉がじんわりと辺りを包みこみました。半睡半醒の状態から一気に覚醒し、「ナミヤ雑貨店の奇蹟 REBORN」のキーワードですぐさま検索したのを覚えています。すぐに“絶対劇場で観たい”という思いに駆られました。書店で原作を手に入れ、ネットで曲のダウンロードを済ませ、予習は万全、数日後には高まる気持ちを抑え劇場へ向かいました。

 
『ナミヤ雑貨店の奇蹟』は昨年2017年9月に公開。人気ミステリー作家、東野圭吾の同名ベストセラー小説を、西田敏行と山田涼介(Hey! Say! JUMP)の共演で実写映画化されました。過去と現在が繋がる不思議な雑貨店を舞台に、現実に背を向けて生きてきた青年と悩み相談を請け負う雑貨店主を中心に、時空を越え交差する人々の思いと運命が描かれた物語。興収10億円を突破した大ヒット作品で、第41回日本アカデミー賞では優秀作品賞を含む6部門を受賞しています。

 
主題歌の『REBORN』は、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』を映画化するにあたり、原作の中で登場人物が歌う『再生』という曲をぜひ山下さんに具現化してほしい、と制作スタッフがリクエストしたそうです。曲の完成までには1か月半、山下さんは「映画の主題歌の仕事はこれまで何度も担当させていただきましたが、今回はその中でも1、2を争う難しい注文でした」とインタビューで答えています。

 
またこの曲は“死生観”をテーマにしたとも語っています。「人はどこから来てどこへ行くのかという、根源的な問いに思いをはせていただくことで、映画のストーリーと併走し、盛り立てることができるのではと思っています」と話しています。

 
たしかにこの曲を聴いていると、全体を貫いているのは「生と死」というテーマだということがとてもよく伝わってくる。<生きることを教えてくれたあなたを忘れないよ>から始まり、<あなたはいつだって 私のそばにいる>、<触れることは もう叶わない でもいつも感じてる>と続く詞には死、そして<私たちはみんな どこから来たのだろう>、<命の船に乗りどこへと行くのだろう>、<あなたから私へと私は誰かへと 想いを繋ぐために…>と再生すなわち『REBORN』へとつながっていくのです。

 
“魂はかならず誰かの心に引き継がれ、永遠に生き続けることができる”と、山下さんはこの曲を通して伝えました。映画はラジオから伝わってきたあの美しい世界観が音楽と映像で鮮明に描かれ、やはりすばらしかった。曲が流れたとたん、劇場のあちこちから観客の嗚咽が聞こえてきました。

 
山下さんの音楽の才能は至極当然ですが、映画のメッセージを明確に捉え、深く美しく彩った演出の仕方や彼ならではのストーリテリングに脱帽しました。寝ぼけ頭のリスナーを数分で夢中にさせたという事実は、ほかのどんな派手な広告よりも宣伝効果があったといえるでしょう。

 
―― 共感こそが人の気持ちを動かす原動力 ――

 
この曲を聴いた瞬間、私には大好きだった祖父母の顔が自然と浮かんでいました。
 
なつかしい、大切な人を思い出したくなったら、この曲を聞いてみてください。

 
『REBORN』 山下達郎
作詞・作曲 山下達郎
(ワーナーミュージック・ジャパン、2017/9/13)

 

『ナミヤ雑貨店の奇蹟』
監督:廣木隆一
原作:東野圭吾
出演:山田涼介、村上虹郎、寛一郎、西田敏行ほか
製作国:日本
製作年:2017年

 
Written by 中塚真子

 
〔JVTA発] 今週の1本☆ 6月のテーマ:雨
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

 
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