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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第6回 The Americans”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第6回 <strong>“</strong>The Americans”
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今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

 第6回“The Americans” 

“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

 
今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社にその道の才人たちが集結し、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

 

昔々、ロナルド・レーガンが合衆国大統領だったころ…
ワシントンDCの郊外に住むジェニングス一家は、美しい妻、優しい夫、それにティーンエイジャーの娘と息子がいる平凡ながら幸せな家族・・・というのは世を忍ぶ仮の姿。実はこの夫婦、当時のソビエト連邦が誇るKGB(※1)の中でも最高クラスのスリーパー・エージェント(※2)なのだ。
 

(※1) カーゲー・ベー=1991年のソビエト社会主義共和国連邦崩壊まで同国に存在していた諜報機関。ソ連国家保安委員会
(※2)  普段は一般市民等になりすましている諜報部員・スパイ
 

舞台設定は冷戦下の’80年代。エリザベス(ケリー・ラッセル)とフィリップ(マシュー・リス)は、表向きは小さな旅行代理店を経営している。だがハンドラー(※3)からの指令を受けると、色仕掛けによるゆすり、産業スパイ、誘拐、殺人と何でもこなす。
(※3) スリーパー・エージェントに指示を与え、必要な情報や装備を与える調整役
 

2人の結婚は偽装だが、20年以上もアメリカ人夫婦として一緒に暮らしている。子供を育て、危険な任務で互いの命を預け合ううちに愛情も芽生える。共に筋金入りの(ソビエト連邦)愛国者だが、任務がエスカレートして危険度が増すに連れて、このままスパイ稼業を続けるべきなのか思い悩む。何も知らない子供たちの将来はどうなるのか? 秘密を守り通せるのか?
 

さらにジェニングス家の隣に引っ越してくるのが、FBIエージェントのスタン・ビーマン(ノア・エメリッチ)。スタンは有能な諜報担当捜査官で、彼の捜査がいつジェニングス夫婦のオペレーションと交錯するかも見どころだ。
 

がんばれ、KGBエージェント!
このドラマは当初見逃していたのだが、“Entertainment Weekly”での高評価を知って慌ててフォローした。見始めたら、面白くて止められない。最近テロリストものはちょっと食傷気味という人には、’80年代の懐かしさと、過酷なスパイ戦が生み出す緊張感とのブレンドが何とも心地よいだろう。
 

エリザベスとフィリップにとって、互いの想いが募るほど’夫婦’と’仕事のパートナー’との境界線が曖昧になる。この微妙な関係はラブストーリーとしても興味が尽きない。そのうえ、脇を固めるロシア系アクターたちを含めて演技は極上、脚本も史実を巧みに取り入れて良く書きこまれている。
 

おりしも当時はアメリカによるステルス偵察機の開発が本格化していた。成功すると米ソの軍事バランスが決定的に崩れるので、ソビエト連邦としては何としてもこの軍事機密を入手するか、ステルス技術の完成を阻止しなければならない。その任務はエリザベスとフィリップにとって最も困難なものになる。「アメリカに住むKGBエージェントのカップルに思わず声援を送ってしまうドラマ!」と言えば、この知的エンターテインメントの面白さが分かっていただけるだろうか。
 

“We love Keri Russell!”
エリザベス役のケリー・ラッセルは、若き日のJ.J.エイブラムズが手掛けた“Felicity”(1998-2002)のタイトルロールを演じて大ブレークした。当時20代前半だった彼女は、ヘアースタイルを変えただけでアメリカ中が大騒ぎになるほどのアイドルだったのだ。その後は高評価を得た“Waitress”(2007)を経て、才色兼備の超魅力的なアラフォー女優になって、本作で見事2度目のブレークを果たした。

一方、イギリス人のマシュー・リス演じるフィリップは、くせ毛で額は後退気味、背も低く、インパクトが薄い。だがエピソードが進むに連れて、実は頭が切れ、変装の達人で(これも見どころのひとつ)、銃器の扱いや格闘技にも秀でた凄腕のエージェントだということが分かってく来る。リスは日本ではほとんど知られていないが、“Brothers and Sisters”で演じたゲイの弁護士役がアメリカで絶賛された。
 

“クリエーターは元CIAエージェント
2010年、アメリカで実際にロシアのスリーパー・エージェント10人が逮捕される事件が起きた。彼らはロシアなまりの英語しか話せず、フェイスブックで活動を開示するという間抜けぶりで、旧KGBの評判までを落としてしまったという。本作のクリエーターであるジョー・ウェイスバーグは元CIAエージェント。舞台設定をフェイスブックもiPhoneもない自分の現役時代に設定しているので、クラシックな諜報活動が時代遅れに見えないのもいい。
 

本作は“Sons of Anarchy”と同じシンジケート系(非民放系)のFXによる製作で、今年の1月からシーズン3が始まっている。キャッチアップするなら今のうちだ。

 
<今月のおまけ>「心に残るテレビドラマのテーマ」⑤ “Cheers” (1982-1993)

 
 (テッド・ダンソンが演じたバーテンダーのサムは、元レッドソックスのピッチャーという粋な設定だった)

 
写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。

 

 
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