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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
第14回 “POWER”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ<br>  第14回 “POWER”
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今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第14回“POWER”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

‘50 セント’が放つ会心のクライムドラマ!
‘50 セント’はニューヨークで生まれ、ラッパーとして成功する前はドラッグディーラーだった。その後、プロボクシングをプロモート、映画も製作したが、本年7月には破産申請をしている。波乱万丈の人生だ。その‘50 セント’がカーティス・‘50 セント’・ジャクソンの名で、昨年から製作総指揮を務めるクライムドラマが“POWER”だ。(破産しているのにどこから資金が出てくるのか)
ジャクソンは本シリーズのためにヒップな主題歌“Big Rich Town”を提供する一方で、服役中のギャング、ケイナンを自ら演じる。“POWER”は日本ではほとんど紹介されていないようだが、アメリカン・ドラマのファンなら絶対に押さえておきたい。
 

しかもとびきりスタイリッシュ!
マンハッタンで最もホットなナイトクラブ‘Truth’。オーナーのジェイミー・‘ゴースト’・パトリック(オマリ・ハードウィック)は、‘Truth’を使ってドラッグ売買からのあがりをロンダリングしている。ジェイミーは毎晩何百人もの行列ができる自分のクラブの盛況ぶりを見て、企業家としての自信を深める。家族、成功した事業、豪華な暮らし。若いころと違って今の自分には守るべきものがあり、もはやこれらを失うリスクは冒せない。合法的ビジネスへの転換を考える時だ。
 

ある晩ジェイミーは、かつての恋人アンジェラ(リラ・ローレン)と‘Truth’で再会する。アンジェラはヒスパニックの聡明な女性で、当時は弁護士志望だった。二人は愛し合っていたが、チンピラだった黒人のジェイミーには彼女はしょせん高嶺の花だった。今のアンジェラは、以前にもましてとても美しい。
ジェイミーはアンジェラに、今は‘Truth’の経営に専念していると説明する。アンジェラは弁護士資格を取った後、政府関係の仕事をしていると言葉を濁す。
 

二人は再び恋に落ちる。だが隠しごとは嘘を呼び、嘘は次の嘘を生む。
 

ジェイミーの右腕は高校時代からの親友トミー(ジョー・シコラ)だ。トミーはジェイミーが住んでいた貧民街で唯一の白人だったが、ジェイミーとはウマが合った。二人はギャングとして生き延び、ドラッグ売買のネットワークを築いてきた。
 

そんな中、何者かによって彼らのドラッグネットワークが襲撃される。
 

今や堅気のビジネスどころではなく、ジェイミーとトミーは襲撃者への報復に乗り出す。
 

“POWER”は愛と友情、裏切りをベースにしたクラシックなギャングドラマでもある。ストーリーはいたずらにツイストさせることなく良く練られている。しかもアンジェラに嫉妬するジェイミーの妻ターシャ(ナトゥーリ・ノートン)、すべてを暴力で解決しようとするトミー、いつ発覚するのか分からないジェイミーとアンジェラの正体と、プロットのあちこちに‘地雷’が仕掛けられている。ジェイミー、トミー、アンジェラは、常に敵同士になる危険性を秘めているのだ。
 
絢爛たるナイトクラブ‘Truth’、東海岸のミュージック、華麗なファッションに彩られて、“POWER”は最高にセクシーでスタイリッシュなクライムドラマに仕上がった。
 

そのうえ極上の純愛ドラマ!

オマリ・ハードウィックは、失うものが無くしたたかに生きてきた男の強さと、成功して守りに入った男の脆さを併せ持つジェイミーを好演。エミネムを面長にしたような顔立ちのジョー・シコラは、考えるより先に手が出る単細胞のトミー役にぴたりとはまった。(劇中で黒人ディーラーがトミーを馬鹿にして「エミネム」と呼ぶジョークがあってこれには笑った)そして頭が切れてタフ、セクシーで情熱的なアンジェラ役のリラ・ローレンの魅力は圧倒的だ。果たしてこの3人の行きつく先は?
 

正反対の道を歩んできたジェイミーとアンジェラの人生は再び交錯した。再会した瞬間に二人の間ではじけるケミストリーは、目に見えるようだ。だが二人の未来は同じ方向に向かうのか?
 
ストーリーのために恋愛が描かれるのではなく、恋愛がストーリーを走らせる。だから本作はメロドラマではなく、極上の純愛ドラマなのだ!(少し褒め過ぎたか)

 

“ Viewer Discretion Advised!”
製作はHBOと並ぶプライム・ケーブルテレビの大手‘starz’。本国では絶賛を浴び、8月にはシーズン2の放映は終了したが、既にシーズン3の製作が決定している。尚、この作品は良質なドラマだが、‘starz’らしいバイオレンスとセックスシーンも盛りだくさん。まさに“Viewer Discretion Advised!”だ。

 

<今月のおまけ> 「心に残るテレビドラマのテーマ」⑬
 “Equalizer” (1985-1989)


アメリカ版『必殺仕置人』!
 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 
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