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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
第15回 ”Empire”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ<Br>第15回 ”Empire”
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今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第15回“Empire”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社にその道の才人たちが集結し、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

“Empire” = “POWER” + “Scandal” + ”Glee”!
黒人中心のキャスト、ニューヨーク、元ギャング。“Empire”は前回紹介した“POWER”とキーワードが重なる。だが舞台設定は似ていても、“Empire”のテイストはむしろメロドラマの“Scandal”に近く、これに‘music’というマジックが加わる。つまり、“Empire”は“POWER”のようにドキドキし、“Scandal”のようにハラハラし、“Glee”のごとくワクワクする、スーパー・エンターテインメントなのだ!
 

音楽帝国 “Empire Entertainment”
ルシウス・ライオン(テレンス・ハワード)は貧民街育ちのギャングだったが、持って生まれた音楽とビジネスの才能を無駄にはしなかった。ルシウスはヒップホップ・シンガーとして成功し、ドラッグ売買で財を築き、やがて“Empire Entertainment”(以下“Empire”)を設立した。彼の音楽事業は大成功し、今やルシウスの野望は、ニューヨーク市場でEmpireのIPO(※1)を実現することだ。文字通り音楽業界の帝王として君臨するのだ。(ここまでがイントロ)
(※1)“initial public offering”:新規株式公開

 

今、念願のIPOを目前にして、ルシウスは2つの大問題に直面している。まず、彼は筋委縮症で余命3年と宣告された。後継者を決めなければならない。
さらに、元妻のクッキー(タラジ・P・ヘンソン)が出所した。その昔ドラッグ売買が警察沙汰になったとき、彼女はEmpireを守るためにルシウスの代わりに刑務所へ行ったのだった。クッキーはEmpireの権利の半分を要求する。

 

3人の息子と壮絶な家族崩壊劇

Empireを継ぐのは誰か? 長男のアンドレ(トレイ・ベイヤーズ)はウォートンのMBA(※2)を持つ秀才で、EmpireのCFO(※3)だ。だが弟たちのようにミュージシャンとしての才能には恵まれず、コンプレックスに悩む。次男のジャマル(ジャシー・スモレット)はクッキーのお気に入りで天才的シンガーソングライターだが、ゲイゆえに父親から嫌悪される。三男のハキーム(ブリシャー・グレイ)はラッパーとして開花しつつあるが、短気で自信過剰、お世辞にも頭が良いとは言えない。
(※2)ペンシルベニア大学ウォートン校のMBA(経営学修士号)で、ハーバードと並ぶ世界の最高峰
(※3)”chief financial officer”:企業の最高財務責任者

 

ストーリーはルシウスとクッキーの対立を縦軸に、3人の息子たちの成長と葛藤を横軸に展開する。‘ルシウス・ライオン’という最強のブランドを武器に、末っ子ハキームをEmpireのスターとして売り出すエゴ丸出しのルシウス。次男ジャマルを担いで敏腕プロモーターとしての手腕を発揮するクッキー。二人の弟を出し抜いてEmpireをわが物にしようと画策する長男のアンドレ。家族全員がワイルドカードなのだ。さらにライオン家の親族やライバル企業もEmpireの利権を虎視眈々と狙っている。
 

ライオン家はEmpireを取り巻く陰謀、裏切り、嫉妬、誘惑で崩壊寸前だが、根底では‘music’という固い絆で結ばれている。愛するゆえに傷つけ合い、いたわるゆえに憎み合うこの壮絶な家族の物語は、観る者をクギづけにする。
 

名優、新星、名音楽プロデューサーが集結!

ルシウスを演じるテレンス・ハワードは‘ワガママ名優’として誉れ高いが(“Iron Man”も1作で降板)、ミュージシャンでもありCDも出している。クッキー役のタラジ・P・ヘンソンは“Person of Interest”の刑事カーター役でブレークし、本作ではエミー賞とゴールデングローブ賞にノミネートされた。そして特筆すべきはジャマルとハキームを演じるジュシー・スモレット、ブリシャー・グレイのミュージック・パフォーマンスだ。俳優歴の長いスモレットは曲も提供していて、特にバラード系を歌わせると絶品。グレイは本作でアクターとしてデビューしたが、すでにラッパーとしての地位を築いている。
 

音楽担当はアリーヤ、ジャスティン・ティンバーレイク、ビヨンセなどを手掛けたヒップホップの大御所ティンバランド。彼は本シリーズのために新曲を書き下ろす熱の入れようだ。
 

さらにアメリカの音楽業界の舞台裏を覗く楽しみに加えて、本作のビジネスドラマとしての面白さも見逃せない。ドラッグマネーで会社を興し、IPOで資産を一気に増やし、息子をヒット商品に育てて成長戦略を描く。まるでダークサイドのアメリカン・ドリームだ。サラリーマンはドラッカー(※4)を読む前にEmpireを観よう!
(※4)ピーター・ドラッカー:「現代経営学」・「企業マネージメント」の祖
 

製作は民放大手のFOXで、本国では昨年9月にシーズン2がスタートした。日本では「Empire 成功の代償」の邦題でFOXジャパンが放映中だ。(本稿における俳優名・役名の日本語表記はFOXジャパンのホームページに準拠した)
 

“Glee”を初めて観たとき、若手俳優の力量とその音楽的な質の高さに驚愕した人は少なくないだろう。“Empire”においても、同じ驚きと感動が待っている。
 

<今月のおまけ> 「心に残るテレビドラマのテーマ」⑭
 “Spenser for Hire” (1985-1988)


ロバート・B・パーカーの’スペンサー・シリーズ’は、座右の書だ。
 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 
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