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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
第16回 “Mr. Robot”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ<Br>第16回 “Mr. Robot”
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今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第16回“Mr. Robot”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社にその道の才人たちが集結し、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

最高にクールなハイテク・サイコスリラー!
“Mr. Robot”には変身型戦闘ロボットも、攻撃型ドローンも、人類を殲滅しようとする人工知能も登場しない。1980年代のStyxによるヒット曲とも無関係だ。主役は自閉症のハッカーひとり。だが本作は、“Empire”、“Game of Thrones”などの強豪を押さえて、昨年度のゴールデングローブ賞(以下GG賞)テレビドラマ部門の最優秀作品賞に輝いた。これは、今、最高にクールなハイテク・サイコスリラーなのだ!(拍手!)
 

必殺サイバー仕置人!
エリオット・アルダーソン(ラミ・マレック)は自閉症でうつ病、パラノイア(妄想症)で多重人格者、そのうえ薬物依存症だ。スティーブ・ジョブズとFacebookが大嫌い(筆者と似ている)。幼いころに両親を失ったので絶望的なまでに孤独で、夜中にひとりで泣くこともある。ほとんど誰も信用しないが、幼なじみで同僚のアンジェラ(ポーシャ・ダブルディ)、麻薬ディーラーの隣人シャイラ、それに精神科医のクリスタには、少しだけ心を開く。エリオットはサイバースペース上で彼女たちを監視し、守護神となっている(ちょっと気味が悪いが)。彼は自分でしかできないやり方で、世の中を良くしようとしているのだ。このエリオットのキャラは極めつけにユニークで、とんでもなく魅力的だ。

 

エリオットはニューヨークの大手サイバー・セキュリティ会社‘Allsafe’で働いているが、裏の顔は正義の側に立つ天才ハッカー。最高度のハッキング技術だけでなく、データから人間の心理や行動を読み取る特殊能力を持っている。そして目をつけたギャング、小児ポルノ愛好者、詐欺師、重婚者などのスマホやパソコンをハッキングし、個人データを盗み、あるいは改ざんする。悪党たちは理由もわからぬまま投獄されるか、社会的に抹殺される。まさに「必殺サイバー仕置人」だ!

 

謎のハッカー集団 ‘fsociety’

‘Allsafe’最大の顧客は’E Corp’。金融からIT機器、エネルギーまであらゆる事業を牛耳る世界最大のコングロマリット(巨大複合企業)で、世間では‘Evil Corp’と呼ばれている。ある日‘Evil Corp’は、‘fsociety’(エフ・ソサィェティーと読む)と名乗るハッカー集団から怒涛のサイバー攻撃を受ける。間一髪で’Evil Corp’を守ったのはエリオットだった。

 

その直後、エリオットは‘fsociety’の首謀者、‘Mr. Robot’(クリスチャン・スレーター)からヘッドハンティングを受ける。彼らの最終目的は何と「究極的な富の再配分」で、それを手伝って欲しいというのだ!
 

「心理とITの迷宮」にようこそ

眼球が飛び出したような異様な目つき。ヨットパーカを着てフードをかぶるワンパターンの服装。「レインマン」のITバージョンのような振る舞い。それでいて純粋で正義感の強いエリオットを、エジプト系のラミ・マレックはごく自然に演じる。これは凄い。デ・ニーロのようにあざとくなく、エピソードを重ねるごとに味が出てくる。マレックは本役でGG賞主演男優賞にノミネートされた(受賞者は“Mad Men”のジョン・ハム)。
 

一方、助演なのになぜかタイトルロールになっている‘Mr. Robot’を演じるのはクリスチャン・スレーター。この役柄はITの専門家のはずだが、全然そうは見えないのはご愛嬌だ。スレーターは手抜き一歩手前のあっさり演技が持ち味で、枯れた感じが加わった本役でGG賞の助演男優賞をさらっていった。
 

常人にはコンピューターの画面しか見えないが、エリオットには無限に広がるサイバースペースが見える。それは敵も同様だ。派手なアクションも残虐シーンもない本作のストーリーは、水面下でスリリングに進行する。目まぐるしいサイバーワールドを舞台にしながらも、ドラマとしての基本にブレはない。大胆で繊細、斬新で骨太、そして早くもシーズン1の後半で、視聴者は大技を駆使したツイストに絶句する。「心理とITの迷宮」が醸し出すこのワクワク感は新鮮で、“Person of Interest”を古臭く感じさせてしまうほどだ。
 

製作は大ヒット作“SUITS”(第8回を参照)を手掛けるUSA Network。現在本国ではシーズン2を放映中で、日本ではアマゾンが配信している。
 

蛇足だが、クリスチャン・スレーターは、タランティーノが脚本を書いた純愛アクション「トゥルー・ロマンス」(’93)や正統派ラブストーリー「マンハッタン花物語」(’95、“Bed of Roses”)で一世を風靡した。ところが、彼が’93年にマリサ・トメイと共演した究極のお涙ちょうだいラブストーリー「忘れられない人」(“Untamed Heart”)はほとんど知られていない。日本では2週間で上映が打ち切られたが、観客全員が泣いたとの噂だった。筆者も試しに観たが、あまりの切なさに涙が止まらなかった。(どうでもいいか。)
 

<今月のおまけ> 「心に残るテレビドラマのテーマ」⑮
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この曲を聴くと暴力の香りに血が沸き立つ。危ないドラマだった。
 

写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 
 
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