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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第19回 “Better Call Saul”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第19回 “Better Call Saul”
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今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第19回“Better Call Saul”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

“Breaking Bad”からの愛すべき“spin-off & prequel”!
テレビ史上最高のクライムドラマとの誉れ高い“Breaking Bad”(以下“BrBa”)。その中でも極めつけの脇役が、スリックな悪徳弁護士ソウル・グッドマン(ボブ・オデンカーク)と、麻薬王の片腕マイク・エルマントラウト(ジョナサン・バンクス)だ。“Better Call Saul”は、この2人の生い立ちと過去を描く “BrBa“からの“spin-off”であり、同時に“prequel”(前日譚)なのだ!
 

‘オマハのシナボン’で幕を開けるクライムドラマ
“BrBa”の後半で、ソウルは「おれの行く末はせいぜいオマハでシナボンの店長さ」と嘆いていたが、嬉しいことに、本作はまさにそのシーンから始まる。ようやくシナモンロール漬けの一日を終えたソウルは、帰宅するとグラスに酒を注ぐ。そして自分の人生がどこで狂い始めたのか回想し始める。

 

舞台は“BrBa”から遡ること数年のニューメキシコ州アルバカーキ。ソウルの本名はジミー・マッギルで、若いころはしけた詐欺師だったが、現在はさえない弁護士だ。ジミーは精神障害のある兄のチャック(マイケル・マッキーン)の面倒をみながら、もうからない国選弁護人を引き受け、介護施設のお年寄り相手に遺言状を作成して何とか生計を立てている。だが薄氷を踏みつけるような仕事ぶりなので、メキシカン・ギャングに脅されたり、会計士一家の横領事件に巻き込まれたりと、トラブルが尽きない。

 

マイク・エルマントラウトは、ジミーがよく行く裁判所の駐車場係だ。老境だが強面の元刑事で、お調子者のジミーとはウマが合わない。警官だった息子は殉職し、今は残された孫娘に会うのが唯一の楽しみだ。
 

序盤は、口八丁手八丁で難局を乗り切ろうとする弁護士と、枯れた老人となった元刑事による、ペーソスあふれる苦労話だ。だが“BrBa”のクリエーターでもあるヴィンス・ギリガンのストーリーが、こんなヤワな調子で続くはずもない。
 

やがてジミーは倫理観に変化をきたし、弁護士のダークサイドに踏み込んで行く。
さらにマイクの悲劇的な過去がフラッシュバックで描かれ、本作はクライムドラマとしても始動する。
 

そして“Breaking Bad”へ

“BrBa”は迫真のクライムドラマだが、ちょっとした笑いが凄まじいスリルによってとてつもなく増幅される、稀有なブラックコメディでもある。ブライアン・クランストンが演じた主役のウォルター・ホワイトは、癌で余命いくばくもない化学の高校教師。残される家族のためにひと財産築こうと、せっせと最高純度のメタンフェタミン(覚醒剤)の密造を始める。そこで描かれたのは、家族思いゆえに犯罪者にならざるを得なかった男が、悪の才能を開花させ、破滅に向かって突き進む壮絶な人生だった。
 

そんなウォルターを悪知恵でサポートした弁護士が、ジミー・マッギル=ソウル・グッドマンなのだ。

 

“Better Call Saul”は、“BrBa”に比べて笑いの度合いが高い。これはジミーとウォルターの性格設定の違いによるものだが、その笑いとスリルのサジ加減が絶妙だ。
頭の回転が速く、犯罪者としての資質もあるが根は善人なジミーは、すぐに悪徳弁護士に変貌するわけではない。いつ、なぜ、ジミー・マッギルはソウル・グッドマンになったのか、今後の展開から目が離せない。

 

一方、息子の死をきっかけにすべてを割りきったマイクは、着々とスーパークールな犯罪者としてのキャリアを築いていく。
 

ジミーとマイクはどちらも愛さずにはいられないキャラクターだ。そして二人の人生が交錯し利害が一致した瞬間に、ウォルター・ホワイトとの出会いが運命づけられる。“BrBa”への長い道のりが始まるのだ。
 

ジミーを演じるボブ・オデンカークは、ユニークという言葉の範疇を突き抜けたうさん臭い弁護士役をアートの域にまで高めた。本作でエミー賞主演男優賞候補にノミネートされたが、過去には“Saturday Night Live”のライターとして2度同賞の脚本賞を受賞している才人でもある。
 

マイク役のジョナサン・バンクスも、本作で3度目の助演男優賞ノミネートを受けた大ベテラン。シーズン1では、息子の死に関する真相を語るエピソード “Five-O”(「警官」)における演技が感動的で忘れ難い。
 

その他にもジミーが想いを寄せる元同僚の弁護士キム(レイ・シーホーン)、メキシカン・ギャングのナチョ(マイケル・マンド)などが脇役としていい味を出している。
 

放映は“BrBa”、“The Walking Dead”、“Mad Men”とヒット作を連発するケーブル系のAMC(元々はクラシック映画の専門局)で、既にシーズン3の製作も決定している。日本ではNetflixなどで観ることができる。ヴィンス・ギリガンが仕掛けた“spin-off & prequel”というアイディアは気が効いていて、“BrBa”を観たことがない人でも楽しめる構成になっている。
早い話が、どちらも観ないと絶対損なのだ!
 

<今月のおまけ> 「ソウル・グッドマン弁護士事務所のウェブサイト」
http://www.amc.com/shows/better-call-saul/saul-goodman-esq/
中央画面左上の一分間動画 “SUE ’EM NOW”が笑える!

 
写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 
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http://www.jvta.net/blog/5724/

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