News
NEWS
“Viewer Discretion Advised!”inBLG

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第31回 “Sneaky Pete”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第31回 “Sneaky Pete”
Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第31回“Sneaky Pete”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社にその道の才人たちが集結し、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 

愉快、痛快、爽快なコンゲーム・ドラマ!
騙し合いや意外な結末が楽しめる映画・ドラマは珍しくない。だが、純粋なコンゲーム(詐欺)をテーマにした傑作となると、『テキサスの5人の仲間』(’66)と『スティング』(’73)くらいだろう。(『オーシャンズ11』はコンゲーム・ドラマではなく傑作でもない)
そこへ登場したのが“Sneaky Pete”。シリーズの冒頭からエンディングまで、クールでスリックな仕掛けとトリック満載の、愉快、痛快、爽快なコンゲーム・ドラマだ!

 

First Rule: “Don’t get attached”
天才詐欺師のマリウス(ジョバンニ・リビシ)は、3年間の刑期を終えて出所するところだ。マリウスは以前NYでカジノを経営するギャングのヴィンス(ブライアン・クランストン)と問題を起こし、手ひどく痛めつけられ、借金を背負い、命も狙われている。
マリウスはヴィンスへの復讐を誓っていた。昔の詐欺師仲間を集めて、ムショ暮らしの間に練りに練ったスキーム“The Turk”を実行する時が来たのだ。

 

だが、狡猾なヴィンスは先手を打つ。マリウスの弟エディを人質に取り、弟の命と引き換えに借金の即時返済を迫ってきたのだ。マリウスはヴィンスから逃れながら、1週間以内に10万ドルを工面しなければならなくなった。

 
マリウスは刑務所で同年代のピートと親友だった。ピートは両親を交通事故で亡くした後、20年以上も祖父母や親戚に会っていないと言っていた。その祖父母オットーとオードリーは、NY近郊の小さな町で保釈金立替業(bail bond)を営んでいる。幸いピートは自分とよく似た背格好だ。
マリウスはピートになりすまして帰省し、祖父母の稼業を手伝うようになる。事務所の金庫には、保釈金用の現金や担保の宝石が眠っているはずだ。

 

もちろん現実はそううまくは行かない。祖父母の商売は火の車で、ピートの兄はよりによって地元の警官、勘の鋭い妹からは正体を疑われ、祖母は言動が怪しい。おまけにヴィンスの息がかかったNYの刑事も迫ってくる。
マリウスは口八丁手八丁で何とかその場を切り抜けるが、ひとつ問題を解決すると新たな難問が持ち上がる。

 

その上、マリウスの胸中に詐欺師としては致命的な変化が生じる。生まれて初めて家庭の温かさに触れて、これまで厳守してきた自らのルール、“Don’t get attached”(「情にほだされるな」)を破ったのだ。マリウスはピートの家族のトラブルを解決し、エディの身代金10万ドルを捻出し、ヴィンスへの復讐を遂げるという途方もないミッションを背負ってしまった!

 

魅惑の詐欺スキーム!
マリウスが繰り出す華麗なスリのテクニック、カードトリックは本作の魅力の一つだ。さらに贅沢なことに、“Spanish prisoner”、 “Salting”などのクラシックな詐欺の手口がサイドストーリーとして展開する。

 

エピソード構成も秀逸だ。全10話から成るシーズン1は、1話から7話まではマリウスが次第に抜き差しならない破目に陥るプロセスがコメディタッチで描かれるが、8話からはスリリングな展開へ一変する。大仕掛けの詐欺スキーム“The Turk”が始動するのだ。
ストーリーはよく練られ、複雑な人間関係は整理され、脚本には伏線が注意深く張りめぐらされている。ツイストの効いた鮮やかなエンディングを予測することは不可能だ!

 
ジョバンニ・リビジ、一世一代の大役

マリウス役のジョバンニ・リビジは、「泣きそうな大人子供顔の性格俳優」で、『テッド』、『テッド2』の誘拐犯ドニー役が記憶に新しい。これまで脇役専門だったが、本作では、腕もいいし度胸もあるがなぜか悪運に見舞われる詐欺の天才を、貧相な顔をゆがめながらみごとに演じて見せた。

 

“Breaking Bad”のウォルター・ホワイト役でエミー賞を4つも獲ったブライアン・クランストンは、本作の企画・製作総指揮を行い、ノンクレジットながら極悪非道で悪賢いヴィンスを楽しそうに演じている。貫録だね。
 

ピートの祖父母オットーとオードリーを演じたピーター・ゲレッティとマーゴ・マーティンデイルは、本作のハートだ。二人はコンゲーム・ドラマの中に、家族愛と夫婦愛まで成立させてしまった。
他にもマリウスの元妻とその夫、詐欺師仲間、ピートの兄妹、ヴィンスの子分たちなど、脇役陣の端々にまで血が通っているので、ドラマに活気がみなぎっている。

 

本作のパイロット・エピソードは2015年に作成されたものの、民放大手のCBSがシリーズ化をキャンセル。これを救ったのがAmazonで、本年1月にめでたく配信を開始してくれた(感謝!)。シーズン1のラストでは、またまたマリウスが直面する超難題が提示され、シーズン2がどうしても今すぐ観たい!(子供か)

 

<今月のおまけ> 「ベスト・オブ・クール・ムービー・ソングズ」 ⑪
Title: “Urami Bushi (My Grudge Blues)”
Artist: Meiko Kaji
Movie: “Kill Bill: Volume 2” (2004)


この英訳詞は名人芸だ!

 

 
写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 
 

 
◆バックナンバーはこちら
http://www.jvta.net/blog/5724/

Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page