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明けの明星が輝く空に 第105回 特撮俳優列伝13 浜美枝

明けの明星が輝く空に  第105回  特撮俳優列伝13 浜美枝
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【最近の私】9月、ある自転車のイベントが開かれる裏磐梯に、参加者が集まる小さな宿がある。僕がお世話になったのは3年目。常連客ともすっかり顔なじみになった。大会後、みんな戻ってきてランチを囲みながら、「ことしの記録は・・・」なんて話で盛り上がる。最高に楽しい週末だった。

 
浜美枝さんは、前回紹介した若林映子さん同様、和製ボンドガールである。『007は二度死ぬ』に出演する7年前、1960年に16歳でデビューし、90年代に入って女優業を離れるまで、80本を超える映画に出演した。その中に2本だけ特撮映画が含まれていることを、皆さんはご存じだろうか。

 
1本目は、コングが日本の怪獣王ゴジラと激突するというエポックメイキング的な作品『キングコング対ゴジラ』(1962年)である。浜さんは、主役のテレビ局員・桜井修(高島忠夫)の妹・ふみ子役で出演。映画後半には、コングにさらわれてしまう。そう、浜さんは、コングにさらわれるヒロインを演じた、唯一の日本人女優なのだ。

 
残念なのは、ふみ子がさらわれたのが単なる偶然だったことと、あまりドラマチックな展開もなく救い出されたことだ。もし、コングが彼女に何らかの“想い”を持ち合わせていたら、あるいは救出される前にゴジラとコングが対峙するような状況になっていたら、ふみ子の存在感はぐっと増し、浜さんの見せ場も多くなっていただろう。しかし実際は、映画に華を添えるといった立ち位置から大きく抜け出しておらず、人物像もごくごく普通の“お嬢さん”でしかなかった。

 
ふみ子と対照的な役を演じたのが、もう1本の出演作品、『キングコングの逆襲』(1967年)だ。コングのライバルとなるロボット、メカニコングが登場することで人気の作品であるが、主演の一人に、ショーン・コネリー似のアメリカ人俳優を起用したり、ドクター・フーという悪の科学者が登場したりと、007シリーズを意識して作られたのが明らかだった。ちなみに映画公開は、『007は二度死ぬ』から、ほんの一カ月後のことである。浜さんの役は、某国の密命を帯びたエージェント、マダム・ピラニアで、ドクター・フー(天本英世)の協力を得て、北極に眠る放射性物質を手に入れようと暗躍する。役名のセンスはさておき、浜さんの悪役姿が観られるという点で、貴重な作品であろう。(「死神博士」で有名な天本英世さんについては、本ブログの第91回『特撮俳優列伝5 天本英世』http://www.jvta.net/co/akenomyojo91/をご参照ください)

 
どちらかといえば童顔の浜さんは、外見上、悪女的要素が皆無だが、それでも本作で醸し出す冷徹な雰囲気は堂に入っており、登場してすぐに悪役だなと観る者に悟らせる。さすが女優である。『キングコング対ゴジラ』のふみ子とは、全くの別人だ。しかも、マダム・ピラニアは、凛とした気品さえ感じられ、悪役であっても魅力的だ。これも、演技力によるものだろうか。それとも、ふみ子を演じたときから5年たち、一人の女性としても成長した浜さんが、自然と身に付けたものだろうか。

 
そんな浜さんの、この映画における見せ場の一つは、国連の調査隊を率いる(ショーン・コネリー似の)ネルソン司令官を仲間に引き入れようとする場面だ。黒いドレス姿で洋酒を勧めるマダム・ピラニアは、微笑みを浮かべ、たおやかな立ち居振る舞いを見せる。007シリーズにありそうな場面だが、あからさまな色仕掛けはない。それでも、指先の使い方にまで色気をにじませるあたり、細部にまで気を配った演技は注目に値しよう。

 
マダム・ピラニアは映画終盤、計画が破たんしたことを知り、拘束されていたネルソンらを解放する。その際、一緒に逃げるよう説得されるが、祖国に忠誠を誓い、その手足となる生き方を選んだ彼女は、申し出を断った。その後、ドクター・フーに射殺されてしまうのだが、直後のカットで東京タワーから落下し、バラバラになって爆発するメカニコングの最後が映し出される。上からの指令によって動き、自分の身を犠牲にするという点で共通する両者。そこには、この映画に込められたテーマの一つが垣間見える。

 
マダム・ピラニアは、単なる悪役ではない。むしろ、ほかのどの登場人物よりもドラマチックな運命を背負っており、真の主役と言ってもいい。その悲劇的な生き方は、気品のある姿とともにファンの心に刻み込まれ、彼女を演じた浜さんは、特撮映画史に確かな足跡を残すこととなった。和製ボンドガールには、そんな一面もあったのである。

 

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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る

 
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