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明けの明星が輝く空に 第71回 満田かずほ監督50周年!

明けの明星が輝く空に  第71回 満田かずほ監督50周年!
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【最近の私】ずっと、ほっぽらかしにしていたツイッターを再開。このブログ専用のアカウント(https://twitter.com/JEETAKA)としました。特撮ネタだけ呟ける幸せをかみしめています。
 

年も暮れていこうという11月になって初めて、今年は満田かずほ(※)監督のデビュー50周年だということを知った。満田監督は、主にウルトラシリーズの初期に監督として作品を送り出し、名作との呼び声の高い『ウルトラセブン』最終話でもメガホンを取っている。
 

※「かずほ」は「禾」に「斉」と書きますが、PC上のフォントにないため、ひらがなにしています。
 

『ウルトラセブン』を思い出すとき、僕の胸には決まって感傷的な気分が静かに広がる。その心情を辿っていった先にあるのが、最終話『史上最大の侵略』前後編(第48話、第49話)だ(当ブログ第50回『ダンはきっと帰ってくる』http://jvtacademy.com/blog/co/star/2014/03/50.php 参照)。主人公のモロボシ・ダンは最後の戦いに挑む前、ヒロインであるアンヌに、自分は地球人ではなくウルトラセブンだと告白する。それでもアンヌは、ダンをダンとして、つまり地球人か宇宙人かという枠を超えた、たった一つの人格として受け入れる。愛の告白にも似た会話が交わされるこのシーンのおかげで、アンヌは特撮史上、最も愛されるヒロインになった。しかし、満田監督でなければ、話は違っていたかもしれない。というのも、番組の企画書にはもともと、ダンとアンヌの淡いラブロマンスを盛り込むことが明記されていたのに、満田監督以外はその要素をなぜか取り入れなかったからだ。
 

最終話以外にも、ダンとアンヌのロマンスを感じさせるシーンがある。例えば第28話『700キロを突っ走れ!』だ。物語の冒頭で、二人は映画を見た後に遊園地でデートしている。また第41話『水中からの挑戦』では、ダンが上機嫌で運転するモーターボートの助手席にアンヌが座り、二人で気持ちよさげに風を受けているし、第42話『ノンマルトの使者』(当ブログ第4回『人類の正体』http://jvtacademy.com/blog/co/star/2010/06/ 参照)では海水浴にも行っている。いずれも、手がけているのは満田監督だ。
 

ロマンスを描くなら、ヒロインは魅力的でなければならない。『ノンマルトの使者』には、古い映画を思い起こさせるような映像で、アンヌのアップを捉えた場面がある。そのカットだけ見ると、まるで昔の文芸映画か何かのようだ。そこには、アンヌを魅力的に描こうという思いが感じられる。
 

アンヌというヒロインへの思い入れからか、満田監督はそれを演じた女優に対し、厳しさを見せる一面もあった。アンヌ役の菱見百合子(現ひし美ゆり子)さん御本人の回想によると、満田監督はプロの女優としての自覚が足りない彼女に腹を立て、登場場面を削ってしまったそうだ。アンヌというヒロインをしっかり演じてもらわなければ困る、というメッセージだったのだろう。
 

満田監督については、他にもいろいろ書きたいことがあるのだが、『ノンマルトの使者』に絞って、あと一つだけ触れておこう。それは、工夫を凝らした演出が垣間見える場面についてだ。監督はCGのない時代に、人が突然、姿を現す様を見事に表現してみせた。以下に記すそのシーンの概略を、映像を想像しながら読んでいただきたい。
 

まず、無人の海岸に立つダンが、サングラスに似た形状の変身アイテム、ウルトラアイを取り出す。この時、カメラがとらえているのは、横から見たダンの姿だ。次にダンの斜め後ろからの映像に切り替わる。そこには、腕を伸ばしてウルトラアイを掲げるダンと、その前方に立っている少年の姿。このカットに変わった直後、カメラが素早く少年にズームインして、その姿が迫ってくるように大きくなる。そして再びカットが変わり、ダンの驚いた表情がアップで映し出される。
 

この映像は、カット割りやカメラワークに加え、ダンの驚いた表情など、さまざまな要素を絡めて一つの効果を生み出している。その手法の巧みさに、「これぞアナログ時代の面白さ」と思わずにはいられない。
 

CGを使えば、人が突然現れる映像など簡単にできてしまうだろう。それはスタッフの人数や撮影時間はもちろん、視覚効果という観点からも優れた方法なのかもしれない。ただ、簡単に済ませられる作業は、頭をあまり使わなくて済む分、機械的な工程を繰り返すだけになりがちだ。誰がやっても、画一的なものができてしまう危険性を含んでいる。一方、頭を働かせ工夫を凝らそうとすれば、時間はかかるが独自性の高いものが生まれやすい。また、スタッフとしての腕の見せ所にもなる。仕事としての面白さという点に限っていえば、どちらが上かは言うまでもないだろう。
 

満田監督は現在、ウルトラシリーズ関連のイベントなどに出演し、撮影当時のエピソードなどを聞かせてくれている。11月には、ご本人の50周年記念上映会に出席し、トークショーを行ったそうだ。ウルトラ黄金期を知る貴重な語り部として、いつまでもお話を聞かせていただけたらと思う。どうぞ、これからもお元気で!
 

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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る

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