News
NEWS
明けの明星が輝く空にinCO

明けの明星が輝く空に 第78回  M78星雲

明けの明星が輝く空に 第78回  M78星雲
Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page

【最近の私】テレビで「若見え」という言葉を聞いて、「なんじゃそりゃ?」と思った。調べてみたら、ネット上ではフツーに使われている。中には「若見えが止まらない」なんてのも! 自分の中の“正しい言葉”と世の中とのギャップに、折り合いをつけるのは難しい。
 

当ブログ「明けの明星が輝く空に」も、おかげさまで7年目に突入し、今回が78回目。そこで今回は、ウルトラマンたちの故郷、M78星雲にちなんだお話をしようと思う。
 

僕は、「M78星雲」という言葉に、特別な思い入れがある。その理由は、『ウルトラセブン』の最終回(当ブログ第50回「ダンはきっと帰ってくる」http://jvtacademy.com/blog/co/star/2014/03/50.php 参照)のセリフに出てきた言葉だからだ。主人公のダンがヒロインに向かい、「アンヌ、僕はね、人間じゃないんだ。M78星雲から来たウルトラセブンなんだ」と言って別れを告げる。驚くアンヌにシューマンのピアノ協奏曲が流れ、最後の敵を倒したセブンは、明けの明星が輝く空へ一筋の光となって飛んでいった。お恥ずかしい話だが、僕はこの最終回を涙なしに見ることができない。いま、この短い文章を書いているだけでも、胸がいっぱいになってしまうほどだ。
 

「M78星雲」という言葉が使われたのは、『ウルトラセブン』が初めてではない。ウルトラマンシリーズ1作目『ウルトラマン』の第1話(「ウルトラ作戦第一号」)で、僕らの前に姿を見せた銀色の巨人は、主人公ハヤタに「私はM78星雲の宇宙人だ」と告げている。当時から『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』の世界につながりはなかったが、どちらのヒーローも同じM78星雲出身だという設定が、その後のシリーズ発展に大きく関わることとなった。つまりウルトラ兄弟の“始まり”である。
 

ウルトラ兄弟とは、地球のために戦ったウルトラ戦士たちの呼称で、血のつながりはない。発祥のきっかけは、シリーズ3作目『帰ってきたウルトラマン』にあった。第18話「ウルトラセブン参上!」で、タイトル通りウルトラセブンが登場したのだ。さらに、第37話「ウルトラマン 夕陽に死す」と、続く第38話「ウルトラの星 光るとき」では、初代マンとセブンの共演が実現。彼らの人間体であるハヤタとダンが握手するという、ファンにとっては涙ものの場面がお茶の間に流れた。
 

そしてシリーズ4作目『ウルトラマンA』は、第1話のタイトルがズバリ「輝け!ウルトラ五兄弟」である。いかに制作側が、ウルトラ兄弟を視聴者にアピールしようとしていたかが窺えるタイトルだ。その後、第5話「大蟻超獣対ウルトラ兄弟」、第14話「銀河に散った5つの星」、第26話「全滅!ウルトラ5兄弟」など数回に渡り、ウルトラ兄弟が活躍する姿が描かれた。僕にとって思い出深いのは、ウルトラ兄弟の“長兄”、ゾフィーの存在だ。シリーズ1作目『ウルトラマン』で最終話だけに登場した、もう一人のウルトラマンで、彼をウルトラ兄弟の長兄とすることで、5人兄弟ということになった。
 

それまでのゾフィーは、はっきり言って端役に過ぎなかった。しかし、『ウルトラマンA』で、ウルトラマンたちが所属する宇宙警備隊の隊長という設定を与えられ、一気に存在感がアップする。彼の放つ光線技は、兄弟のなかでも最大の威力を誇るという情報も出てきて、なかば伝説的な存在になった。ウルトラ兄弟という設定がなければ、ゾフィーが子どもたちの人気者になることもなかっただろう。
 

『ウルトラマンA』には、ウルトラ兄弟だけでなく、ウルトラの父も登場した。彼も血縁上の家族ではなく、象徴的存在としての“父”であった。それがシリーズ5作目『ウルトラマンタロウ』では、タロウの実父ということになり、タロウの母親=ウルトラの母までブラウン管に登場することとなる。これには、ファミリー路線を強く打ち出そうという、円谷プロダクションの戦略があったようだ。さらに、『ウルトラマンタロウ』では、M78星雲にあるウルトラマンたちの生まれ故郷、ウルトラの国の様子が初めて映像化され、ウルトラマンたちや、彼らの住む世界が、身近に感じられるようになっていったのである。
 

ただし、こうして視聴者が彼らに親近感を覚えることによって、初代ウルトラマンらが持っていた神秘性も薄れていってしまった。これを残念がる声もあるが、シリーズが長く続けば、新たな設定や、路線変更は避けられない。同じことをやっていては、視聴者に飽きられてしまうからだ。そこには、なんとかシリーズの盛り上がりを維持していこうとする、制作サイドの努力が窺える。
 

ちなみに、上でも触れたゾフィーの光線技は、M87光線という名前が与えられている。なぜ“78”ではなく“87”なのかというと、本来ウルトラマンの故郷の設定がM87星雲だったからだという。しかし、企画書か何かの誤記で“78”になってしまったため、後年、ゾフィーの光線技にその名前を復活させたらしい。おかげで僕は、M78星雲とM87光線を長い間混同してしまい、いつまでたってもちゃんと覚えられなかったのである。
 

—————————————————————————————–
Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
—————————————————————————————–
 

明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る

Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page