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明けの明星が輝く空に 第83回 ウルトラな一日パート2

明けの明星が輝く空に 第83回 ウルトラな一日パート2
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【最近の私】訳しにくいといえば、“character” もそうだ。サッカーチームなどの監督が選手をほめるとき、“They’ve got character.”
と言ったりする。皆さんなら、どう訳すだろうか。

 

当ブログの第79回『ウルトラな一日パート1』(https://www.jvta.net/co/akenomyojo79/)から間が空いてしまったが、今回はその続編として、7月9日の夜に放送された『NHK BSプレミアムの『祝ウルトラマン50 乱入LIVE! 怪獣大感謝祭』について雑感を述べたい。
 

その前に、番組について、ざっと説明しておこう。今年7月10日は、ウルトラシリーズ放送開始からちょうど50年にあたる。これを記念して、人気怪獣(星人を含む)と人気エピソードの、それぞれナンバーワンを一般投票で決定するという内容だった。候補となったのは、ウルトラシリーズ1作目『ウルトラQ』(1966年) から7作目の『ウルトラマンレオ』(1974年)までだ。
 

まず怪獣部門であるが、これはあらかじめネット上の投票で決定したトップ8がトーナメント形式で対戦し、視聴者の投票でナンバーワンを決めるというもの。ここで注目したいのは、選ばれた8体の顔ぶれだ。優勝したゴモラ、惜しくも2位に甘んじたバルタン星人など、シリーズ2作目『ウルトラマン』から4体、3作目『ウルトラセブン』から3体、つまりほとんどがこの2作品から選ばれていたのだ。
 

『ウルトラマン』と『ウルトラセブン』の怪獣に人気が集中したのは、彫刻家、成田亨氏による独創的なデザインのおかげだろう。彼が考え出した怪獣たちは、みな非常にユニークで、実在の生物などをモチーフにしてはいるが、言われてみなければそうとは気づかない。ゴジラ映画の怪獣たちが「平凡」に見えてしまうほど、異彩を放つ姿だった。
 

成田氏の言葉で、強く印象に残ったものがある。2012年の『館長 庵野秀明 特撮博物館 ミニチュアで見る昭和平成の技』(関連記事、当ブログ第32回「失われゆく(?)技」http://jvtacademy.com/blog/co/star/2012/08/参照)で紹介されていたのだが、「画家や彫刻家は自己発見のため自分と闘い、とにかく本質に迫ろうとする」とする一方、「デザイナーは産業のために存在し、自己探求より他者の目を気にする」と評する。さらにデザイナーについては、「形の厳しさを知らないから、ウルトラマンに角を増やしたりする」と手厳しい。角の生えたウルトラマンとは、ウルトラの父やウルトラマンタロウのことだ。成田氏がデザインしたウルトラマンのマスクは、シンプルな直線と曲線の中に、なんとも言えない美しさを秘めている。そう思ってからウルトラの父をあらためて見てみると、確かにあの太すぎるほどの角は、まったくもって余計だとしか言いようがない。
 

話を『祝ウルトラマン50 乱入LIVE! 怪獣大感謝祭』に戻そう。人気エピソード部門のトップ10であるが、こちらは『ウルトラセブン』から4作品が選ばれた。そのうち2作品は、堂々の1位と3位である。かねてからファンの間でシリーズ最高傑作と言われていた『ウルトラセブン』だが、その人気の高さを裏付ける結果となった。ちなみにセブン以外では、『ウルトラマン』と『帰ってきたウルトラマン』(シリーズ4作目)から2作品ずつ、『ウルトラマンタロウ』(シリーズ6作目)と『ウルトラマンレオ』から1作品ずつがトップ10入りとなった。
 

この「最高傑作」という評価は、大人になったファンによるものだ。言い換えれば、大人になったからこそ良さが分かる作品だと言ってもいい。今回1位に選ばれたのは、『ウルトラセブン』の最終回、『史上最大の侵略(後編)』であるが、多くのファンの心に残るのは、主人公のダンが最後の戦いに臨む前、ヒロインに正体を告げるシーンだ(当ブログ 第50回「ダンはきっと帰ってくる」 参照http://jvtacademy.com/blog/co/star/2014/03/50.php)。そこで交わされた言葉から読み取れる2人の心情など、子供には察することなど到底できるものではない。また3位の『狙われた街』は、メトロン星人とダンがちゃぶ台越しに対峙したり、シルエットを効果的に使うなど実相寺昭雄監督による斬新、かつシュールな演出(実相寺監督については、当ブログ第7回「画面の中の舞台」http://jvtacademy.com/blog/co/star/2010/09/post-6.php、第8回「実相寺監督のシルエット」http://jvtacademy.com/blog/co/star/2010/09/post-7.php 参照)が人気だが、そういった遊び心のようなものも大人だからこそ理解できるものだろう。さらにこのエピソードは、皮肉を利かせたナレーションが秀逸だ。物語を締めくくったその言葉は、「人間同士の信頼関係を利用するとは、恐るべき宇宙人です。でも、ご安心ください。これは、遠い、遠い未来の物語なのです。え?なぜですって?我々人類は今、宇宙人に狙われるほど、お互いを信頼してはいませんから」だった。
 

ウルトラシリーズは、今も続いている。僕は平成以降のウルトラマンをほとんど観ていないが、シリーズ初期の制作者たちの魂は、果たして受け継がれているだろうか。今、テレビの前でウルトラマンの活躍や怪獣の姿に胸を躍らせている子どもたちが、将来、「いい作品だった」と振り返れることを祈りたい。
 

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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る

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