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明けの明星が輝く空に 第84回 干支と特撮:トリ

明けの明星が輝く空に 第84回 干支と特撮:トリ
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【最近の私】『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』で嬉しかったのは、ターキン総督が見られたこと。後ろ姿だけで彼だと分かった自分を、褒めてあげたい。レイア姫役のC・フィッシャーさんのご冥福をお祈りいたします。
 

今年は酉年だが、トリの怪獣で真っ先に思い浮かぶのは、『ウルトラQ』の第1話「ゴメスを倒せ!」に登場した古代の怪鳥リトラだ。以前、このブログの第69回『ジュラシック・ワールドを見て思い出すこと』(http://www.jvta.net/?p=8999)で、少しだけ触れたことがある。劇中「姿は優しく美しい」と語られるリトラだが、凶暴な古代怪獣ゴメスの天敵で、両者は時を同じくして現代に復活した。実は、ゴメスの着ぐるみは怪獣王ゴジラのものを改造して作られており、ふてぶてしい面構えと、どっしりした重量感で、大怪獣としての威厳がある。それに対するリトラは、ゴメスの半分ほどの大きさしかない。それでもゴメスを倒し、その直後に力尽きて絶命する姿は感動的で、僕にとって文字通り忘れられない場面となった。
 

このときリトラは、ゴメスの上に折り重なるようにして息絶えたのであるが、もしそうでなければ、「忘れられない」ほどの感動はなかったかもしれない。戦った敵同士が重なり合って倒れている姿は、なぜか胸を打つものがある。思うに、そこには勝者も敗者もなく、むなしい思いが湧き上がってくる上、互いが重なり合うことで敵味方という意識が希薄になり、ただ純粋に命が失われた悲しみが残るからではないだろうか。
 

『ウルトラQ』ではほかに、第12話「鳥を見た」にも怪鳥が登場する。とある動物園で、一人の飼育員が倒れた状態で発見された。彼は、「鳥を見た」という一言を残し、こと切れてしまう。同じころ、ある漁村では、古い船が流れ着いた。無人の船内に入ると、どこからともなく白い小鳥が現われる。その瞬間、船が大きく揺れ始め、人々が脱出したあとに沈んでしまった。後日、船から持ち帰った航海日誌を調べると、日付は1000年近く前のもので、最後に「鳥を見た」と書かれていた。
 

ミステリー風の導入部とは対照的に、このあと漁村の少年・三郎と、船内にいた小鳥の心温まる交流が描かれる。初期ウルトラシリーズは、昭和の少年たちの牧歌的な日常を描くことが少なくなかったが、「鳥を見た」もそんな作品の一つだ。周囲に親しい大人もおらず孤独な三郎は、小鳥をクロウと名付け、かわいがっていた。しかしある日、三郎を守るために大人たちを攻撃したクロウは捕まえられ、鳥かごに入れられてしまう。実はこの小鳥は怪鳥ラルゲユウスで、その後巨大化して鳥かごを破り、建物を破壊して飛び立つ。そしてラストシーン。ラルゲユウスはまるで別れを告げるかのように、落ち込んでいた三郎の上空に飛来し、海の彼方に飛び去っていく。それを追って駆けだした三郎は「俺も連れて行ってくれ!」と叫ぶが、あきらめたように「さようなら」と言ってうつむく。そして、いつまでも夕陽の沈む海辺にたたずむのであった。
 

通常の『ウルトラQ』は、ここで「終」の文字が画面に浮かぶのだが、この回は違っていた。悲しげな音色のギターがメロディーを奏でる中、映画のようにエンドロールが流れる。そして、それが消えてからも、画面はしばらく夕景と三郎のシルエットを映し続け、ようやく「終」の文字が出てくる。何とも詩情にあふれたエンディングだ。
 

飛び去るラルゲユウスの姿を、三郎はどんな思いで見ていたのだろう。物語中盤、沖を行く大型船を見た彼はクロウに向かって、「いつか俺は行くぜ。遠い所だよ。俺は王様になるんだ。(中略)お前みたいな羽があったらいいな」と語りかけていた。故郷を出て、外の世界に行ってみたいという欲求は、若者特有のものだ。三郎はまだ幼いものの、彼にとって決して暮らしやすくはない生活環境が、そういう思いを芽生えさせたのだろう。そして遠ざかるクロウを見て、「自分も遠くへ行こう」という思いを強くしたのかもしれない。
 

しかしそれにしては、「さようなら」と言った三郎の表情が暗い。もっと、希望に胸を躍らせていてもいいはずだ。また、エンディングの雰囲気も悲しすぎる。クロウのように羽がなければ、遠くへ行くことはかなわないと悟った彼は、「王様になる」などという、大人から見れば荒唐無稽な夢との決別を「さようなら」に込めたのかもしれない。少年期の夢との別れは、大人へと成長する過程で、誰もが経験することだ。「鳥を見た」は大人だからこそ、味わい深く感じられる作品だと言えるだろう。
 

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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る
 

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