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サイレント映画を生演奏で楽しむ『北欧からの贈り物』

サイレント映画を生演奏で楽しむ『北欧からの贈り物』
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2月2日、渋谷区総合文化センター大和田 さくらホールにて、『北欧からの贈り物 生演奏で楽しむサイレント映画の世界』が開催されました。このイベントはJVTAが字幕制作で協力している映画祭、トーキョー ノーザンライツ フェスティバル (TNLF)2014の先行企画。北欧の巨匠による2本のサイレント映画とピアノやバンドの生演奏との共演をコンサートホールで鑑賞できるというスペシャルイベントに約700人の観客が魅了されました。

1本目は、サイレント映画の花と称えられるリリアン・ギッシュの美しさが際立つ『風』。スウェーデン映画の父、ヴィクトル・シェストレムが1928年ハリウッドで手がけた傑作です。テキサスにある風の王国に迷い込んだヒロインが見知らぬ土地で望まない結婚を強いられ苦悩するストーリーです。この無声映画の主役は“風”とも言われるほど、全編にわたって吹きすさぶ風や竜巻、砂嵐がスクリーンに映し出され、観ている者を圧倒します。この日は、サイレント映画専門の伴奏ピアニスト、柳下美恵さんのピアノの音色がその迫力をさらに浮き彫りにし、激しい北風におびえるヒロインの心情を疑似体験することができました。

上映後のトークショーで柳下さんは「私は、まるで翻訳者のように映画の邪魔をせず、観客が物語に集中できる演奏をすることを心がけています。黒い衣装で目立たないようにしているのもそのためです」と語りました。字幕も観客が意識せずに自然に読めることが理想です。伴奏ピアニストという違うジャンルのプロから、「映画を引き立てるという役割は映像翻訳者と同じ」というお話を聞けたのが印象的でした。

2本目の『白い花びら』と共演したのは、今回初来日のノルウェーのバンド、ハンツヴィル。ドラム、ベール、ギターという3人編成のバンドが、サイレント映画の伴奏をするのはあまり例がなく、貴重な機会となりました。『白い花びら』は、フィンランドの巨匠、アキ・カウリスマキが”20世紀最後のサイレント映画”として1999年に撮りあげた1本。平凡ながらも夫と幸せに暮らしていたヒロインが、都会の中年男と共に駆け落ちしたことから悲劇的な末路を辿る姿が描かれています。ハンツヴィルが奏でる前衛的な音色とヒロインが不穏な生活へと巻き込まれていく恐怖が融合し、独特な世界観を醸し出していました。

彼らの演奏にスコアはなく、即興で演奏しているとのこと。その手法についてメンバーは「演奏中にお互いの奏でる音をよく聴いていると、自分が今どんな音を出すべきかが自然に分かってきます。さらに映画の内容や会場の雰囲気、観客の様子などとのバランスをとりながら、その場に合った音を作っていくのです」と語りました。終演後はサイン会が行われ、メンバーとファンが交流を楽しむ場面もありました。

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