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黒人写真家の歴史を紐解く映画が日本初上映  監督と翻訳者が対面!

黒人写真家の歴史を紐解く映画が日本初上映  監督と翻訳者が対面!
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6月23日、青山学院大学にてトマス・アレン・ハリス監督を迎え、最新作の上映と監督の講演会が行われました。この日、上映された『Through a Lens Darkly: Black Photographers and the Emergence of a People 』は日本初公開。当初は日本語字幕なしで上映予定でしたが、急遽JVTAの修了生7名が日本語字幕を制作し、日本語字幕付きでの上映となりました。会場には翻訳を担当した修了生の河田美緒さんとJVTAスタッフが参加。ハリス監督と直接お話しすることができました。

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同作は、黒人写真家の歴史を紐解いた書『Reflections in Black』(写真家・歴史家のデボラ・ウィリス著)からインスパイアされたハリス監督が、多くの黒人写真家にインタビューを重ねながら撮影したドキュメンタリー。アフリカ系アメリカ人であるハリス監督自身の家族写真も数多く収められています。

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監督は、今回の講演会で白人やマスコミによってゆがめられてきた過去の黒人の写真やイラストのイメージと、黒人の写真家が写した自身の家族写真などを対比させながら紹介。「世の中の黒人に対する侮蔑的なイメージと、黒人自身が抱えるアイデンティティへのネガティブな感情を払しょくし、誇りを取り戻したい。“人種など関係なく、世界の人々は1つの家族なんだ”という想いで作りました。15000枚以上の写真を見ながら10年以上の歳月をかけて、完成させました」と話しました。

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また、ハリス監督がこれまでに手がけてきた黒人やLGBT、HIVの人たちをテーマにしたドキュメンタリー作品などが紹介されました。ハリス監督は世界を旅しながらさまざまな人たちの家族写真を集め、ワークショップを開催しているそうです。
 

『Through a Lens Darkly: Black Photographers and the Emergence of a People 』は、2014年のサンダンス映画祭で初公開後、ナイジェリアのアフリカ映画アカデミー賞最優秀海外ドキュメンタリー賞、全米黒人地位向上協会(NAACP)イメージ賞最優秀ドキュメンタリー賞(劇場映画部門)を受賞するなど高い評価を受けています。

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このイベントを企画した青山学院大学英文学部英文学科の西本あづさ教授は、昨年、ニューヨークの映画館でこの映画に出会い、深い感銘を受けたとのこと。「この作品をぜひ日本でも上映したい」と路上でハリス監督に直接交渉し、この上映会が実現しました。「日本語字幕を作るにあたり、ハリス監督とプロダクションのスタッフ、JVTAの藤田奈緒ディレクターと共に、事実関係や表現などについて綿密に話し合いました。また、専門家としてデリケートな言葉のニュアンスや歴史的背景を踏まえた訳し方についても最適な言葉を追求しました。時差がある中でそれぞれが昼夜を問わず最善を尽くし、やっと無事に上映することができました。日本語字幕がついたことでより学生たちの理解が深まり、この作品の内容がより強く伝わったと思います。急なお願いにご対応いただき、本当にありがとうございました」という嬉しいお言葉を頂きました。
 

字幕をチーム翻訳で担当したうちの1人、修了生の河田美緒さんによると、「私が今まで担当した中で最も難しい作品」だそう。翻訳時に苦労したポイントを聞いてみました。
 

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河田美緒さんのコメント
約90分の作品を7人で10分強ずつ担当し、作業にかけられたのは2~3日です。
多くの写真と共にさまざまな人のインタビューが収録されているドキュメンタリーなので、まず、話者はどんな人なのか、何について話しているのかといった流れをつかむのが大変でした。さらに、原文自体がポエムのように抽象的で初めて見るような表現方法が多く、全訳をしてもなんだか意味が良く分かりません。翻訳チームの相互チェックの際には「直訳調すぎる」という指摘がありました。そこで、言葉の背景を自分の中できちんと解釈した上で一番言いたいことは何かをより深く考えながら字幕を作ると今度は「原文から少し離れている」という意見もあり、そのさじ加減には本当に苦労しました。日本語でも抽象的にポエムのように訳すべきなのか、分かりやすくするべきなのか迷いましたね。
 

また、監督ご自身のご家族のエピソードなどが沢山出てくるのですが、有名人ではないのでリサーチをしても裏が取れません。例えば〝True love Evelyn”という表現が出てきた時、Evelynは曾祖父の妻なのか恋人なのかを調べようがないのです。しかし、字数も少なくEvelynの名前という名前も出せないため、最終的には「愛する人のため」という表現にして、どちらにしても誤訳にならないよう工夫しました。
 

今回のように、翻訳に携わった作品の監督に直接お会いし、お話ができることはほとんどないので、本当に貴重な体験ができました。監督の講演を聴いて、彼が一番伝えたかったのは、写真は、孫子の世代までさまざまな歴史やアイデンティティを伝えるためのアーカイブ。大切なのは自分の目で見たことを相手の心に伝えることであり、他の人が見たり聴いたりしたことを想像してみること。そうすれば人種の違いなど関係なく、偏見もなくなり、世界は一つになるということなのだと分かりました。
 

★ハリス監督からこの作品の翻訳者さんの皆さんへメッセージを頂きました!
「当初は字幕が付かない予定だったので、まさか日本語字幕付きで観てもらえるとは思っていませんでした。僕は日本語が分かりませんが、字幕の位置や長さもちょうどよく、読みやすかったのではないかと感じました。タイトなスケジュールで字幕づくりに取り組んでくれた翻訳者の皆さんはハードワークだったと思います。本当にありがとう。感謝しています」

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イベントの最後に、ハリス監督の希望で、参加者全員が舞台に登壇して記念写真を撮影。私たちもハリス監督のコレクションの1枚に加わることができました! 終了後も参加者と気さくにお話しされ、ご自身のスマホでも皆さんと写真撮影をする監督の姿に、人との出会いと写真に対する深い想いを感じました。
 

※記事のボリュームの都合上、本文中の多くの場合において、アフリカ系アメリカ人を黒人と表記させていただいております。
 

★この作品は下記でも上映されます。ぜひ、ご覧ください!
6月27日(土)黒人研究の会全国大会 キャンパスプラザ京都
6月29日(月)西南学院大学 コミュニティセンターホール
 

★『Through a Lens Darkly: Black Photographers and the Emergence of a People 』
詳細はこちらをチェック!
http://1world1family.me/

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