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年末年始は日本の映像作品を研究しよう 翻訳ディレクター・藤田庸司講師インタビュー

年末年始は日本の映像作品を研究しよう 翻訳ディレクター・藤田庸司講師インタビュー
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昨今、受講生・修了生の皆さんの英語力は高まっており、TOEIC900点以上の方も珍しくありません。しかし、トライアル(英日)の審査や講義での課題で字幕を見ていると、その実力を発揮できていないと感じます。原因は日本語の不自然さ、つたなさにあります。そこで、今回はあえて、良質な日本語の作品に触れることをおすすめしたいと思います。

 
例えば、「ライオンはサバンナの王様です」という表現について考えてみましょう。これが幼稚園の子ども向けのアニメ映画や絵本だったら「王様」がぴったりです。しかし、大人が見る堅い動物ドキュメンタリー作品だったら、かわいらしいイメージで違和感がありませんか? 「百獣の王」という存在を表すのには「王者」などのほうがふさわしく、しっくりくると思います。「意味は間違っていないのに、なぜかチグハグな字幕」の原因は、こういうワードチョイスができていないことが多いのです。字幕はあくまでも映像と一緒に楽しむもの。その作品を見るのはどんな人たちか? 年齢、性別、知識の度合いなどを考えた言葉選びが必要であり、トーンを見極めた言葉づくりを常に意識しなければなりません。同じ動物ドキュメンタリー作品でも子ども向けと大人向けのではトーンも違う。こういう感覚は翻訳者自身がさまざまな作品を見ることでしか養われないと思います。

 
「映像像翻訳者は、海外の作品をたくさん見るべき」とよく言われます。もちろん、それも大切です。しかし、アウトプットが日本語である場合、日本でつくられた日本の番組を見たことがなければ、やはり日本の視聴者を満足させる日本語を作ることはできません。長い休みのある時は、あえて日本のドラマや映画、ドキュメンタリー、バラエティーなどをじっくり見てはいかがでしょうか? 例えば洋画の日本語吹き替え版などでは「○○よ」「○○だわ」「○○じゃなくって?」などちょっと不自然な語尾がありますよね。海外ものの「あるある」としては面白いですが、今の日本のドラマでそういう言葉遣いはほとんど聞かないはず。現代のものならより自然な口調にすべきです。逆に古い作品を見てその時代独特の語尾や口調を知っておくのも勉強になります。

 
特におすすめなのはNHKのドキュメンタリー番組です。『プロジェクトX〜挑戦者たち〜』はNetflixなどでも見られます。現在も放送中の『プロフェッショナル 仕事の流儀』も見応えがあります。大人が見る正統派のドキュメンタリーではどんなトーンや言葉遣いなのか、内容だけではなく、じっくり言葉を意識しながら見てください。ナレーションの部分とインタビューの部分でも言葉のトーンは違うはずです。

 
また、ラジオも日本語の表現を学ぶのにおすすめです。画面情報がないため、言葉と音だけですべての世界を描く訳ですから、日本語もすごく工夫されています。映画などの紹介一つにしても映像で見せられない分、言葉を駆使してその魅力を伝えられるよう、練られています。ラジオドラマなどを探してみるのも面白いと思います。

 
自分が好きで日ごろよく見ているジャンルなら、自然とトーンは分かっているもの。しかし、映像翻訳者は仕事としてどんな作品に携わるか分かりません。映像翻訳者を目指すなら、作品を楽しむだけでなく、研究する姿勢が求められます。常に注視、注意を払ってじっくり見る意識を持ってほしいのです。どんなに調べ物を重ねてもこういう感覚的な部分は急には鍛えられません。私もテレビや映画が好きで子どものころから多くの作品を見てきましたが、そういう積み重ねが今に繋がっていると思います。受講生さんの中には、「映像翻訳は面白そうだけど、実はそんなにテレビや映画は見ない」という人が意外とたくさんいます。でも、皆さんは自分があまり見たことのないジャンルの番組の字幕を作れると思いますか? せっかく長いお休みがあるなら、研究という視点を持ち、あえて普段は興味がなくて見ないようなジャンルを見てみましょう。日本語の作品をさまざまな角度で観察することが、翻訳原稿を磨く鍵となるはずです。

 

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