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主人公を凌ぐ強烈な悪役、ヒース・レジャーin『ダークナイト』

主人公を凌ぐ強烈な悪役、ヒース・レジャーin『ダークナイト』
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【最近の私】『セッション』を観ました。J・K・シモンズの鬼教師も強烈でしたが、ラストの展開に息を呑みました。
 

映画によっては、主人公よりも脇役のキャラクターが印象に残る、いわゆる「主役を食う」という作品がある。例えると、以前このコラムでも書いた『ブレードランナー』のルトガー・ハウアーなどだ。今回は『ダークナイト』で主人公バットマンよりも強烈な衝撃を観客に与えた悪役ジョーカーを紹介したい。
 

『ダークナイト』では、バットマン(クリスチャン・ベイル)が悪と戦う街ゴッサム・シティに、ピエロのメイクを施した男ジョーカー(ヒース・レジャー)が現れる。映画の冒頭で、ジョーカー率いる強盗団が、マフィアの傘下になっている銀行を襲撃。金庫の金を手に入れた途端、ジョーカーは手下を次々と撃ち殺す。盗んだ金を独り占めするためだ。銀行にいたマフィアに「昔は悪党にも義理や尊敬があった。お前にはそれすらない」と言われたジョーカーは、「いいか、死ぬほどの目に遭った人間は、イカれてしまうんだよ」と答える。ジョーカーの非情さを強烈に描いたシーンだ。
 

1989年にティム・バートン監督によって映画化された『バットマン』にもジョーカーは登場している。ジャック・ニコルソンが怪演したジョーカーは、極彩色の衣装をまとったコミカルな悪役になっていた。だが『ダークナイト』ではゴッサム・シティも、バットマンが乗るバットモービルや使用する武器も、非現実的ではなく、あくまでもリアルに描かれている。ジョーカーはピエロのメイクが落ちかけ、衣装も地味だ。だが赤く塗った口から悪意に満ちた言葉を吐く冷酷な犯罪者として、ゴッサム・シティに暗躍する。
 

ジョーカーは「バットマンがマスクを脱いで出てくるまで、1人ずつ殺していく」と宣言。その通りにゴッサム市長を始め、次々と住民を無差別に殺害していく。彼はバットマンを殺したいのか…。だがジョーカーはバットマンに「俺はお前を殺さない。俺にとってお前はオモチャだからな」と言う。ジョーカーの目的は、動機なき無差別な犯罪を起こして、人々を混乱させ、恐怖のどん底に落とすことなのだ。バットマンはゴッサム・シティの平和を守ろうとするが、ジョーカーの無秩序な行動に翻弄され、彼を捕えることができない。そしてバットマンはジョーカーの居場所を突き止めようとするため、違法と知りながらゴッサム・シティのすべての電話を盗聴する手段に出る。
 

映画の終盤、ジョーカーは2隻のフェリー(1隻には一般人、もう1隻には囚人が乗っている)に、ある選択を迫る。2隻のフェリーには互いのフェリーを爆発させる起爆装置がセットされているのだ。ジョーカーは「助かりたければ、相手のフェリーを爆破しろ」と命令する。すると善良に見える民間人が「早く囚人のフェリーを爆破しよう。奴らは悪の道を選んだ。だから死んで当然だ」と、エゴをむき出しにする。結果がどうなったかは、映画を観ていただきたい。
 

ヒース・レジャーには、ジャック・ニコルソンが演じたジョーカーに扮することに、相当のプレッシャーがあったに違いない。『ダークナイト』でのヒースの演技は高く評価されたが、彼はこの作品の撮影後、28歳の若さで死去。この年のアカデミー賞で、ヒースは助演男優賞を受賞した。ヒースが魂を込めて演じたジョーカーは、観た者の記憶に長く残るだろう。
 

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Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち)
映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。
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戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!

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