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映像翻訳日英実践コース修了生 キム・クデ(Koodae Kim)さん

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映像翻訳日英実践コース修了生 キム・クデ(Koodae Kim)さん

JVTAロサンゼルス校の映像翻訳日英実践コース修了生のキム・クデ(Koodae Kim)さんは、ロサンゼルスにある有名フィルムスクール、American Film Institute (AFI)の大学院で、今年8月末から映画のプロデューシングを学びます。そのキムさんにJVTAとの出会いや、映画のこと、難関のAFI合格までの経緯、将来の展望など、渡米から現在に至るまでのお話を詳しくうかがいました。

 
■高校の交換留学で渡米

私は、日本の高校2年生の時に交換留学生として渡米し、ラスベガスの高校に1年間通いました。渡米後3カ月くらいで耳が英語に慣れてきて、7カ月くらいでスピーキングに慣れてきました。英語の読み書きには11カ月くらいで慣れてきたと思った頃に帰国時期がきてしまいました。せっかくここまで習得した英語力を伸ばしたいと思い、この時に、またアメリカに戻ってくる、と決心しました。

高校卒業後、1年ほど留学準備をして、ロサンゼルス郊外のコミュニティ・カレッジに入学しました。昔から興味があった映画関係の勉強をしたいと思っており、クラスを取りながら、LA留学の利点を活かして、学生映画のプロダクション・アシスタントなどをしながら制作に参加していました。

 
■アメリカで勝負するために、特殊技能で武装

周囲には、大学で映画専攻の先輩たちもいたのですが、卒業後は、ビザの関係で、なかなかアメリカに残ることができずに帰国している姿を見て、映画に興味はあったものの、外国人でもアメリカで認められる特殊能力を身につける必要性を感じていました。Nobodyだと誰も振り向いてくれないですから、自分を差別化しないといけない、そのために差別化しやすい技能を、と考えました。それでネバダ大学ラスベガス校に編入する際には、専攻を会計学にしました。大学を出たての外国人が、アメリカ社会でビジネスやマーケティングなどで勝負しようとしても、能力を証明するにはとても難しい面があります。その点、アカウンティングは結構特殊なので、私はこれができます、というのを見せやすい部分、あるいは周囲に認めてもらいやすい部分がありますから、私はこれで武装しようと思ったのです。

大学卒業後はロサンゼルスに移住し、会計分野でビッグ4と呼ばれる四大会計事務所の一つで働き、監査の業務に携わりました。その後、ロサンゼルス郊外トーランスにある日系会計事務所で5年勤務し、この間にCPA資格も取得、マネージャーまで昇格しました。監査の仕事をする中で、合理的にものを考えられる力が身についたと思います。点Aから点Bに行くプロセスを描ける力や、リスク・マネージメントの力は、監査、会計をやって培われたものです。これは、どんなことをする際にも非常に重要で役立っています。

 
■JVTAで映像翻訳を勉強、映画祭で英語字幕を

監査の仕事はとてもやりがいがあったのですが、やはり映画をやりたいという気持ちもありました。何らかの形で映画関係にかかわっていきたいと思っていた時に、JVTAロサンゼルス校のことを知りました。日本のコンテンツを世界に紹介したいという気持ちも強かったので、映像翻訳を勉強しようと決め、基礎と実践日英コースを修了しました。

映像翻訳は、他者の作品を壊さずに、その原型を変えずに違う言語にする作業です。日米の文化の違いがある中で、原型を崩さないように伝えるのはとても大変です。勉強をする中で、最終的にこれは誰が観るのか、その観客を想定して翻訳をすることを学ぶことができたのは、とても大きかったです。

JVTAが協賛してハリウッドで行われているLA EigaFestという映画祭がありますが、2012年に、日本語短編映画のチーム翻訳に参加し、修了生仲間と英語字幕を担当しました。また、この年にはJVTAが協賛したJapan Film Festivalという別の映画祭で上映する映画の英語字幕を修了生3人で担当しました。字幕制作ではJVTAの方々やLA校講師ジョナサン・ホール先生にもアドバイスをもらいました。狙った所でアメリカ人観客が笑ってくれたのはとても嬉しかったです。逆に、こんなところで笑うんだ、という意外な部分もありました。こうした字幕制作は、とても貴重な体験になりました。

日本映画の英語版といえば、少し前の作品ですが、宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』はアメリカでもとても受けた作品です。私は、その英語版制作に携わった脚本家、ドン・ヒューイット(Don Hewitt)から脚本の構成などを学んだことがあります。日本人が見れば説明なしにすぐわかることでも、外国人にはいちいちスペルアウトしないとわかってもらえない日本特有の点について、英語版制作はとても大変だったそうです。ただ、キャラクターや映像などは、国や文化の違いに関係なく、アメリカの子どもたちにもすっと浸透するものだったと言っていたのが印象的でした。

 
■世界的に有名なAmerican Film Institute (AFI)に挑戦!

字幕にかかわりながら、やはり映画を作りたいという気持ちが強くなってきて、自分はクリエイターで映像を作るほうの人間だと実感していました。2012年のLA EigaFestでは、日米共同製作についてのパネルがあり、パネリストの一人としてジョナサン・ホール先生も出ていて、映画ビジネスの興味深い話が聞けましたし、この映画祭のプロデューサーである三石勇人さん(※)とも出会うことができ、おもしろいことをやっている人たちがいることを知りました。

映画関係のネットワークをこうして築いていく中で、三石さんから公益財団法人ユニジャパンが、日本国外でMFA (Master of Fine Arts = 美術学修士号)の取得が可能なフィルムスクールに入学予定の人と在学生を対象に学費支援をする制度を設けていることなどを教えてもらいました。対象校の中には、私が行きたいと思っていた世界的に有名なAmerican Film Institute (AFI)があり、AFIに挑戦することにしました。

世界中から優秀なクリエイターたちが出願するAFIは難関フィルムスクールです。挑戦1回目は残念ながら補欠不合格でしたが、2回目の今年、合格しました!1回目に不合格になった理由は、映画制作歴にブランクがあること、経験が浅いことだと言われたので、2回目の願書を準備している間には、小規模作品であっても映画制作にできるだけ参加するようにして、現場経験を積みつつ、ネットワークを構築していきました。ユニジャパンの奨学金にも応募しており、この8月末からAFIでプロデューシングの勉強をする予定です。

 
■短編映画のプロデューサーに抜擢される

映画関係のネットワークを築いていく中で、ジェームズ・クウォン・リー (James Kwon Lee)監督と知り合いました。経験は浅い私ですが、監督から短編映画のプロデュースをやってみませんかと声をかけてもらったので、喜んで参加させてもらうことにしました。

この映画は、『LOCKSMITHS』(ロックスミス)というホラー/スリラー映画で、『硫黄島からの手紙』や『ラストサムライ』などに出演し、ハリウッドで活躍している日本人俳優、松崎悠希さんが主演します。

7月に撮影開始予定で、現在、プリプロダクションの段階です。プロデューサーとしての私の仕事は、ロケーションの確保から人材のリクルーティング、機材調達、バジェット管理など、多岐に渡ります。その任務を遂行するのに、これまでの経験がとても役立っています。会計士の仕事をしていた時に身につけた、合理的にものを考えられるスキルは、映画制作現場でも生きています。状況を想定し、必要なことや、リスク・アセスメントなどができるので、たとえば監督が「3階の屋根裏でこういうことをしたい」と言ったら、そのプロセスを想定し、それに必要な機材や人材・人数、時間、制限、予算、注意事項・問題等を監督に提示できるので、監督はそれを行う価値があるかどうか、的確な判断ができるわけです。また、JVTAで学んだ映像翻訳者として大切なことは、映像の作り手としても重要なもので、意識しなければならないものだと思っています。そして、作品の原型を崩さずに、文化の違いを超えて別の言語にして観客に伝えられる映像翻訳をできる人がいることや、字幕をつけてもらう時に注意する点などがわかったことも、今後、自分の作品の外国語版制作の際に役立つと思います。

映画の詳細情報はこちらからご覧になれます。ただいま制作費募金キャンペーンを行っております。

https://www.kickstarter.com/projects/teamlocksmiths/locksmiths-a-horror-thriller-short-film

 
 
■リスペクトを勝ち取って、猛獣使いになる!

この映画プロジェクトを今の段階でやらせてもらっているのは、本当にありがたいことだと思っています。映画は、職人たちが集まって、各々のアーティスティックセンスのコラボで生まれます。AFIに来る人たちも、厳しい選考を通って世界各国から来た人たちです。私は今後、プロデューサーとして、そういう人たちをリードしていかなければならない、猛獣使いにならないといけないわけです。アメリカでは、年功序列とか先輩後輩ということではリスペクトは得られず、リスペクトされないと話を聞いてもらえないので、自分でリスペクトを勝ち取っていかなければならない。リスペクトされないと、猛獣たちが暴れ回ってしまいます(笑)。今、この映画のプロデュースを一からやらせてもらって、それを痛感しています。

一方で、自分が一生懸命やって、横の関係でも、縦の関係でも、自分自身もほかの人たちをリスペクトして仕事を進めるうちに、皆が協力して助けてくれる強いネットワークができていきます。

外国人は、アメリカはカジュアルだと思いがちですが、work ethicはちゃんと見られています。たとえばEメールの書き方一つとっても、メモ書きではなく、相手をリスペクトしてsincereで、かつ読みやすいメールを書くということがとても大切です。どんな場面でも、なにかしらのところで、はかられているものです。まずは自分のwork ethicを高めていくことが、リスペクトを勝ち取るのに必要不可欠なことだと思います。

プロデューサーの実務は、映画制作のすべての点を管理しコーディネートしなければならないので、とても大変ですが、今、本当に楽しいです。

 
■将来は、映画の国際共同制作を

私は映画の国際共同制作に興味があります。AFIを選んだ理由の一つは、世界各国からのクリエイターが集まる場所だからです。そして今、ハリウッド映画も、撮影場所は州外やバンクーバーなど外に移っていっています。日本はロケーションも人材もすばらしいものがあるので、海外のクリエイターたちが日本で撮って、海外で観てもらうことを想定して映画制作をすることを新しい形として確立できればと思っています。また、日本の神話にはおもしろいものがたくさんあり、海外の人にも受け入れられると思うので、とても興味があります。そういったものを海外の人たちにも観てもらうことを想定して日本で撮りたいですね。海外のクリエイターに、日本のすばらしいロケーションや人材を紹介し活用してもらえる機会を作っていけたら、日本の映画産業も活性化されると思います。

JVTAの修了生仲間とは、今でもお互いにインスパイアーされあって、応援しあっています。そしてJVTAに出会ったことで、いろいろなドアが開きました。映画のプロデュースのことも、フィルムスクールや奨学金制度のことも、ネットワーキングなども、JVTAがきっかけになり、そこから歯車が動き出したと思っています。JVTAに出会えて本当によかったです!

(※) LA時間6月21日(土)に、LA校にて三石さんの特別セミナー「エンタメ業界の華麗な裏舞台」が行われました。このセミナーは、東京校にも生中継され大好評でした。
 

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