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『本気のしるし《劇場版》』が劇場公開! 英語字幕制作秘話を紹介します!

『本気のしるし《劇場版》』が劇場公開! 英語字幕制作秘話を紹介します!
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第73回カンヌ国際映画祭のオフィシャルセレクションに選出された話題の映画『本気のしるし《劇場版》』が10月9日から全国順次公開されます。この作品の英語字幕をこの作品の英語字幕をJVTA映像翻訳コース修了生の蔭山歩美さんとJVTA日英映像翻訳コースのジョナサン・ホール講師が手がけました。

 
原作は星里もちる氏の同名コミック。深田晃司監督が20年近くも映像化を熱望し、満を持して、2019年に名古屋テレビ(メ~テレ)で連続ドラマ化されました。中小商社に勤める会社員・辻一路(森崎ウィン)がコンビニで不思議な雰囲気の女性・葉山浮世(土村芳)と出会ったことからトラブルに巻き込まれていくサスペンスタッチの物語です。

 
放送後の高い評価を受け、未公開シーンを入れた“ディレクターズカット版”の劇場公開が決定。約4時間の大作となっています。蔭山さんとジョナサンさんに英語字幕制作秘話を聞きました。

 
◆この作品を手がけたきっかけと流れを教えてください。
『本気のしるし』の制作統括が深田晃司監督と一緒に『淵に立つ』を作った方で、その方と蔭山が過去にお仕事をした際に「いつか深田監督の作品も担当したいです」とダメ元でお伝えしていたところ、TVドラマ版第1話の英語字幕のお話をいただいたのがきっかけです。そこで蔭山がジョナサンに共訳を依頼し、2人で担当することになりました。
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©星里もちる・小学館/メ~テレ

 
納品した第1話の英語字幕と英題のThe Real Thingが好評で、第2話~第10話(最終話)までと劇場版は名古屋テレビさんから直接ご依頼いただきました。英語字幕版を日本と同時に放送していたわけではありませんが、海外セールスの都合もあり、最終話の完成を待って字幕制作に着手することができず、英語字幕の制作はドラマの制作と同時進行でした。今年2月にはまだ劇場版がありませんでしたが、ベルリン国際映画祭の併設マーケットであるヨーロピアン・フィルム・マーケットで、英語字幕つきのドラマ版が上映されています。ドラマ部門に日本の作品が選ばれたのは初だそうです。(https://twitter.com/nagoyatv_honki/status/1232632168863526912?s=20

 
◆翻訳作業はお2人でどのように進めたのでしょうか?
まずお話をいただいた段階で、蔭山は原作をすべて読み、途中の段階でジョナサンも原作を読んでいます。本作にかぎらず原作があるものはなるべく読んでから取り組みますが、特に今回のドラマは最後まで見ずに1話ずつ納品する必要があったため、先に読んでおいて本当によかったです。
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字幕の制作は下記の流れです。
1. 蔭山がスポッティングをして初稿の字幕を書き、分かりにくい部分や後の展開に関する部分の説明を添えてジョナサンに納品
 2. ジョナサンが全体をリライト(尺やトーンやニュアンスの調整など)し、蔭山に納品
3. 蔭山がリライト済みの字幕をチェックし、疑問点や改善点などを話し合って納品用の初稿ができあがる

 
着手前に、作品に対するリアクションやコメントを交わすことはありますが、共訳が成り立つのはこの初稿ができあがった段階です。作品全体のモチーフやトーンを再確認したうえで、各ハコを細かく一緒にチェックします。言葉の意味、エンタメ作品&アート作品として楽しめるかどうか、映像とマッチしているかなどを最終確認しています。

 
納品した初稿を名古屋テレビの担当者さんがチェックし、それに応じた変更案を出して完成します。クライアントとのやりとりは蔭山が担当していましたが、ジョナサンの役割はネイティブチェックではなく共訳者なので、クライアントからご質問があった場合も、必ず相談したうえで対応しました。

 
◆特にじっくりと話し合った点はありましたか?
深田監督は世界的なアートハウス系の監督ですので、長編の英語字幕を担当できて非常に光栄でした。深田作品のストーリーテリングは海外の映画ファンを魅了してきましたが、『本気のしるし』ではキャラクターの描き方や構造などに物語性が強く感じられました。そのため、一見シンプルな作品でも、映像翻訳者としてはとてもやり甲斐のある作品でした。
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©星里もちる・小学館/メ~テレ

 
深田監督は、いわゆるステレオタイプな「悪女もの」にならないように意識されていました。ですので日本社会の日常に潜む男尊女卑的なふるまいや女性に対するレッテルを可視化しつつも、特にヒロイン浮世のキャラクターを翻訳でミスリードしないよう気をつけました。浮世は頻繁に「すみません」と口にしますが、それを毎度”I’m sorry”とすると、日本の視聴者が感じる以上に過剰に視聴者をいらつかせる可能性があるので、一部の言い回しを変える、またはあえて訳出しないなど工夫が必要でした。ここに限らず、一歩間違えばメロドラマや茶番に見えてしまう可能性もあり、名古屋テレビの担当者さんと相談しながらトーンを調整しました。

 
他の登場人物が浮世に対して発したり、浮世について語ったりする言葉も、うわべだけを見てさらっと訳さないよう注意が必要でした。さじ加減を間違うと性差別的に取られてしまいかねない言葉や、無意識にやや差別的なニュアンスで発しているのだろうと感じられる言葉もあり、何気ないセリフや言外のニュアンスにも気をつけました。
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©星里もちる・小学館/メ~テレ

 
◆キーワードとなるセリフの訳した方も工夫されたとか。
登場人物の立場が入れ替わり、同じセリフが別のシーンで別の人物から発せられる部分があり、そこも工夫した点です。どちらの文脈&人物でも自然に見えながらも、2度目に同じセリフが登場した場面では「あの時と同じ言葉だ」と即座に視聴者に気付いてもらう必要があり、ただ単にそれぞれのシーンに合わせて訳すだけでは機能しません。物語の構造がここまではっきりと字幕に影響するケースはあまりないので、こうした部分も慎重に検討しながら進めました。原作を読んでいたので、最後まで見なくてもある程度「このセリフは重要だな」と察知できましたが、意外なセリフが後になって再度出てくることがあり、その部分は初出の字幕と前後の字幕を後から修正しました。

 
◆原作ファンを意識したポイントもあったそうですね。
星里もちる先生の作品名や作品に関する言葉がさりげなく出てきて、原作ファンを「お!」と思わせるような場面もあり、作品名に関しては公式な英語タイトルがあるのかも調べました。英語版が出版されていなくても、ファンの間で使われている非公式かつ定着した呼び名が存在することもあるので、英語字幕で『本気のしるし』を見た海外の星里先生ファンにも、「分かる人には分かる」部分に気付いてもらえると嬉しいなと思っています(ただし物語の流れを優先させるため、近い言葉を使えないケースもありました)。
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©星里もちる・小学館/メ~テレ

 
◆TVテレビ版と映画劇場版で違いなどはありましたか?
ドラマの再編集版なので大部分は同じですが、一部削除されたシーンや追加されたシーンがあり、劇場版用に追加で訳したセリフもあります。TVドラマ版をすべて担当していたおかげで、雑談に近いセリフもキャラクターの性格や状況を反映した訳にできたので、全体を担当させていただき本当にありがたかったです。劇場版に関しては、海外用ポスターのキャッチコピー、映画祭出品に伴う監督のコメント、映画祭側からの評価など、英日翻訳も含めた映画祭まわりの翻訳も担当しました。

 
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英語字幕制作について名古屋テレビ放送株式会社 コンテンツビジネス局 コンテンツプロデュース部の加藤 優さんにコメントを頂きました。

 
◆当初は映画ではなく連続ドラマでしたが、英語字幕をつけることは最初から決まっていたのでしょうか?
弊社ドラマ作品はまず第1話のみに英語字幕をつけ、海外展示会でセールスの見込みが立ってから以降のエピソードにもつけるのが基本です。『本気のしるし』に関しても同様で、2019年10月に開催されたコンテンツマーケット・TIFFCOMで第1話を海外バイヤーに見せたところ、2話以降の字幕つき映像も問い合わせがあったので、助成金も視野に入れながら制作することに決めました。
当初制作進行をしてくださっていたマウンテンゲート戸山さんとは費用の関係で別の方にお願いする可能性も話していたのですが、第1話をスピーディにクオリティの高い翻訳をあげていただき、かつ、こちらの疑問点にとても丁寧に対応してくださったジョナサンさんと蔭山さんに全話分を依頼することを決めました。
ご本人のお話にもあったように「The Real Thing」の英題が素晴らしかったことも理由です。たった3ワードで非英語圏の人にもこの作品の核を伝えられる、秀逸な題だと思います。

 
◆『本気のしるし』で、特に印象的だった英語字幕や翻訳者と話し合ったセリフなどがあれば教えてください。
蔭山さんたちとは細かい単語や文のニュアンス含め、話し合いをたくさんさせていただきました。その中で印象的だったのは、後半、別々のエピソードで主人公・辻とヒロイン・浮世それぞれがほとんど同じセリフを言うシーンの訳出です(蔭山さんたちも触れられていますが)。この部分は、ふたりが本質的に似たもの同士であり、しかし発言者が男女で違うことで観ている人の無意識の差別的な視点をあぶり出してしまうセリフとして大切にしたいところでした。それを初稿に反映してくださっており、おふたりのプロフェッショナルさに感動しました。この物語の円環構造は、ドラマ化にあたって原作に比べてより強く脚本に落とし込んだ部分でしたので、それをきちんと理解して訳出していただいていることがありがたかったです。
あとは、星里先生の別作品に掛けたセリフにも反応していただいたことでしょうか。もの凄い下調べをしてくださったのだな、と…。
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©星里もちる・小学館/メ~テレ

 
劇場版で増えたセリフの翻訳をお願いしたときも、TVドラマ版ですでに訳出された別のセリフとの繋がりを考えるなど、追加シーンが浮かないように注意を払っていただいていたのを良く覚えています。
また、字幕制作作業のことではありませんが、蔭山さんが視聴者として本作を純粋に楽しんでくれていることがやり取りの中で伝わってきて、いち制作人として嬉しかったです(笑)。ありがとうございました。

 
◆英語字幕をチェックする際にポイントとなっているのはどんな点でしょうか?
今回の『本気のしるし』で言えば、私はプロデューサーという立場でもあったので、監督の意図をきちんと伝えられるかを優先してチェックしていました。特に深田さんはセリフで説明することを避ける監督ですので、そのニュアンスが海外の監督ファンにも理解してもらえるかが重要だと考えていました。ジョナサンさん、蔭山さんはそこを汲み取って翻訳してくださいました。
カンヌを初めとする映画祭での選出も、おふたりの訳がなければ申請もできませんでした。TVドラマ放送時に全話お願いしておいて本当に良かったです。
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©星里もちる・小学館/メ~テレ

 
『本気のしるし』劇場版 ディレクターズカット版
10月9日(金)劇場公開 シネリーブル池袋、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
公式サイト https://www.nagoyatv.com/honki/
※東京国際映画祭 Japan Now部門「深田晃司監督」でも上映されます。
https://2020.tiff-jp.net/news/ja/?p=54562

 
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