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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第63回 “THE BOYS”

これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第63回 “THE BOYS”
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    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系、ケーブル系各社に[…]

    “Viewer Discretion Advised!”
    これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
    Written by Shuichiro Dobashi 

    第63回“THE BOYS”
    “Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

    今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。

     

     

    スーパーヒーローのダークサイドを暴け!
    本作はタイトルこそパッとしないが、Amazon Originals史上最も人気の高いドラマのひとつ。
    これぞアメコミの神髄! “THE BOYS”は、ダークサイドに堕ちたスーパーヒーロー軍団に立ち向かうフツーの男たちを描く、痛快なアクション・ブラックコメディなのだ!

     
    “A world without crime, with liberty and justice for all”(Vought Internationalの宣伝文句)
    ―ある晴れた日のマンハッタン
    電気店で働くヒューイ(ジャック・クエイド)は、恋人のロビンと路上で立ち話をしている。次の瞬間、目の前を一陣の風が吹き抜けたと思ったら、ロビンは血まみれの肉塊と化していた!
    ロビンは不運にも、超高速で移動中だったスーパーヒーローのAトレインに衝突されたのだ。

     
    Aトレインが所属する“Vought International”(ヴォート)は、200人以上の有名無名のスーパーヒーローを擁する巨大企業だ。絢爛豪華な本社ビルは、リーダーのホームランダー(アントニー・スター)率いるエリート・スーパーヒーロー軍団「ザ・セブン」に因んで、「セブンタワー」と呼ばれる(「スタークタワー」にそっくり)。

     
    ヴォートの事業内容は映画、テーマパーク、キャラクター商品が中心で、スーパーヒーローたちの序列はファンによる投票で決まる。「スーパーヒーロー・オーディション」も開催され、おりしもアイドル系のスターライト(エリン・モリアーティ)が優勝して、最後の「ザ・セブン」の座を手にしたところだ。
    またヴォートは巨額の契約金を得て、犯罪発生率の高い都市へヒーローたちを送り込む。軍需産業への参入も視野に入っている。
    “ディズニー+芸能エージェント+AKB48+傭兵部隊”、これがヴォートの高収益を支えるビジネスモデルなのだ。

     
    セブンタワーで辣腕をふるう上級副社長スティルウェル(エリザベス・シュー)は、信賞必罰でスーパーヒーローたちを飼い慣らし、ITを駆使して高い犯罪阻止率を実現させた。マーケティング部隊はヒーローたちの活躍を時にでっち上げ、失敗は隠蔽する。

     
    ―「スーパーヒーローに守られた平和で満ち足りた世界」、それは虚像に過ぎない。メディアは欺かれ、愚かな一般大衆は見たいものを信じる。
    スーパーヒーローはヴォートに操られ、大部分は腐敗・堕落しているのだ!

     
    傷心のヒューイは、ある日FBI捜査官を名乗るブッチャー(カール・アーバン)から接触される。ブッチャーはヴォートを内偵中の特別チーム“THE BOYS”のリーダーで、ヒューイに協力を求める。
    優柔不断を絵に描いたようなヒューイの人生が一変した。

     
    巨悪ヴォートに挑む、“THE BOYS”の戦いが始まった。―わずか4人のフツーの男たちによって!

     
    微妙なB級感を醸し出すキャスト
    ホームランダーを憎悪するブッチャーをパワフルに演じたカール・アーバンは、J・J・エイブラムス版『スタートレック』の船医マッコイ役でなじみがある。(ウルヴァリンを演じているときのヒュー・ジャックマンに似ている。)

     
    ヒューイ役のジャック・クエイドはデニス・クエイドとメグ・ライアンの息子で、地味ながら適役。(デニス・クエイドよりコメディアンのビル・ヘイダーに似ている。)

     
    可憐だが芯の強いスターライトを演じたエリン・モリアーティは、ジャック・クエイドとお似合いのカップルとなった。ヒューイとスターライトの純愛にはケミストリーが働き、サイドストーリーには勿体ないほど感動的だ。

     
    傲慢でクリーピーなホームランダー役のアントニー・スター(“Banshee”のルーカス)、妖艶で狡猾なスティルウェル役のエリザベス・シュー(元祖『ベスト・キッド』のヒロイン!)の怪演には拍手を送りたい。2人の特殊な関係は気色悪くて、とても勇気ある演技だった。

     
    “THE BOYS”の優しい仲間、エンジニアのフレンチー役のトマー・カポン、更生員のマザーズミルク(かなり恥ずかしいニックネームだ)を演じたラズ・アロンソは、強面のカール・アーバンと好対照をなす。

     
    各キャラには微妙なB級感が漂い(特に「ザ・セブン」の面々)、ドラマの雰囲気にフィットしている。アクターがB級なのではなく、一級品の演技でB級感を引き出しているのだ。

     
    エンターテインメントのオモチャ箱!
    原作は全72巻からなる同名のアメコミ(DCコミックス)。企画/製作総指揮/共同脚本のエリック・クリプキは、15シーズン続いた“SUPERNATURAL”、タイムトラベル・ドラマの佳作“TIMELESS”(本ブログ第38回参照)を手掛けた才人だ。

     
    “THE BOYS”は”Viewer discretion advised”のレイティングで、スプラッター描写あり官能シーンあり、ダーティジョークも頻出する。だがここで怯んではいけない。実はこの設定が、退廃的なスーパーヒーローたちのおかしさとリアリティを生み出しているのだ。(スーパーヒーロー専門のセックスクラブなんていかにもありそうでしょ)

     
    さらに本作のストーリー展開の妙、多彩な登場人物、深い人間描写、鋭い社会性、意外と緻密な脚本、絶妙な笑いのタイミングなど、ドラマとしての本質的な面白さも見落としてはいけない。
    原作の世界観を再現しドラマとしての質も高いのだから、(アメリカで)人気が出るのは当たり前だ。

     
    “THE BOYS”はまさにアメコミの神髄で、スーパーヒーロー、アクション、最高レベルの特撮、ブラックな笑い、セックス、ロマンス、友情、謎解きなどエンターテインメントのあらゆる要素を詰め込んだ、オモチャ箱のようなドラマなのだ!

     
    全8話(各1時間前後)からなるシーズン1はAmazon Prime(正確には単に”prime video”という)で配信中。シーズン2の制作も決定済みだ。
    ひょっとして、これはAmazonがディズニー(マーベル)の『アベンジャーズ』を揶揄するためにドラマ化したのではないのか?

     
    <今月のおまけ> 「My Favorite Movie Songs」㊶
    Title: “To Sir, with Love”
    Artist: Lulu
    Movie: “To Sir, with Love” (1967)

    曲・映画共に邦題は『いつも心に太陽を』。普通にいい映画・主題歌が少なくなって久しい。

     
    写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
     
     

     
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