明けの明星が輝く空に 第195回:特撮俳優列伝31 志田こはく
半世紀続いたスーパー戦隊シリーズが、ついに幕を下ろした。最後の作品となった『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』(2025年2月~2026年2月)は、なんとか無事に完走した、という印象が強い。というのも、メインキャストの1人が不祥事を起こし、これから物語の佳境を迎えるという昨年11月、番組降板に追い込まれてしまったからだ。そのピンチを救ったのが、第40話から急きょ代役で出演した、志田こはくさんである。
志田さんが演じたのは、戦隊メンバーの一人、ゴジュウユニコーンに変身する一河角乃(いちかわすみの)。前任者の降板が突然だったため、同一人物を異なる俳優が演じることになってしまった。しかし、偶然にも角乃が探偵という設定があったおかげで、何とかつじつま合わせが可能になった。つまり、彼女は潜入捜査のため特殊な力を借りて顔を変えたのだが、その容貌が気に入ったので元に戻らなくてもいいことにした、という理由付けがされたのだ。
正直、無理がないとは言い切れない展開だ。しかし、志田さんの勢いのある演技は、そんな疑念を吹き飛ばすほどパワフルなものだった。「無理は承知の上」と言わんばかりの、いい意味で開き直った、潔さすら感じさせる明るい演技は、全く嫌みがない。これは天性のものだろう。
その溌剌とした明るさは、テレビドラマ初出演となった『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』(2022年3月~2023年2月)でもいかんなく発揮されていた。そう、志田さんはすでに、スーパー戦隊シリーズの出演経験があったのだ。それも、オニシスターに変身して戦う鬼頭はるか役。戦隊メンバーの一員だ。そこで見せたはじけっぷりは、新人俳優であることを感じさせない、天晴なものだった。
実際、番組プロデューサーの白倉伸一郎氏は、志田さんのことを「逸材」だと思ってみていたそうだ。戦隊シリーズの中で、最も印象に残っている女性メンバーは誰かと聞かれ、「強いて挙げれば」という条件付きながら、唯一、志田さんに言及している。白倉氏いわく、志田さんは「18歳ながら俳優として一本立ちしており、周囲の模範になるようなところがある。」実際、「志田を見習え」と言っていた監督も中にはいたそうだ。
志田さんが演じた鬼頭はるかは、さっぱりした性格の女の子で、かなり三枚目な役どころだ。敵からの攻撃を受け「うへぇ!」と叫んだりするなど、“ヒロイン”という言葉から想像するようなタイプではない。ファンの間で話題になったのは、毎回のように見せる“変顔”で、かなりオーバーな表情を臆面もなく披露してくれている。そんなコメディエンヌとしての素養を買われたためか、鬼頭はるかが運転免許を取ろうと四苦八苦する第40話「キケンなあいのり」は、志田さんのコミカルな演技を前面に押し出した作品となった。少々やりすぎと感じる場面もあるのだが、それは演出の問題だろう。路上教習中に敵と遭遇し、ハチャメチャな運転で対峙するシーンは、志田さんのはっちゃけた演技が最高レベルに達し、痛快だ。そして物語終盤、めでたく免許を取得し得意げなはるかが、あちこちにぶつけた跡のある車で現れ、仲間をドライブに誘う。その時の、滑稽なほどカッコつけたセリフの言い回しと表情は、絶妙の一言。僕は思わず吹き出してしまった。
そんな志田さんだが、俳優としての魅力はむしろシリアスな場面にある。特に、深刻な場面で見せる目の表情がいい。ご本人も印象に残っていると語る第10話「オニがみたにじ」は、そういった意味で見どころが多い。ある日、どんな願いごとも叶えられる条件をクリアしたはるかは、失った人生を取り戻すため戦隊から脱退する。そうして彼女の願いによって書き換えられた世界では、真利菜という別の女性が代わりに戦隊メンバーになっていた。しかし真理菜は、はるかの代わりに人生の苦悩も引き受けてしまう。苦悩する真利菜を見たはるかの心が揺れる。その際の思いつめたような表情。結果として彼女は戦隊に戻る決意を固めるのだが、その時には揺るぎない強い意志を感じさせる顔に変わっていた。眼差しによって、演じる人物の内面を見事に表現する志田さんの演技が、第10話のドラマ性を高めていると言えるだろう。
志田さんの目の演技は、ピンチヒッターとして一河角乃を演じた『ナンバーワン戦隊ゴジュウジャー』でも、いいアクセントになっている。彼女のシリアスな表情が物語にドラマ性を加味し、コミカルなシーンの多い番組を締めてくれているのだ。キャスト降板からの代打出演という注目される状況で、きっと大きなプレッシャーもあっただろう。そんな中、堂々とした見事な代役ぶりだった。いや、むしろ、単なる代役を超え、「一河角乃=志田こはく」というイメージを視聴者に植え付けることに成功したのではないだろうか。まさに番組のピンチに現れた「救世主」。業界での評価も、さらに上がったに違いない。今後の活躍も、大いに期待できそうだ。
個人的な話をすると、『暴太郎戦隊ドンブラザーズ』は、放送当時、最後の数話しか観たことがなかった。今回、第1話から鑑賞し始め、途中第40話をフライングして観て、この原稿を書いている時点で第32話。残りは第40話を除いた17話だ。ここからは、志田さんの出演シーンをじっくり味わいつつ、ゆっくり完走を目指そうと思う。早く観終わってしまったら、もったいない。今は、そんな気分だ。
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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
【最近の私】これまで大阪駅は乗り換えで利用した程度でしたが、今回その周辺も含め、初めて見て回って驚きました。新しい、きれい、そして便利!あっち見て「へえー」、こっち見て「ほおー」。完全に“お上りさん”状態でした。
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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る
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