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【ダマー国際映画祭が開催】 映像翻訳ディレクターに聞く字幕制作の現場 

<strong>【ダマー国際映画祭が開催】 映像翻訳ディレクターに聞く字幕制作の現場 </strong>

JVTAは毎年、多くの映画祭を字幕や公式プログラムの翻訳などでサポートしており、JVTAで学びトライアルに合格した翻訳者が活躍している。米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」や世界最大級の日本映画の祭典「ニッポン・コネクション」、映画を通じて難民問題への関心を高める「難民映画祭」など、そのラインナップは多岐にわたる。

◆2025年の映画祭サポートの実績はこちら

◆ダマー国際映画祭の上映作品13本でJVTAが日本語字幕を担当
4月11日、12日に開催されるダマー国際映画祭もその一つだ。2001年にワシントン州シアトルでスタートした国際短編映画祭で、今年で25周年を迎える。映画祭の代表を務めるのは、『パッション』や『ナルニア国物語』、『Ray / レイ』などの企画やマーケティングを手掛けたマーク・ジョセフ氏。「ダマー」とはヘブル語(ヘブライ語)で「隠喩」や「たとえ話」を意味する言葉だ。この映画祭の特徴は、露骨な暴力描写や過激な映像に頼らず、人間の多様な感情や体験を芸術的に表現することを評価すること。バイオレンスシーンが苦手という人も安心して観ることができ、視聴者の心に深く響く作品が集められている。30分未満であることが応募の条件とされており、JVTAは今年も13の短編作品の日本語字幕を制作、うち12作品は上映用の完パケ(編集ソフトで上映用に映像に日本語字幕をつける作業)まで手がけた。

今年この映画祭の翻訳ディレクションを務めたのは、板垣七重ディレクター。板垣ディレクターはこれまで、恵比寿映像祭やSKIPシティ国際Dシネマ映画祭、難民映画祭、ショートショート フィルムフェスティバル & アジアなどさまざまな映画祭で英日、日英両方のディレクションを担当してきた。今年のダマー国際映画祭の作業を中心に、映画祭上映作品における字幕制作の流れを聞いた。

◆「指示書」を共有し翻訳作業がスタート
作業はまず、映画祭事務局から翻訳の依頼を受けることから始まる。依頼を受けると、映像翻訳ディレクターは本数や各映像の尺、納品の形式や納期などを確認する。長編映画が多い映画祭の場合は、短期間に多くの作品の納品が必須となるため、1作品を複数の翻訳者で分けて担当するチーム翻訳という体制をとることも多い。そこで必要となるのが「指示書」である。

「指示書とは、文字数制限や記号の使い方、表記、スポッティング(字幕をいつ表示して、いつ消すのか決める作業)、ファイル名、申し送りの書き方など、各作品でバラつきがないよう、事前に統一するための資料です。作品の翻訳担当者や、翻訳された映像をダブルチェックする役割のチェッカー担当者に共有します。映画祭のテーマによっては、専用の指示書があることもありますが、JVTAでは一般的な指示書を作成しています。」(板垣ディレクター)

今年のダマー国際映画祭の字幕翻訳チームは、13人の翻訳者と4人のチェッカーで構成された。この映画祭は短編のみなので翻訳者は1人で1作品を担当。チェッカーは一人で複数の作品を手がけた。翻訳者に依頼する際、ディレクターはどこをポイントにして担当者を決めているのだろうか。

「翻訳者さんを探す時は、もちろん得意分野の確認もありますが、それ以前に依頼したお仕事の出来栄えを最も参考にしています。やり取りの丁寧さ、フットワークの軽さなども考慮しています。」(板垣ディレクター)

今回の上映作品はすべて30分以内の短編作品。この映画祭の上映作品は、生や死、家族愛など人間の深い心理を捉えたものが多い。長編に比べてセリフが少なく、作品解釈が大きなカギとなる。

「まずは映像をよく見て、原文スクリプトを注意深く読み込み、全体の流れや前後の流れ、話者のキャラクターや置かれた状況などからを最適な言葉選びをすることが大切です。特に限られた時間内でストーリーを語る短編映画では、映像に映るすべてのものに意味があると思います。セリフも入念に練られています。作り手の立場になって正しい作品解釈ができているかを常に考えてほしいと翻訳者さんには伝えています。」(板垣ディレクター)

◆翻訳者の初稿をチェッカーが客観的な目で確認
翻訳者から初稿が納品されると、チェッカーの作業が始まる。翻訳者は何度も映像を見てリサーチを重ねて字幕を仕上げるため、自分の原稿を客観的に見ることが難しくなりがちだ。そこで冷静な視点で確認するチェッカーの存在が必須となる。チェッカーは翻訳経験が豊富な人に依頼することが多い。具体的に初稿原稿のどんなポイントを見ているのだろうか?

「チェッカーさんには、表記を含む指示書を守れているか、ストーリーの展開をしっかり理解した流れになっているか、調べものができているか、キャラクターにあった表現か、字面が読みやすいかなどの確認をお願いしています。視聴者の目線で作品の内容をきちんと理解できるかを見てもらうことはとても大切な作業です。」(板垣ディレクター)

チェッカーによるチェックを経た後、板垣ディレクターがさらに作品をチェックする。クライアントの意向とズレがないかを再度確認し、修正してから最終納品となる。こうした入念なチェック作業は、AIではなく人間の目で行うことで、よりクオリティの高い字幕となる。

「納品後、クライアントのチェックを経て、修正点をデータに反映します。ダマー国際映画祭の場合、キリスト教に関する文化的背景の確認や日本の教会で使う専門用語などについての確認がありました。また今回は、翻訳した作品のほとんどを完パケ制作まで行い、この作業も修了生に依頼しました。修了生のなかには自ら映像制作をしている人もいます。映像編集などのスキルを活かして、字幕完成後に周辺業務で活躍している人も少なくありません。」(板垣ディレクター)

これから映画祭が目白押しの季節がやってくる。映像翻訳者にとって世界各国の新進気鋭のクリエイターの作品に出会えるチャンスだ。映画祭によっては主催者や来場した監督や出演者と言葉を交わすこともできる。各映画祭の個性や上映される場の雰囲気を知るためにもぜひ積極的に会場にでかけてみてはいかがだろう。自らの字幕を観客の皆さんと共に観る醍醐味をぜひ味わってほしい。

★ダマー国際映画祭
2026年4月11日(土)、12日(日)
日比谷コンベンションホール
https://www.damahfilm.com/

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