News
NEWS
voiceinTYO

【Cinema at Sea 2026 – 特集上映「Homecoming」が開催】沖縄やハワイ、日系移民のルーツや歴史を知る作品が一挙上映

<strong>【Cinema at Sea 2026 – 特集上映「Homecoming」が開催】沖縄やハワイ、日系移民のルーツや歴史を知る作品が一挙上映</strong>

「Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際映画祭」は2023年11月に沖縄で誕生した映画祭だ。映画祭のテーマ「Cinema at Sea―太平洋、海のまなざし、海を知る」には、海に囲まれた沖縄から海を囲む島々と地域(=環太平洋)で活躍するアーティストとその作品を発信し、海によってつながる新たな文化交流の“環”を広げていきたいという思いが込められている。JVTAは第2回(2025年)から上映作品の字幕制作をサポート、第3回となる今年も4作品の字幕制作と映画祭会場での通訳などで翻訳者たちが活躍している。

今年は、Cinema at Sea 2026 – 特集上映「Homecoming」と題し、世界のウチナーンチュ(沖縄県出身者やその子孫)や日系移民が制作した映画がラインナップ。沖縄ハワイ移民125周年を記念したプログラム「ハワイ特集」や、沖縄に関連する注目作を集めた「オキナワパノラマ」など、この映画祭ならではの作品が上映される。

◆クロージングはパプアニューギニア初のアカデミー賞国際長編映画賞への公式出品作品

『ブカおじさんの話』 ©papabukafilm@gmail.com


クロージング作品『ブカおじさんの話』(英題:PAPA BUKA)は、パプアニューギニア初のアカデミー賞国際長編映画賞への公式出品となった話題作。日本語字幕を手がけた染野日名子さんと鳩野明子さんは、英日映像翻訳コースの受講生時代のクラスメートで今回は嬉しい“共演”となった。前半を担当した染野さんはこの作品の魅力について、パプアニューギニアを舞台に第二次世界大戦で戦ったインド人や先住民の記憶を辿る内容でありながら、決して重い雰囲気ではなく、パプアニューギニアの美しい森や豊かな伝統文化を紹介する「ご当地映画」の側面も併せ持つことだと話す。

「とりわけ前半は戦争関連の調べ物が多く、数字もたくさん出てきたのでリサーチにしっかり時間を費やしました。また、ご当地映画らしく固有名詞があちこちに散りばめられているので、制作側の意図を汲みつつ、一時停止できない映画祭来場者のために、それらをどこまで字幕に出すかというところも慎重に検討しました。」(染野日名子さん)

◆厳しい字数制限では一人称の選定も重要
国際映画祭ではよくあることだが、この作品も英語字幕と日本語字幕が併記される。その場合、英語字幕が画面下に横書きで表示され、日本語字幕は縦字幕となる。縦字幕の方が横字幕よりも表示できる文字数が少ないため、翻訳者にはより厳しい字数制限が課せられる。つまり、一人称や名前など頻出のワードを一文字でも短縮することが必要となる。

「登場人物が穏やかな人ばかりで、気づくと一人称がほとんど『私』になってしまいました。最初はパパ・ブカの一人称を『わし』に変えようかとも考えたのですが、文字数が増えるため、通訳として登場するシケの一人称を『僕』に変えることで、全員の一人称が『私』ばかりになるのを避けました。限られた文字数の中でいかに視聴者に分かりやすく伝えるか、情報の取捨選択とワードチョイスがとても難しかったです。」(鳩野明子さん)

作中には英語以外にパプアニューギニアの現地の言葉や、ヒンディー語も飛び交うため、彼らが「外国語」を話していることが分かるように字幕に山カッコ〈 〉をつける必要がある。そういった表記や記号も全体で統一したと後半を担当した鳩野さんは振り返る。前半と後半で違和感がないように、共通して出てくるワードや、登場人物の一人称、口調などについて二人で丁寧にすり合わせた。

二人に見どころを聞いた。

「本編の多くを占める森の中のシーンでは、どこまでも続く深い緑と空に響き渡る澄んだ鳥のさえずり声に包まれ、見ているだけで癒されます。ぜひ皆さんも、画面を通じてマイナスイオンを浴びてください。本作では個人個人が助け合い、その縁がつながっていく様子を感じ取ることができます。世界にそのような温かいつながりが広がっていきますように。」(染野日名子さん)

「個人的には、インド人女性のロミラとパパ・ブカとの間に芽生える心の絆と、言葉の架け橋・通訳としてサポートするシケの仕事ぶりにも、ぜひご注目いただきたいです。」(鳩野明子さん)

◆日系アメリカ人の女性がルーツの沖縄で紅型を学ぶ

『いちゃりばちょーでー』© Kaiya Laguardia-Yonamine


7分程度の短編作品『いちゃりばちょーでー』(英題 Ichariba Chōdē: Once We Meet, We Are Family)は、沖縄にルーツを持つ日系アメリカ人4世のエリカ・クニヒサ氏が、沖縄県で6カ月にわたり「紅型(びんがた)」の制作技術を学ぶに至った経緯とこれからの夢を語るドキュメンタリー作品だ。タイトルの『いちゃりばちょーでー』は、エリカさんが好きだというという沖縄の言葉で、「一度会えばみなきょうだい」という意味だそうだ(作品では「家族(”family”)」と翻訳)。字幕を手がけた春木美果さんは、この作品には、日本人の海外移住や沖縄の日本併合、第二次世界大戦末期の沖縄での地上戦、そして焼け野原から紅型を再興したことなど、近現代の歴史的なさまざまな要素がつまっていたと話す。短い作品だからこそ、エリカ氏の言葉や思いを字幕で表現することを心がけた。

「とくに、エリカさんがハワイを離れて自分は何者なのかを自問し始めたことや、沖縄での交流を思い出して涙する姿が印象的で、エリカさんの心情に見合う言葉選びをしようと思いました。ただし、私自身が感情移入しすぎて、ひとりよがりな翻訳にならないように心がけました。」(春木美果さん)

作中には、第二次世界大戦の沖縄の地上戦では多くの一般人が犠牲になったことをエリカ氏が話すシーンがある。春木さんも慎重に数字を調べて確認し、言葉を選んだ。

「調べたところ、エリカさんが話す数字と沖縄県などが公表している数字が少し違っていたので、どのように表現するか検討し、最終的には具体的な数字を出さないことにしました。今回は沖縄で開催の映画祭で上映される作品ということで、会場の観客にとってもご自身の家族や大切な方々に関する内容であるのではないかと考え、とくに気を配りました。」(春木美果さん)

画面に映し出される紅型の鮮やかな色合いやデザインの美しさにも、ぜひ注目してほしいと春木さんはいう。

「エリカさんがこれからアメリカで紅型の新たな形を作っていくのも楽しみです。この作品を見た方が、紅型について興味を持ったり、これまで関わりのあった人たちとのつながりについて改めて考えたりしてくれたら嬉しく思います。」(春木美果さん)

Cinema at Sea 2026 – 特集上映「Homecoming」では、他にも全19作品が一挙上映される。沖縄開催ならではのラインナップに注目したい。

Cinema at Sea 2026 – 特集上映「Homecoming」
2026年2月20日(金)〜2月28日(土)
那覇文化芸術劇場なはーと 那覇市ぶんかテンブス館テンブスホール 他
公式サイト:https://www.cinema-at-sea.com/

◆【2026年4月期の受講申込を受付中
学校説明会を随時開催!
映像翻訳業界の最新情報解説や字幕翻訳の体験ができる無料イベントを開催中。個別の相談も承っております。映像翻訳にご興味をお持ちの方はお気軽にご参加ください。