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「恵比寿映像祭」で念願のアート作品の翻訳を担当 修了生・今野陽子さんインタビュー

「恵比寿映像祭」で念願のアート作品の翻訳を担当 修了生・今野陽子さんインタビュー
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毎年2月に開催される「恵比寿映像祭」は、アートと映像にフォーカスした国際フェスティバル。映像作品の上映に加え、オブジェやインスタレーションの展示、トークセッション、音楽やダンスのパフォーマンスなどさまざまなジャンルの作品が紹介されています。JVTAは毎年この映画祭に協力しており、今年も展示5作品の日本語字幕を10名の修了生が手がけています。
 

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コルネリア・ゾルフランク《持たないものを与えること》(マルセル・マースほかへ
のインタヴューを含むアーティスティック・リサーチ)2012-Courtesy of the
artist
 

今回は、このイベントの展示映像作品『コルネリア・ゾルフランク』の日本語字幕を担当した修了生の今野陽子さんのインタビューをお届けします。この作品は、前衛アーティストたちのインタビュー映像6点を集めたもの。今野さんはケネス・ゴールドスミスのパートを担当しました。ゴールドスミスはテキストワーク、音楽、ダンス、映像作品など現代芸術のオンライン・データベース「UbuWeb」を1996年に開設。前衛的でアバンギャルドな作品を集めたデータベースでは世界最大規模とも言われています。大学で西洋美術を専攻していた今野さんはアート関連の作品に携わるのが夢だったそう。そんな今野さんが実際にアートの翻訳に取り組んでみた感想を聞いてみました。
 

◆念願のアート作品を手がけた感想を教えてください。
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実は、最初の依頼は字幕ではなく、完成作品の字幕チェックでした。アートが好きで日頃から美術館へ行くことも多いので、その時、「翻訳者としても参加したいな」と思っていたのですが、なんと数日後、字幕の依頼がきたのです。そんな経緯もあり、この作品には、当初よりご縁と愛着を感じておりました。映画祭関連の仕事に参加してみたいという気持ちもあったので、今回携われてとても幸せな気持ちでした。
 

◆今野さんがこれまで学んできた知識を活かせましたか?
私は、大学で美術史を専攻しましたが、研究対象はルネサンスやバロックという、かなり“アナログ”な作品でした。しかし、今回担当した作品は、オンライン上にアーカイブされた前衛芸術についてのインタビュー、つまりアナログとは真逆の“デジタル”な内容だったため、実際の翻訳作業には苦戦しました。ウェブサイトのインフラ構築や、使用しているソフトについて語る場面もあり、IT用語も数多く出てきます。用語の意味は辞典で調べられますが、ウェブサイト制作の基本的な知識がないと辞典の説明文すら理解できないこともありました。
 

同じアート作品とはいえ、私が勉強してきた美術とはジャンルが違うので、翻訳には苦労しましたが、何かを表現する、新しいことを発信しようとするスピリットは、時代を問わずアーティストに共通するものを感じました。
 

◆字幕を作る上で意識したことは?
ゴールドスミスの言葉を字幕にする時は、文脈に沿いながら、固有名詞としてそのままカタカナやアルファベットで表記したり、一般的ではない専門用語は、デジタルな話をしている雰囲気を壊さずに、素人にも分かりやすく翻訳することに努めました。例えば、「インターレースGIF(Interlaced GIF)」というIT用語を調べると「画像のファイル形式の一つであるGIFの拡張仕様の一つで、各画素のデータを表示順とは異なる順序に入れ替えて飛び飛びに記録していくこと…」と説明があったのですが、これではIT知識が全くない人にとっては何を言っているのかよく分かりません。そこで、さらに調べてみると、要は「最初にぼんやりとしていたのが徐々に鮮明に表示される画像のこと」だと分かってきました。最終的には、「インターレースGIF」と単語の日本語訳ではなく「画像送信時にモザイク状から鮮明に変わる様子は~」とくだいた文章に訳しました。
 

また、インタビューには、ドラマや映画のように台本がありません。
ですから、何度も同じ話を繰り返したり、息継ぎも忘れて話し続けたりします。でも、そこに話者の言いたいことや思いが反映されていると思います。字幕にする時も、同じ言葉や内容を繰り返しているなら、あえて日本語でも繰り返すなど、“きれいな字幕”になり過ぎて話者の話す勢いを損なわないように心がけていました。
 

◆この作品を観る人へメッセージをお願いします!
ケネス・ゴールドスミスは、無許可でさまざまなアーティストの作品を自身のサイトで紹介しています。その手法については、賛否が分かれるところでしょう。しかし、ネットワーク環境の発達は、私たち個々の生活の在り方だけにとどまらず、アートや映像作品の楽しみ方、アーティストの表現方法にも、変化と影響を与えていることは確かです。少なからず映像に関わる翻訳者の立場からも、ゴールドスミスの語るアイデアは興味深いものなので、インタビューを字幕付きで楽しんでいただければうれしいです。
 

コルネリア・ゾルフランク《持たないものを与えること》 6点のヴィデオインタビューを含むアーティステック・リサーチ・オンライン 2012-
Courtesy of the artist
 

詳細はこちら
https://www.yebizo.com/jp/program/detail/01-12
 

恵比寿映像祭 公式サイト
https://www.yebizo.com/jp/

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