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発見!キラリ★
身にまといたい空気

発見!キラリ★ <Br> 身にまといたい空気
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3月のテーマ:空気
 

世の中には、褒められているはずなのにどうもうれしくない、というたぐいの褒め言葉がある。例えば、「色白ですね」とか(本人は顔がすぐに赤くなるのが嫌だったりする)、「くせっ毛でうらやましい」とか(毎朝セットするのが大変だったりする)、実は本人が欠点と思っていることや恥ずかしいと感じていることは、いくら褒められてもなかなか素直には喜べない。
 

僕の場合、ごくたまに「年齢より若く見える」と言ってくれる人がいる。もちろん褒め言葉として言ってくれているのは分かるのだけど、どこか釈然としない気持ちも湧く。というのは、そう思われる理由が自分のいろいろな欠点に由来すると思えてならないからだ。
 

その欠点のひとつは、貫禄のなさだ。大人数のミーティングでも暴走族の決闘でもサル山でも、「あ、あいつが中心だな」とひしひしと感じさせられるような貫禄を持った人(またはサル)がいる。貫禄があれば相手にも舐められないし、発言にも重みが増す。でも自分にはそういう年相応の貫禄が身についていないように思えるのだ。だから、社外の人との重要な打ち合わせなんかに出るとどことなく申し訳ない気がする。サルで例えれば、僕は仰向けになった仲間のお腹からかいがいしく蚤を取っているサルくらいの貫禄しかないと思う。
 

欠点のもうひとつは、早口なことだ。早口で話す人は何だかせわしない印象を与えるし、大人の落ち着きに欠ける。サルで言えば、木に登ったかと思えば子ザルにちょっかいを出して、かと思えばおもむろにバナナを頬張る、みたいなサルだ。いっぱしの大人(というかサル)のやることではない。
 

そして3つめは、存在感の薄さだ。以前、海外の旅先で1カ月、同じ宿に泊まって親しくしていた人たちと帰国後に会ったことがあるけれど、その中には僕のことを覚えていない人が何人もいた。こちらは彼らとどこに行って何をしたかも覚えているにも関わらずだ。存在感の有無は貫禄の有無とよく似通っているから、たぶん僕は人の記憶に残るほどの貫禄もキャラクター性も備えていないのだと思う。しつこくサルで例えれば、ボスザルでも子ザルでもないその他大勢の中の1人(というかサル)みたいなものだ。
 

というように、まれに「若く見える」と言われることがあるのは、見た目やファッションのおかげではなく、ひとことで言えば「未熟な空気感」にあると思っている。このあいだ、ヒップホップ・アーティストのカニエ・ウェストのライブで採取された空気に790万円の値がつけられたというニュースがあったが、もし僕が貫禄や存在感をまとえる空気を手に入れられるなら、それなりのお金を払ってもいいかなと思う。まあ本音を言えば、講義で笑いが取れる空気のほうがもっと欲しいけど。
 
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Written by 桜井 徹二
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[JVTA発] 発見!キラリ☆  3月のテーマ:空気
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマをヒントに「キラリ☆と光るヒト・コト・モノ」について綴るリレー・コラム。修了生・受講生にたくさんのヒントや共感を提供しています。

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