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[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の1本『桐島、部活やめるってよ』

今週の1本『桐島、部活やめるってよ』
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8月のテーマ:FESTIVAL
 
 

この作品を見たのは実は先週。原作を2010年の発売当時に読んでいたので、正直、映画にはあまり興味がなかった。原作のよさを映像化するのは「難しいな」と思っていたからだ。というのも『桐島、部活やめるってよ』には、びっくりするような事件も、衝撃を受けるような場面もない。あるのはバレー部のキャプテンである桐島が部をやめるという噂に翻弄される5人の同級生たちの心の変化だけだ(しかも結局、桐島は最後まで登場しない!)。
 
 
 
原作の作者は朝井リョウ。今作は朝井氏のデビュー作であり、しかも当時、彼は早稲田大学の学生だった。知り合いの文芸担当の編集者から「まだ学生だが素晴らしい作家がいる」と薦められて読んだのがこの作品だ。何より驚いたのは、とうに高校生から遠く離れている今の僕にも、小説の登場人物たちの悩みや怒りという心の葛藤が強く、鮮やかに迫ってくることだった。「17歳が踏み出す一歩は世界をまたぐほど大きい。」という単行本の帯の言葉に、「高校生の話ね」とどこか冷めた気持ちで読み始めたのだが、途中からはそんな思いは消え失せ、まるで自分が主人公たちの同級生のような気分で物語を追っていった。
 
 

そんな原作ファンの僕から見ても、この映画は良作だ。余計なセリフやシーンを入れず、主人公たちの心の揺れを静かに描いている。この作品が俳優としてのデビュー作となった東出昌大も存在感があったし、映画部の神木隆之介も、バトミントン部の橋本愛もよかった。
 
 

蛇足だが、この作品に英語字幕をつけるとしたら、きっとかなり頭を悩ませなくてはいけないだろう。作品解釈が重要になるし(この作品解釈は難しいかも…)、登場人物たちの気持ちを理解するために想像力をめぐらすことも重要だからだ。
 
 

いま僕は、アルクとJVTAが開催している『第19回映像翻訳コンテスト特別企画 第1回高校生字幕翻訳コンテスト』の運営を担当している。締め切りは9月なので、どんな字幕ができあがってくるのかは想像もつかない。でも、きっと彼女たちや彼らは、映像翻訳の専門家である僕らを驚かすような字幕を作ってくれると思っているし、そうあって欲しいと願っている。そのためには、より多くの高校生に参加してもらうことが大事だ。このコンテストを盛り上げ、お祭り気分で気軽に参加できるようなものにしたいと思っている。
 

『第19回映像翻訳コンテスト特別企画 第1回高校生字幕翻訳コンテスト』
http://www.alc.co.jp/jimaku/
 
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『桐島、部活やめるってよ』
監督: 吉田大八
出演: 神木隆之介、橋本愛、 東出昌大
製作年:2012年
製作国:日本
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Written by 丸山 雄一郎
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[JVTA発] 今週の1本☆ 8月のテーマ:FESTIVAL

当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

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