【JVTAが字幕ガイドと音声ガイドを制作】SSFF&ASIAのユニバーサル上映会に声優の佐々木望さんが登壇!
JVTAは20年以上にわたり、短編映画の祭典「ショートショートフィルムフェスティバル & アジア」(SSFF&ASIA)の字幕翻訳に協力している。同映画祭では2022年から、見えにくい、聞こえにくい人も映画を楽しめるよう、バリアフリー字幕と音声ガイド(Audio Description)を付けた短編映画の上映を開始。JVTAは毎年、音声ガイドと字幕の制作も担当してきた。6月5日には今年も「ユニバーサル上映会~ Cinema is Inclusive ~」と題したリアルトーク&セミナーが原宿で開催される。会場では全3作品を音声ガイドおよび字幕ガイド付きで鑑賞できるほか、情報保障として、MCの手話通訳、要約筆記が用意される。さらに上映後のトークイベントには、今年で声優デビュー40周年を迎える佐々木望さんが登壇する。佐々木望さんは今年、東京都とSSFF & ASIAによる特別製作作品『彼方の声』で音声ガイドのナレーションを担当。この作品では、AI技術を通してある再会を果たす男性の1日が描かれている。
『彼方の声』
アニメ『幽☆遊☆白書』浦飯幽助役をはじめ、『AKIRA』鉄雄役、『銀河英雄伝説』ユリアン役など声優として多くの作品に出演してきた佐々木さん。昨今は音声ガイドという新たな分野にも活躍の場を拡げている。音声ガイドとは、見えない、見えづらい人が映像作品を楽しめるよう、映像に映っている情景や人物の動き、表情などを言葉で解説し音声で伝えるツールだ。上映後のトークでは、声優として40年のキャリアを持つ佐々木さんがさまざまな視聴者に作品を届けるという役割を担う音声ガイドへの取り組みについて語る。
このイベントではさらに2作品が上映される。
・『HANA』 2025年のSSFF & ASIAの上映作品。芥川龍之介の小説「鼻」を、胸の大きさにコンプレックスを抱えた女子高生の話に二次創作した短編映画だ。同年のクラウドファンディングにより、音声ガイドと日本語字幕ガイドが制作された。こちらは、ダチョウ倶楽部の肥後克広さんが初めて音声ガイドのナレーションを担当。一般公開はこのイベントが初となる。
・『日の出を知らない街』 東京都とSSFF & ASIAによる特別製作作品で、2025年のSSFF & ASIAで上映された。東京で仕事に追われる男性が奥多摩での休日で再生していく物語。
視聴者に映像作品の魅力を余すところなく伝える。その役割は翻訳字幕もバリアフリー字幕や音声ガイドも同じだ。それぞれのツールの利用者にとって本当に必要な情報とは何か。このイベントを通じて改めて考えてみたい。言葉のプロを目指す受講生・修了生の皆さんにとって「伝える」という原点について学びの多い機会になるはず。ぜひご参加ください。
◆「ショートショートフィルムフェスティバル & アジア」 ユニバーサル上映会~ Cinema is Inclusive ~
日時:2026年6月5日(金)16:20-18:10 会場:LIFORK HARAJUKU 料金:無料 ※誰でも参加可 チケットの予約はこちら
★JVTAではバリアフリー字幕と音声ガイドに制作スキルを学べます!
メディア・アクセシビリティ科 音声ガイドコースは5月30日(土)に開講 コースの詳細はこちら 無料説明会はこちら
◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】 映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。 ※詳細・お申し込みはこちら
【2026年5月】日英OJT修了生を紹介します
JVTAではスクールに併設された受発注部門が皆さんのデビューをサポートしています。映像翻訳の仕事は映画やドラマだけではありません。特に日英映像翻訳ではマンガやゲーム、企業のPR動画など幅広いジャンルがあり、翻訳者が体験してきた職歴や趣味などを生かして活躍しています。今回はOJTを終え、日英の映像翻訳者としてデビューする修了生を紹介します。
◆岡田哲史さん 職歴:直近3年間は地域おこし協力隊(多文化共生)として活動。それ以前は10数年間、複数の外資系企業にて品質・工程改善・コンプライアンス等の業務に従事。全ての職務で日英2言語による業務を遂行。シンガポールとニュージーランドに在住経験有。
【JVTAを選んだ理由、JVTAでの思い出】 歴史ある企業で盤石であること、オンラインで受講できること、受講→トライアル→デビューの道筋を示していること、外国語の他にバリアフリーなど多角的に取り組んでいること…を総合的に利点と感じ選びました。思い出は、課題はどれも興味深いのですが、他の受講生の訳と自分の訳を比べて粗が多くて落ち込むことばかりでした。トライアルも複数回落ちたので遠回りしたという感じです。それでも、トライアルで学んだこと、気づかせてもらったことが多々あり「一番の近道は遠回り」という言葉をしみじみ感じています。講師の皆様、一緒に学んだ受講生の皆様、JVTAの職員の皆様に感謝申し上げます。
【日英翻訳の魅力】 どちらかと言うと、通訳はその場を即時的に回していく演出力・瞬発力が必要で、字幕翻訳は特に作品・文脈・背景を深く考える思考力と字数制限に合わせる調整力が必要だと思います。じっくり考えて整合させていい訳に収斂させていく過程はとても楽しいです。翻訳者として最も興味があるのは市区町村のシティプロモーション映像です。その他も不得意・知らないと決めつけずに、謙虚に幅広く取り組みたいです。
◆Claire Gorantさん 職歴:音声・映像スタッフ、英会話、アート教育
【今後どんな作品を手がけたい?】 The genre that surprised me the most, in terms of how enjoyable it was, was documentary. The amount of research and preparation required is absolutely daunting, but it’s all the more satisfying to see at the end how much I’ve learned in the process. And speaking of satisfying, spotting! I would love more opportunities to work on the ultra-granular side of things.
【JVTAを選んだ理由、JVTAでの思い出】 Several years ago, I attended my first translation conference. One of the attendees I met was a graduate of JVTA, and she couldn’t recommend it enough. I signed up for the next available semester, equal parts excited and intimidated by the curriculum, and while the workload was No Joke, each project was incredibly enlightening. I also learned so much from my classmates themselves and the work they created.
◆David Palomoさん 職歴:Musician, Screen Printer, Teacher, English Instructor
【今後どんな作品を手がけたい?】 Unlike most people, my love of Japanese started with music. I’m a huge music nerd and one day, through the magic of the internet, I stumbled upon music from Japan. Not being able to understand what was being said, I bought a Japanese-English dictionary written completely in Romaji and attempted to translate lyrics. Needless to say, it didn’t go well. However, it sparked my interest in the language, and ultimately in translation. I have a deep knowledge of Japanese musicians as well as actors, writers, and directors, so I would love it if I was able to work on translations for music videos, interviews, or PR materials. In addition, translating a movie or drama written by Bakarhythm or Kankuro Kudo would be a dream come true.
【今後の目標】 I love independent music and film. There is a whole world of Japanese entertainment that exists apart from giant robots and idol groups. Although I’m a fan of mainstream entertainment as well, it’s the smaller, lesser-known musicians, directors, and writers that interest me the most. One of my main goals is to be able to put a spotlight on smaller creators and to help them expand their fan base beyond Japan.
★JVTAスタッフ一同、これからの活躍を期待しています! ◆翻訳の発注はこちら ◆OJT修了生 紹介記事のアーカイブはこちら
◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】 映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。 ※詳細・お申し込みはこちら
明けの明星が輝く空に 第196回:ウルトラ名作探訪25:宇宙から来た暴れん坊
とにかく、楽しさが詰まった一作だ。『ウルトラマン』のユーモラスな作品には、このブログでも紹介した「恐怖の宇宙線」※I や「怪獣墓場」※Ⅱ があるが、前者はシニカルな視点がベースにあったし、後者はしみじみとした哀愁を感じさせるものだった。ストレートに楽しさを追求しているという意味で、この「宇宙から来た暴れん坊」は抜きん出ている。
その理由の一つは、子どもなら誰もが夢に見るようなことを題材にしていることだ。物語に登場するのは、なんでも念じたものに姿を変える隕石。ある日、空き地で遊んでいた子どもたちがそれを見つけ、順番に欲しいものを思い描く。食い意地の張った男の子は大きなケーキ。ちょっとおませな女の子はピアノ。それらが目の前に現れるたびに、彼らは大はしゃぎだ。
昔、子どもたちの遊び場所と言えば空き地だった。そこには、いろんな物が落ちていた。それがたとえガラクタの類いであっても、見つけたときは嬉しかったものだ。もし仮に、それが“魔法の石”だったとしたら…。昭和の子どもたちには、夢のようなシチュエーションだ。
そんな石なら大人だって欲しい。子どもたちの様子を見ていた鬼田という男も、それは同じだった。ただし、彼には良からぬ企みがあり、研究機関で保管されていた隕石を、うまいこと盗み出してしまう。やっていることは犯罪なのだが、その方法がちょっと楽しい。記者会見を開いた研究所に小型スピーカーを仕掛け、人がいなくなった頃を見計らって、「ロケットになって俺の所に飛んでこい」と話しかけるのだ。
そうして隕石を手に入れた鬼田。普通の犯罪者なら、それを使って何をするだろうか。マシンガンに変えて銀行強盗?偽札に変えて麻薬の取引?彼は違う。人間サイズの怪獣(ギャンゴ)に変え、それを使ってイタズラするのだ。そう、ただのイタズラ。ホテルでケーキを運んでいるボーイさんを驚かせたり、プールでモデル撮影をしていたカメラマンを気絶させたりして大笑い。でも、それだけ。なんだか、大人のくせして、子どものようなやつなのだ。
楽しさ追求の二つめは、ギャンゴとウルトラマンの戦いだ。鬼田がもっと大きくなれと念じ、巨大化したギャンゴ。主人公のハヤタが乗った飛行機を海に叩き落とし、しゃがんで海の中をのぞき込む。その直後、ウルトラマンが水中から登場すると、ビックリして尻餅をつき、ひっくり返ってしまう。さらに、空に飛び上がったウルトラマンを、ぽかんと口を開けたまま見つめ、飛べもしないのにマネをしてジャンプ。また尻餅。脚を投げ出して座り、だだをこねる子どものように悔しがった。
一方、ウルトラマンも、本気で倒そうとしているようには見えない。それどころか、ピンチを脱するのに脇をコチョコチョとくすぐったり、キックをかわされて海に落ちた後、手で水をすくってバシャバシャとかけたり。こうなると、ウルトラマンまで遊んでいる子どものように見えてくる。
そして、「宇宙から来た暴れん坊」における楽しさの理由の三つめ。それは、ギャンゴのデザインや効果音だ。まず目立つのが、カラーリング。直立二足歩行のギャンゴの体は、首からお腹にかけ、何色にも塗り分けられている。これは満田かずほ(表記は「禾」に「斉」)監督のリクエストだったという。『ウルトラマン』はウルトラシリーズ初のカラー作品だったため、トーテムポールのようにカラフルな怪獣にしたいと考えたそうだ。青や赤、オレンジ色をした、まるで内臓をモチーフにしたかのような形の模様が体の前面を覆い、ギャンゴは怪獣として文字通り異彩を放っている。
さらに興味深いのが、頭の左右に突き出した、アンテナのような金属質の物体だ。メビウスの輪と同じ、ねじれた構造をしており、空洞の部分には“弦”が何本も張られている。それが、左右で反対方向にグルグルと回転。さらには、おそらくこのアンテナからだと思うのだが、途切れることなく、ゼンマイ仕掛けの機械のような「ジジジジ」という音と、「プゥン、プゥン」といった感じの、なんとも気の抜けた音が聞こえてくる。まるで、動くオモチャのようだ。そうか、鬼田が想像できたのは、せいぜいオモチャの怪獣だったに違いない。やはり、鬼田は子どもなのだ。鬼田というキャラクターは、子どもの邪気を象徴する存在として考案されたのだろう。「宇宙から来た暴れん坊」は、“じゃれ合い”のような戦いを見せるウルトラマンも含め、子どもたちが演じる夢物語だったのだ。
最後にトリビアを。この作品には、当時放送作家やタレントとして活躍し、その後東京都知事になった青島幸男氏が、記者役でゲスト出演している。実は、満田監督との個人的な繋がりがあったため、出演が実現したそうだ。まだ当時若手だった満田監督だが、初監督作品となった『ウルトラQ』の「燃えろ栄光」※III では、当時の人気俳優、工藤堅太郎氏※IV も個人的な繋がりからゲスト出演している。いずれも、満田監督がADや助監督時代に培った人間関係だったようだ。仕事には人間関係が大事なんだと、あらためて考えさせる、そんなエピソードだ。
当ブログ過去の記事参照 (タイトルをクリック)
※I ウルトラ名作探訪16「恐怖の宇宙線」 ※II ウルトラ名作探訪22「怪獣墓場」 ※III ウルトラ名作探訪7「燃えろ栄光」 ※IV 特撮俳優列伝26工藤堅太郎
「宇宙から来た暴れん坊」(『ウルトラマン』第11話) 監督:満田かずほ(「禾」に「斉」)、脚本:宮田達男、特殊技術:高野宏一
—————————————————————————————– Written by 田近裕志(たぢか・ひろし) JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
【最近の私】太宰治が書いた『八十八夜』に、しもぶくれの女性の顔を評して「顔は天平時代のものである」という一説がありました。ヒドイ言い方だなあと思ったけれど、ふと疑問が。なぜ自分はヒドイと思ったのか。それって、もしやルッキズム?
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明けの明星が輝く空に 改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る バックナンバーはこちら
◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】 映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。 ※詳細・お申し込みはこちら
GWメルマガ企画 「これが私の人生を変えた!」JVTAスタッフの“お宝”、披露します!【後編】
皆さんが、「映像翻訳を学びたい」と思ったきっかけは何ですか?
初めて映画館で観た映画や、学生時代にヘビロテで聴いていた音楽、何度も読み返した小説や漫画…、JVTAの受講生・修了生の皆さんにはそれぞれに深い思い入れのある大切な作品(アーティスト)があるのではないでしょうか。
今年のJVTAのGW特別企画では、6人のスタッフが人生を変えた作品やアーティストとの出逢いや選んだ理由、仕事に活かされていることなど熱い想いを、お宝アイテムと共に紹介します。
【前編】はこちら
【質問】※全員共通です 1.人生に大きな影響を与えた作品やアーティスト 2.その作品やアーティストを選んだ理由 3.その作品やアーティストから受け取ったメッセージや仕事に活かされていること
デクの成長物語が尊い ◆佐藤真珠:GCS(グローバル・コミュニケーション・サポート) 1.『僕のヒーローアカデミア』
2.『僕のヒーローアカデミア』には、大学生の時に出会いました。その後、原作のコミックも読み、堀越耕平先生の原画展にも足を運んでいます。私の一番の推しは、主人公のデク(緑谷出久)と、幼馴染の爆豪勝己です。彼らのカードを入れたアクリルキーホルダーやグッズを入れたポーチを手作りし、いつもカバンに着けて持ち歩き、パワーをもらっています。私自身はどうしても楽な方を選びがちですが、デクはヒーロー養成の学校に通い、敵(ヴィラン)から人々や社会を守るヒーローになるために、日々努力を続けています。デクにとっては人を助けることが、自分のためでもある。こういう彼の成長を追っていけることが尊いんです。
※デクのカードやグッズをいれた手作りのグッズ
3.私はアメリカ生まれ、アメリカ育ちなのですが、日本のアニメは昔から見ていました。アメリカで日本のアニメを観る時は、英語字幕付きの映像が多かったので、私にとって英語字幕は身近な存在でした、とはいえ、私は日本語が分かるので当時はそこまで真剣に字幕を見ていませんでした。でも、日本語が分からない視聴者にとって英語字幕は作品を理解するための重要なツールだという実感があります。ですから、翻訳ディレクターとして英語字幕に携わっていることは嬉しいですね。アニメのファンは定訳やキャラクター設定などに強いこだわりがあります。私も一ファンとしてその想いはよくわかるので、作品の解釈はもちろん、ファンが見て違和感がなく、喜んでもらえるような字幕を目指したいと考えています。日英の受講生の皆さんにはアニメをきっかけに日本語や字幕に興味を持った人が少なくありません。私自身も映像翻訳を通じてファンとしての想いを活かせる仕事に出会えました。
声優さんの声の聴き分けが特技に! ◆武田和佳奈:バリアフリー事業部 1.アニメの声優(緑川光、平川大輔他多数)
2.小学生の時にアニメ『SLAM DUNK』を見て、流川楓を演じる声優、緑川光さんの大ファンに。彼の出演作を追ううちに、平川大輔さん、森川智之さん、櫻井孝宏さん、小野大輔さん、神谷浩史さんなど多くの声優さんにハマリました。声優好きが高じて、アニメ関連の職場で働いていたこともあります。当時、ゲームとドラマCDを制作する現場(出演は緑川さんを含む豪華声優陣)に携わり、声優の平川大輔さんのレコーディングに立ち会う機会がありました。平川さんからは、キャラの性格や会話する相手との関係性を踏まえて語尾や敬語など繊細なニュアンスについてのご提案をいただきました。声優さんは収録現場でこんな風に命を吹き込んでいくのかと大きな学びがありました。これはその時に頂いた平川さんの直筆サインです。
※平川大輔さんの直筆サイン
3.現在は聞こえない人も映像作品を楽しめるバリアフリー字幕のディレクションをしています。平川さんとの収録の経験から、台本にはない細かなアドリブ、ニュアンス、息遣いなども含め、できるだけ字幕で再現できるように心がけています。実は“声優ヲタク”の知識がアニメの字幕づくりにとても役に立っています。バリアフリーの字幕ではセリフの前に話者名を付けるのですが、古い作品などは台本がないことも。そんな時、声優さんの声の聴き分けで話者を特定することができるのです。声優さんは役によってさまざまな声色を持っているので、作品ごとではなく、声優さんの声を熟知していたことが得意分野になりました!ヲタクの知識はつい“隠しがち”ですが、エンタメ業界ではそれが大事な知識になるので、ぜひバリアフリー字幕の分野で特技を発揮してほしいですね!
宝塚歌劇団は観るエナジードリンク ◆渡邊優那:スクール部門 1.宝塚歌劇団
2.宝塚歌劇団は、私の人生の原動力そのものです。舞台に立つ80名近いタカラジェンヌ全員が「最高の作品を届ける」という思いで共鳴し、全身全霊で放つエネルギーに10年近く心を奪われ続けています。観劇後は「このために生まれてきた。今なら何でもやり遂げられる」と、まさに「観るエナジードリンク」のような活力を貰っています。また、宝塚は私を「好きなことに向かってアクセル全開で行動できる人」に変えてくれました。中学生の頃、ネット環境がない中で情報を得るため、バレエのレッスン帰りに大急ぎで着替えを済ませ、バスが来る数分間だけ書店で雑誌を貪り読んだ経験は、今も私の根底にあります。チケット確保に奮闘したりFC入会の為にファンレターを書いたりと、自ら動かなければ手に入らない世界での経験が、「好きだ!」という純粋な衝動を行動力へと変え、目標に向かって全力で進む今の私を形作ってくれました。
※ずっと自室に飾っている大切な一枚。当時は左端の真風涼帆(まかぜすずほ)さんがトップスターだったが、現在は右端に写る桜木(さくらぎ)みなとさんがトップに。また奇跡のチケット(1階1列目)2枚は、伝説的トップスター礼真琴(れいまこと)さんの退団公演と、そのバトンを受け継ぐ暁千星(あかつきちせい)さんのお披露目公演のもの。
3.宝塚を好きになったことで「熱意を込めた言葉は、必ず相手に届く」という教訓を実体験から受け取りました。高校3年生の時、専門誌『宝塚GRAPH』の懸賞で、宙組スターの集合写真に一目惚れし「この写真を横断幕にして家に掲げたい!」と熱い想いを込めて人生初の応募ハガキを書きました。見事当選し、世界に一枚のサイン入り写真を手にした時の喜びは、今も鮮明に覚えています。振り返ってみると、自分の言葉に込めた「想い」が誰かの心を動かしたという体験は、映像翻訳という言葉の仕事の原点になっているのかもしれません。また、日常生活やお仕事で大変なことがあっても「徳を積めちゃった!SS席が当たるかも」と、全てを前向きなエネルギーに変換して頑張れるのも、宝塚のおかげです。
皆さんの人生を変えた作品(アーティスト)は何ですか? 映像作品を観る視聴者の多くはその作品や出演者のファンです。ファンが見て違和感のない字幕や吹き替えを作るには、ファンの目線が役立つはす。皆さんも大切な作品への想いを大切にし、アピールしてぜひ翻訳者として携わってください。
◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】 映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。 ※詳細・お申し込みはこちら
GWメルマガ企画「これが私の人生を変えた!」JVTAスタッフの“お宝”、披露します!【前編】
皆さんが、「映像翻訳を学びたい」と思ったきっかけは何ですか?
初めて映画館で観た映画や、学生時代にヘビロテで聴いていた音楽、何度も読み返した小説や漫画…、JVTAの受講生・修了生の皆さんにはそれぞれに深い思い入れのある大切な作品(アーティスト)があるのではないでしょうか。
今年のJVTAのGW特別企画では、6人のスタッフが人生を変えた作品やアーティストとの出逢いや選んだ理由、仕事に活かされていることなど熱い想いを、お宝アイテムと共に紹介します。
【質問】※全員共通です 1.人生に大きな影響を与えた作品やアーティスト 2.その作品やアーティストを選んだ理由 3.その作品やアーティストから受け取ったメッセージや仕事に活かされていること
世界名作劇場は日本のコンテンツの宝物 ◆新楽直樹:JVTA代表 1.『あらいぐまラスカル』
2.『あらいぐまラスカル』は1977年に放送され、今も愛され続ける名作です。ラスカルの愛くるしいキャラクターが人気となっていますが、実はとてもせつない物語ということは意外と知られていないのではないでしょうか?原作は主人公のスターリングの自叙伝的小説『はるかなるわがラスカル』。戦時下のアメリカで家族との別れや確執の中で不遇の少年時代を過ごすスターリングが、野生のラスカルと出会い友情を育みます。しかし、ラスカルは農作物を食い荒らすなど害獣とされ、大人たちに疎まれる存在になり1年で野生に戻すことに…。少年はまるで写し鏡のようにラスカルに自らの姿を照らし合わせながら共に成長していくのです。彼らの物語から人生の大切なことを教えてもらいました。放送から50年近く経った今も、JVTAが児童教育の現場で関わる子どもたちの想いや、我が家で共に暮らす愛犬との絆について考えるヒントになっています。ぜひ大人になった今、もう一度見てください。今人気の韓流ドラマと同じぐらい、人間の心の機微や悲哀が丁寧に描かれていて感情を揺さぶられるはずです。動画配信でも見られます。
※放送から50年近く経つ今も郵便局でオリジナルグッズが発売
3.ラスカルも然り、日曜日の7時半に放送されていたアニメシリーズは、『アンデルセン物語』『アルプスの少女ハイジ』『フランダースの犬』『母を訪ねて三千里』など異国が舞台となり、子どもたちだけでなく大人も楽しめる名作ばかりでした。ビデオやインターネットもなかった昭和の時代、子どもたちにとって初めて遠い国の暮らしに触れることのできたアニメーションであり、日本のコンテンツの宝物だと私は思っています。日本語で話す外国人の主人公に感情移入しながら見ていたことで、私はやがて抵抗なく洋画を観る高揚感を楽しめるようになりました。これらの名作が後に私がJVTAを開校する原点になったことはいうまでもないでしょう。
「夢は叶う」とストーンズが教えてくれた ◆藤田庸司:MTC(メディア・トランスレーション・センター) 1.ザ・ローリング・ストーンズ
2.ザ・ローリング・ストーンズに出会ったのはちょうど洋楽を聴き始めた中学生の時です。当時はMTVや『ベストヒットUSA』でマイケル・ジャクソンやマドンナらが大人気でした。ザ・ビートルズも聴きましたが、私が一番影響を受けたアーティストはストーンズですね。特に好きなのはギターのキース・リチャーズ。ギターを弾くきっかけになったのも彼でした。待望の初来日公演に参戦できたのは1990年。このライブにはオリジナルメンバーでもあるベースのビル・ワイマンもいて5人のステージを観られたのは本当に貴重な経験でした。お宝は、2014年の6度目の来日公演〈14 ON FIRE JAPAN TOUR〉のパンフレットです。当時たしか号外として街角で配っていた新聞広告やチラシも大切に保管してあります。
※英語版パンフレットと日本語版チラシ、当時の号外
3. JVTAに入社する前、音楽が好きだったこともあり、フリーランスの翻訳者として歌詞対訳なども手がけていました。2014年の〈14 ON FIRE JAPAN TOUR〉の時、私はJVTAで映像翻訳ディレクターになり7年目。当時日本のファン向けに開設された日本語の特設サイトの翻訳をJVTAが手がけることになり、ずっと憧れの存在だったストーンズのライブに仕事として関わることができました。パンフに挿入されているチラシにも私の名前がクレジットされています。この経験から「夢は叶う」というメッセージをもらいました。辛抱強く続けていれば、チャンスは訪れるのだと。でも日ごろ頑張っていないとこういうチャンスを逃してしまう…。受講生、修了生の皆さんにも大切な作品やアーティストに翻訳者として関わる機会はきっとあります。好きなものを大切にし、ぜひこちらにもその熱意をアピールしてください。
4列目で観た舞台に魅了されて ◆麻野祥子:TSG(翻訳事業推進部) 1.ブロードウェイミュージカル『ウィキッド』
2.『ウィキッド』は中学生の時、当時暮らしていたニュージーランドの劇場に家族4人で出かけ、4列目で観た思い出の作品です。出演していたのはオーストラリアのキャストで、その歌の迫力に圧倒されました。最前列の観客が一緒に歌っていてまるでコンサートのように盛り上がっていたことにも驚きました。歌詞の言葉遊びなどもとても面白くてすぐにCDを購入し、繰り返し聴いていたのを覚えています。私はドイツにも滞在していたことがあるのですが、ドイツ語版の歌詞も調べて英語版と聴き比べたりするほどこの作品が大好きでした。実は、生の舞台にあまりにも感動して同じ公演をもう一度家族で観に行ったほどです。その時は私もCDですっかり曲を覚えていたので、会場で一緒に歌いました!
※当時のパンフレットより 二人の魔女の友情に共感
3.『ウィキッド』は二人の魔女の友情がメインに描かれている点も中学生の私には共感しやすかったのかもしれません。実は当時、学校で仲良しだった友人が転校するというお別れがあり、その思い出ともリンクして強く印象に残っています。この作品をきっかけにミュージカルが好きになり、今もミュージカルスターの来日コンサートに足を運んでいます。また、映像翻訳の仕事でアワードの授賞式に携わった際、この作品の曲の歌唱シーンがあり、夢中になってCDを聴いていた経験が歌詞の解釈に役立ちました。『ウィキッド』は映画も人気ですが、私にとっては舞台で初めてこの作品に出会い、生のエンタメに触れたことが今の仕事に繋がったと思います。
いかがでしたか?
子どもの頃や10代の時に出会った作品やアーティストは、その後の生き方や働き方に大きな影響を与えてくれるものなのだと改めて感じたのはないでしょうか?
【後編】はこちら
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花と果実のある暮らし in Chiang mai プチ・カルチャー集 Vol.101 ニッポン中古文化
★「花と果実のある暮らし in Chiang Mai」 インパクト大の写真をメインにタイのリアルなプチ・カルチャーをご紹介しています。
お茶の時間、タイ人の友人が、日本の中古品のことを話題にあげました。もちろん、20年前からタイでも中古品のお店はあり、洋服の中古店などは、こだわった店主がセレクトしたものが置いてあるようなイメージでした。ところが今は…「いやいや、もっと規模が大きいファクトリーのような中古販売場になっていて面白いのよー!」と友人がいうので、そのまま二人で一緒に見に行くことに。いつも通っている大通りから少し入ると、殺風景で大きな敷地に4~5軒、トタン屋根の工場のような建物がありました。建物の中に入ると日本の家にありそうなものが山のように置いてあります。洋服、おもちゃ、アウトドア用品、家具、トランク、胡麻すり器、日本人形、引き出物の食器…。圧倒されて、何を見て良いかわからないほど!また、曜日によって、セールの割引額が変わり、洋服やバッグは1キロいくらで販売されています。ちなみに私が行った日は90%オフセール!友人はコーチのバッグを数百円くらいで買いました。タイ人や中国人、西洋人もいます。目が肥えている人は、金が付いたもの、お財布など(たまにお金が入っている)を目当てにする人もいるそうです。
中古販売場の雰囲気
中古販売場の雰囲気
つまり、これらは亡くなった人の荷物(遺品)、引っ越しで不要のものなどが、そのままこちらに海を越えてやって来た証であり、日本の高度経済成長期で物が豊かだった時代の痕跡のように感じました。不要なものが必要な人の所に行くのは良いことですが、これからますます進む高齢化社会の一面を切り取った現実に見えました。土地が変われば見方も変わる。日本では要らないものでも他の視点でみたら安い宝物になるのです。そんなお店の中で躊躇し圧倒されていた私も、しばらくすると友人の宝物探しに参加しているのでした。
昭和レトロなキリンの100周年ペアグラスを150円でGET
昭和レトロなキリンの100周年ペアグラスを150円でGET
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Written by 馬場容子(ばば・ようこ)
東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。 —————————————————————————————–
花と果実のある暮らし in Chiang Mai チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美 バックナンバーはこちら
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【修了生・ニールセン北村朋子さん】映像翻訳のスキルとデンマークでの子育て経験を活かし「文化翻訳家」として活躍
デンマークで四半世紀にわたり「文化翻訳家」として活躍する日本人がいる。
JVTA開校時の修了生、ニールセン北村朋子さんは2001年、結婚を機にデンマークのロラン島に移住。その後、日本のメディア(TV、新聞、雑誌、ウェブ、ラジオ)の現地での取材コーディネートや通訳、翻訳(デンマーク語、英語、日本語)、ライターなどフリーランスとして多才なキャリアを重ねてきた(関連記事) 。2026年1月には現地で出産、子育てをした経験を活かして執筆した書籍『経済力も幸福度も高くなる デンマークのすごい教育』(青春出版社)が出版された。ニールセンさんがフリーランスになったきっかけが映像翻訳だった。
◆開校したばかりのJVTAで映像翻訳を学びフリーランスとして独立 得意分野を活かしてスポーツ番組を担当 ニールセンさんは、大学卒業後にインテリア関連の会社に勤務。その後アメリカでの1年間の語学留学を経て、帰国後にアウトドア関連の会社に就職した。やがて、「身につけた英語力を活かしてクリエイティブな仕事をしたい」と当時(90年代後半)開校したばかりのJVTAに入学し、働きながら映像翻訳を学ぶ。ちょうど、『メルローズ・プレイス』や『ビバリーヒルズ青春白書』などが大人気の頃だったとニールセンさんは振り返る。
「『奥様は魔女』や『こちらブルームーン探偵社』『名探偵ポワロ』など海外のドラマや映画が好きだったので、セリフを訳す映像翻訳の授業は、本当に楽しかったです。英語から日本語にローカライズするには、いかに視聴者に分かりやすく伝えられるかが大切。つまり、日本語のアウトプット力が重要だと実感しました。特に印象に残っているのは、新楽代表の授業で日本語にしっかりと向きあったことです。それまでこんなにじっくり日本語について考える機会がなく、日本語のすばらしさや奥深さを改めて知りました。この学びがその後のキャリアにも繋がっていると思います。」(ニールセン北村朋子さん)
ニールセンさんがJVTAのコースを修了した当時は現在のように動画配信サイトなどもなく、「映画やドラマの字幕や吹き替えを担当できる人は一握り」と言われていた時代。サッカーが好きだったニールセンさんは、スポーツ関連の番組のレギュラー枠を担当することになる。やがてフリーランスの映像翻訳者として独立。時には海外へサッカー関連の取材に出かけることもあったという。
「初めて担当したのはカーラリーの番組で、その後もアメリカンスポーツニュースで様々な番組の翻訳を手がけました。スポーツ番組は即時性と専門性が求められる分野なので、翻訳者として鍛えられ、得意分野になりました。当時仕事を教えてもらった先輩はとても厳しかったのですが今も交流があり、本当に感謝しています。」(ニールセン北村朋子さん)
◆日本人で一番デンマークに詳しい人になる 映像翻訳者として約4年の経験を積んだニールセンさんは、2001年にデンマークに移住。ここで、初めてデンマーク語に向き合うことになる。デンマーク語は特に発音が難しく、始めは全く分からなかったそうだ。しかし、デンマーク人は小学1年生から実用英語を学ぶため基本的にみんな英語ができる。そのため意思の疎通には困らなかったとニールセンさんは当時を振り返る。
「せっかくデンマークに来たのだから、日本人で一番デンマークに詳しい人になろうと決意しました。現地で生活をしてデンマーク語ができることで、文化的なニュアンスや現地の人々が何を大切にしているかをダイレクトに理解できます。ワールドカップでデンマーク人サッカー選手に取材した際も、デンマーク語で話すと彼らの態度がすぐに打ち解けたものになり、一気に親密さが増しました。」(ニールセン北村朋子さん)
現在は翻訳者だけではなく、通訳者としての仕事も多いが、実は通訳の学習やトレーニングを受けたことはない。しかし、映像翻訳者として、作品の背景を理解し、キャラクターを意識しながらセリフを訳していたことが独自のスキルに繋がったと話す。ある時、クライアントから「話者のキャラクターがある通訳は初めてだ」と言われたという。
「現場ではさまざまな人物の言葉を通訳します。私は映像翻訳者の習性で仕事や立場、年齢などを見極めて無意識にキャラクターを作りながら訳していたんですね。そのほうが初対面同士でも親しみを感じられるのではないかと思い、一人称も『私』だけでなく『俺』や『僕』も使い分けたりして…。キャラクター性を指摘された時は『しまった!』と思ったのですが、実際は『人となりが伝わってきた』と好評でした。それが私の経験から生まれた個性なのかもしれません。」(ニールセン北村朋子さん)
ニールセンさんがデンマーク人の言葉を日本語に訳す際、「朋子の日本語訳は私の言葉よりずっと長いのはなぜ?」と聞かれることがあったという。その理由は、デンマークでは当たり前でも日本人には馴染みのないことに対してはきちんと補足して伝えているから。これも、文化的な違いを汲み取って訳す映像翻訳に通じるものだ。
◆デンマークの教育について執筆した書籍が発売前に重版に デンマーク移住から25年、ニールセンさんが手がけてきた仕事は多岐にわたる。環境、エネルギー、食、社会保障、スポーツ、農業、エンターテインメントなど、数多くのジャンルに知見を広げてきた。得意分野を敢えて限定しなかったことや、現地での暮らしの経験を踏まえて言語だけでなく文化的な背景も含めた橋渡しをしてきたことが、結果的に文化翻訳家としての自身の基盤になったとニールセンさんは回顧する。なかでも教育関連は自身の育児経験を通して内側からつぶさに見てきたことが、書籍『経済力も幸福度も高くなる デンマークのすごい教育』(青春出版社)の執筆に繋がった。同書の編集を担当した青春出版社の中野和彦さんは、他の書籍の編集中にデンマークの教育についてリサーチする中でニールセンさんの存在を知り、執筆を依頼したと話す。同書は発売前に重版が決まるという異例の展開となり、発売後にニールセンさんが日本に帰国した際はラジオへの出演依頼が数多く寄せられた。
『経済力も幸福度も高くなる デンマークのすごい教育』(青春出版社)
「執筆には自分の経験値だけでなく、最新の教育改革に関する法律関係など、制度的な裏付けのためのリサーチも必要でした。それも映像翻訳をする中で身につけたことが土台になりました。偏差値や学校ランキングもなく、『競争』ではなく『共創』というデンマークの教育は日本人にとっても興味深いものではないでしょうか。この本のおかげで日本でよく聴いていたピーター・バラカンさんのラジオ番組にも出演させていただきました。思わぬところからご縁ができるものですね。」(ニールセン北村朋子さん)
コロナ禍以降、JVTAでは全授業をリモートに切り替えた。そのため現在は世界各地に受講生、修了生が点在している。ニールセンさんのように、現地で活躍の場を広げたいという人たちにメッセージを頂いた。
「海外在住者が自分の経験を活かす方法として、映像翻訳の技術を学ぶことは有用です。私自身、語学力だけなく、作品解釈やリサーチのスキルを身につけたことで、文化の仲介役としての役割を確実に広げることができました。フィギュアスケートやK-POP/J-POPの流行など世界でアジアの文化が認められる時代が来ていると感じています。デンマークでも着物や日本の発酵食などへも高い関心が寄せられていますが、こちらではまだ十分な情報がないのが実情です。だからこそ、両方の文化の知識を持ち、間を繋ぐ翻訳者、通訳者が求められています。皆さんもその国や地域に最も詳しい日本人を目指して頑張ってください。」(ニールセン北村朋子さん)
最近は、韓国語の学習も始めたというニールセンさん。多言語を理解することでより世界観が広がると語る。『経済力も幸福度も高くなる デンマークのすごい教育』の出版をきっかけに今後のニールセンさんのさらなる活躍に注目したい。
・「経済力も幸福度も高くなる デンマークのすごい教育」(青春出版社)
公式サイト:https://www.seishun.co.jp/book/24839/
・ニールセン北村朋子さん 公式サイト:https://tomoko-kitamura-nielsen.studio.site/
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◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】 映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。 ※詳細・お申し込みはこちら
【ロジカルリーディング力強化コース】山根講師のモットーは「リラックスした雰囲気の中で高度な内容を分かりやすく」
ロジカルリーディング力 強化コースは、適切な訳文をひねり出すために英文と格闘することで一段上の解釈力を目指すカリキュラムになっています。課題は一筋縄ではいかないものが多く、受講生の皆さんも苦労されているようです。でも、心配は要りません。ロジカルリーディングのクラスでは「リラックスした雰囲気の中で高度な内容を分かりやすく」をモットーに授業を進めていきます。課題に取り組んでいる時に生じた疑問は授業中に解決できます。そうして新たに学んだ考え方が次の課題に生きてきます。
今回はロジカルリーディング力 強化コースを通じての学びとクラスの雰囲気について受講生の声を集めてみました。
・とても丁寧に解説して下さり、分かりやすかったです。細かな原文のニュアンスを伝える訳語の選び方、原文にはないが言葉を足す部分、原文の複雑さに付き合わずにすっきり訳す部分など、気づきが多かったです。いつも受講生の方の、よかった部分にフォーカスして授業を進めて下さるので、間違えたら恥ずかしいという気持ちを持たずに参加できました。(Aさん)
・どの回も悩む箇所がありましたが、山根講師の解説により疑問点がすっきりと解消される感覚がありました。またユーモアを交えた先生のお話を聞くのも楽しみで、個人的に多忙な期間だったのですが、授業の時間は毎週の活力になっていました。レベルの高い他の受講生の方々の訳文にも刺激をたくさんいただきました。(Bさん)
・「もう一歩踏み込んで考える」というのが、私が思っていた位置よりもさらにもう一歩踏み込んだ所でした。また、「一歩引いて全体を見る」というのも、私が思っていた位置よりさらにもう一歩引いた所でした。その幅を広げられたのは今後活きてくると思います。
何より山根講師がとても面白く、毎回授業が楽しみでした。他の生徒さんたちの笑顔をたくさん見られるのが、山根講師の授業の一番の特徴です!(Cさん)
・「5名いたら5通りの表現になる」。クラスメートがその訳文に辿り着いた過程を知ることができて、“原文を理解する”ためにどういったアプローチで考えるべきなのか?を見直すきっかけになりました。山根講師の解説と、他のクラスで登場した訳例なども共有していただけたことで、自分の発想だけでは足りない部分を補うことができたという感覚もあります。(Dさん)
◆ロジカルリーディング力強化コース 2026年4月期は5月19日(火)から順次開講 コースの詳細はこちら
無料体験レッスンの詳細とお申し込みはこちら
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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第138回 “ANIMAL KINGDOM”
“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi
第138回 “ANIMAL KINGDOM”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。
今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
予告編:『アニマル・キングダム』 本予告
VIDEO
エレン・バーキン率いるアウトロー家族の“heist”ドラマ!
本作はドラマの老舗TNTによるクライムドラマの傑作で、2022年にシーズン6をもって完結している。ようやくNetflixのラインアップに加わり、筆者は全75話を12日で完走した。
“Animal Kingdom”は、エレン・バーキン率いる機能不全のアウトロー家族を鮮烈に描く、必見の“heist”(強奪)ドラマなのだ!
“May we all get what we want…and never what we deserve” (“Smurf”)
—カリフォルニア州の海辺の街オーシャンサイド
ジョシュア・‘ジェイ’・コディ(フィン・コール)が目を覚ますと、母親のジュリアがカウチで死んでいた。ヘロインの過剰摂取だった。17歳のジェイはまったく感情を見せずに、祖母のジャニーン・‘スマーフ’・コディ(エレン・バーキン)に連絡を取った。
スマーフはジェイを家族として温かく迎え入れた。家は豪奢ではないが、ゲートとプール付きで大きい。
スマーフには娘のジュリア以外に4人の息子がいる。
リーダー格の養子‘バズ’(スコット・スピードマン)には、同棲相手との間に幼い娘がいる。次男クレイグ(ベン・ロブソン)はアルコールとドラッグに溺れている。元プロ級サーファーの三男デラン(ジェイク・ウィアリー)は、ゲイであることを母親に隠していた。長男の‘ポープ’(ショーン・ハトシー)は服役中だ。
コディ一家は強盗で生計を立てている。
支配的な家長スマーフが、子供の頃から息子4人に戦い方、嘘のつき方、騙し方、そして盗み方を教えてきたのだ。この機能不全の家族は一枚岩ではないが、‘犯罪’という大義の元では見事に結束する。
突然ポープが仮出所してきた。3年前、バズとポープは銀行強盗を試みるも失敗。ポープが一人で罪をかぶって懲役6年の実刑判決を受けた。
ポープはメンタルが不安定なために、家族の面々は彼の不意の出現にとまどった。
次のヤマは宝石商の襲撃だった。
ポープが加わり、ジェイも逃走車の調達で強盗デビューを果たした。
ジェイは家族を失ったが、代わりに犯罪者の家族ができた。
彼は若くて聡明で腹が据わっている…。
“Some people just aren’t meant to be parents” (“Smurf”)
エレン・バーキンは、ニューオーリンズが舞台の『ビッグ・イージー』(1986)、アル・パチーノと共演した『シー・オブ・ラブ』(1989)など、いわゆるネオ・ノワール作品で忘れがたい演技を残した。本作では、絶対的なカリスマを持つ妖艶なスマーフを貫禄で演じ、ドラマをも支配する。
破天荒でセクシーな若き日のスマーフを演じたのがレイラ・ジョージ。ヴィンセント・ドノフリオ(“Law & Order: Criminal Intent”)とグレタ・スカッキの娘で、シリーズ後半では準主役級の活躍ぶりで目が離せない。
(※)ニックネーム“Smurf”の由来は、’80年代の人気アニメキャラからきている。(「資金洗浄者」を意味する“smurf”からではない。)
ロンドン生まれのフィン・コールは、兄のジョーと共演したギャングドラマの金字塔“Peaky Blinders”のマイケル・グレイ役でブレークした。冷徹で抜け目のない‘ジェイ’役は本作のキー・ロールで、熱しやすい4人兄弟とのコントラストが鮮やかだ。
スタイリッシュなバズ役のスコット・スピードマンは、社会現象となった“Felicity”が懐かしい。最新作は、タイトルロールを演じたチャーミングな私立探偵ドラマ“R.J. Decker”(Disney+)。バズとスマーフの確執は、シリーズ前半のハイライトだ。
長男ポープを演じたショーン・ハトシーは、硬派の警察ドラマ“Southland”でブレーク。最近では、大ヒット中の医療ドラマ“The Pitt”(本ブログ第127回参照 )で元軍医のER医師アボットを演じ、エミー賞ゲストアクター賞に輝いた。ハトシーは、地雷のような‘キモやばい’ポープ役に見事にハマった。
これに怖いもの知らずの次男クレイグを演じたベン・ロブソン、ナイーブな三男デラン役のジェイク・ウィアリー、さらにジェイの奔放なガールフレンドのニッキーを演じたモリー・ゴードンが加わり、見事なアンサンブルキャストを形成する。
“Everything is fine. Bring your gun” (“Smurf”)
原作は実話ベースの同名オーストラリア映画(2010)。映画版で監督・脚本を務めたデヴィッド・ミショッドが、本作の製作総指揮に名を連ねる。
オリジナルのショーランナー(兼共同脚本)は、高評価のサバイバル・スリラー“Yellowjackets”を手掛けたジョナサン・リスコ。また“ER”、“The West Wing”(本ブログ第33回参照 )、“Shameless”、“The Pitt”等のヒット作を生んだジョン・ウェルズが、製作総指揮・共同監督・共同脚本を務めた。
眩しい太陽、白くきらめく波頭—オーシャンサイドの舞台効果は絶大だ。強盗がメインディッシュ、セックス、ドラッグ、殴り合いがアペタイザー、サーフィンがデザートという構成。
ハイテクとは無縁のクラシックで多種多様な強盗・強奪シーンは新鮮で爽快。最大の見どころは、マインドゲームで一家を支配し続けるスマーフと、母親への愛憎が複雑に絡み合うクセのある息子たちとの対立だ。さらに、触媒的なジェイの存在が、緊張感を高める。
マフィアでもギャングでもない、自由を謳歌する歪んだ絆で結ばれた犯罪一家。彼らが奏でる物語には抗いがたい強烈な中毒性がある。キャラクターアークは強固で深堀りされ、兄弟間のヒューマンドラマとしても見ごたえ十分。キャラたちの行動は粗暴だがアクターたちの演技は繊細で、本作を荒っぽいだけのアクション/バイオレンスドラマと差別化している。
暴走し仲間割れする息子たち、敵も味方も手玉に取るスマーフ、母親に挑むバズ、犯罪の才能を開花させていくジェイ。より大胆により洗練されていく強奪計画、裏切りと試される兄弟愛、積みあがる死体。そして、『俺たちに明日はない』を髣髴させるスマーフの回想シーンが、見事に現実と交錯していく。
常に動き続けるストーリーはシーズン2から指数関数的に面白くなり、アドレナリン全開、凄絶で宿命的なエンディングに向かって疾走し続ける。
本作が、エミー賞・ゴールデングローブ賞にノミネートすらされたことがないという事実はちょっと受け入れがたい。
(映画データサイトIMDbの評価は8.2だ。)
“Animal Kingdom”は機能不全のアウトロー家族を鮮烈に描く、必見の“heist”(強奪)ドラマ。
生き残るのは誰だ!
原題:Animal Kingdom
配信:Netflix
配信開始日:2026年2月3日
話数:75(全6シーズン、1話 43-60分)
Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
探究!昭和歌謡ブーム ~6つのコラムで知る‟古くて新しい、エモい”の秘密~
本格的な記事の執筆にチャレンジするJVTAの日本語表現力強化コース。 2026年3、4月期の受講生が、キラリと光るコラムで「昭和歌謡」の魅力に迫ります。
Ⅰ. 昭和歌謡はなぜささる!?
■心に沁みるのは、シンプルな旋律とストレートなことば 取材・文/舟津由美子 ■演じるように歌う。 表現者、山口百恵 取材・文/松村 彩花 ■昭和歌謡に学ぶ、言葉のチカラ 取材・文/リスカウ知恵美
Ⅱ. あの歌が誘うもう一つの世界
■選び抜かれたフレーズ、「ひとりぽっちにしないでおくれ」 取材・文/磯﨑留実 ■あみん 素朴さが愛された異彩のデュオ 取材・文/勅使河原美紗 ■血のバラを贈る愛。浅川マキが歌う「かもめ」に酔いしれる 取材・文/嘉數千絵
Ⅰ. 昭和歌謡はなぜささる!?
■心に沁みるのは、シンプルな旋律とストレートなことば 取材・文/舟津由美子
先日、何気なく見ていた歌番組で中森明菜の『スローモーション』が流れてきた。昭和歌謡の特集のようだ。1982年(昭和57年)に発表されたこの曲は、中森明菜のデビュー曲である。
この時代の曲らしく、メロディーがシンプルで耳に残る。初めて聞く人でも、思わず口ずさんでしまいそうなわかりやすい旋律だ。このシンプルさこそが昭和歌謡の魅力の一つといえる。ちょっと頑張れば自分にも歌える、昭和歌謡にはそんな親しみやすさがある。テクニックばかりが前面に押し出され、難しいイメージのある現代の楽曲とは対照的だ。
昭和歌謡は、メロディーだけでなく歌詞もシンプルでわかりやすい。その一番の特徴は、喜びや悲しみや切なさといった、誰もが抱く感情をストレートに表現している点だ。誰か特別な人の話ではなく、等身大の自分を感じることができる。だからこそ、半世紀近くたった今も、多くの人に支持されているのだ。
昭和歌謡には現代の若者もラブコールを送る。SNSやTikTokが火付け役となり、人気が再燃している。彼らの言葉を借りると、昭和歌謡は「エモい」。「エモい」とは、英語の「emotional」を語源とし、心が強く揺さぶられるものに対して使われる形容表現だ。
世の中がどれほど変化しようと、人の喜びや悲しみの本質が変わることはない。昭和歌謡には、現代の楽曲のような派手さや斬新さはない。だがそこには、現代の若者たちの心を揺さぶるだけの、シンプルでストレートな魅力があるのだ。
■演じるように歌う。 表現者、山口百恵 取材・文/松村 彩花 昭和歌謡が注目を集めている。特に注目したいのは、昭和のアイドルたちだ。昭和のアイドルが残した曲は、どんな世代でも知っているはず。特徴は、耳に残るキャッチーなメロディー。現代の複雑化した楽曲に比べると、歌いやすいと感じるかもしれない。しかし、そのシンプルさゆえに、聴き手の心を揺さぶる高い歌唱力と、圧倒的な表現力が求められる。それらなしには大ヒットは成立しないのだ。
表現力が特に際立つスターがいる。1970年代に活躍した山口百恵だ。
表現力とはいっても、感情をあらわにするようなものではない。歌詞を自らが吐く言葉のように歌い、聴き手の目の前に情景を浮かび上がらせる。まるでドラマを見ているように、その世界観にぐっと引き込まれる。
代表曲の『いい日旅立ち』は、旧国鉄の旅行誘致キャンペーンソングだった。一人旅に出る女性が、しっとりと、静かに、語りかけるように歌う。どこか切なさを感じさせる曲調だが、山口の演じるような歌唱法は、孤独というよりも、自立しようとする女性の強さを感じさせる。
サビでは、伸びやかに響く声とともに、車窓から望む日本の美しい情景が広がる。この女性に訪れるであろう明るい未来さえ予感させてくれる。
この曲のリリース当時、山口はまだ19歳。どのような経験を積めば、これほどの表現ができるのかーー。
彼女の楽曲にはそれぞれに異なる物語があり、彼女はそれぞれの人生を巧みに演じ分ける。もはやアイドルという言葉では語れない存在、それがそれが山口百恵だ。
■昭和歌謡に学ぶ、言葉のチカラ 取材·文/リスカウ知恵美 情緒あふれる昭和歌謡。聴けば懐かしい気持ちになる。昭和歌謡は時代を経ても色あせない。その魅力は、共感を呼び起こす歌詞にある。
昭和歌謡史を彩る名曲の一つ、『なごり雪』。1974年(昭和49年)、伊勢正三が作詞し、当初はフォークバンド、かぐや姫のアルバム収録曲の一つとして発売された。翌年、フォークシンガーのイルカがカバーし、『なごり雪』はイルカの曲として大ヒットを記録した。
君が去ったホームに残り 落ちてはとける雪を見ていた 今春がきて 君はきれいになった 去年よりずっときれいになった
(歌詞引用 『なごり雪』作詞・作曲 :伊勢正三)
別れの歌。男は恋人と別れて違う人生を歩く。伊勢正三がこの曲を作詞したのは、21歳の時だという。「『なごり雪』は自分自身にとってどんな曲か」という問いに対し、こう答えている。
「僕の21歳の終わりの頃の感性だからこそできた曲。あの瞬間に(その時代を生きた僕の)すべてが詰まっている」。
青春。その一瞬の煌めきと切なさが込められた『なごり雪』。大切だった恋人が静かに去っていくシーンが浮かび上がる。皆それぞれが、それぞれに経験する青春。この曲を聴くと、自らの記憶が蘇ってくる人もいるだろう。歌詞に共感を抱き、郷愁に浸る時間は格別だ。
現代の曲にはカタカナや英語の歌詞が多い。「かっこいい曲風」にはなるが、思いが伝わりにくいと感じる人もいるだろう。一方、昭和歌謡には聞き手の共感を呼ぶ言葉がある。歌に込められた感情がストレートに伝わってくる。それは、言葉の素晴らしさをあらためて教えてもらう時間でもある。
※イメージ
Ⅱ. あの歌が誘うもう一つの世界 ■選び抜かれたフレーズ、「ひとりぽっちにしないでおくれ」 取材・文/磯﨑留実
近年、昭和歌謡のリバイバルブームが熱い。キャッチーなメロディーが注目されがちだが、もっと掘り下げたい魅力がある。それは、「こだわり抜かれた歌詞」だ。
昭和歌謡を代表する作詞家、星野哲郎。その唯一無二の表現力が如実に表れているのが、美空ひばりの「みだれ髪」だ。特に秀逸なのが3番の歌詞である。まず着目したいのは、その最初のフレーズだ。
春は二重(ふたえ)に巻いた帯 三重(みえ)に巻いても余る秋
恋人に捨てられた女が、つらい日々を過ごし痩せ細っていく。その痛々しい姿が、着物の帯を用いて見事に表現されている。また、春から秋への移り変わりは、ただ時間の経過を表しているだけではない。幸せだった「春」から、失意の「秋」へ。四季の持つイメージを巧みに使い、情景を思い浮かべやすくしているのだ。
ひとりぽっちにしないでおくれ
これは3番の最後、すなわち曲全体の最後のフレーズだ。特筆すべきは、ただ1文字、「ぽ」である。「ひとり〝ぼ〟っち」と比べてどうだろうか。「ひとり〝ぽ〟っち」の方が、より一層わびしさが匂い立つように感じないだろうか。取り残された感が増す、とも言えるかもしれない。たった1文字違うだけなのに、もの悲しさが際立つのだ。しかも、このフレーズで曲が終わる。ラストにこのワードが来ることで、哀れな女の心痛が、余韻として聞き手の心に残るのである。
何とも味わい深い星野哲郎ワールド。あなたも一歩足を踏み入れれば、心を打つフレーズに出会えること間違いなしだ。
(歌詞引用 「みだれ髪」作詞:星野哲郎、作曲:船村徹)
■あみん 素朴さが愛された異彩のデュオ 取材・文/勅使河原美紗 1982年(昭和57年)、オリコン年間売上1位を獲得したのは、素朴な大学生だった。それが、あみん。岡村孝子と加藤晴子による歌謡デュオだ。
二人は同年春のヤマハポピュラーソングコンテストでグランプリを受賞。優勝曲『待つわ』でデビューすると、瞬く間にスターダムを駆け上がり、年末にはNHK紅白歌合戦に出場した。
当時は「アイドル黄金期」。80年デビューの松田聖子のほか、小泉今日子や中森明菜ら「花の82年組」は、近年の昭和アイドルブームでも存在感を放つ。そんなスターを横目に、82年唯一のミリオンセラーとなったのが、あみんの『待つわ』だ。
それでも、二人は自然体だった。紅白歌合戦の初出場者会見を欠席したのは、なんと、大学のレポートで多忙のためという。
楽曲『待つわ』も、飾り気のない表現が愛された。曲名の通り、サビは「待つわ」と繰り返す。
私待つわ いつまでも待つわ たとえあなたが ふり向いてくれなくても 待つわ いつまでも待つわ 他の誰かに あなたがふられる日まで (歌詞引用 『待つわ』 作詞、作曲:岡村孝子)
想う人がいる。大胆に行動する勇気はない。出来るのは、待つことだけ。純粋で臆病な本音を乗せた、混じりけのないハーモニー。華麗なアイドルが世間をにぎわせた時代、あみんの無垢さは異彩を放った。
デビューから1年4カ月で、あみんは活動休止した。加藤が学業に専念し、就職を目指すのが理由だった。
年月を経て、2007年には再結成を果たしている。時代を超えてもあみんの真っすぐな歌は、私たちの心にすっと入り込む。
■血のバラを贈る愛。浅川マキが歌う「かもめ」に酔いしれる 取材・文/嘉數千絵 昭和歌謡が今、若者を惹きつけている。感情を赤裸々につづった歌詞が、スマートさに慣れた世代には新鮮に映るらしい。そうであるならば、この一曲を聴いてほしい。人間臭さという点において格別の異彩を放つ、浅川マキの『かもめ』だ。
※イメージ
1968年(昭和43年)、新宿の地下劇場。深夜。
黒いドレスに、長い黒髪。タバコを燻らせる浅川マキ。三拍子のリズムに乗せて彼女は歌う。
おいらが恋した女は 港町のあばずれ
劇作家で歌人の寺山修司が、娼婦に恋した船乗りを描く。「かもめ」と呼びかけるが、相手は海鳥なのか女なのかは分からない。
男には金がない。娼婦の部屋の前をうろつくのが精一杯だ。ある夜、バラを抱えた上客が彼女につくのを見た。匂い立つバラと抱きあう二人。妄想しては落ち込む男。しかし、「おいらの恋は本物」との自負が、彼を行動に駆り立てる。
不意にジャック・ナイフをふりかざして 女の胸に赤いバラの贈りもの
折り畳み式の大型ナイフが肉を裂く。噴き出す鮮血を見て、男は「赤いバラ」と呼ぶ。不本意な禁欲を強いられた男の愛が、最悪の形で結実する……。
娼婦の言い分はひと言もない。船乗りの独りよがりな恋物語を聞かされるだけだ。
浅川はこの歌を歌うたびにジャックナイフを女の胸に突き立て、自身も胸から血を流して死んでいたのかもしれない。男の身勝手で命を落とした娼婦に捧げる、無言のやさしさ。鎮魂歌。
人の業を包み隠さず歌に昇華させるのが昭和歌謡の底力だ。現代人とて、人には言えないドロドロした思いを胸に秘めているのは同じだろう。
常に「受け入れやすさ」を求められる今だからこそ、昭和の苦味が心に響く。浅川マキを聴いて、人間の不条理をのぞき見る。そんな夜が、あってもいい。
(歌詞引用 『かもめ』作詞:寺山修司 作曲:山木幸三郎)
※イメージ
【日本語表現力強化コース】 プロの映像翻訳者に高い日本語力が不可欠と考え、私たちが「日本語表現力強化コース」(年2回開講)をスタートさせたのは2009年。これまでトータルで300名以上の方々が受講されました。「書く仕事」の実務に即した課題と実務レベルの個別添削、アドバイスを繰り返す演習を行います。 詳細はこちら