明けの明星が輝く空に 第198回:「ギャオ」なんて鳴いてない!
ガメラシリーズ第3作『大空中決戦ガメラ対ギャオス』(1967年)に登場した英一少年は、怪獣にギャオスと名付けた理由を聞かれてこう答えた。「鳴き声がギャオって聞こえるもん。」え?なに言ってんの?子供のころ、僕はそう思った。全然そんなふうに聞こえなかったからだ。ギャオスの出す音はもっと、「キャイコォォ」とか「キアオォォ」とかいった感じである。(怪獣の声ほど、文字で表すのが難しいものはない)
英一少年の発言は、怪獣対策本部でのものだ。制服姿の人々は、警察や自衛隊のお偉いさんたちだろう。もちろん、怪獣映画らしく博士もいる。英一少年はそんな大人たちの真ん中で得意げに怪獣の目撃談を述べる。誰かが「あの怪獣」と言えば、すぐさま「ギャオスだよ!」と間違いを正す。結局、皆が「ギャオス」と呼び始め、正式名称となった。鳴き声が「ギャオ」と聞こえなかった僕は、この現実的とは言えない流れに、子供ながらに違和感を覚えたこともあり、どこか偉そうな英一少年に対して大いに反感を抱いた。
昭和の特撮作品には、子供がしゃしゃり出てきたり、自分勝手な行動で迷惑をかけたりすることが多かった。そんな子供たちの見本市のような様相を呈していたのが、ガメラシリーズだ。「ガメラは子供の味方」という設定上、子供を中心に物語が進むのは当然ではあったが、映画の中の生意気そうな少年たちは虫が好かなかった。シリーズ第4作『ガメラ対宇宙怪獣バイラス』(1968年)では、停泊中の小型潜水艇に少年2人が勝手に乗り込んでイタズラ。そのせいで動かせなくなって困っている大人に対し、いけしゃあしゃあと自分たちなら動かせると言い放ち、再び乗り込んでまんまと水中遊泳を楽しんだ。2人はその後、異星人の人質となり、子供たちを助けたければ降服せよという要求が、人類に突きつけられることになる。
シリーズ第6作『ガメラ対大魔獣ジャイガー』(1970年)でも、自由奔放すぎる少年2人が登場。彼らは、ジャイガーによって仮死状態になったガメラの体内に、無断で小型潜水艇を使って進入。偶然、ジャイガーの弱点を見つけるという“お手柄”を立てる。結局、勝手な行動をとがめられることもなく、「子供たちの持っている素朴な直感と汚れなき魂を、大人になっても失ってはならない」という、(とってつけたような)教訓を得た、と語るナレーションが入り、彼らの行動は見事な美談として映画は幕を閉じる。
こういった子供の登場人物は、ガメラシリーズに留まらない。もうひとり、『ウルトラマン』のホシノ少年を忘れるわけにはいかないだろう。彼の自由奔放さも、誠に目に余るものがある。第2話「侵略者を撃て」では、科学特捜隊の車に隠れて乗り込み、見つかると「へへへ、まともに頼んだら置いてけぼりにされちゃうからね」と屈託なく言い放ち、車の中にいたことについて「気にしない、気にしない」とごまかす。こういった――天真爛漫だとか無邪気だとか言えば聞こえはいいが――立場や状況を一切無視した言動に、僕は腹が立ってしょうがない。さらに、あろうことか彼は科特隊本部の作戦室に、なぜか自由に出入りする。第3話「科特隊出動せよ」では、そこから武器を拝借し、科特隊専用機に潜り込んで、怪獣のいる現場まで無断で付いていった。そして、ひとりで怪獣に攻撃を仕掛けるのだが、逃げる際に転んで気を失い、倒れているところを発見される。その時、うわごとのように「ウルトラマン、ネロンガ(怪獣の名前)をやっつけてくれよ」などと言い、それを聞いた主人公のハヤタ隊員がウルトラマンに変身して怪獣を倒す。なんという都合の良さか!
こういった子供が嫌いなのは、僕だけではなかったらしい。同じような意見はネット上で簡単に見つかった。いわく、「勝手な行動をして」見ていても「イラつく」とか、「大人の領分に子供が強引に入ってくるのが嫌」などなど。中には、「子供は子供らしいキャラが嫌い」というような、大人が映像作品に登場させる子供についての真理(?)をズバリ言い当てているものもある。
そもそも、なぜ怪獣映画やヒーロー番組に、子供の登場人物が必要なのだろう。考えられるのは、子供の観客や視聴者の感情移入のしやすさを狙っているということだ。実際、子供が登場しなかったガメラシリーズの第2作『大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン』(1966年)では、飽きてしまった子供たちが何人も席を立ったそうだ。また、作劇上の要請もあるかもしれない。子供がトラブルを起こせば、物語を展開させるきっかけとなる。さらに、ピンチに陥った子供を救い出すというエピソードを盛り込めば、その結末を誰もが見届けたくなるだろう。ちなみにSNS上には、足手まといの子供は、ヒーローの邪魔をしてはならないという反面教師として役に立っていた、という意見もあった。ふうむ。
ところで、ギャオスの名付け親となった英一少年だが、あらためて作品を観ると、なかなか愛嬌のある男の子だ。少しぽっちゃり気味のほっぺが愛くるしい。洞窟の落石で身動きが取れなくなるシーンなど、怖がっている顔を見ると守ってあげたい気分になる。「ギャオ」なんて聞こえないじゃないかとあの時は思ったが、彼に対するイメージは半世紀以上立ってようやく上書きされた。大人げないことを言うのはやめにしよう。こうして僕は今、英一少年との歴史的な和解に辿り着いた気分に(勝手に)なっているのである。
—————————————————————————————– Written by 田近裕志(たぢか・ひろし) JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
【最近の私】サッカーのW杯やテニスのウィンブルドンなど盛りだくさんなスポーツ界ですが、僕は世界最大の自転車ロードレース、ツール・ド・フランス一択です。今年はガリビエ峠もアルプ・デュエズも登場すると知って大興奮。酷暑なのが気がかりですが、今から楽しみです。
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明けの明星が輝く空に 改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る バックナンバーはこちら
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「TUFS Cinemaイラン映画上映会」が開催 検閲下のイランで人々が詩に託した想いを読み解く
7月4日(土)、東京外国語大学で「TUFS Cinemaイラン映画上映会 『捨てられたものたちの詩人』」が開催される。日本語字幕をJVTAで学んだ翻訳者5名(加藤きく美さん、鈴木詩乃さん、土方有希さん、彦坂貴美さん、松本悠里さん)がチームを組んで5つのパートに分けて制作した。主人公はイランで詩人を目指しながらも清掃員となった青年。想いを寄せる女性に匿名で手紙を送り続ける。イラン国内の検閲下で製作されたため、曖昧かつ詩的な表現が随所に用いられており、その解釈が作品理解の鍵となった。翻訳者はイラン社会に関するリサーチと作品の解釈についてチームで話し合いを重ねたという。
この作品の背景や見どころについて、翻訳者の土方有希さんと彦坂貴美さんはこう話す。
「この映画は、2005年のイラン社会を映し出しています。イランでは雇用不足が深刻で、失業者も多い時代でした。そうした社会の中で、将来の夢をあきらめざるを得ず、清掃員として働く若者たちの生き様が心を打ちます。また、人目を忍んでひっそりと暮らす詩人の姿から、言論の自由が制約された抑圧的な社会であったことが伝わってきます。」(土方有希さん)
「見どころは、希望のない中にも希望を見出して生きる主人公の姿だと思います。私たち日本人は恵まれた環境に生きていますが、外国に目を向けてみれば、明日の命の保証もない、そういう環境に生きている人々もいます。そんな中でも、この作品の主人公は、詩を愛し、愛する人を見つけ、ひたむきに生きています。作品のクライマックスで、主人公の愛は女性に伝わったのではないかと私は思っています。最後の女性の表情をぜひ見てほしいです。」(彦坂貴美さん)
冒頭のパートを担当した鈴木詩乃さんは、作品の舞台背景やテーマを観客に提示する重要な役割を担っていたため、宗教的・政治的な背景描写には最大限の配慮を尽くしたという。イランには古くから詩が深く根付いており、その音感や表現は、思わずうっとりしてしまうほど美しいと鈴木さんは振り返る。
「本作は、そうしたイラン特有の詩的な感性を駆使し、社会問題や政治的なテーマを間接的かつ秀逸に描き出しています。さらに社会に対する鋭い風刺を、視覚的な面白さを交えて軽やかに表現している点も面白く、とても魅力的な作品です。」(鈴木詩乃さん)
加藤きく美さんが担当したパートにも短い詩があった。解釈に特に悩んだのは、愛の詩の一節の「歯」という言葉だったそうだ。
「ペルシャ語の現代詩は、自由な芸術作品としてではなく、政治批判のための表現手段として使われることもあります。そのような背景を踏まえながら本作品を見ると、より深く理解できるのではないかと思います。この比喩表現は何を表しているのか、本当は何を訴えたいのかを考え、社会背景とともにイランで隠喩として使われる言葉を調べながら訳しました。」(加藤きく美さん)
「検閲下で『語らずに語る』構成にぜひ注目してほしい」と話すのは、松本悠里さんだ。直接的に語れない制約があるからこそ、詩やゴミの中の手紙といった間接的な手段を通じて、登場人物たちの愛や希望、絶望、社会への静かな怒りなどが浮かび上がってくるという。
「劇中で老詩人が語る蝶の逸話は、ギリシャの作家カザンザキスの小説『その男ゾルバ』からの引用でした。まゆの中の蝶を早く羽化させようとして息を吹きかけ、結果的に殺してしまうという話です。出典を確認したことで、この逸話が作品の中で『焦り』というテーマとどう結びつくかを意識でき、登場人物の語り口や言葉の重さを日本語に移す際の指針になりました。」(松本悠里さん)
この作品の翻訳にあたり、JVTAでは翻訳チームの特別トライアルを実施。今回は比較的納期に余裕があることや上映会単発の作品であること、調べものなど翻訳者にも学びが多い作品であることなどを理由に通常のトライアル(隔月で開催)とは別に本件限定でのトライアルを行った。合格した5名は、全体を5つのパートに分けて各自が翻訳後、全員ですべての字幕を精査し、1つの字幕に仕上げた。それぞれが重ねたリサーチ内容を共有し、5つの視点で考えた解釈の基に再校し、ワードやトーンの統一を図ることでより、字幕の精度を高めていく。一人では気づけなかったポイントをお互いに再確認できることが最大のメリットだ。
「チーム翻訳では相互チェックがあるので、なぜその言葉を選んだのか、自分の訳語を説明する必要があります。スクールでは『根拠をもって訳す』ことの大切さを学んできましたが、チーム翻訳を通して、根拠ある訳語選びをより一層意識するようになりました。」(加藤きく美さん)
「私の訳をチェックしてくださった方が、担当パートに出てくる詩の一節の出典を教えてくださいました。そのおかげで、さらに掘り下げて調べることができました。翻訳には丁寧なリサーチが欠かせないことを改めて実感しました。」(土方有希さん)
「一番苦心したのは、イランの文化や言葉を『どこまでかみ砕くか』というさじ加減です。分かりやすくしすぎると作品特有の空気感が消え、かといって説明不足では伝わらない。この難しいラインを他のメンバーと話し合い、何度もリライトを繰り返しました。物語の独自性を損なわず、かつ分かりやすくもある…その絶妙なバランスを追求して、最終的な訳に落ち着きました。」(鈴木詩乃さん)
「英語字幕自体がペルシャ語からの翻訳であるため、そこまで遡って検証し、前後の展開に矛盾が生じない表現をチームで探りました。原文をただ訳すだけでなく、作品全体の整合性を保つことの大切さを実感しました。」(松本悠里さん)
「この作品を通して、作品の美しい部分を視聴者にそのまま伝える手助けをするのが翻訳者の役割ではないかと思いました。視聴者の方々に、作品の美しさが伝わることを願っています。」(彦坂貴美さん)
この上映イベントでは、トークイベントで専門家による解説も予定されており、イラン社会を内側の視点から見ることができる貴重な機会となるはずだ。ぜひ、会場に足を運んでみてはいかがだろうか。
◆TUFS Cinemaイラン映画上映会『捨てられたものたちの詩人』 日時 2026年7月4日(土) 14:00開映 (13:40開場、16:30終了予定) 会場 東京外国語大学 アゴラ・グローバル プロメテウス・ホール 公式サイト:https://www.tufs.ac.jp/event/2026/260704_c01.html
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花と果実のある暮らし in Chiang mai プチ・カルチャー集 Vol.103 オンラインショッピングの信用度
★「花と果実のある暮らし in Chiang Mai」 インパクト大の写真をメインにタイのリアルなプチ・カルチャーをご紹介しています。
個人的な話になりますが、先輩がもうすぐ59歳になるにあたり、還暦までの日めくりカレンダーを作ろうと奮起した私。これはテレビドラマ『続・続・最後から二番目の恋』で主人公の和平さんが千明さんにプレゼントしていたもの。いいアイデアだなあと思ったのがきっかけで、私も作ろう!と思った次第であります。
久々の工作気分。あまり考えもせず、ブロックメモに、先輩の誕生日からの日付と一言を添えていこうと、まずタイのShopeeというオンラインのショッピングサイトでブロックメモ400枚入りを購入。届いたメモに、さっそく数字のスタンプで日付を押していったら…なんと365日のうち50日くらい足りないではないですか!ここまできて足りないとは…。400枚と謳っているのだから、余裕分であるはずの35枚も合わせれば85枚も足りない!インチキーー!400枚入りといっても、ブロックメモが届いてわざわざ数える人は少ないし、ほとんどの人は足りないことには気づいていないのだと思います。しかし、私としては困った事態に。運よく予備に買っていた2ブロック目を開けて、「ちっ、やられたなあ…」と思いながら、ひたすら作業を続けるのでありました。
そういえば、先日頼んだフェイスカバーは色違いが届いていたし、タイのオンラインショッピングの信頼度は私的には60%です。
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Written by 馬場容子(ばば・ようこ)
東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。 —————————————————————————————–
花と果実のある暮らし in Chiang Mai チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美 バックナンバーはこちら
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【ISMS取り組み2026】災害を想定した避難訓練を毎年実施
当社では毎年、ISMS災害訓練の一環として地震や火災の発生を想定した避難訓練を実施、今年は、6月18日に敢行し社員15名(リモート勤務1名含む)が参加しました。
これは、「震災や火災のような緊急事態に直面しても、企業の責務として従業員や顧客の安全を確保し、重要な業務を中断せずに継続、または早期再開すること」を目的としたものです。緊急時に備え、非常時における社内の避難経路や避難場所の確認、電気系統やシステムの維持などについて、オフィス内のスタッフだけでなく、ビル管理会社やとリモートスタッフとの連携などをシミュレーションし、訓練を遂行しています。
午後15時過ぎに震度5弱の地震発生のアラームにより、社内スタッフに緊急事態を周知、オフィス内のスタッフはリーダーの避難指示に従って行動を開始。
まずは避難路を確保(ドア、窓の解放)した上で、揺れが収まるまではデスク下で身を守り、揺れが収まった後、オフィスエリアから非常階段へ移動。
非常階段を降り、避難扉を開け、オフィス近くの避難場所へ向かいます。日常は使っていない避難経路を各自が実際に歩いて認識します。
避難場所に到着後、その場でスタッフの安否確認をし、災害の現状を報告。
リモートワークのスタッフは、予め共有している緊急連絡網に沿って、安否を確認します。
管理会社との連絡や現状の情報収集をしながら、オフィスの安全状況を確認。
オフィスに戻り、被害状況やネットワーク環境、電話回線などの復旧を指さし確認。
すべての確認が取れたら、業務継続の決定と終了報告、その後、当日開講予定の授業の有無について、授業を担当する講師や受講生などへの伝達シミュレーションを行いました。
今回は、フランスから来日中のインターンスタッフが訓練に参加。自国では大きな地震はほとんどないため、地震を想定した訓練は今回が初めてだったといいます。
「フランスでは学生時代にテロや有毒ガス漏洩を想定して室内で安全を確保する訓練に2度ほど参加しました。今回の訓練は地震発生時の避難経路や非常時に取るべき行動などがとても段取りよくオーガナイズされていて分かりやすく、地震が多い日本の企業ならではのリアルなシミュレーションと対応を体験できました。」(フランス出身インターン)
彼は奇しくも数日前に関東で起こった震度5弱クラスの地震を体験。その直後の訓練は、特に強く印象に残る貴重な体験となったそうです。
当社は今後も定期的に訓練を行うことで、実際に災害に遭遇した際の具体的な行動の流れをスタッフ全体で再認識し、従業員の安全と情報セキュリティの維持、事業の継続に努めてまいります。
◆当社の情報セキュリティへの取り組みはこちら をご覧ください。
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第140回 “Off Campus”
“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi
第140回 “Off Campus”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。
今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
予告編:『オフキャンパス』 本予告
VIDEO
これが上半期のベストドラマ!
この一見退屈そうなタイトルの青春ドラマが、疑いなく本年度上半期のベストワン。
“Off Campus”は、Amazon Prime Video史上最大級のヒット作。真摯で優しく、可笑しくてハートウォーミング、新鮮で爽快、セクシーでスティーミー、悲痛で胸キュン、キュートでチャーミングな、カレッジロマンス・ミュージック&スポーツ・ドラメディなのだ!(形容詞多すぎか)
“I’m not your girl, Graham” (Hannah)
—ボストン近郊の町ヘイスティングス
ハンナ・ウェルズ(エラ・ブライト)は、奨学金を得てブライアー大学で音楽を専攻する新入生。母親が歌手だったこともあり、高校の頃はシンガーソング・ライターを目指していた。今は3つのアルバイトを掛け持ちして何とか生活している。ハンナは同大学のバンド・ヴォーカルのジャスティンに思いを抱いている。
彼女は、①パーティーではアルコールを飲まない、②『ダーティー・ダンシング』の大ファン、③アイスホッケーを嫌悪している。
そして誰にも言えない秘密があった。
ギャレット・グレアム(ベルモント・カメリ)はブライアー大の3年生で、アイスホッケーチームの新キャプテン。既にNHL(“National Hockey League”)のボストン・ブルーインズから指名を受けている。父親のフィルはNHLで活躍した伝説的プレイヤーで、ギャレットは幼いころからスパルタ的英才教育を受けてきた。
彼は、①試合前日はアルコールを1杯しか飲まない、②彼女は作らない、③父親を嫌悪している。
そして誰にも言えない秘密があった。
ギャレットは哲学の授業に苦労していた。単位を落とすと試合に出られない。
彼は成績優秀なハンナに助けを求めたが、秒殺される。
大学側の予算削減で、ハンナの奨学金が突然反故にされた。このままでは来期は在学できない。彼女は賞金目当てで、大学主催のポップス・コンテストに応募することにした。
ハンナがジャスティンに気があることを嗅ぎつけたギャレットは、取引を申し出る。彼女が哲学の家庭教師を引き受ければ月謝を払い、さらにジャスティンとの恋に協力するというのだ。
ハンナは渋々了承した。
ハンナとギャレットは、ジャスティンの気を引くために熱々のカップルを演じ始めた。
もちろんこの2人は恋に落ちる(ロマコメだからね)。
“You make me want to be better” (Garrett)
ハンナを演じたエラ・ブライトはまだ19歳。’40年代の英国を舞台にした学園ドラマ“Malory Towers”に13歳で主演し、全7シーズン演じた。本作では驚くほどの演技力で、過去のトラウマに縛られて才能を発揮できないハンナを瑞々しくかつ切々と演じきった。(ブライトは若いころのレイチェル・ワイズによく似ている。)
ギャレット役のベルモント・カメリはこれが初の主役で、しかもアイススケート未経験。(28歳とちょっと老けてるが)父親との確執に悩む将来のNHLプレイヤーを好演する。エラ・ブライトとの間には磁力のようなケミストリーが働き、とてもキュートなカップルが誕生した。(カメリは最近のマイルズ・テラーによく似ている。)
ハンナの奔放なルームメイトで役者志望のアリーと、ギャレットのチームメイトでスーパープレイボーイのディーン。2人のロマンスはシーズン後半でスパークする。アリー役のミカ・アブダラと、ディーン役のスティーヴン・カリンの間にも強烈なケミストリーが働く。
既に制作が決まっているシーズン2では、アリー&ディーンが主役になるようだ。
ギャレットの親友でチームメイトのローガンを演じたのはアントニオ・チプリアーノ。ミュージカルもこなす実力派で、ハンナに片想いをするナイスガイを繊細に演じた。
もう一人のチームメイト、気のいい料理人タッカー役がジェイレン・トーマス・ブルックス。医療ドラマの傑作“The Pitt”(本ブログ第127回参照 )でもいい味を出していた。
上記わき役4人にも成長ドラマが用意されていて、アンサンブルドラマとしての厚みがグッと増している。
ロマコメ/青春ドラマの理想形!
ショーランナーはルイーザ・レヴィとジーナ・ファットーレ。クリエーター兼共同脚本も務めるレヴィは、“The Fright Attendant”(本ブログ第81回参照 )、“Stumptown”(本ブログ第89回参照 )に脚本スタッフとして参加している。ファットーレは、“Dawson’s Creek”、“Gilmore Girls”、“Californication”など2000年代にヒット作を連発したベテランプロデューサーだ。
原作は、全米ベストセラーとなったエル・ケネディによる“Off-Campus”シリーズの第1作“The Deal”(2015、未訳)。いわゆる“hockey romance”の代表作で、読んでみたらこれがメチャクチャ面白い。このシリーズは各巻ごとに主人公となるカップルを替えながら、これまで5冊が出版されている。
レヴィとファットーレは、原作をものの見事に映像化して見せた。
最大の魅力は、ハンナとギャレットの確かなキャラクターアークだ。「恋愛不器用な眠れる才媛」と「チャラ男に見えるキャンパスのスーパースター」が初めて自分をさらけ出し、お互いを気遣うようになる。そして支え合い、困難を克服しながら、深みのある大人のカップルへと変貌していく。
また‘偽装カップル’というロマコメのテンプレート上に、三種の神器:「すれ違い」「恋のライバル」「主役の頼れる親友」をしっかりと配置する。
「真摯な恋愛ドラマ」と「セクシーな恋愛ドラマ」の両立はかなりハードルが高い。だが、原作の巧みなストーリーテリングのおかげで難なくクリアされた。大胆なセックスシーンも、ありがちな‘露骨な視聴率稼ぎ’のあざとさがない。キャラクターの誠実さ、感情表現と矛盾していないのだ。
各エピソードは飛び切りのユーモアと粋なBGMに乗せて、加速度的に面白くなる。後半は白熱のホッケーシーンに加えて、ヒューマンドラマとしての奥行きを見せる。エンディングは説得力があり感動的で、次シーズンが待ちきれない。
本作はロマコメ/青春ドラマの正に理想形、断トツで上半期のベストドラマ。
“Off Campus”は真摯で優しく、可笑しくてハートウォーミング、新鮮で爽快、セクシーでスティーミー、悲痛で胸キュン、キュートでチャーミングなカレッジロマンス・ミュージック&スポーツ・ドラメディなのだ!
原題:Off Campus
配信:Amazon Prime Video
配信開始日:2026年5月13日
話数:8(1話 46-56分)
<今月のおまけ> 「これもお勧め、アメリカン・ドラマ!」(4月~6月)
※過去に本ブログ(<今月のおまけ>を含む)で紹介した作品の新シーズンは除きます。
●“The Beauty”(『ザ・ビューティー 美の代償』、Disney+)
“Glee”、“American Horror Story”、“Pose”(本ブログ第67回参照 )を生んだライアン・マーフィーの最新作は、とんでもない副作用のある若返り薬を巡るグロキモいハイテクホラー!
●“The Boroughs”(『ザ・ボローズ』、Netflix)
“Stranger Things”のダファー兄弟による、砂漠の高齢者施設を舞台に老人とモンスターとの密かな闘いを描く心温まる冒険ホラー・コメディ!
●“Star Wars: Maul – Shadow Lord”(『スター・ウォーズ:モール/シャドウ・ロード』、Disney+)
“The Mandalorian”(本ブログ第65回参照 )以来の傑作はクローン戦争終焉後の世界が舞台、ダース・モールの復讐と2人のジェダイの活躍を描くダークなアクションアニメ!
●“Spider-Noir”(『スパイダー・ノワール』、Amazon Prime Video)
マーベルコミック原作、1930年代のNYを舞台に元スパイダーの私立探偵(ニコラス・ケイジ)の贖いと再生を描くノワールドラマ!(モノクロとカラーが選べるが絶対モノクロがお勧め)
●“R.J. Decker”(『探偵R・J・デッカー』、Disney+)
クセ者作家カール・ハイアセン原作、“Animal Kingdom”(本ブログ第138回参照 )のスコット・スピードマン主演、南フロリダを舞台にしたチャーミングな私立探偵ドラマ!
●“Widow’s Bay”(『ウィドウズ・ベイ』、Apple TV)
“Perry Mason”のマシュー・リス主演、ニューイングランドの呪われた小島を舞台に、観光客を呼び込もうと奮闘する町長の絶望的な戦いを描くコメディ・ホラー!
Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
2026年5月オープントライアル(英日・日英)合格発表
◆2026年5月英日 オープントライアル合格者発表 合格5名、次点17名です。
■合格者 5名 JOP002 JOP050 JOP056 JOP078 JOP107
■次点 17名 JOP019 JOP020 JOP026 JOP032 JOP034 JOP058 JOP062 JOP066 JOP068 JOP074 JOP110 JOP120 JOP126 JOP130 JOP137 JOP141 JOP143
以上
◆2026年5月日英 オープントライアル合格者発表 合格1名、次点1名です。
■合格者 1名 EOP004
■次点 1名 EOP005
以上
※※従来の「Q&Aセッション」を廃止し、 あらたに受験者全員に「ポイント解説」資料を配布しております。 送付日は「結果発表」の翌週内を予定しています。 詳細は、下記をご覧ください。※※
https://www.jvta.net/mtc/trial-new-rule20200219/
◆【2026年度 前期】トライアル スケジュールhttps://www.jvta.net/mtc/202604-trial-schedule/
【JVTA修了生が字幕を手がけた『バーバリアン狂騒曲』がオンライン上映】世界難民の日キャンペーン「もしも わたしが あなただったら」が開催中
6月20日は「世界難民の日」。世界では現在、紛争・迫害などを理由に、故郷を追われた人々が 1億人以上にのぼる。「世界難民の日」はこうした現状を知り、多くの人に難民支援への関心を寄せてもらえるよう国連が定めた国際デーで、毎年さまざまなイベントが行われている。
JVTAは2008年から難民映画祭を字幕制作でサポートしており、多くの修了生が無償で協力するという、映像翻訳者ならではの支援を続けてきた。
VIDEO
2026年の世界難民の日は、6月9日(火)~7月31日(金)にわたり、『もしも わたしが あなただったら』と題したキャンペーンが実施中。2025年の難民映画祭の上映作品『バーバリアン狂騒曲』(字幕はJVTAの修了生が制作)がオンラインで上映 されるほか、6月20日(土)にはUNHCR親善大使MIYAVI氏が登壇するウェビナーが開催される。
また、同期間中は「世界難民の日」関連イベントが複数のリアル会場で開催され、JVTAの修了生が字幕を手がけた映画『バーバリアン狂騒曲』『難民アスリート、逆境からの挑戦』 『Ru』 などが上映される。
『バーバリアン狂騒曲』
多くの受講生・修了生の皆さんが長きにわたり携わってきた難民支援について、まずは知ることから始めてほしい。
◆世界難民の日(2026年)公式サイトhttps://www.unhcr.org/jp/wrd2026
◆世界難民の日2026キャンペーン『もしも わたしが あなただったら』https://www.japanforunhcr.org/appeal/wrd-charity-screening-2026
◆世界難民の日チャリティオンライン上映 映画『バーバリアン狂騒曲』 詳細・お申し込みはこちら
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【イタリアの話題作2作品が劇場公開!】伊日翻訳で活躍する杉本ありさんインタビュー
JVTAで英日映像翻訳を学んだ修了生の中には、多言語の知識を活かして活動する人も多い。杉本ありさんは、出版社勤務を経てイタリアへ留学。その後JVTAで映像翻訳を学び、伊日、英日翻訳の翻訳者として活躍。昨今は、コメディからシリアスな刑事ものまで、イタリアの映画やドラマの字幕を数多く手がけている。また、絵本や児童書の翻訳も手がけるなどその実績は多岐にわたる。
◆『シャオ・メイ/ローマ大決戦』でカンフーアクションに初挑戦 2026年も担当作品の劇場公開が続いている。5月29日公開の『シャオ・メイ/ローマ大決戦』はローマを舞台にしたイタリア製の香港アクション。イタリアで行方不明になった姉を探しにきた若き中国人女性シャオ・メイ(リウ・ヤーシー)が、凶悪犯罪組織に立ち向かう。主演のリウ・ヤーシーはスタントウーマン出身。激しいアクションシーンとイタリアの融合という独自のスタイルが話題となっている。
『シャオ・メイ/ローマ大決戦』© 2025 WILDSIDE S.R.L. – GOON FILMS S.R.L. – PIPER FILM S.R.L.
イタリアの作品を多く手がける杉本さんは、1960年代〜70年代にかけてイタリアで制作された“マカロニウエスタン” の字幕は何度かつけたことがあるが、カンフーアクションは今回が初めてだという。アクション作品は個人的にも好きで、楽しく翻訳にも取り組めた半面、こうしたジャンルならではの悩みどころがあるそうだ。
「私には罵倒する言葉のボキャブラリーが圧倒的に足りないのが悩みです。シャオ・メイのような悪党がたくさん出てくる作品は全編にわたってかなり多くの罵り言葉が出てきますが、その訳し方にいつも悪戦苦闘します。英語でもいわゆる『フォー・レター・ワード(four-letter word)』(汚い言葉)がよく出てきますが、『くそったれ』しかくらいしか思いつかず頭を抱えることも多々あります。」(杉本ありさん)
翻訳者にとって罵り言葉は、どこまでひどい言葉を使ってよいかという基準も難しい。「自分の中ではかなり悪党っぽく訳したつもりでも実はそうでもなかった」ということも…。放送用に古い映画の字幕を作ったときには、あとから劇場公開されたときの字幕を見たら、かなりのべらんめえ口調になっていて驚いたそうだ。
『シャオ・メイ/ローマ大決戦』© 2025 WILDSIDE S.R.L. – GOON FILMS S.R.L. – PIPER FILM S.R.L.
『シャオ・メイ/ローマ大決戦』は本編の中にイタリア語と中国語が混在している。作中にはメイがスマートフォンで中国語をイタリア語に自動翻訳して相手に伝えるというユニークなシーンもある。杉本さんは中国語の部分のスポッティングに苦労したと話す。
スポッティングとは、「字幕を表示する『始まり』と『終わり』の時間(タイミング)を決める作業」のこと。字幕を表示できる秒数は字数制限にも関わるため、重要なポイントでもある。字幕翻訳者は、原語のセリフの間や内容も考慮したうえで、どのタイミングで字幕を分けるべきかなどを判断しながらスポッティングをしていく。
『シャオ・メイ/ローマ大決戦』の翻訳の際は、中国語の部分には中国語とイタリア語のスクリプトがあったが、映像で話している中国語と、イタリア語のスクリプトのどこが対応しているのかを見極めるのに苦労したという。中国語→イタリア語→中国語→イタリア語と会話が続く分には明確だが、メイがしゃべり続ける場面では、中国語のスクリプトの中から「好」や「起立」など聞き分けられる言葉を探して、映像と照らし合わせながら対応する箇所を確認していったそうだ。
◆70年代のイタリアのファンションを堪能『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』 一方、6月19日に劇場公開の『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』は、1970年代のローマにある姉妹が営む⾐装⼯房を舞台にした物語。ある日、世界的なデザイナーの依頼で映画の衣装を担当するビッグチャンスが舞い込み、お針子たちが奮闘する姿が描かれている。イタリアで220万人を動員し2024年イタリア映画最大のヒットとなった作品だ。
『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』© 2024 Greenboo Production – Faros Film – Vision Distribution
作中の衣装は、2026年のミラノ・コルティナ冬季オリンピックの閉会式の⾐装を⼿がけた新進気鋭の⾐装デザイナーのステファノ・チャミッティが担当。70年代のイタリアの洗練されたファンションも見どころの一つだ。
「布を切る音、ミシンの音、ビーズがぶつかる音、布の光沢…手芸好きの私はワクワクしっぱなしでした。もちろん、手芸好きでなくても、お針子たちが作る舞台や映画の衣装は、本当に素敵なものばかりだし、70年代の女性の服装もおしゃれで、ファッション好き、デザイン好きにはたまらないと思います。」(杉本ありさん)
『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』© 2024 Greenboo Production – Faros Film – Vision Distribution
◆イタリアの作品をイタリア語から翻訳することの醍醐味 杉本さんは現在、イタリア語の作品をメインに映画やドラマのほか、児童書の翻訳なども手がけている。2026年はイタリア文学最大の詩人ダンテの神曲にまつわるドキュメンタリー映画『ミラービレ・ヴィジオーネ』の字幕を担当した。(https://www.jvta.net/tyo/mirabile-visione/ )。イタリアでは誰もが知る国民的文学や聖書、現地の文化的背景などの知識も翻訳に役立っている。
「イタリア語を学んだ理由はいろいろありますが、根底にあるのはイタリアが大好きだからということです。作品の原語を理解し、それを使う国や文化を知る翻訳者が訳すということは、その訳者の愛情あふれる訳になると思います。私もそういう訳を目指しています。多言語の翻訳者さんとはたくさんおつきあいしていますが、皆さん自分のメイン言語が使われている国への愛情が深いし、この国のことなら任せて、という方が多いです。私もそうなりたいと常々思っています。イタリア語に限らず、原語から訳すほうが、その言語の話者がそのセリフを読んだときや聞いたときに感じることを伝えられるのではないでしょうか。」(杉本ありさん)
杉本さんは、中学生・高校生向けのYA(ヤングアダルト)の書籍や絵本の翻訳も手がけている。書籍翻訳の作業は映像翻訳とは違うポイントを意識するという。
「物語の舞台となっている時代的な背景、ヨーロッパという地理的な背景が重なるため、どうしてもイタリアの子どもが読むのと同じように、日本の子どもが読むのは難しいかと思います。そのため、日本の子どもにも理解しやすいように補足をして肉付けをして訳しています。決められた字数の中で情報をそぎ落とす字幕翻訳とはある意味真逆かもしれません」(杉本ありさん)
イタリア語の知識や現地での経験を重ね、多様なニーズに対応する杉本さん。現在、国内外に点在する受講生、修了生の皆さんも。杉本さんのように多言語の知識やスキルがある方は、ぜひ得意分野としてその力を発揮してほしい。
杉本ありさん(イタリア語翻訳者) 出版社勤務を経てイタリアへ留学。帰国後、フリーランスの編集者として活動。その後、一念発起してJVTAに入学し、映像翻訳の世界へ。字幕の代表作に『ほんとうのピノッキオ』『ダーク・グラス』『ヴァニーナ カターニアの殺人課』『マリア・モンテッソーリ 愛と創造のメソッド』など。また訳書に『コミック密売人』(岩波書店)、『ローラとわたし』(徳間書店)、『飛ぶための百歩』『フォグ 霧の色をしたオオカミ』(岩崎書店)などがある。
『シャオ・メイ/ローマ大決戦』© 2025 WILDSIDE S.R.L. – GOON FILMS S.R.L. – PIPER FILM S.R.L.
◆『シャオ・メイ/ローマ大決戦』 5 月29 日(金)より新宿ピカデリー他全国ロードショー 公式サイト:https://xiaomei-movie.jp/
『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』© 2024 Greenboo Production – Faros Film – Vision Distribution
◆『ダイヤモンド 私たちの衣装工房』 6 月19 日(金)より新宿ピカデリーほか全国順次ロードショー 公式サイト:https://child-film.com/films/diamanti
◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】 映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。 ※詳細・お申し込みはこちら
【電話回線の復旧のお知らせ】
7月6日(月)10時35分時頃より、弊社の通信機器の不具合により、弊社の電話回線がつながらない状態が発生しておりました。
現在は復旧し、通常通りご利用いただけることをご報告申し上げます。不通時にお電話をいただいたお客様がいらっしゃいましたら重ねてお詫び申し上げます。
お問い合わせいただいた皆さまには、多大なるご不便、ご迷惑をお掛けしましたことを、心より深くお詫び申し上げます。
【カンヌ国際映画祭で4冠の話題作『シラート』の字幕を担当】多言語翻訳で活躍する杉田洋子講師インタビュー
2026年6月5日、カンヌ国際映画祭で4冠(審査員賞、サウンドトラック賞、AFCAE賞スペシャルメンション、パルムドッグ審査員賞)に輝いた話題作『シラート』が劇場公開される。字幕を手がけたのは、JVTA修了生で現在はJVTAで講師も務める杉田洋子さん。キューバに留学経験があり、ブラジル音楽にも親しんできた杉田さんは、英語とスペイン語、ポルトガル語のスキルを活かして多彩な仕事に取り組んでいる。
杉田洋子さん
『シラート』は、砂漠で行われるレイブパーティに参加したまま失踪した娘を探して車を走らせる父ルイスと息子エステバンの姿を追うロードムービー。各国の賞レースで49受賞124ノミネート(3/10時点)という驚異的な数字をたたき出し、世界で絶賛された注目作がいよいよ日本で公開される。杉田さんは、「2026年アカデミー賞で音響賞と国際長編映画賞にWノミネートされた最高の音を、ぜひ迫力ある映画館の音質でご覧いただきたいです」と話す。
『シラート 』
© 2025 LOS DESERTORES FILMS, A.I.E., TELEFÓNICA AUDIOVISUAL DIGITAL, S.L.U.,FILMES DA ERMIDA, S.L., EL DESEO DA, S.L.U., URI FILMS, S.L.,4A4 PRODUCTIONS
「最小限の情報量と極上のサウンドの中で、この世の万物と向き合うような2時間です。前代未聞の鑑賞体験になることは間違いありません。翻訳者としては、全登場人物たちを愛しつつ、作品の持ち味を邪魔しないよう心がけました。また、最近の傾向かと思いますが、本作もスペイン語だけでなく、フランス語、アラビア語、英語と複数の言語が飛び交う作品です。スペイン語に訳されたスクリプトは支給していただきましたが、各言語の原意も確認しながら作業しました。」(杉田洋子さん)
現在は基本的にスペイン語やポルトガル語の作品に絞って受注しているという杉田さん。しかし、最近は1本の中で英語をはじめ複数の言語がミックスされている作品が年々増えていると感じているという。
例えば、2021年に杉田さんが字幕を手がけたティルダ・スウィントン主演の『MEMORIA メモリア』も作中に英語とスペイン語が入り混じる作品だ。同作はタイ出身のアピチャッポン・ウィーラセタクン監督の初のタイ国外での制作作品。基本的には英語とスペイン語だが、コロンビア、タイ、イギリス、メキシコ、フランス、ドイツ、カタールなど複数の国が制作にかかわる。舞台となったコロンビアにちなみ、アカデミー賞国際長編映画賞コロンビア代表に選出されている点も興味深い。
スペイン語を母国語とする話者は約5億人。スペインはもちろん、中南米など多くの国の公用語であるため、オリジナル言語がスペイン語の映画やドラマは少なくない。杉田さんは昨今、空港内の深層心理サスペンス『入国審査』や『ドン・キホーテ』の著者ミゲル・デ・セルバンテスの若き日を描いた歴史ドラマ『囚われ人』、画家サルバドール・ダリに憧れるシェフの物語『美食家ダリのレストラン』など幅広いジャンルの映画の字幕を手がけている。またスペイン語やラテンアメリカの作品を集めた「ラテンビート映画祭」にも携わってきた。当初翻訳者として参加したのをきっかけに運営コーディネートや上映作品の翻訳などを手がけた。
杉田さんには、通訳案内士としての顔もある。インバウンド需要が高まる中で、スペイン語での案内のニーズも多く、スペインやメキシコ、アルゼンチンなどからの旅行客をアテンドしているという。
JVTAが字幕制作をサポートする国内外の映画祭にも世界各国の上映作品がある。多言語のスキルを活かしたいと考えている翻訳者に杉田さんからメッセージを頂いた。
「昔から多言語(特に欧米系)の作品は英訳があるため、英語の翻訳者さんが字幕をつけるパターンも少なくありませんでした。さらにAIの台頭もあり、深く知らない言語でも訳しやすい時代がきました。それでも、オリジナル言語を知っている翻訳者には、細かなニュアンスや歴史・文化的背景の理解から、適切なスポッティング、固有名詞の表記、リサーチに至るまで、圧倒的な強みがあると思っています。映像翻訳者としての基本スキルを磨きつつ、胸を張って専門言語についてもアピールしていきましょう!」(杉田洋子さん)
コロナ禍以降、JVTAで映像翻訳を学ぶコースはすべて、国内外からリモートで学べるようになった。そのため、世界の各地に受講生、修了生が点在しており、現地の知識や言語のスキルを持つ人も多い。杉田さんのように多言語のスキルを持つ人は、映像翻訳という職能と掛け合わせて独自の得意分野を確立し、ぜひ仕事の幅を広げてほしい。
映画『シラート』は6月5日公開。『ワン・バトル・アフター・アナザー』でアカデミー賞を獲得したポール・トーマス・アンダーソン監督に「映画館で体験すべき真の映画」と言わしめる傑作を、どうぞお見逃しなく。
◆『シラート』 6月5日(金) 新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下ほかにてロードショー 監督:オリベル・ラシェ『ファイアー・ウィル・カム』 製作総指揮:エステル・ガルシア 製作:ペドロ・アルモドバル 脚本:オリベル・ラシェ、サンティアゴ・フィジョル 撮影監督:マウロ・エルセ 編集:クリストバル・フェルナンデス 美術:ライア・アテカ 音楽:カンディング・レイ(デヴィッド・ルテリエ) 出演:セルジ・ロペス『パンズ・ラビリンス』、ブルーノ・ヌニェス・アルホナほか 公式サイト:https://transformer.co.jp/m/sirat/
◆杉田洋子さん キューバへの留学やブラジル音楽の演奏活動などでスペイン語、ポルトガル語、英語のスキルを身につけ、映像翻訳者、通訳案内士、映画祭運営など幅広く活躍。JVTAの英日映像翻訳科で講師も務める。昨今字幕を手がけた作品は『シラート』『入国審査』『囚われ人』『美食家ダリのレストラン』『MEMORIA メモリア』『サムシング・ハプンズ・トゥ・ミー』『2月のために~マリア・ベターニアとマンゲイラ』など多数。
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◆【映像翻訳科 次期開講は2026年10月予定】 映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。 ※詳細・お申し込みはこちら