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【修了生・小松原宏子さん】名作『ピーター・パン』の完訳と編訳に導いてくれたのは映像翻訳のスキルでした

翻訳者、児童文学作家として活躍する修了生、小松原宏子さんが編訳した児童書『ビジュアル特別版 ピーター・パン』(世界文化社)が発売された。小松原さんは、これまで「あしながおじさん」や「若草物語」など多くの名作の編訳を手がけてきた。編訳とは、原書をすべて訳すのではなく、子どもたちが読みやすいように分かりやすい言葉で翻訳をし、さらにコンパクトにまとめていく作業だ。まさに映像翻訳者の腕の見せどころと言える。小松原さんは、JVTAで映像翻訳を学んだことが児童文学の翻訳や執筆に導いてくれたと話す。

『ビジュアル特別版 ピーター・パン』世界文化社
J・M・バリー 原作 小松原 宏子 文 kei saito 絵 川端 有子 監修

名作『ピーター・パン』の完訳と編訳を同じ翻訳者が担当

小松原さんは、昨年(2024年)発売された愛蔵版「ピーター・パン」〈ミナリマ・デザイン版〉(静山社)の完訳(原作のすべてを訳す)を担当。この愛蔵版を読んだ世界文化社の佐久間友梨さんから、同じピーター・パンの児童書執筆のオファーが小松原さんに届いた。

ピーター・パン〈ミナリマ・デザイン版〉
J.M. バリ
 作 / ミナリマ デザイン&イラスト / 小松原 宏子 訳

「愛蔵版の小松原さんの翻訳が素晴らしく、作品の芯をとてもよく捉えていらっしゃると感じました。これまで手がけられた世界の名作の抄訳も大変お上手なので、今回の企画にぴったりだと思い、お声がけをさせていただきました。」(世界文化社 同書の編集担当 佐久間友梨さん)

『ビジュアル特別版』シリーズは小学校低・中学年から読める、美しいカラー挿絵入りの児童書。このシリーズでは今年(2025年)、日本初の全文訳『赤毛のアン』の翻訳者・松本侑子さんの書き下ろしによる児童書が発売され、人気を博している。小松原さんは翻訳や編訳、創作とさまざまなカタチで児童書に携わるベテランだが、同じ作品の完訳と編訳を続けて手がけたのは『ピーター・パン』が初の試みとなった。

「子どもの頃、私の愛読書は、石井桃子さんが翻訳した『ピーター・パンとウェンディ』(福音館書店)でした。昨年、愛蔵版の翻訳を手がけた際に、英語の原書に加え、資料として20冊以上の翻訳本を読み、作品に関しては本当に隅々まで把握したと思いますが、数多い歴代翻訳者の中で佐久間さんから今回のご依頼を受けた時は嬉しかったですね。」(小松原宏子さん)

All children, except one, grow up.

小松原さんが『ピーター・パン』の翻訳で最も熟考したのは、冒頭の一文だという。小松原さんは愛蔵版と児童書をそれぞれ下記のように訳し分けている。

All children, except one, grow up.
(愛蔵版)子どもは、だれでもいつかはおとなになる。たったひとりをべつにして。
(児童書)子どもはみんな、いつかおとなになります。ひとりの男の子をべつにして。

物語の核となる大切な一節であることから、小松原さんは資料として集めた過去の翻訳本の訳し方を一覧表にして比較しながら、自らの表現を作り出したという。

「この作品では大人になることは残念なこと、悲しいこととされていますが、今読み返すと大人になれることは幸せなことと感じます。悩んだあげく、私は2文に分けて訳文を作りました。」(小松原さん)

ピーター・パンを深く理解しているからこその葛藤

原作について深く理解しているからこそ、それを子どもたちが楽しめる児童書として大事なエッセンスをギュッと凝縮するのは至難の業だ。また、読者に合わせた言葉選びも必要となる。豪華な装丁で大人が読むことも想定した愛蔵版の文体は「だ・である調」で作中にはシリアスな描写もあるが、児童書では「です・ます調」でより分かりやすい言葉を使い、子どもたちに語りかけるような優しい口調を意識した。

「はじめは、完訳したデータから削っていこうと考えましたが、最終的な文字量が違いすぎて不可能でした。結局、完訳した際のデータは一旦忘れて、翻訳時に原作から私自身が受け取った印象的な人物描写やエピソードを元に、初めて物語を創作する気持ちで一から書き直しました。児童書の場合、一言一句訳すのではなく要約の要素もあるので、ニュアンスが変わらないように留意しながらも、より自由に言葉や文体を選べるという面白さがあります。」(小松原宏子さん)

児童書の執筆にあたり、佐久間さんが小松原さんに伝えたのは、「子どもたちの〈お母さんへの気持ち〉に寄り添う作品にしたい」という思いだった。原作を熟読した小松原さんも強く印象に残ったのは、ピーター・パンが母親に抱く複雑な感情や、ティンカー・ベルの嫉妬深さ、悪役のフック船長が実は名門校の出身で自分の残酷な行動に「礼節」がないと葛藤する一面などといった各登場人物の深い描写だったという。児童書の短いテキストの中にもそうした人物の微妙な心情が分かる言葉を巧みに入れたほか、大切な場面には字数を割いて丁寧に描写するなどの工夫をした。ちなみに、「礼節」は子どもにはなじみがないので、「品格」に置き換えている。「品がない」などの言葉は子どもにも馴染みがあると考えたそうだ。

「頂いた原稿は、こちらの希望がきちんと盛り込まれた内容でとても嬉しかったのを覚えています。限られた文字数の中で作品の軸を捉えつつ、心を動かす文章を紡いでくださる小松原先生の腕前に、制作期間を通じて感激しておりました。」(佐久間さん)

ちなみに小松原さんが今回、字数制限でカットせざるを得なかったがお気に入りのシーンがある。ピーター・パンが「おきざりの岩」でフックと戦った後、実は一度死にかけるのだという。

「もうダメだって思った瞬間、『死ぬのってすごい冒険だろうな』とピーターは笑みを浮かべるのです。いわゆる完全懲悪のヒーローだけではない一面が描かれていて印象的なのですが、前後の流れまで盛り込むスペースがなくて児童書では断念しました。編訳はこういう葛藤の繰り返しだったので、ぜひ原作や完訳も読んでみてほしいですね。」(小松原さん)

◆JVTAでの学びがキャリアの幅を拡げてくれた

小松原さんは、40歳を過ぎてからJVTAに入学し、映像翻訳を学んだ。厳しい字数制限や言葉選びのスキルはもちろん、最も役に立っているのはリサーチ力だという。この学びがなければ今のキャリアはないと言い切る。確かなリサーチ力はどんな仕事をする上でも信頼につながるからだ。

「字数制限のなかで大切な要素を的確に取捨選択するスキルはもちろん、児童書や絵本の翻訳に役立っています。でもすべての基本はリサーチ力だと実感しています。私は高校や大学で学生に授業を行っていますが、どんな職種でもそれは同じだと話しています。調べもので相手や状況を正しく理解することは必須です。私もJVTAでリサーチ力を身につけたことでキャリアの幅が拡がりました。」(小松原さん)

編集の佐久間さんは、児童書を作るうえで意識している点を下記のように話す。

「作家さんによってさまざまなスタイルがあるので、話し合いながら、子どもたちの情緒の種となるような、良質な児童書をつくりたいと思っています。また、日本語を覚えていく子どもたちに手渡す本であることを常に意識して、当たり前ですが、誤字がないよう、正しい日本語で届けることを今後も大切にしていきたいと考えています。」(佐久間さん)

かつてJVTAの課外講座で聖書講座を担当していた小松原さんは、いのちのことば社が毎月発行する新聞で連載を手がけている。

「物語とそこにまつわるキリスト教の要素を1500字でまとめるエッセイです。想像以上に短いので毎回字数とのせめぎ合いですが、このエッセイを見て本編の物語を読みたくなったという声もいただき、嬉しいですね。」(小松原さん)

最後に、編集を手がけた佐久間さんにビジュアル特別版ならではの魅力を聞いた。

「挿絵は新鋭画家のkei saitoさんが担当。水彩で色を置いた後、ペンで緻密に描き込むスタイルで、躍動感と繊細な心情を併せ持つ冒険の世界へ読者を誘ってくださいました。解説は英国児童文学者の川端有子先生が執筆。幼い頃に兄を亡くした原作者 J・M・バリーの生涯、物語誕生の背景、『ピーター・パン』の世界をより深く知るための手がかりを、子どもたちに向けて丁寧に紹介してくださっています。」(佐久間さん)

JVTAの受講生・修了生の中にも児童書の翻訳を目指す人がいる。原書の完訳と編訳とは、それぞれどんなスキルなのか。ぜひ小松原さんが手がけた2冊を読み比べてみてほしい。同じ翻訳者が同じ原作から丁寧に訳しわけた工夫から映像翻訳のヒントも学べるに違いない。

◆『ビジュアル特別版 ピーター・パン』世界文化社
J・M・バリー 原作 小松原 宏子 文 kei saito 絵 川端 有子 監修
公式サイト:https://books.sekaibunka.com/book/b10151917.html

◆ピーター・パン〈ミナリマ・デザイン版〉
J.M. バリ 作 / ミナリマ デザイン&イラスト / 小松原 宏子 訳
公式サイト:https://www.sayzansha.com/book/b654414.html

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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第134回 “THE TERMINAL LIST: DARK WOLF”

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第134回“THE TERMINAL LIST: DARK WOLF”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 
予告編:『ターミナル・リスト ~闇の狼~』 本予告

 
“The Terminal List”からのスピンオフ!
本年最後のイチ押しは、クリス・プラット主演の傑作アクションスリラー“The Terminal List”(本ブログ第93回参照)の前日譚。同作の重要なキャラクター、ベン・エドワーズの物語だ。
 
“The Terminal List: Dark Wolf”はAmazon Primeオリジナル。CIA工作員へと転身する元SEALs兵士の過酷な戦いを活写する、凄絶なスパイアクション・ドラマなのだ!
 
“May our courage exceed our level of violence”(「勇気が暴力に勝らんことを」)
—2015年、イラク北部の都市モスル
ベン・エドワーズ(テイラー・キッチュ)は、SEALs(米国海軍特殊部隊)チャーリー小隊のチーフだ。ベンは上官のレイフ・ヘイスティングス中尉(トム・ホッパー)らとともに、モスル郊外の同盟軍訓練施設でイラク治安部隊の兵士を訓練している。
彼らの目的は、過激派組織IS(イスラム国)を壊滅することだ。
 
治安部隊とISの間で捕虜交換が行われることになった。ISの幹部アル・ジャブーリを釈放する代わりに、民間人の捕虜18人が返還される。ベンとチャーリー小隊も同行した。
橋の上で行われた交換は銃撃戦となり捕虜数人が死亡、ベンの腹心の部下で治安部隊所属のダラン・アミリ軍曹も重傷を負った。そして人質に仕掛けられていたIED(簡易爆弾)が爆発、アル・ジャブーリは行方をくらました。
 
—3か月後
ジェームズ・リース中尉(クリス・プラット)率いるアルファ小隊が到着した。チャーリー小隊による訓練を引き継ぐためだ。ジェームズ、ベン、レイフは戦友だ。
負傷したダランも家族とともに姿を見せた。左足を切断したにもかかわらず、母国のために軍務に復帰するという。
 
ある日、ベンたちがモスル市内へ偵察に向かう途中に訓練施設で自爆テロが発生、兵士7人が犠牲となった。
犯人はダランで、義足にIEDを仕込んでいた。ISに家族を人質に取られ、自爆テロを強要されたのだった。彼の妻も殺され、2人の子供は誘拐されていた。
 
復讐を誓うベンは、レイフ、ジェームズらとともに、独断で自爆テロの首謀者アル・ジャブーリのアジトを急襲する。
 
その結果、ベンとレイフは除隊を余儀なくされた。
後日、2人はCIAからのオファーを受けることになる…。
 
“Long live the brotherhood”(「絆よ、永遠なれ」)
ベン・エドワーズ役のテイラー・キッチュは、青春スポーツドラマの名作“Friday Night Lights”が代表作。陰のあるランニングバックのティムを演じてブレークした。最近では、西部開拓時代の硬派ドラマ“American Primeval”(『アメリカ、夜明けの刻』)に主演している。
本作ではイケメンぶりも控えめに、SEALsの信念を貫き通す新米CIA工作員を熱演する。
 
トム・ホッパーと言えば、痛快なスーパーヒーロー・ドラマ“The Umbrella Academy”(本ブログ第80回参照)で演じた童貞の怪力男ルーサーを思い出す。今回は、頼れる元SEALsの指揮官レイフ・ヘイスティングス役へ見事にイメチェンした。
 
ベンとレイフをヘッドハンティングするジェド・ハバフォード役のロバート・ウィズダムは、見覚えがあると思ったら懐かしい“The Wire”と“Prison Break”のレギュラーだった。強面で食えないCIAイラン工作部長にぴったりだ。
 
CIAのリエゾンでモサド工作員のイライザとタルを、イスラエル生まれのロナ=リー・シモンとシラーズ・ツァルファティが好演する。
 
脇へ回ったクリス・プラットは2つのエピソードに出演し、ジェームズ・リースを渋く演じてみせた。
 
元SEALsの矜持の物語!
ショーランナー(兼共同脚本)は“The Terminal List”と同じくデヴィッド・ディジリオ。骨太なストーリーはジャック・カーの原作ではなく、2人によるオリジナルだ(カーは製作総指揮と共同脚本も担当)。
 
ドラマの根幹にブレがないのは、実際にSEALsで20年のキャリアを持つカーの経験が細部にまで生かされているからだ(因みに、カーの小説は出版に政府の承認が必要で、削除された部分が黒塗りになっている)。上層部に翻弄される兵士たちの怒り、各オペレーションの立案過程、銃器の扱い・銃撃戦などの描写は圧倒的にリアルだ。
デヴィッド・ディジリオは、このリアリティとエンタメ性を絶妙なバランスで両立させて、見事に差別化している。
 
キャラクター・アーク(人物の成長や変化の軌跡)も鮮やかだ。直感型のベンは、官僚主義的な制約の多い軍隊から離れることで、スパイとしての才能を開花させる。だが立場が変わっても、「前線で戦う仲間たちを守る」という強固な信念は揺るがない。
一方レイフはCIAの冷酷で人命軽視のやり方になじめないが、ベンの背中を守る覚悟はできている。この高潔な兵士2人のコントラストがドラマに厚みを与えている。
 
舞台はジュネーブ、ウィーン、ミュンヘン、ブダペストなどヨーロッパ各地の都市。ストーリーの中心は、新技術で一気に核兵器開発を進めるイランと、それを阻止しようとするCIA工作員たちの非情なスパイ戦だ。ベンとレイフは諜報世界の欺瞞に翻弄されながらも、突破口を探る。終盤にはスパイドラマらしく連続ツイストが炸裂し、エンディングまで目が離せない。
 
“The Terminal List”(2022)以降、これほどのアクションドラマにはお目にかかれなかった(リー・チャイルド原作の“Reacher”が最も近いか)。結局、プロット、キャラクター、アクションと3拍子揃った本作がスピンオフとして登場するまで、われわれは待たされたわけだ。
 
ベンとレイフのハートはあくまでCIAではなくSEALsにある。つまり本作は、元SEALsの矜持の物語だ。
“The Terminal List: Dark Wolf”は、CIA工作員へと転身する元SEALs兵士の過酷な戦いを活写する、凄絶なスパイアクション・ドラマなのだ!
 
本作はオリジナルを観ていなくても問題なく楽しめる。
“The Terminal List”のシーズン2は、クリス・プラットが忙し過ぎて撮影が遅れていたが、来年配信されるようだ。本作のシーズン2とセットで早く観たい!
 
原題:The Terminal List: Dark Wolf
配信:Amazon Prime Video
配信開始日:2025年8月27日~9月24日
話数:7(1話 50-67分)
 
<今月のおまけ> 「これもお勧め、アメリカン・ドラマ!」(10月~12月)
※本ブログで過去に紹介した作品の新シーズンは除きます。
 
●“NCIS: Tony & Ziva”(『NCIS:トニー&ジヴァ』、Paramount+他)
“NCIS”ファン必見、同番組から去った人気キャラ2人が国際的陰謀に巻き込まれ、ヨーロッパで逃亡者となるコメディタッチのアクションドラマ!
 
●“The Chair Company”(『チェア・カンパニー』、U-NEXT)
家具メーカーにクレームをつけた強迫性障害の男(“SNL”のティム・ロビンソン)にとんでもない悪夢が降りかかる、アクの強い不条理ダークコメディ!
 
●“Black Rabbit”(『ブラック・ラビット』、Netflix)
ジュード・ロウ&ジェイソン・ベイトマン共演、NYでレストランを経営する弟とギャンブル依存症の兄が負のスパイラルに陥る極上のクライムドラマ!
 
●“Task”(『TASK / タスク』、U-NEXT)
元牧師のFBI捜査官(マーク・ラファロ)と、麻薬ディーラーばかりを狙うシングルファーザーの強盗(“Ozark”のトム・ペルフリー)の熱い戦いを描くヒューマン・クライムドラマ!
 
●“Death by Lightning”(『デス・バイ・ライトニング』、Netflix)
1880年に期せずして第20代合衆国大統領に選出されたJ・ガーフィールドが、妄想狂の男に暗殺されるまでの200日間を描く、地味ながら予想外に面白い実話ドラマ!
 
写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 

【2025】今年もJVTAは多くの映画祭をサポート

JVTAは毎年、多くの映画祭を字幕や公式プログラムの翻訳などでサポート、JVTAで学んだ翻訳者が活躍している。今年も米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」や世界最大級の日本映画の祭典「ニッポン・コネクション」、映画を通じて難民問題への関心を高める「難民映画祭」などに協力した。今年の映画祭サポートを振り返ってみよう。

◆Cinema at Sea – 沖縄環太平洋国際映画祭
2025年2月22日(土)〜3月2日(日)
那覇市ぶんかテンブス館テンブスホール、桜坂劇場、沖縄県立博物館・美術館

2023年11月に沖縄で誕生した映画祭。映画祭のテーマ「Cinema at Sea―太平洋、海のまなざし、海を知る」には、海に囲まれた沖縄から海を囲む島々と地域(=環太平洋)で活躍するアーティストとその作品を発信し、海によってつながる新たな文化交流の“環”を広げていきたいという思いが込められている。初回は7日間で37作品を上映し、約2000名が来場。街中の会場でのトークイベントや業界関係者向けの「沖縄環太平洋映画インダストリー」、VR上映などが行われた。2025年2月、「Boarder/less」をテーマに待望の第2回が開催、JVTAは今回初めて字幕制作で協力し、8作品の日本語字幕を担当、17人の翻訳者が手がけた。

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公式サイト:https://www.cinema-at-sea.com/

◆ダマー国際映画祭
2025年4月12日(土)~13日(日)
日比谷コンベンションホール

2001年にワシントン州シアトルでスタートした国際短編映画祭。『パッション』や『ナルニア国物語』、『Ray / レイ』などの企画やマーケティングを手掛けたマーク・ジョセフ氏が代表を務めている。「ダマー」とはヘブル語(ヘブライ語)で「隠喩」や「たとえ話」を意味する言葉だ。この映画祭の特徴は、露骨な暴力描写や過激な映像に頼らず、人間の多様な感情や体験を芸術的に表現することを評価すること。バイオレンスシーンが苦手という人も安心して観られ、視聴者の心に深く響く作品が集められている。また、30分未満であることが応募の条件とされており、国内外から選出された28本の短編映画が上映された。JVTAは字幕制作で協力しており、今年は10作品の上映作品の字幕を修了生が手がけた。

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公式サイト:https://www.damahfilm.com/

◆ニッポン・コネクション
2025年5月27日(火)~6月1日(日)
ドイツ・フランクフルト

世界最大級の日本映画祭。記念すべき第25回目となる今回は、最新の日本映画67本のプレミア上映を含め、約100本の短編・長編映画がフランクフルト市内10カ所の会場で上映。さらに映画制作者やアーティストの来場、カルチャーイベントなどの開催された。JVTAはニッポン・ヴィジョンズ審査員賞のアワード・スポンサーを長年務めており、特典として受賞者の次回作に英語字幕を無償で提供している。また、JVTAの日英映像翻訳講師による「Online Workshop: Subtitling」も開催。『ゴジラ-1.0』(2023)の英語字幕翻訳も担当したトニー・キム講師が、実際の日本映画のシーンを取り上げながら字幕制作について解説した。昨今はJVTAの指導の下で海外の大学で日本語を学ぶ学生が英語字幕をつける海外大学字幕プロジェクト(GUSP)の課題作品となった日本の短編映画の上映も恒例となっている。

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公式サイト:https://nipponconnection.com/ja/start/

◆ショートショート フィルムフェスティバル & アジア 2025
東京会場開催:2025年5月28日(水)~6月11日(水)
オンライングランドシアターでの上映
2025年4月24日(木)~6月30日(月)

米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭。米国俳優協会(SAG )の会員でもある俳優の別所哲也氏が創立してから今年で27年目となり、年々その開催規模は大きくなっている。今年の映画祭のテーマは「creative active generative」。世界中のフィルムメイカーたちの ”creative” が集結する映画祭で、作品とオーディエンス、クリエイターと企業が出あい、新たな化学反応が生まれる場を”active” に創出し、さらに「生成AI」にも通じる新たなテクノロジーで新時代のクリエイティブを生み出していきたい(”generative”)という思いが込められている。JVTAでは20年以上にわたり、本映画祭を字幕翻訳でサポート。今年も上映作品のほとんどを、100名以上のJVTA修了生が翻訳した。さらに、昨今はユニバーサル上映にも協力しており、ショートフィルム『日の出を知らない街』のバリアフリー字幕と音声ガイドの制作もJVTAが担当している。

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ショートフィルム『日の出を知らない街』本編(音声ガイド版)
・Short Film “The place before daybreak” |ショートフィルム『日の出を知らない街』本編
※映画祭公式Youtubeチャンネルにリンクします。字幕はCCの設定をオンして表示してください。

東京会場開催公式サイト:https://www.shortshorts.org/2025/
オンライングランドシアターでの上映 公式サイト:https://app.lifelogbox.com/shortshortsonlinegrandtheater

◆レインボー・リール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜
2025年6月21日(土)〜2025年6月22日(日) ユーロライブ
2025年7月12日(土)〜2025年7月13日(日) 東京ウィメンズプラザホール

「第32回レインボー・リール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜」は今年、6月と7月に渋谷で開催された。上映作品は、LGBTQ+などの性的少数者(セクシュアル・マイノリティ)をテーマに、国内外から選りすぐられた傑作ばかりだ。JVTAはこの映画祭の字幕制作に長年協力しており、今年も長編4本、短編4作品に携わった。

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公式サイト:https://sites.google.com/view/rainbowreeltokyo/2025web

◆SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025(第22回)
2025年7月18日(金)~ 7月26日(土)
SKIPシティ

映像クリエイターの登竜門として知られる映画祭。“新たな才能を発掘し、育てる映画祭へ”をモットーに、これまで白石和彌監督(『孤狼の血』『碁盤斬り』)、中野量太監督(『湯を沸かすほどの熱い愛』『浅田家!』)、上田慎一郎監督(『カメラを止めるな!』『スペシャルアクターズ』)など国内外の多くのクリエイターを生み出してきた。今年の審査委員長を務める石川慶監督も2009年に同映画祭に短編を出品、最新作『遠い山なみの光』が第78回カンヌ国際映画祭」ある視点部門で上映され、話題となった。本映画祭でも「商業映画監督への道」と題し、代表作『愚行録』の上映と共に石川監督がトークに登壇した。JVTAは毎年、この映画祭の日本の上映作品の英語字幕を手がけており、今年は長編5作品、短編3作品の字幕に加え、映画祭ガイドの翻訳に携わっている。また、10年以上にわたり「英語字幕PROゼミ」を継続的に開催。数名の翻訳者がチームを組み、プロの映像翻訳ディレクターのフィードバックを受けながらゼミ形式で字幕を制作している。

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※2024年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭の上映作品 JVTAが字幕を担当

公式サイト:https://www.skipcity-dcf.jp/

◆東京国際映画祭
2025年10月27日(月)~11月5日(水)
シネスイッチ銀座(中央区)、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ 日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、ヒューリックホール東京、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場、LEXUS MEETS…、三菱ビル1F M+サクセス、東京宝塚劇場(千代田区)ほか、都内の各劇場及び施設・ホールを使用


1985年に日本ではじめて大規模な映画の祭典として誕生。才能溢れる新人監督から熟練の監督の作品まで、世界中から厳選された映画が集結し、毎年メディアでも大きく報道される人気のイベントだ。JVTAは今年も公式プログラムの英訳やデイリーペーパーの翻訳などを担当した。また、運営にJVTAで学んだベテラン翻訳者、今井祥子さんがプログラミンググループのスタッフとして携わっているほか、ぴあフィルムフェスティバルやSKIPシティ国際Dシネマ映画祭の受賞作品(JVTAが英語字幕を担当)なども上映された。

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公式サイト:https://2025.tiff-jp.net/ja/

◆第20回難民映画祭
2025年11月6日(木)~ 12月7日(日)
【オンライン開催】
2025年1月6日(木)~12月7日(日)
【劇場開催】
2025年11月6日 (木) TOHOシネマズ 六本木ヒルズ(東京)   【上映作品】『ハルツーム』
2025年11月13日  (木) TOHOシネマズ なんば(大阪) 【上映作品】『ハルツーム』
2025年12月2日 (火) イタリア文化会館(東京) 【上映作品】『あの海を越えて』
2025年12月3日 (水) イタリア文化会館(東京) 【上映作品】『ぼくの名前はラワン』

日本初の難民に焦点をあてた映画祭として2006年にスタートし、今年で20回目を迎える。これまで、270作品が上映され、10万人以上が参加した。JVTAは第3回(2008年)からプロボノ(職業の専門性に基づく知識や経験などを生かして行う無償の社会貢献活動)で字幕制作に協力し、映像翻訳者ならではの支援のカタチを続けてきた。今年も9作品のうち、7作品の字幕翻訳に携わっているほか、青山学院大学と明星大学の学生に同映画祭の上映作品の字幕制作の指導も行っている。また、JVTAの広報スタッフと受講生・修了生7名が同映画祭の広報サポーターとして活動した。

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第20回難民映画祭 字幕でつなぐ難民支援の輪 ー 大学生による字幕制作の裏側をお届け!青山学院大学編ー

20回難民映画祭 字幕でつなぐ難民支援の輪 ー 大学生による字幕制作の裏側をお届け!明星大学編ー

※国連UNHCR協会のサイトに取材記事が紹介されました。
◆【第20回難民映画祭】字幕翻訳と広報サポーターで修了生が活躍中!
※JVTAが携わる今年の活動を一挙紹介しています。

公式サイト:https://www.japanforunhcr.org/how-to-help/rff

◆フィンランド映画祭
2025年11月8日(土)~ 14日(金)
ユーロスペース

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上映作品には、今フィンランドで話題の選りすぐりの傑作がラインナップ。フィンランドの映画業界で最も権威のあるユッシ賞(フィンランド・アカデミー賞)の受賞作品や2026年アカデミー賞最優秀国際長編映画賞のフィンランド代表に選ばれた傑作を日本で観られる貴重な機会となっている。JVTAは毎年、この映画祭に字幕制作で協力しており、今年も全5作品の日本語字幕を担当した。

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公式サイト:http://eurospace.co.jp/works/detail.php?w_id=000934

◆第3回ヘルヴェティカ・スイス映画祭
2025年11月22日(土)~11月28日(金)
神戸・元町映画館

主催するのは、スイスで新旧の日本映画を上映する唯一の日本映画祭「GINMAKU日本映画祭」を2014年から開催する松原美津紀さん。スイスと日本に関する映画を上映する映画祭を両国で、しかもたった一人で運営するという稀有な存在だ。今年の上映作品は、スイスという国を、映画を通して多面的に見てもらうという視点から選定したという。JVTAは第2回となる2024年から日本語字幕制作を担当しており、今年は全6作品のうち、日本初公開となる4作品の字幕を7人の翻訳者が手がけた。

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公式サイト:https://www.h-sff.com

◆映文連 国際短編映像祭/International Corporate Film Showing 2025
2025年11月27日(木)
新文芸坐

上映されるのは、企業や団体のPR映像をテーマにした短編18作品。The WorldMediaFestivals(ドイツ)、 US International Awards(アメリカ)、Cannes Corporate Media & TV Awards(フランス)、AutoVision Awards(ドイツ)といった世界を代表する企業映像祭において今年度受賞した作品を中心にラインナップされている。JVTAは全18本の日本語字幕と公式サイトの作品紹介の解説文の作成とその英訳を担当し、9人の翻訳者が手がけた。(一部字幕のない作品もあり)。

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公式サイト:https://www.eibunren.or.jp/icfs/icfs2025.html

◆2024年の映画祭サポート一覧はこちら
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2025年11月オープントライアル(英日・日英)合格発表

◆2025年11月英日オープントライアル合格者発表
合格5名、次点24名です。

合格者 5名

JOP010
JOP013
JOP015
JOP117
JOP122

■次点 24名

JOP024
JOP034
JOP035
JOP042
JOP056
JOP058
JOP065
JOP066
JOP073
JOP078
JOP089
JOP091
JOP093
JOP101
JOP108
JOP115
JOP118
JOP129
JOP132
JOP137
JOP142
JOP145
JOP147
JOP149 

◆2025年11月日英オープントライアル合格者発表
合格1名、次点3名です。

■合格者 1名

EOP006

■次点 3名

EOP003
EOP004
EOP008

※※従来の「Q&Aセッション」を廃止し、 あらたに受験者全員に「ポイント解説」資料を配布しております。 送付日は「結果発表」の翌週内を予定しています。 詳細は、下記をご覧ください。※※

https://www.jvta.net/mtc/trial-new-rule20200219/

◆【2025年度 後期】トライアル スケジュール
https://www.jvta.net/mtc/202510-trial-schedule/

【2025年12月】英日OJT修了生を紹介します

JVTAではスクールに併設された受発注部門が皆さんのデビューをサポートしています。さまざまなバックグラウンドを持つ多彩な人材が集結。映像翻訳のスキルを学んだことで、それぞれの経験を生かしたキャリアチェンジを実現してきました。今回はOJTを終え、英日の映像翻訳者としてデビューする修了生の皆さんをご紹介します。

◆K.O.さん(英日映像翻訳 実践コース修了)
職歴:食品メーカーに勤務

【映像翻訳を学ぶきっかけは?】
洋画鑑賞が趣味だったことと、学生時代から勉強してきた英語を活かす仕事をしてみたいという想いから映像翻訳に興味を持ちました。場所や時間を選ばず働くことができ、副業として始めやすいことも勉強を決意した要因です。

【今後どんな作品を手がけたい?】
海外旅行が好きで、旅番組や歴史番組等のドキュメンタリー作品に携わることが目標です。作品理解に少しでも繋がればと思い、現在世界遺産検定の勉強を進めております。また、映像翻訳を志すきっかけとなった長編の洋画作品にも挑戦したいです。

◆C.N.さん(英日映像翻訳 実践コース修了)
職歴:IT企業でコンビニエンスストアのシステム保守・開発、衛星通信事業会社のシステム運用・営業

【映像翻訳を学ぶきっかけは?】
幼少期から読書好きで、翻訳者にはずっと憧れがありました。映像翻訳に興味を持ったのは、大学で仏文学を専攻したことでフランスの映画・ドラマに触れる機会がぐっと増え、元の言語と日本語字幕の差異が気になったときです。興味本位で講座に申し込みましたが、映像翻訳の楽しさにどんどん引き込まれ、今に至ります。

【今後の目標】
目標の1つは、皮肉やブラックユーモアあふれるフレンチドラマの翻訳です。他にも旅や食にまつわるドキュメンタリー・リアリティショーにも挑戦したいです。そのために、技術面の向上はもちろんですが、仕事とプライベートの両面で幅広いものごとに触れるよう心がけ、そうした経験を糧とし続けられる翻訳者でありたいと思います。

◆H.N.さん(英日映像翻訳実践コース修了
職歴:国内営業11年

【映像翻訳の魅力】
調べものやストーリーの構成、適切な言葉選びなど、さまざまな要素を踏まえながら訳を作り上げていくプロセスにとても魅了されました。また、難民映画祭の翻訳に参加し、普段触れることの少ない世界を伝えられることに意義を感じました。

【今後どんな作品を手がけたい?】
子どもの頃に感動した「ハリー・ポッター」のように、感動や笑いを届けられる映画やドラマ作品の翻訳に携わりたいと考えています。また、自然や動物を取り上げたドキュメンタリーにも挑戦したいです。そのためにも、さまざまなジャンルの作品に携わり、自分の視野を広げていきたいと思います。

◆ルマー・レイラさん(映像翻訳Web講座 プロフェッショナルコース修了)
職歴: ロンドンの不動産会社で英文賃貸契約書作成などに携わり、現在はフランスでフリーランス翻訳者として活動。

【映像翻訳を学ぶきっかけは?】
小さいころから洋画に親しみ、来日した映画スターのレッドカーペットやプレミア上映に通うほど映画が大好きでした。高校卒業時は翻訳者を目指すか迷いましたが、「日本に字幕翻訳者は10人しかいない」と聞き一度断念。イギリス留学・就職を経てフランスへ移住し、知人の紹介で映画の下訳を担当。三人目の育児休暇を機に、夢を再燃させ受講を決意しました。

※現在、映像翻訳Web講座は日本国内のみの受講です。

【今後どんな作品を手がけたい?】
アカデミー賞が大好きで、中学生のころから毎年ノミネート作品を観て予想してきました。人の心を動かし、賞レースに名を連ねるような作品を担当するのが夢です。またリアリティーショーやシットコムも大好きで、軽妙な会話のニュアンスを活かし観る人を笑顔にできる字幕を目指しています。

★JVTAスタッフ一同、これからの活躍を期待しています!
◆翻訳の発注はこちら
◆OJT修了生 紹介記事のアーカイブはこちら

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明けの明星が輝く空に 第191回 クリスマスには・・・シャケぇ!?

ことしのクリスマス、果たして農林水産省は再び“シャケ推し”でいくのか。スーパー戦隊ファンは、固唾を飲んで見守っている。というのはオーバーだが、過去2年、同省のクリスマス関連ツイートが話題になったことは事実だ。きっかけは、『怪盗ルパンレンジャーVS警察戦隊パトレンジャー』(2018年~2019年)の第45話「クリスマスを楽しみに」に、“シャケ激推し”の怪人、サモーン・シャケキスタンチンが登場し、「クリスマスにはシャケを食え!」と叫んだことだった。

例によって、絶妙な緩さが魅力のスーパー戦隊シリーズ。サモーンが行う非道は、街の肉屋を急襲し、チキンの代わりにシャケを置かせるという、実にたわいのないものだ。「今年のクリスマスはシャケ一色に染めてやる!」と謎の宣言をし、嵐のように現れて、嵐のように去って行く。そんなサモーンの行動に目をつけた農林水産省が、2023年に魚食普及の一環として、「#クリスマスにはシャケを食え」と、サモーンの画像付で公式Xにポストした。

ところが、同省は翌2024年の公式Xに、「#シャケ もいいけど、他の魚も食べてほしい」とポスト。クリスマスカラーということで、マグロとアボカドを使ったメニューを紹介したのだ。(とはいえ、農林水産省は同じ日に、公式YouTubeチャンネルで、「【水産庁】サモーン・シャケキスタンチン様に感謝しながらシャケ食べた」と題する動画もアップしている。)

それにしても、サモーンという怪人の目的は何だろう。チキンの代わりにシャケを食べさせて、一体何になるのか。彼は異世界犯罪集団ギャングラーの一員で、その組織は犯罪行為を通して、人間社会の掌握を目論んでいるらしい。窃盗や誘拐、中にはプロパガンダ映画の制作といったユニークなことをする怪人もいるが、クリスマスにシャケを食べさせることで人間社会を掌握できるとも思えない。たとえばこれが仮面ライダーシリーズであれば、シャケには毒が混入されている、といった仕掛けが考えられるが、サモーンは純粋にシャケを食べてほしいだけのようだ。

もちろん、クリスマス商戦でチキンの売り上げを伸ばそうと思っている店主たちは、たまったものではないだろう。中には、閉店に追い込まれる店だってあるかもしれない。それでも、暴力を振るうでもなく、ただ鶏肉を撤去しシャケを陳列棚にきれいに並べて置いていくだけのサモーンは、どことなく憎めない。スゴイ勢いで走って来て、高い所から飛び降りた際に無様に転んだ場面では、「着地しっぱーい!でも、めげない!」と言って走り続ける、健気さのようなものさえ感じさせた。

サモーンはその攻撃技も、ユニークで楽しい。まずは“切り身配り”。シャケの塩焼きをヒーローたちの口に投げ込む。攻撃を食らった一人が、思わず「うまいな」とつぶやいたことからわかるように、それはちゃんとした料理だった。そして極めつきの大技が、“シャケチャーハン”と“氷頭なます”。ヒーローをご飯と一緒に炒めたり、甘酢に漬けたりするのだ!技を食らった方も、「パラパラになっちゃうよー!」とか「すっぱい!すっぱい!」とか、なかなか愉快な苦しみ方だ。画面にはそれぞれのレシピや作り方が表示され、なんともシュールな映像が出現。画面右下には「※イメージ!?」というテロップまで表示され、目の前の光景が現実に起こっていることなのか、それともサモーンが見せる幻影なのか、なんだかよくわからない。もちろん、こんな映像を真面目に解釈するほど野暮ったいことはないので、単純にノリで楽しむのが正しい鑑賞方法だ。

ところで、サモーンは悪役でも、彼を全否定するとシャケという食材の否定にもなりかねない。そこは現代の作品らしく、ヒーローたちが「確かに鮭はすばらしい食材だと思う」とか、「僕もサーモンは大好物の部類に入るよ」などと多様性を認める発言をしている。その上で、「クリスマスにはチキンでしょうがー!」と、正論(?)をぶつけるのだ。この言い方も絶妙だ。たとえば「クリスマスにはチキンだ!」というように、突き放した言い方と比べるとわかりやすい。「でしょう?」という言葉には、「そうじゃない?違う?」といったように、相手の立場も少しは認めているようなニュアンスがある。それでいて、語尾に「が」を置くことで、相手が間違っていることを強く主張する言い回しにもなっている。

余談だが、僕は「でしょうが」という言い回しを聞いて、ドラマ『北の国から’84夏』の、「子どもがまだ食ってる途中でしょうが!」という台詞を思い出した。父親の黒板五郎が、ラーメン屋で器を下げようとした店員に怒鳴るシーンだ。脚本を書いた倉本聰氏によれば、あの台詞は物語の“へそ”、またはドラマチックの“ドラマ”ではなく“チック”なんだそうだ。それは、ちょっとした台詞、場面ではあるけれど、グッと心をつかまれるとか、印象深く記憶に残るようなもののことらしい。

サモーンの「クリスマスにはシャケを食え!」は、まさにその“へそ”なのだ、と言えたらきれいにまとまったのだが、残念ながらそうとは言えない。サモーンは他にも、「ノーモア・チキン」、「チキンのかわりにシャケを食べろ」、「クリスマスにチキンを食べるなんて許せない」などなど、同じような台詞をまくし立てる。「クリスマスにはシャケを食え!」は、その大量の台詞の中に埋没してしまっている。

個人的には、ヒーローがシャケチャーハンにされるという、ある意味とてもショッキングな映像も含め、「パラパラになっちゃうよー!」こそが、この作品の“へそ”なんじゃないかと思う。バカバカしくも楽しい。これぞ、スーパー戦隊シリーズを象徴する名場面。けっこう本気で、そう考えている。

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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。

【最近の私】予期せぬ出逢いがあるという意味で、テレビは書店に似ています。先日たまたま日本赤軍のドキュメンタリー(NHK)を観ましたが、「オールドメディア」の底力を見た気がします。それに比べてSNSの情報って薄っぺらい。正直な話、そう感じました。

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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る 
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Tipping Point Returns Vol.32 邦題が教えてくれる、日本語のややこしさと楽しさ

海外の人に「最もヒットした日本映画って何?」と聞かれて『劇場版 「鬼滅の刃」無限列車編』と答えられる人は多いだろう。しかしさらに「無限列車って何?」と聞かれたら説明できるだろうか? 日本映画で最も観られた作品にもかかわらず、意味はよくわからない、が答えだろう。(2025年11月時点)

「無限列車」や最新作の「無限城」も正確な意味は知らない。でも、怖さやスリリングなイメージは強く伝わってきて、とてもいい感じなのだから、それで十分では? 確かに観る側、消費する側ならそれでいいかもしれない。しかし、言葉を売る人は、それでは困る。たとえ正確な意味は伝わらなくても、時には「誤解」を誘発することになっても、「それらを意図した言葉づくりで人の心を掴む力」が求められるからだ。

私は日本映像翻訳アカデミーの映像翻訳本科で日本語を教えて30年になる。いくつかのプログラムのうち、1997年から2023年まで、総合コース・Ⅰ(旧入門コース)でも授業をもっていた。そこで題材としていたのが「洋画の邦題」だ。作品をヒットさせたい、一人でもたくさんの人に観てほしいと願う売り手は、どのような狙いで邦題を決めたのか。その理由を推察、探究することで、自分の中にも「不特定多数の視聴者・観客(市場)に響くよう、意図をもって言葉を生み出す装置」を備えることが目的の授業だ。

前課題は、今の自分の感覚で「いい感じと思う邦題とダメだなと思う邦題」を挙げ、その理由を添えること。授業では、自分の感覚は売り手の狙いを汲んだものか、市場の多数派と一致しているかを検証した。提出された前課題はいずれも興味深く、受講生と一緒にあれこれ考えて議論することは、私自身にとっても日本語強化の好機になっていた。

「無限列車」に似たケースでよく挙がったのは「ジェイソン・ボーン・シリーズ」だ。『ボーン・アイデンティティー』はまだしも、『ボーン・スプレマシー』や『ボーン・アルティメイタム』って何?日本人のほとんどはスプレマシーやアルティメイタムの意味はわからない。けど、なぜかいい感じだ。また、『プライベート・ライアン』や『ロード・オブ・ザ・リング』のケースでは、売り手は意味不明の邦題での勝負を飛び越えて、市場の「誤解・勘違い」をあえて狙ったふしがある。いずれも原題をほぼそのままカタカナにしただけですよと嘯(うそぶ)いているかのようで、実はそうではない。原題の‘Private’は単なる「二等兵」を意味するが、カタカナで「プライベート」と表記すると、一人の兵士の孤独や失意といった内面を想起させる。二等兵なんて本当の意味を知らず頭の中で誤訳されても全然OK、むしろそれが狙いなのだ。『ロード・オブ・ザ・リング』の「ロード」も同じ。原題は‘The Lord of the Rings’、つまり神や支配者のことだが、カタカナになると多くの人は「道」だと直感してしまう。しかしその誤解は「ホビットたちの長く険しい旅路」を想起させ、エモさや心地よさを醸成する。

四半世紀にわたり蓄積した提出課題には「日本語に関する膨大な調査データ」という側面もある。その結果、とても興味深い発見があった。その一つが「すべての提出課題で最も多く挙がった邦題は?」。

結論から言おう。キャメロン・ディアス主演のコメディで1999年に日本で公開された『メリーに首ったけ(原題:There’s Something About Mary)』だ。公開直後から数年間は、どのクラスでも必ずと言っていいほど複数の受講生がこれを選んでいた。その後もひたすら選ばれ続けた邦題である。

なぜ選ばれ続けたのか?「首ったけ」という言葉が原因であることは明らかだ。今でも気になる邦題を尋ねられたら「メリーに首ったけ」と答える人はいるだろう。でも、数が多いというだけでは大きな発見にはならない。問題は、それが「いい感じ」として挙げられたのか「ダメだな」と思われたのかである。

今、(えっ? いい感じのタイトルに決まってるよね?)と思った人は、きっと驚くだろう。実は、1999年から8年ほどの期間は、すべての人が「ダメな邦題」として選んでいたのだ。一人の例外もなく「首ったけ」は古い、ダサい、口にするのも恥ずかしい、と。つまりそれが日本社会全体の暗黙知だったのである。

ところが2007年のある学期のこと。いつもの如く課題に目を通していた私は衝撃を受けた。一人の受講生が「メリーに首ったけ」をいい感じの邦題として挙げていたのだ。「首ったけ」という言葉の語感の心地よさを、そう感じるのが当たり前であるかのように解説している。その後、少しずつ「首ったけはいい感じ」と書く人が増え始め、2015年くらいにかけてはクラスの中に「好き派」と「嫌い派」が同居することも珍しくなかった。そして、2017年になると提出課題から「嫌い派」が完全に姿を消す。

つまり、「首ったけ」という言葉に対する多くの人(日本社会、市場)のイメージ(意味といってもよい)が、20年ほどの歳月を経て180度変わったのである。真逆なのだ。そのプロセスを課題のデータは刻々と記録し、証明している。おそらく日本語の学者・研究者にとっては垂涎の資料だろう(絶対に外には出さないが)。言葉の意味の変化を「流行おくれ」「ダサい」、あるいは「一周回って新しい」「レトロでエモイ」などと言って済ませることは簡単だが、それがいかなる歳月を経て、どのように変化していくのかを追ったデータは稀だろう。

今、私たちの目の前にある言葉(単なる流行言葉ではない)、はどうか。世の中でのイメージや捉えられ方、使われ方は、もしかしたら真逆の方向へ変化している最中かもしれない。JVTAの修了生・受講生、つまり言葉のプロや目指す人は、そうした変化に敏感であるのはもちろん、上手く、賢く使いこなして「さすが!」と評価されるようになってほしい。

追記

「首ったけ」についてAI(Gemini)に聞いたところ「とても魅力的、効果的な言葉。日本での『メリーに首ったけ』の成功にもつながった」みたいなことを言ってくるので、「でもね」と私の「20年変遷論」を説きました。すると、「その通りです。ご指摘ありがとうございます」と手のひら返しの回答(笑)。「首ったけという言葉が持つニュアンスや世間の評価は、時代とともに変化しています。特に、『メリーに首ったけ』が公開された1999年前後から2010年代初頭にかけては、<首ったけ=古くてダサい、照れくさい表現>という認識が強く、一部の人々からは敬遠されていた可能性が非常に高いです」だって。Geminiさん、まだ間違ってますよ、一部の人じゃなくてほぼすべての人だったんだよと教えたかったのですが、お説教はここまでにしておきました。

(了)

今回のコラムで思ったことや感想があれば、ぜひ気軽に教えてください。

☞niiraアットマークjvtacademy.com 
※アットマークを@に置き換えてください。
☞JVTAのslackアカウントを持っている方はチャンネルへの書き込みやniira宛てのDMでもOKです。

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Tipping Point Returns by 新楽直樹(JVTAグループ代表)
学校代表・新楽直樹のコラム。映像翻訳者はもちろん、自立したプロフェッショナルはどうあるべきかを自身の経験から綴ります。気になる映画やテレビ番組、お薦めの本などについてのコメントも。ふと出会う小さな発見や気づきが、何かにつながって…。
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Tipping Point Returnsのバックナンバーはコチラ
https://www.jvta.net/blog/tipping-point/returns/


2002-2012年「Tipping Point」のバックナンバーの一部はコチラで読めます↓
https://www.jvtacademy.com/blog/tippingpoint/

【難民映画祭20周年】わたしと難民映画祭(字幕翻訳者編)

今年で20周年を迎えた難民映画祭は2006年にスタート。これまで270作品の映画が上映され、10万人以上の人たちが参加してきた(数字は2025年9月時点)。今年のポスターにデザインされている青いバラの花言葉は「奇跡」「夢が叶う」。20年にわたって映画祭を支えてきた人たちへの感謝と亡くなった人への哀悼の意がこめられている。

始まった当時は今よりも上映作品が多く、20本以上のラインナップをそろえ、中には、日本語字幕がついていない作品もあったという。しかし、それでは作品のすべてを日本の観客に伝えきれないと、第3回(2008年)からJVTAによる日本語字幕制作のサポートが始まった。以来、JVTAの修了生の有志が、プロボノ(職業の専門性に基づく知識や経験などを生かして行う無償の社会貢献活動)で字幕制作を担っている。毎年、JVTAのメールマガジンで修了生に字幕翻訳参加を呼びかけ、同映画祭のためのトライアルを特別に実施。合格者は映画祭関係者を招いたキックオフミーティングに参加し、難民問題に関する想いを共有したうえで字幕翻訳に取り組む。複数で翻訳チームを組み、各自の担当パートを翻訳した後にチーム全体で話し合いながらリライトを重ね、一つの字幕を作りあげている。

◆難民映画祭の歴史はこちら

◆難民映画祭とJVTAの歴史はこちら

難民映画祭の上映作品は、多言語のドキュメンタリー作品が多く、それぞれの国や地域の紛争や政治などの背景に関する入念なリサーチが必須だ。こうした多言語の作品にも基本、英語字幕があり、翻訳者はそれをもとに日本語字幕を制作する。翻訳者からは、「凄惨なシーンが続くドキュメンタリー作品を泣きながら翻訳した」「映像に映っていた人たちのその後をとても心配している」「この映画祭に携わって自分も意識が変わった」などの声が数多く聞かれる。また、新人時代に取り組んだ人も多く、これまで手掛けた中でも特に印象深い作品として難民映画祭の上映作品を挙げる翻訳者も少なくない。この映画祭の意義に共感し数年にわたり翻訳チームに参加した人もいる。

今回は、20周年という節目にあたり、過去に難民映画祭の字幕制作に携わった翻訳者にアンケートを実施。難民映画祭に寄せる12名の翻訳者の想いを紹介する。

①参加した年
②担当した作品とその背景
③翻訳作業を振り返って感じること
④難民映画祭に携わって意識が変わったことや何か始めたこと
⑤難民映画祭の字幕に参加する翻訳者へのメッセージ

◆Ogihara Atsukoさん
①第3回(2008年
②『レフュージニック』 ソビエトにおけるユダヤ人迫害 
『ニューイヤー・ベイビー』 カンボジアでのクメール・ルージュ虐殺

③今つくづく思うことは、歴史は繰り返されているということです。世界から人々が苦しむ原因を取り除くには、一体どうしたらいいのか。宗教、人種、偏見、その他もろもろのことが原因で、現在もなお世界のあちらこちらで、心が痛む戦いが続いています。また、チームで翻訳した喜びはいまだに忘れられません。メンバーが5人いれば、翻訳を終了した時の満足感は5倍になります。実際、翻訳チームに我が家に泊まっていただいて、合宿をし、翻訳の表記や流れが一つになるよう、顔を突き合わせて話し合った時間は、得難い、とても充実した時間でした。

④毎年、難民映画祭の開催の度に、かつて微力ですが翻訳で協力させていただいたことが、私の人生でとても大きなことであったと痛感します。機会があれば難民問題を扱っている催しを、友人を誘って見に行ったりしています。

⑤現在、全世界の人口の1%が、難民という名の下に、故郷を追われ避難を強いられています。絶えることのない、世界の難民問題を目にするにつけ、本当に無力感を覚えます。一体私たちに何ができるのか。映像翻訳者として、この問題を一人でも多くの人に伝えることは、貴重な意味のあることです。わずかでも問題意識を持ち人々と語り合い、伝えていく。それがいつか、平和な世界へのほんのわずかな一歩になりますよう、希望を持ち続けましょう。

◆結城あかねさん
①第4回(2009年)、第5回(2010年)、第6回(2011年)、第7回(2012年)、第8回(2013年)、第9回(2014年)
②『14 キロメートル』(2009)『遥かなる火星への旅』(2010)『イリーガル』(2011) 映画祭プロモーションビデオ(2012)『新たな壁の裏側で ― 東ヨーロッパに逃れた女性たち ―』(2013)『シャングリラの難民 ~幸福の国を追われて~』(2014)

6回参加のうち、『遥かなる火星への旅』(2010)の背景
ミャンマーからイギリスへ第三国定住するカレン族を追ったドキュメンタリー映画です。ちょうど日本でも2010年から第三国定住による難民の受け入れを開始したこともあり、日本にとってタイムリーな題材の映画でした。

③毎回難しく感じたのは、トーンや表現の仕方の統一です。複数名で作業することから、通しで見ると途中で明らかに翻訳者が変わったと感じられることもありました。また、解釈や訳語の選定で議論したことも多くあります。ある作品ではみんなでメンバーのお宅に泊まり徹夜で作業をしたこともありました。苦しかったですが、楽しい思い出でもあります。

④質問への直接的な回答ではないのですが、私はタイの北部に住む首長族の村に2回訪れたことがあります。彼らもミャンマーから逃れてきた難民で、その苦労や悲しみを直接聞いていたため、難民映画祭には特別な思い入れがありました。そしてその経験があったからこそ、この映画祭にはできるだけ参加しようと考え、6回参加させていただきました。

⑤エンターテインメントの映画と違い、難民映画祭は難民の方々の現状を伝え、広く知ってもらう強い目的があります。目を背けたくなる状況に苦しく思いながら作業することもありますが、映像翻訳を学んだ翻訳者にしかできない意義深い経験となります。作り手の想い、そして取り組む翻訳者の想いが、多くの方に届く大切な機会となるよう願っています。

◆松木香奈子さん
①第10回(2015年)
②『ヤング・シリアン・レンズ』
当時シリアの都市アレッポでは、政府軍と反体制派による激しい戦闘が繰り広げられていました。

③ニュース映像などとは違い、残酷な現実がそのまま映し出されていて、とにかくショッキングでした。

④微力ながら世界の現実を伝える手助けができることに意義を感じました。それ以来、マイノリティを題材にした作品などを積極的に担当しています。

⑤翻訳を通して社会貢献をできる素晴らしい機会になると思うので、ぜひ挑戦してみてください。

◆中嶋紋乃さん
①第13回(2018年)
②『アイ・アム・ロヒンギャ』
故郷ミャンマーから迫害され、カナダへと逃れたロヒンギャ難民の若者たちが、自分たちの体験を舞台劇として再現するドキュメンタリーです。ロヒンギャは世界一迫害された民族と呼ばれ、ニュースでも連日取り上げられていました。

③作品の重みを伝える責任を感じながら翻訳しました。自分たちの経験を再現する彼らの必死の思いや葛藤を、できるだけその温度を壊さないように字幕にする難しさがありました。その重厚なテーマも相まって、翻訳作業は非常に大変で、寝る間も惜しんでの作業になったことを今でも覚えています。

④難民映画祭に関わる前は、難民問題をテレビのニュースで目にしても、その背後で何が起きているのか具体的に思い描くことができませんでした。しかし、作品の翻訳に携わる中で、数字や文字としてではなく、“一人ひとりの物語”として受け止めるようになりました。

⑤修了直後の駆け出しの時期に、翻訳者として作品に携わるとはどういうことかを学んだ非常に貴重な経験でした。ぜひ、積極的に挑戦していただきたいです。

◆小畑愛沙子さん
①第13回(2018年)、第14回(2019年)
②『アイ・アム・ロヒンギャ』
主にミャンマー西部に暮らすロヒンギャ。彼らは差別と迫害を受け、多くが国外に逃れています。あるロヒンギャの若者たちは、命がけでバングラデシュに避難。その後カナダへ移住しました。演劇を通じて自分たちが受けてきた迫害や今直面する現実を伝えようとする姿が描かれています。

『難民キャンプで暮らしてみたら』
2人のアメリカ人が、シリア難民が暮らすヨルダンの難民キャンプで日常生活を体験するドキュメンタリーです。

③映像翻訳のコース修了後、すぐに携わった字幕作品で、ありとあらゆる力不足を実感しました。ただ、思い出すのもつらい経験を振り絞るように語る若者たちの言葉を、正確に、丁寧に伝えなければ、という使命感に駆られたのを覚えています。

④プロジェクト参加前は、何となく慈善活動を行うイメージでいたのですが、彼らの言葉を翻訳する中で、困難な状況でも力強く歩み続けるエネルギーをひしひしと感じ、助けてあげる、というより、社会が良くなるよう同じ方向を向いていきたい、と思うようになりました。

⑤字幕翻訳による支援は、実際に起きている切実な課題に対し、映像翻訳を学んだからこそ出来る、世界に希望を灯せる活動だと思います。

◆K.S.さん

①第14回(2019年)、第15回(2020年)、第16回(2021年)
②『イージー・レッスン 児童婚を逃れて』ソマリアの児童婚
『カオスの行方 ~ 安住の地を求めて』ヨーロッパへ命懸けで避難する難民
『戦火のランナー』スーダンの内戦

③難民映画祭では3作品に参加させていただきました。観客の中には、難民問題や各国のカルチャーになじみのない方もいらっしゃいます。誰にとっても分かりやすい言葉選びを意識しつつ、文化に関わるワードはできる限り尊重して出すなど、細かい気配りとバランスを意識しました。また、作品ごとに様々な難民の姿が多様な視点から描かれているため、背景情報を丁寧に把握し、製作者の意図や登場人物の気持ちに寄り添った字幕を付けることも心がけました。普段の映像翻訳の仕事に比べるとチーム規模が大きく、訳し終えた後に全員で全編の相互チェックを行う作業はかなりタフで特に苦労しましたが、いろいろなメンバーと意見を交わしながら完成度を高めていく作業は、とても勉強になり、刺激にもなりました。

④担当作品の背景となっていた国や情勢を中心に、ニュースなどを意識的に見るようになりました。映画祭に携わった経験を踏まえて、周りの人と話をすることもあります。難民問題だけでなく、様々な社会的問題を扱った映像作品にもアンテナを張るようになりました。また、UNHCR関連の字幕翻訳案件(教育動画など)を担当させていただき、微力ながら翻訳者として継続的にご縁をいただいていることも、ありがたく感じています。

⑤コースで学んだことを実践的に生かして、憧れの長編映画に字幕を付けるという経験は、それ自体とても貴重です。その上、翻訳を通じて難民問題に関わる意義は大きく、非常にやりがいのある映画祭だと思います。できる限り時間をかけて丁寧に作品と向き合い、受け身にならずメンバーと積極的にコミュニケーションを行えば、きっと何倍も価値のある思い出深い経験になるはずです。

◆谷山祐子さん
第16回(2021年)
②『カオスの行方 ~ 安住の地を求めて』
シリア。内戦で家を失い、欧州に不法入国の難民が押し寄せた時代。

③映像翻訳Web講座を修了したもののオープントライアルになかなか合格できず、くすぶっていた頃に参加したプロジェクトでした。その後もイバラの道は続くのですが、初めてのチーム翻訳であり、相互チェックなど大変勉強になりました。8人ほどの大所帯のチームを立派にまとめられたリーダー翻訳者さんがとても輝いてみえたことを覚えています。

④難民をテーマとしたニュースや話題に以前よりも関心を寄せるようになりました。また、同じ作品に携わった翻訳者さん数名と、「ともにトライアル合格を目指そう!」とお友だちになりました。トライアルのたびにそれぞれの字幕を見せ合って勉強したり、知識や情報をシェアしたり、同じ志を持つ仲間ができるきっかけになりました。

⑤制作した人々の思いが見る人すべてに届くよう、チームでより良いものが作れるよう、ぜひ頑張ってください。

◆石川萌さん
①第17回(2022年)
②『グレート・グリーン・ウォール~アフリカの未来をつなぐ緑の長城』
アフリカのサヘル地域において、気候変動による砂漠化を食い止めるための植林プロジェクトに関する作品

③音楽ドキュメンタリーなので、訳しながら歌っている時もあれば、強い信念でコミュニティを成功に導いたリーダーの言葉に勇気をもらうこともありました。サヘル地域の砂漠化について学ぶことのできる作品ですが、そもそもどんな文化がある地域なのかという点も音楽を通じて知ることができました。

④映画祭を通じて、難民の状況がそれぞれ違うように、必要な支援も様々であり、私たちができる支援も一人ひとり違っていいのだということを学びました。

⑤私が映画祭に参加したのは、2015年に欧州難民危機の渦中にあったハンガリーに住んでいながら、何もしなかった後悔からです。当時は、何か大きなことでないと支援にならないと思っていました。映画祭の翻訳を通じ、小さくても行動を起こすことが大切なのだと学びました。皆さんも、ぜひ何かできることから始めてみてください。

◆中野みな子さん
①第17回(2022年)
②『グレート・グリーン・ウォール~アフリカの未来をつなぐ緑の長城』
気候変動の影響に苦しむアフリカのサヘル地域

③作品の舞台となったサヘル地域や気候変動に関する信頼できる情報を入手するのに、苦労しました。自分ひとりでは限界があったと思いますが、チームの集合知で乗り切ることができたと感じています。

④作品を通じて気候変動が難民を生み出すということを知り、プラスチックをなるべく使用しないなど、自分にできることを続けています。

⑤自身の日常からは遠いと思っていた「難民」の存在ですが、自分にも難民を生み出す原因の一端があり、また状況を改善するためにできることがあると気づかされました。字幕を通じて世界とつながることができ、世界をほんの少しでも良くするお手伝いができたと感じています。また、難民映画祭に参加することでチーム翻訳の経験もできたことにも、感謝しています。

◆児山亜美さん
①第19回(2024年)
②『ザ・ウォーク~少女アマル、8000キロの旅~』
内戦や紛争によって故郷を追われたシリア難民の子どもたち

③作中に何度も出てくるhomeという単語の訳し方について、チームの皆さんと話し合ったことが印象に残っています。たった1つの単語とはいえ、難民問題の背景を伝えるためにはどの訳語が適切なのか、意見を出し合う過程で作品への理解が深まったように思います。

④地元の外国人コミュニティを紹介するイベントに参加し、外国人の日本語支援についてのセミナーを受講するなど、身近にいる外国人のことをもっと知りたいと思うようになりました。映画祭の広報サポーターの皆さんが紹介してくださっている飲食店も訪れてみたいです!

⑤難民映画祭に参加して一番心に残っているのは、上映会の会場で監督にお会いし、作品に込めた思いを直接聞けたことです。どんな状況にも希望はあるとお話されていたのですが、それは他の上映作品にも共通しています。現状を知るだけではなく、希望の灯を絶やさないために懸命に努力する人々の姿を見て、多くのことを感じられると思います。

◆萱場美晴さん
①第19回(2024年)
②『ザ・ウォーク~少女アマル、8000キロの旅~』
シリア国境から難民としてヨーロッパを横断するストーリー

③複数人で協力して訳したので、同じ単語でも場面に応じて訳し方をどう変えるかなど、皆さんと議論できたことが有意義でした。

④映画祭の映像ならではの良さを感じたことから、様々な映画祭で字幕ボランティアに参加しています。

⑤字幕作成の経験としてだけでなく、世界の現状を知る機会としても有意義だと思います。たくさん議論を重ね、学びを深めてください。

◆C.H.さん
①第20回(2025年)
②『見えない空の下で』
ロシアとの戦争による戦禍を逃れるため、ウクライナの地下鉄構内で暮らす人々

③字幕作成からしばらく離れていたため、新しい翻訳ソフトに慣れるのに苦労しました。また、戦争で使われた兵器に関する訳語に悩みました。例えば、「花びら地雷」という空から散布される地雷が出てくるのですが、地雷と聞くと地中に埋められているものというイメージもあるため、視聴者に伝わるかどうか迷いました。そんなとき、チームの皆さんに助けていただき、チーム翻訳の良さを実感しました。

④特に新たに始めたことはありませんが、近隣で行われている様々な難民支援の活動に目を向けるようになったように思います。(アメリカ在住)

⑤子どもたちの夏休みと字幕の作成期間が重なり、仕事や育児をしながら翻訳をするのは時間的に大変でしたが、家族で難民問題について話す機会を得られ、とても有意義でした。子育て中の皆さんも、ぜひ参加されてみて下さい。

「難民映画祭を字幕制作で支援する」
これは映像翻訳者ならでは社会貢献のカタチだ。難民となった人たちの想いを伝えようと真摯に翻訳に取り組むなかで翻訳者自身にも気持ちの変化が訪れたという。難民映画祭の上映作品を鑑賞する際は、そんな翻訳者たちの想いがこもった字幕にもぜひ注目してほしい。JVTAはこれからも難民映画祭のサポートを続けていく。

◆難民映画祭 
オンライン開催
2025年11月6日(木)~12月7日(日)
劇場開催
2025年11月 6 日(木) TOHOシネマズ 六本木ヒルズ(東京)   【上映作品】「ハルツーム」※終了
2025年11月13日(木) TOHOシネマズ なんば(大阪) 【上映作品】「ハルツーム」※終了
2025年12月 2 日(火) イタリア文化会館(東京) 【上映作品】「あの海を越えて」
2025年12月 3 日(水) イタリア文化会館(東京) 【上映作品】「ぼくの名前はラワン」

公式サイト:https://www.japanforunhcr.org/how-to-help/rff

【関連記事】

◆第20回難民映画祭が11月6日に開幕 青いバラにこめた思いを字幕で伝える

※同映画祭担当の山崎玲子さん(国連UNHCR協会・渉外担当シニアオフィサー)から翻訳者の皆さんにメッセージを頂きました。

◆2025年度 明星大学特別上映会/難民映画祭パートナーズ 特別サイト
『希望と不安のはざまで

12月6日(土)、JVTAが字幕翻訳を指導している明星大学で難民映画祭パートナーズの上映会が開催されます。

◆第20回難民映画祭・広報サポーターによる公式note 「みて考えよう!難民映画祭」

広報サポーターの活動や、作品レビュー、「わたしと難民映画祭」、各国の飲食店紹介などの情報が更新されています。字幕を担当した翻訳者の皆さんもぜひご覧ください。

◆【第20回難民映画祭】字幕翻訳と広報サポーターで修了生が活躍中!
今年のJVTAが携わる活動を一挙紹介しています。

◆【英日映像翻訳 総合コース・Ⅰ 日曜集中クラスを2026年1月開講!】ご興味をお持ちの方は無料の学校説明会へ!
2026年1月からの英日映像翻訳学習をご検討中の方を対象に、リモート・オープンスクール、リモート個別相談を実施しています。ご都合・ご希望に合わせてお選びください。
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花と果実のある暮らし in Chiang Mai プチ・カルチャー集 Vol.96 ムッとした一コマ

先日、友人を送りに空港に行った時の出来事。空港はアブタビ行きのチェックインをしようとするたくさんの人でごった返していました。私の友人は健常者ではないので事前に車椅子を要請してありました。彼女は待っている間も辛そうで、たまにしゃがんだりしていました。隣のラインには、観光を満喫したような西洋人観光客4人組がチェックインをしています。その中の70代くらいの男性はすでに車椅子を頼んであったようですが、さらに60代くらいの女性が車椅子を追加したいと頼んでいます。しばらくして向こうから2台の車椅子を押した空港職員がやって来ると、そのグループがそれに気づいて合図をし、職員はそちらへ向かっていきました。明らかにそのうちの一台は友人用。友人は立っていられないくらいの状態で今すぐ車椅子が必要なのに…。彼らはそんな友人に気づいていながら見ぬふりをして先に乗ってしまったのです。「しょうがないわね」という表情でグランドスタッフがもう一台手配してくれました。しかし…「すみませんが、あそこまで行ってください」と言われ、結局友人は指定された所まで歩くことに…。

もちろん、車椅子を使われる皆さんのほとんどはご高齢だったり、足が痛かったり、また見えない持病があったりします。しかし、最近、車椅子利用は優先されて楽だという理由で気軽に利用する人たちが出てきているようです。「本当に必要な人をちゃんと優先してほしい!」。この一連の出来事に気づいてさえいない友人の代わりにちょっと声をあげてみました。

お月様、平穏祈願。

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Written  by 馬場容子(ばば・ようこ)

東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。
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花と果実のある暮らし in Chiang Mai
チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美
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【2025年11月】英日OJT修了生を紹介します

JVTAではスクールに併設された受発注部門が皆さんのデビューをサポートしています。さまざまなバックグラウンドを持つ多彩な人材が集結。映像翻訳のスキルを学んだことで、それぞれの経験を生かしたキャリアチェンジを実現してきました。今回はOJTを終え、英日の映像翻訳者としてデビューする修了生の皆さんをご紹介します。

◆園田沙英さん(英日映像翻訳実践コース修了)
職歴:銀行(融資)、IT関連(テクニカルサポート、情報システム、社内IT研修の講師)

【映像翻訳を学ぶきっかけは?】
学生時代に映画館でアルバイトをするほど映画が好き。大学で英語を専攻するほど英語も好き。いつかは自分の好きなものに携わる仕事をしてみたいと思っていました。そんな中、見つけたのはYouTubeでJVTAの字幕作成動画。まさに自分の好きなものが詰まった仕事だと思い、すぐに映像翻訳を学ぶことを決意しました。

【今後どんな作品を手がけたい?】
まずは英語を好きになったきっかけである『ハリー・ポッターシリーズ』関連の映像に携わることが一つの目標です。他にもアメコミ作品やスパイアクションもの、ミステリーなど、ワクワクドキドキする作品も好きなので手がけてみたいです。観た人が作品に関わる何かを好きになれる、「好き」が生まれるきっかけになるような映像作品を日本中に届けたいと思います。

◆初谷亜希子さん(英日映像翻訳実践コース修了) 
職歴:ゼネコン(経理、現場事務、人事)

【JVTAを選んだ理由、JVTAの思い出】
映像翻訳に特化しており、定められた期間で計画的に学習できる点と、受発注部門が併設されている点を魅力的に感じJVTAを選びました。仕事と課題の両立は大変でしたが、同じ目標を掲げる素敵な仲間に出会い、1年半共に学べたのは大切な思い出です。

【今後どんな作品を手がけたい?】
イギリス留学経験があるため、イギリスの作品や、動物・芸術(アート、クラシック音楽、バレエ、建築など)・料理・陸上競技などに関する作品に携われると嬉しいです。また、様々な経験を積んでいつかは劇場公開作品を手がけたいです。

◆春木美果さん(英日映像翻訳実践コース修了 ロジカルリーディング力強化コース修了)
職歴:アメリカと日本でNPOスタッフ→NPO運営支援(フリーランス)、その他大学勤務など

【映像翻訳を学ぶきっかけは?】
昔から仕事で資料などの翻訳をすることがあり、「いつか翻訳者になりたい」と漠然と思っていました。コロナ禍で自分の行く末を考えるなかで翻訳者になる夢を思い出し、スクール情報を探していて映像翻訳を知りました。「自分には、独学でこのルールを会得するのは無理」と判断したのが、映像翻訳を学ぶきっかけです。

【今後の目標】
人権や平和の活動に関わってきたので、社会派作品の翻訳を手がけたいです。インド映画やタイポップスなどのエンタメや旅行など趣味の分野の作品にも携わりたいですが、どの作品でも翻訳があったことを忘れて作品を楽しんでもらえる映像翻訳者になることが目標です。パンフレットなど、文字コンテンツの翻訳にも関わりたいです。

◆山口真由さん(英日映像翻訳実践コース修了)
職歴:特許事務所⇒翻訳コーディネーター・チェッカー⇒フリーランス実務翻訳 / 翻訳会社勤務

【映像翻訳を学ぶきっかけ】
「英語を使って映画や音楽の仕事がしたい」。それが私の高校時代の夢でした。大人になり、特許や実務の翻訳に携わってきましたが、心のどこかでずっと「映画に関わりたい」という思いがありました。そんな中、映画館で観た『カモンカモン』の字幕に衝撃を受け、松浦美奈さんのような翻訳者になりたいと強く思ったことが、映像翻訳を学ぶきっかけとなりました。

【今後どんな作品を手がけたい?】
ヒューマンドラマ、ロマンス、アクション、SF、スプラッター、リアリティ番組、ドキュメンタリー、南米映画が好きで、今後ぜひ手がけていきたいです。また、30カ国以上を旅した経験を生かし、旅や料理のコンテンツも担当してみたいです。好奇心旺盛で調べものも好きなため、多様なジャンルの案件に積極的に挑戦していきたいと思っています。

★JVTAスタッフ一同、これからの活躍を期待しています!
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◆【英日映像翻訳 総合コース・Ⅰ 日曜集中クラスを2026年1月開講!】ご興味をお持ちの方は無料の学校説明会へ!
2026年1月からの英日映像翻訳学習をご検討中の方を対象に、リモート・オープンスクール、リモート個別相談を実施しています。ご都合・ご希望に合わせてお選びください。
※英日映像翻訳の時期開講は2026年4月予定です。ご検討中の方はリモート個別相談にお申込みください。