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「ボケとツッコミ」のテンポ感をそのまま英語に!監督も認めた英語字幕のクオリティ

JVTAが英語字幕を制作した『お笑えない芸人』(西田祐香監督)が、京都国際学生映画祭にノミネート(英語字幕付きで上映)、さらに6月に劇場公開が決定した。この作品は、2025年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で上映され「スペシャル・メンション」を受賞。その上映時に英語字幕を修了生の鈴木綾さんとローガン・ランプキンスさんが手がけている。劇場公開では英語字幕の表示はないが、英語字幕制作秘話と西田監督から届いた英語字幕に関するメッセージを紹介する。

芸人を目指す佐原は、相方の瀬戸口と「激甘酢豚」というコンビで活動してきたが、ある出来事をきっかけにコンビは解散。夢半ばで立ち止まった佐原の前に、ある日突然 “芸人として爆発的に売れた理想の自分” が現れる。分身は成功のノウハウを語り、佐原の人生に介入し始めるが……。(公式サイトより引用)

コメディは翻訳者にとって難しいジャンルだ。この作品は、全編にわたって大阪弁でコントのシーンも多い。しかし、翻訳者の鈴木さんは大阪在住の関西人で、関西弁の解釈に困ることはなかったという。日本語ネイティブと英語ネイティブの2人がチームで翻訳を手がけたことで両方の視点からセリフを考察することができた。2人が特に話しあったのは、コンビ名「激甘酢豚」の英訳。また2人の佐原の対照的な演技が魅力的だと思った鈴木さんは、それぞれのキャラクターに合わせて英語でもセリフの口調を訳し分けた。さらに、日本の漫才頂上決戦と言える『M-1グランプリ』について、ローガンさんは海外の人に伝えるための工夫をこらした。

©映画『お笑えない芸人』製作委員会

※「激甘酢豚」や『M-1グランプリ』をどう訳したか、英語字幕制作の裏側は過去の記事(こちらをクリック)で紹介している。

◆英語字幕を見た西田監督から届いたメッセージ
SKIPシティ国際Dシネマ映画祭で、英語字幕付き上映を観た西田祐香監督は、「一文一文、時間をかけてじっくり翻訳字幕を見させていただきたいぐらい、とても興味深かった」と話す。特に印象的だったのが、コンビ名「激甘酢豚」の英訳だったそうだ。


「本作は漫才シーンや会話も多く、日本語の助詞(てにをは)の違和感をネタにする場面もあり、英語にするのがとても難しい映画だと制作当時から感じていました。ですが、日本語のボケとツッコミの掛け合いやテンポはそのままに、とても素敵に翻訳してくださいました!特に、劇中の主人公たちのコンビ名『激甘酢豚』もローマ字表記ではなく、2人の個性やコミカルさが伝わるように翻訳していただき、とても嬉しかったです。」(西田祐香監督)

©映画『お笑えない芸人』製作委員会

映像翻訳者が字幕の内容について監督からコメントをもらえる機会はなかなかない。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の上映後の新たな展開も翻訳者にとって嬉しいニュースとなった。

「本作の魅力は、テンポの良い掛け合いと、登場人物たちの人間味あふれる関係性にあると感じています。 日本語ならではのリズムやニュアンスを英語でも伝えるため、細部まで丁寧に検討しながら翻訳を進めました。監督のコメントを拝見し、翻訳の意図や工夫を受け取っていただけたことがとても嬉しく、励みになりました。 作品が多くの方に届くことを心より願っています。」(鈴木綾さん)

「漫才のボケ・ツッコミの関係をそのまま直訳すると不自然になりますし、字幕の文字数の制限も非常に厳しいため、ある程度省略・意訳しなければなりませんでした。このように西田監督にお褒めの言葉をいただけて大変嬉しいです。翻訳作業で確かに苦労しておりましたが、最終的に英語圏の視聴者でも楽しめる字幕ができたと思います。」(ローガン・ランプキンスさん)

©映画『お笑えない芸人』製作委員会

翻訳秘話の記事で翻訳者の想いを知った西田監督からも、下記の言葉をいただいた。

「とにかく会話量も映画内の文字量も多い映画なので、きっと長い時間をかけて翻訳してくださったのだと存じます。改めて、とても丁寧に訳していただき誠にありがとうございました。ぜひ、京都国際学生映画祭やヒューマントラストシネマ渋谷で、本作品をご覧いただけると嬉しいです!お待ちしています!」(西田祐香監督)

西田監督はこの映画をさらに多くの人に見てもらえるよう活動中とのこと。今後の展開が楽しみだ。

◆京都国際学生映画祭・公式サイト 紹介ページはこちら
※(2026年2月20日(金)~2月23日(月・祝)開催

◆『お笑えない芸人』公式サイトはこちら

2026年6月19日からヒューマントラストシネマ渋谷で劇場公開

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【JVTA修了生によるいくつもの情報の層が視聴者をサポート】映画『こころの通訳者たち What a Wonderful World』を英語字幕で世界へ

ドキュメンタリー映画『こころの通訳者たち What a Wonderful World』(山田礼於監督 2021年制作)は、JVTAの修了生が多面的に携わっている作品だ。

この作品では、日本初のユニバーサルシアターのシネマ・チュプキ・タバタ(以下、チュプキ)の代表、平塚千穂子さんを中心に、「耳の聴こえない人に向けた“手話通訳”がついた舞台公演の魅力を、目の見えない人に向けた“音声ガイド”で伝える」という未知なる挑戦に挑む様子が描かれている。

耳の聴こえない人にも演劇を楽しんでもらうために挑んだ、
3人の舞台手話通訳者たちの記録。
その映像を目の見えない人にも伝えられないか?
見えない人に「手話」を伝えるには。
※『こころの通訳者たち What a Wonderful World』公式サイトより引用

『こころの通訳者たち What a Wonderful World』より 修了生の彩木香里さんが出演し音声ガイド制作に参加

作中には、JVTAのメディア・アクセシビリティ科修了生の彩木香里さんが出演し音声ガイドの制作過程に参加している。また、耳の聞こえない人のためのバリアフリー字幕の制作を同コース修了生の犬塚修さんが担当。さらに、JVTAのインターンの学生が作成した英語字幕を付与したバージョンも制作され、いくつもの「情報の層」が重なっている。

◆『こころの通訳者たち What a Wonderful World』予告編 ※音声ガイド版

◆WATCH2024上映作品『こころの通訳者たち What a Wonderful World』予告編 ※英語字幕付き

◆いくつものツールで視聴できる上映会にJVTAディレクターが登壇
2025年11月、チュプキでバリアフリー日本語字幕、音声ガイド、英語字幕というすべてのツールが視聴できる上映が行われた。

英語字幕は、JVTAの学生インターンが中心となってSDGsに関連する日本発のドキュメンタリー作品を上映する無料のオンラインイベント「WATCH 2024」(https://www.watch-sdgs.com/watch2024/)の上映のために制作されたもので、国内外の大学生と大学院生51名がチームとなって英語字幕を作り上げた。学生たちの語学のスキルはさまざまで、チーム内では日本語やその解釈が得意な人、英語が得意な人などさまざまな学生がお互いの知識を生かして意見を出し合ったという。チュプキでの英語字幕付き上映では、学生に英語字幕制作の指導をしたJVTAの麻野祥子ディレクターが上映後のトークイベントに登壇し、平塚さんと英語字幕の制作秘話を語った。

上映後のトークショーの様子

学生たちのほとんどは、今回初めて英語字幕に触れた。日本語からの直訳で作ると考えていた人も多く、想像していたものと実際の作業は大きく異なっていたようだと麻野ディレクターは話す。映画の劇中演劇『凛然グッドバイ』の台本を自ら探して読み込むなど熱心に取り組んだ学生もいたそうだ。

◆英語タイトルに込められた想い
英語のタイトルは、『Interpreters Beyond Boundaries』。平塚さんは、字幕制作過程に携わる過程で、タイトル案に5つの提案があり、そのワードにたどり着いたそれぞれの理由が詳細に送られてきたことに感動したと話す。トークショーでは、その具体的な文章が読み上げられ、観客の皆さんから感嘆の声があがっていた。学生たちが投票した下記のデータを基に、チュプキでも議論のうえ、「Interpreters Beyond Boundaries」が選ばれた。この例からも「こころの通訳者たち」という原題の直訳ではない、さまざまな工夫が凝らされていることが分かる。

・“Interpreters Beyond Boundaries”(11票)
・“A Voice for the Unspoken Souls”(8 票)
・“Conveyers of Heart”(4 票)
・“From Heart to Heart”(4 票)
・“Interpreters from the Heart”(3 票)

「この映画は聾者のための手話の動きを視覚障害の方への音声ガイドにどのように変換して伝えるかという、まさに翻訳や通訳の本質みたいな部分を描いています。そこにさらに、外国語に変換するという取り組みの際も、学生たちも私たちが作中で議論したように、形じゃなくて中身の部分をすごく大事に考えてくれたんですね。もともと多層的な作品に英語字幕でもう一層、 人の心が加わって、また深くしてくれたと感じました。」(平塚さん)

ドキュメンタリーは、翻訳者にとっては難しいジャンルだ。ドキュメンタリーは台本がなく、話者自身も考えがまとまらないまま話していることも多い。そのため翻訳する際は、話者が何を言おうとしているのか、その本質を理解する必要がある。

「日本語はちょっと曖昧でも成立してしまいますし、主語を省くことが多いのが特徴です。しかし、英語では主語と述語をはっきりさせないと文法的におかしくなってしまうので、その違いも一つのチャレンジでした。」(麻野ディレクター)

『こころの通訳者たち What a Wonderful World』より 音声ガイドについて話し合いを重ねる

平塚さんが特に印象に残ったセリフがある。作中で平塚さんがある提案をした時に他のスタッフが小声で「無茶ぶり」とつぶやくシーンだ。

「『ダメ元でやってみる』『当たって砕けろ』という意味で、『here goes nothing』と訳しました。直訳とは離れてしまいますがニュアンスを重視し、場面の流れに合うようなセリフにしました。」(麻野ディレクター)

「これは素晴らしい翻訳だと思います。無茶ぶりっていうのは、決してネガティブなことではない。無茶だけどやろうよっていう、私たちの想いを汲んでいただいたなと思いました。」(平塚さん)

◆映画出演者とバリアフリー字幕、英語字幕の制作者が対面
このトークショーの客席にはバリアフリー字幕を手がけ、現在はチュプキの広報も務める犬塚修さんの姿もあった。犬塚さんはJVTAのバリアフリー講座(当時)の字幕講座を修了し、初めて手掛けた字幕がこの作品だったそうで、ひときわ思い入れも強い。

「『無茶ぶり』の訳は私も気になっていましたが、本当にニュアンスを汲み取ってくださったんだなと感じました。私もバリアフリー字幕を作る際に何度も何度も見た作品なのに英語字幕がついたことで、もうひとつ感動がプラスされた気持ちになりました。」(犬塚修さん)

平塚さんとJVTA関係者が対面 中央の黒板アートは修了生の犬塚修さんが制作

また、学生のインターンとしてこの英語字幕制作に参加し、現在はJVTAスタッフとして活躍するフランス出身のエリプリコッドコ ディレクターも上映会に参加。作品の舞台となった映画館でこの映画を観て感動もひとしおだったという。

「作中では話し合いの中の手話通訳、舞台の手話通訳、音声ガイドなどさまざまなカタチで言葉を変換するという挑戦をしており、私たちが手がけた英語字幕も含め、みな“伝える”ために同じように苦労を重ねてきたのだと思いました。私も何度も見た作品なのに、この会場で皆さんと観ることができて本当に感動しました。」(エリ・プリコッドコ ディレクター)

様々な情報保障のレイヤー(出演と音声ガイド制作、バリアフリー字幕、英語字幕)にJVTA修了生が携わったこの映画の公式パンフレットには、JVTAの新楽直樹代表がメッセージを寄稿。JVTAならではの多面的な対応を具現化する一作となっている。英語字幕が完成したことで、この映画をさらに多くの人に届けることが可能になった。

パンプレットにはテキスト版と音訳版をダウンロードできるQRコードが付いている

「チュプキでの英語字幕上映期間にも外国人の観客が来てくれました。また、知人を通じてスウェーデンの映画祭での上映が実現しました。今後、他の国の映画祭にも出品していけたらと考えています。」(平塚さん)

JVTAでは、海外の映画祭出品のサポートも多くの実績がある。本作が海外でさらに多くの人に届くよう、JVTAも支援も続けていきたい。

『こころの通訳者たち What a Wonderful World』 公式サイト

ユニバーサルシアター CINEMA Chupki TABATA 公式サイト


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『こころの通訳者たち What a Wonderful World』が劇場公開 3人の舞台手話通訳者たちの動きを音声ガイドで伝える挑戦とは?

WATCH 公式サイト

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明けの明星が輝く空に 第193回 特撮キャラも見た目が9割!

誤解を恐れずに言おう。僕はルッキズムに支配されている!応援したくなるスポーツ選手は、だいたいイケメン・イケジョ。趣味のロードバイクを購入する際には、9割は見た目で選んだし、スマホも色と形が購入の決め手になった。

当然、僕のそういった嗜好は、特撮キャラクターにも及ぶ。先月の記事で取り上げたホースオルフェノクは、騎士のような外見に一目惚れした怪人だ。仮に僕がコスプレーヤーだったとしたら、迷わずそのコスチュームを選び、コスプレ会場に乗り込むことだろう。

物心ついたころから、僕にとって至高の特撮ヒーローはウルトラセブン(『ウルトラセブン』1967年~68年)だった。それは、悲劇性をはらんだ彼の活躍が胸に刺さったからだが、見た目の要素も小さくなかったことも事実だ。ホースオルフェノク同様、特撮史上、一二を争うイケメンではないかと思う。特徴的なのは、横長の六角形をした目だ。ウルトラマンの卵形の目とは対照的に、シャープな輪郭線を持つ目。前寄りの位置に小さな黒目(撮影用マスクに明けられた覗き穴)があり、そこから何本もの筋が放射状に、黄色に彩色された周縁部に向かって伸びる。一説によると、ウルトラセブンをデザインした芸術家の成田亨氏は、イギリスの彫刻作家、バーバラ・ヘップワースの影響を受けているという。ヘップワースの作品の中には、空洞に弦を張ったものがあり、成田氏ほかの作品には、それを取り入れたものがあるという。ウルトラセブンの目も、同じことが言えるのかもしれない。しかしその目にある筋は、見ようによっては一つの天体から四方に向かって伸びる光跡のようでもある。成田氏のデザイン画を見たとき、僕は直感的に宇宙を表現したものと感じた。

シャープな線で構成されているのは、目だけではない。銀色に輝くメタリックな頭部全体に、同じ特徴が見られる。特に人間の唇や顎をデフォルメしてデザインされた口元は、まるで彫刻刀で彫られかのようだ。さらに頭頂部の、西洋の騎士のヘルメットにあるようなとさか状の装飾。類似するデザインは、ウルトラセブンより先に、漫画(のちにアニメ化もされた)『鉄人28号』の主人公ロボットにも見られた。ただ、ウルトラセブンが独創的なのは、それが取り外し可能な武器で、ブーメランや小刀のような使い方ができたことだ。切れ味鋭い刃の部分は、当然ながら非常に鋭角的でシャープな形状をしている。

僕にとって外見が大事なのは、ヒーローだけでない。怪獣も同じだ。みなさんは、ゴジラの顔つきが作品ごとに違うことをご存じだろうか。新たに着ぐるみを作り直すため、微妙に変わってしまうのだ。また、シリーズが進んでいくうちに、目がクリッとして愛嬌を感じさせるような顔になったのは、ゴジラが人類の味方という設定に変わったからだった。その後、原点に戻って再び人類に災厄をもたらす存在となると、ゴジラは一様に凶暴な目つきになる。そんな中でもイイなあと思うのは、『ゴジラ2000 ミレニアム』(1999年)のゴジラだ。目つきは鋭いが、黒目が大きいせいか邪悪さは感じられない。むしろ、勝負に挑むアスリートのように、邪心のないまっすぐな目をしている。そして頭は小さく、長めの口吻は先が鋭角的で、歴代ゴジラの中でもスピーディーに動けそうな雰囲気がある。そして、各パーツのバランスが良く、非常に整った顔立ちのゴジラだと感じる。(その分、怪獣としての面白みには欠けるかもしれない。たとえば、着ぐるみの造形が粗雑な印象でアンバランスな印象がぬぐえない『ゴジラの逆襲』(1955年)の“逆ゴジ”や、極端に小さい目が、どこを見ているかわからない『シン・ゴジラ』(2016年)の“シンゴジ”には、尋常のモノにはない気味悪さと迫力があった。)

ただし、僕がいちばん好きなゴジラはほかにいる。それは、一般的な意味でのイケメンとは違うかもしれない。というのも、顔を腫らしたボクサーのような顔つきをしているからだ。そのゴジラとは、『モスラ対ゴジラ』(1964年)に登場した“モスゴジ”。顔が腫れているように見えるのは、眉骨付近の肉が厚ぼったく、頬の肉が垂れ気味なせいだが、強い眼光を放ち、何発パンチを浴びても戦意を失わない猛者といった雰囲気がある。さらに気に入っているのが、無理に怖そうな表情を作っていないところだ。最近のハリウッド版ゴジラは、取ってつけたようなしかめ面をしており、僕にはこけおどしのようにしか見えない。モスゴジはそれに比べれば無表情で、それがかえって凄みを感じさせる。余談になるが、以前、若貴兄弟の“お兄ちゃん”こと若乃花関の、現役時代の写真を見て背筋がブルッとしたのを覚えている。それは、取り組み前の仕切りの写真だった。無表情ながら、その目からは戦いに集中していることが伝わってきて、なんとも恐かった。あれが殺気というものだろうか。

最後に、僕が好きな特撮キャラはイケメンだけではない、ということを付け加えておこう。たとえば、『人造人間キカイダー』(1972年~1973年)の悪役ロボット、ハカイダー。頭に透明なヘルメット/笠のようなものを被り、移植された科学者の脳が透けて見えているという奇妙なデザインなのだが、卑怯な手を嫌い、実力で勝とうとする姿が魅力的だった。反対に、たとえばウルトラセブンの中身が“ダメンズ”だったら、いくら外見は良くても好きにはならなかったろう。つまり、見た目が9割、だけど残りの1割も大事、ということだ。(最後の最後で記事の主旨からずれてしまった気もするが、結論としてはきれいに収まった・・・、かな?)

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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。

【最近の私】ウルトラシリーズ最初期のヒロインを演じた、桜井浩子さん登壇のトークショーに行って来ました。最後の質問タイムで、女性が主人公の作品が今後生まれる可能性について尋ねたところ、なるほどそういうことにも気を配る必要があるのかと気がつかされ、勉強になりました。

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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る 
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【JVTA30周年記念 代表:新楽直樹に30の質問】始まりは映画への情熱 言葉のプロを育成する教育への想い

JVTAは1996年に開校し、今年で創業30周年を迎える。あらゆる動画の字幕や吹き替え翻訳を行うプロフェッショナルを育成する職業訓練校としてスタートし、これまで多くの映像翻訳者を輩出してきた。また、翻訳案件を受発注するエージェント部門を併設し、修了生がスクールで学んだスキルを活かして活躍するシステムを構築している。さらに長きにわたる指導経験から国内外の小学校から大学まで幅広い教育機関でも映像翻訳に関する授業を行うなど独自の事業展開が特長だ。

今回は代表の新楽直樹に30の質問を敢行。前編10問では創業時の理念やこれまでの変革の歴史、今後の展望などを聞いた(前編はこちら)。 後編20問では、仕事の必需品や愛読書、世界が終わる前日に観たい映画など、よりカジュアルな質問で新楽の素顔に迫る。

11.仕事をする上での必需品は?
新楽:手帳とボールペン。この2つは打ち合わせにも必ず持参しています。自ら書くことで感じ取れ、言語化できるものがあるからです。

12.30年前、映像コンテンツにおける現在の状況を予測していた?
新楽:創業当時、「近い将来、世界中の映像がシャワーのごとく日本に降り注ぐだろう」という確信はあったものの、正直に言えば動画配信サービスなども含めて、ここまですごい展開になるとは思っていませんでした。2000年ごろ当校の学校説明会で私は、ホワイトボードにパソコンの絵を描いて、「この1本のラインを通って世界の無数の映像コンテンツとつながるようになる」と話していました。とはいえ、当時はいくら力説しても実感を持てない人もいたようです。

13.JVTAの30年を一言で表すと、どんな言葉になる?

新楽:一言で言ったら「進化」。現在は外国人スタッフも増えてきました。ポーランドやフランスの学生がJVTAの志に共鳴してインターンを経て頼もしいスタッフになるなんて。たった一人でJVTAを作った時は想像もできなかった(笑)。

14.受講生・修了生との交流で、一番嬉しかったエピソードは?
新楽:JVTAがプロボノでサポートする事業の一つに難民映画祭があります。上映作品の字幕翻訳とはいえ、職業として映像翻訳を学びにきた人たちにボランティアでの協力を呼びかけていいものか悩みました。誰も見つからないどころか、怒られるんじゃないかと。しかし、翻訳作業には多くの受講生、修了生が手を挙げてくれたんです。さらにそのスピリットはJVTAの柱の一つとなって現在まで20年近く続いています。嬉しいです。

国際的な映画祭に字幕や吹き替えは欠かせない。JVTAは難民映画祭のほかにも、多くの映画祭を字幕や公式プログラムなどの翻訳でサポートしてきた。米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」や世界最大級の日本映画の祭典「ニッポン・コネクション」、LGBTQ+などの性的少数者(セクシュアル・マイノリティ)をテーマにした作品を集めた「レインボー・リール東京〜東京国際レズビアン&ゲイ映画祭〜」、映像クリエイターの登竜門として知られる「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭」、日本ではじめて大規模な映画の祭典として誕生した「東京国際映画祭」など、毎年さまざまな映画祭で多くの修了生が言葉のプロとして活躍している。

◆【2025】JVTAの映画祭サポート

JVTAには、スタッフも受講生も映画やドラマ好きな人たちが集まってくる。映画のエンドクレジットに自分の名前を残すことを目標に掲げる人も多い。毎期開催の新入生を迎えるウェルカムパーティでは、映画に関するコアなクイズで盛り上がるのもJVTAならではと言えるだろう。新楽の映画への想いを聞いてみた。

15.初めて夢中になった映画は?
新楽:小学生の頃に感動した映画は『サウンド・オブ・ミュージック』(1965年)。とにかく夢中でジュリー・アンドリュースのファンクラブに入って、事務局に「ジュリーに会いたい!」と手紙を出したほど。実はその時ファンクラブの方から一緒にハリウッドに行きませんか?と手紙をもらいましたが、まだ子どもだったので親に怒られて行けなかった…。2015年のアカデミー賞では同作50周年企画として、レディー・ガガがメドレーを披露。すると、ジュリーも登場して二人がハグを交わす場面がありました。時代を超えたスターの共演は泣けましたね。ちなみに、『サウンド・オブ・ミュージック』のNHK BSプレミアム版字幕は、修了生のチオキ真理さんが手がけています。50年以上も前に憧れた作品の字幕を修了生が担当していることにも、30年の重みを感じます。

16.観るたびに泣いてしまう映画は?
新楽:『ビッグ・ウェンズデー』(1978年)。サーフィン映画だと思っている人が多いけどベトナム戦争や米国社会の移ろいをテーマに据えた、骨太の青春ドラマです。

17.明日世界が終わるとしたら最後に観たい映画は?
新楽:アカデミー賞で作品賞をはじめ5部門を受賞した『羊たちの沈黙』(1991年)です。猟奇的なストーリーとシーンが強調されがちですが、FBI訓練生を演じるジョディ・フォスターの演技と醸し出す空気感は比類なきものです。

18.映画を撮れるとしたらどんな作品を作りたい?
新楽:一瞬の輝きを放ちながら時代に埋もれていった実在したヒーローやヒロインにスポットを当てたい。かつての女子プロレスの悪役を描いたNetflixの『極悪女王』のような。ちなみに次は昭和・平成の占い師として一世を風靡した細木数子さんの物語だそうです(笑)。

19.映画に出演できるとしたらどんな監督のどんな作品に出てみたい?
新楽:クリストファー・ノーラン監督の作品。『オッペンハイマー』のように時代や社会 に翻弄された人を演じてみたい。

20.映像翻訳者なら絶対に観ておくべき映画は?
新楽:ある映画祭の上映会に参加した時のことです。海外から訪れていたドキュメンタリー作品の監督が、「映画を撮り始めたきっかけは日本のジブリ作品」と話していました。ジブリ作品は、日本で映像に関わる仕事をするプロなら自国の文化として深く知り、語れるようにしておくべきだと私は考えています。翻訳者には世界の映画関係者と対話する機会がきっとある。その時、「この人は自国の文化を理解しているプロだ。ならば私の作品を託しても安心だ」と思わせるには、世界の多くのクリエーターが認めるジブリ作品について話すのが効果的。私が担当している日本語表現の授業で、開校以来、ジブリ作品をテーマにコラムを書く課題を出しているのは、それが理由です。

新楽は開校当時から自らも講師として受講生・修了生の指導を行っている。前述のジブリ作品に関するコラムや「いい邦題、悪い邦題」、フリーランスという働き方など実践的な内容が多い。30年という時間の中で受講生の反応に変化はあるのだろうか?

21.講師として授業をする中で反応が変わったと感じることは?
新楽:私はかつて雑誌の編集や書評の執筆などに携わっていた経験から、日本語表現に特化した授業を行っています。事前にテーマを指定し、受講生にコラムを書いてもらうのですが、文章力が全体的に上がっていると感じています。SNSやブログ、noteなど個人で文章を書いて発信する機会が圧倒的に増えているからでしょう。

長年同じテーマで授業を行う中で、興味深い発見がありました。それは「首ったけ」という言葉の捉え方です。洋画の邦題について、「いい感じと思う邦題とダメだなと思う邦題」についてコラムを書く授業の課題で、最も多くの受講生に選ばれたのが『メリーに首ったけ(原題:There’s Something About Mary)』でした。ただ、1999年から8年ほどの期間は、すべての人が「ダメな邦題」として取り上げていたのに、2007年ごろからは「いい感じ」に選ぶ人が現れ始めたのです。その後は「好き派」と「嫌い派」が同居するようになり、やがて2017年ごろになると「嫌い派」が消えた…。これはおそらく言語学研究としてもユニークで貴重なデータではないでしょうか。

新楽代表はコラムでも言葉に関する様々な考察を綴っている

◆Tipping Point Returns Vol.32 邦題が教えてくれる、日本語のややこしさと楽しさ

22.講師として授業をする中で反応が変わらないと感じることは?
新楽:フリーランスという働き方についての不安は変わらないと感じます。そしてその気持ちはよく理解できます。ですので、私が30年続けているフリーランスの働き方・営業法に関する授業では、できる限りの実例を示し、実践的なスキル指導などを行って、少しでも不安を解消してもらえるよう努めています。そのためには、私自身がフリーランスを巡る社会環境の変化を注視し、学び続けなければなりません。

23.映像翻訳者なら絶対に観ておくべきドラマは?
新楽:ドラマはテレビで観るのが主流だった時代、世界中の人に愛された作品からは、今も学ぶ点が多い。古いと切り捨てるのはもったいないです。たとえば『フレンズ』や『ビバリーヒルズ高校白書』など。今の時代に合わせた調整的な字幕翻訳もなされているのでぜひ観てほしい。

最近は旧作の続編やリブート、同窓会企画などの番組も多い。そのため、「大ファンだったあの作品の再翻訳に、まさか関われるなんて!」と驚く修了生も少なくない。

◆『フレンズ:ザ・リユニオン』24時間で字幕を完成させた舞台裏とは?
◆『ハリー・ポッター20 周年記念:リターン・トゥ・ホグワーツ』 待望の話題作を手がけた「選ばれし者」たち

24.映像翻訳者なら絶対に読んでおきたい本は?
新楽:村上春樹氏と柴田元幸氏の共著『翻訳夜話』(文春新書)。翻訳とは何かを深く考える上で、大きなヒントがあり、刺激にもなる。

25.折りに触れて読み返す愛読書は?
新楽:村上春樹の初期4部作(「風の歌を聴け」「1973年のピンボール」「羊をめぐる冒険」「ダンス・ダンス・ダンス」です。

26.この30年で実現した最も大きな夢は?
新楽:言葉のプロになるという同じ志を持った多くの仲間と出会えたこと。おそらく国内では最も多くの映像翻訳者がJVTAから誕生しました。また、映像や翻訳業界を超えて、JVTAでの学びを活かしてさまざまな分野で活躍する人の声を聞くことが増えました。夢のようです。

27.30周年を起点に実現したい夢は?
新楽:30年の間に映像翻訳者という職能は市民権を得ました。現在JVTAの業務だけでも年間約800名のプロが活動しています。「動画の時代」「AIの時代」への変化はさらに加速するでしょう。そうしたなかでもキラリと輝く言葉のプロの役割、新たな映像翻訳者像、バリアフリー字幕・音声ガイドのクリエーター像を定義し、示していきたいと考えています。

28.受講生・修了生の皆さんと今後実現したい夢は?
新楽:JVTAは学校教育部門に注力し、国内外の小学校から大学までの教育機関との連携を深め、授業や研究をサポートしています。一般的な翻訳会社や映像関連会社にはない大きな特長です。この領域での活動を、受講生・修了生の皆さんと広げていきたい。もちろん「言葉のプロとして活動しつつ」でOKです。私は「教えることは素晴らしいことであり、社会が最も必要としていることの一つ」という考え方をもっています。JVTAで学ぶ技能、そのエッセンスを日本、いや世界中の児童・生徒・学生に伝えてワクワクしてほしい、言葉を探究する楽しさや喜びを知ってほしいと願っています。嬉しいことに、それに賛同する学校や団体が少しずつ増えているのです。「教える」という仕事を、ぜひ受講生・修了生の有志と開拓していきたいですね。

◆「My Hometown Ito 英語で伊東のPRショート動画を作ってみよう!」
◆JVTAの教育機関プログラムの導入・講師派遣

コロナ禍以降、リモート受講の定着により、今や世界にJVTAの受講生、修了生が点在しており、国内外で語学力や映像翻訳のスキルを駆使している。ドイツの日本映画祭の会場での取材対応カナダの高校で映像翻訳のワークショップでの指導デンマークからJVTAのオンラインセミナーに登壇など、海外在住の修了生もそれぞれの場所で独自のキャリアを重ねている。海外在住歴が長い人にとって日本のスクールで専門的な職能を学ぶことは、現地でも新たな仕事との出会いに繋がるのだ。昨今はJVTAの指導の下で日本の作品に海外の大学で日本語を学ぶ学生が英語字幕をつける「海外大学字幕プロジェクト(GUSP)」も恒例となった。また、SDGsをテーマにしたドキュメンタリー作品を上映する無料のオンラインイベント「WATCH」では、国立東京外国語大学と共同開催し、日本国内外の大学生に字幕づくりを指導している。国内外の修了生がそれぞれの居住地域で言葉のプロとして力を発揮できるフィールドをJVTAは今後もさらに拡大していく。

「WATCH」公式サイト https://www.watch-sdgs.com/

29.30年前の自分に声をかけるとしたらどんな言葉?
新楽:「もっと働け!楽しめ!」(笑)

30.言葉のプロとこれから言葉のプロを目指す人にメッセージを。
AIの時代にこそ、この瞬間を生き、感動したり、せつなくなったり、そんなふうに迷いながらも、人々の言葉の行間や背後にあるものを感じ取る努力を重ねてほしい。そして、その強い想いとスキルで言葉を編み、紡いでいける人になってください。これからの社会はそんな人財を必要とするはずだからです。私はこれからも言葉のプロや目指す人、その志を支えるスタッフたちと歩んでいきます。

◆前編を読む

【JVTA30周年記念 代表:新楽直樹に30の質問】世界の映像が日本に、日本の映像が世界に降り注ぐ未来を見据え、映像翻訳の「職業訓練校」を創業

【関連記事】
【JVTA代表 新楽直樹コラム】Tipping Point Returns
学校代表・新楽直樹のコラム。映像翻訳者はもちろん、自立したプロフェッショナルはどうあるべきかを自身の経験から綴ります。気になる映画やテレビ番組、お薦めの本などについてのコメントも。ふと出会う小さな発見や気づきが、何かにつながって…。

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花と果実のある暮らし in Chiang mai プチ・カルチャー集 Vol.98 新年です!自分のお寺にGO!

★「花と果実のある暮らし in Chiang Mai」
インパクト大の写真をメインにタイのリアルなプチ・カルチャーをご紹介しています。

タイ北部では、一部のお寺が、干支の仏像を守り本尊としています。そして自分の生まれた年の干支のお寺に、一生に一度行くと幸運に恵まれるという言い伝えがあります。タイ人の友人に連れられ、私も20年前にチェンマイ県のお隣のランプーン県にある酉年のお寺に行きました。お寺には酉の置物がたくさん飾られていたのを覚えています。友人の話に触発され、私も!と早速お正月ドライブへ。運よく酉年のお寺は我が家から比較的近くちょうどいい距離。20年前の印象とは違い、観光客も増えていて、きれいに飾り付けされていました。多くの参拝客とともに仏塔の周りを周り、無事新年のお参りができました。元旦にタイの餅米をついたお餅でお雑煮を、そして人生の節目に自分の干支のお寺に行くなんて、日本とタイの混合文化行事という感じでいいもんだなあ…と青空に映える仏塔を眺め一年のいいスタートを切ったのでした。

タイの北部に訪れる際は、ぜひご自分の干支のお寺に行ってみてくださいね。

青空にそびえ立つ酉年のお寺の仏塔
酉の置物があちらこちらにたくさん!
たくさんの観光客で賑わっていました。
仏像
お参り後に可愛いカフェを見つけて一休み

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Written  by 馬場容子(ばば・ようこ)

東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。
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花と果実のある暮らし in Chiang Mai
チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美バックナンバーはこちら

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【JVTA30周年記念 代表:新楽直樹に30の質問】世界の映像が日本に、日本の映像が世界に降り注ぐ未来を見据え、映像翻訳の「職業訓練校」を創業

JVTAは1996年に開校し、今年で創業30周年を迎える。映画の字幕や吹き替えを作るプロフェッショナルを育成する職業訓練校としてスタートし、これまで多くの映像翻訳者を輩出してきた。また、翻訳案件を受発注するエージェント部門を併設し、修了生がスクールで学んだスキルを活かして活躍するシステムを構築している。さらに長きにわたる指導経験から国内外の小学校から大学まで幅広い教育機関でも映像翻訳に関する授業を行うなど独自の事業展開が特長だ。

今回は代表の新楽直樹に30の質問を敢行。創業当時の想いや、これまでの変革の歴史、今後の展望などについて聞いた。

1.創業時に「唯一、これだけは譲れない」と決めていた理念は?
新楽:JVTAのミッションは、言葉が持つ「社会に伝える力」を最大限発揮し、文化や言語の壁を越え、日本と世界をつなぐお手伝いをすること。また、その担い手となる言葉のプロフェッショナルを育成することです。この理念は創業当時から変わりません。開校当時の1996年、「映像翻訳」という言葉は定着していませんでした。まだビデオテープも使っていた時代です。しかし、私には後に世界中の映像コンテンツがシャワーのように日本に降り注ぐ未来が見えていました。そしてその時、字幕や吹き替えを作る映像翻訳という技術は社会に不可欠な「職能」として認められるという確信があったのです。「本物の職業訓練校を作る」という想いが私たちの原点です。

2代目となる現在の校舎は日本橋エリアのオフィス街にあるが、初代の校舎は代々木八幡の古い木造3階建てで、スクールという雰囲気ではなかったと新楽はいう。まして「映像翻訳」という言葉も概念も浸透していない時代。学校を立ち上げても果たして受講を希望する人はいるのか、説明会をやっても参加者はいるのか、まったく手探りの状態だった。

初代校舎の外観

2.開校時を支えてくれた、一番印象に残るエピソードは?
新楽:30年前はインターネットも広くは普及しておらず、告知は新聞広告と雑誌のみでしたが、いざ開校してみると、英語力を活かして映像の世界で腕を振るいたいという志の高い方々が続々と集ってきました。それは驚きでもあり今でも強く印象に残っています。当時はすべての受講生に対して各コース修了時の面談を私が一人で行っていました。短期間に100人以上の方たちと向き合うので、控室に簡易酸素吸入マスクを用意したことも(笑)。今は著名な翻訳者になった方が当時はお子さんを連れて面談に訪れるなど、受講生たちの熱量に圧倒されたのを覚えています。あの時の出会いがあったからこそ、今のJVTAがある。当時の受講生たちが、今では翻訳実務やコラムの執筆などでJVTAを支えてくれているのが、何よりの財産です。

3.「これだけはブレてはいけない」とスタッフに伝え続けているメッセージは?
新楽:JVTAが最も大切にしているのは、受講生・修了生です。私たちの基本は言葉のプロを育成するスクールであり、ここで学び確かな職能を身につけた多くの映像翻訳者たちが日本と世界を繋ぐ役割を担っています。現在は劇場公開映画作品やアカデミー賞候補となる作品などを手がけるベテランも少なくありません。なかにはメディアや翻訳会社に所属して私たちのクライアントとなり、良い関係を築いている人もいます。同じ志を抱いた仲間として受講生、修了生を心から誇りに思っています。

4.「JVTAがこれは誰にも負けない」と思う、一番の強みは?
新楽私たちの強みは教育機関としての「職業訓練」と、実務の「受発注」が高度に一体化している点です。当初はスクールだけでしたが、仕事の依頼の増加に伴い、受発注を専門に行う部門を正式に立ち上げました。現在は修了生を対象にしたトライアル(プロ化のための試験)を定期的に開催し、合格者にはOJTでプロデビューをサポート。スクールで確かなスキルを身につけた修了生にさまざまな形で就業の場を提供しています。受講生・修了生を最も大切に想うからこそ、彼らが社会に貢献できるよう、仕事を創出し、マッチングさせる。この「職業訓練校としての誇り」こそが、私たちの存在意義です。

5.30年の中で、受け継がれている「独特な習慣」は?
新楽:フリーランスの自立支援を一貫して続けています。30年前は企業や組織に所属することが一般的で、フリーランスには否定的な見方が強かった。しかし、私は敢えて映像翻訳を学ぶすべてのコースで、「フリーランス」の心得を説く授業を行ってきました。つまり私は翻訳を学ぶすべての受講生と向き合ったことになります。時代は変わり、現在はインターネットやSNS、AIの普及、働き方改革などで、フリーランスという働き方は市民権を得て、企業も副業を認める時代になりました。翻訳者は、言葉のプロのフリーランサーとしての「自立」と「自律」の意識を持つことが必須です。授業では、就業を前提にクライアントから信頼を得るための仕事術や営業術、レジュメの書き方や確定申告、インボイス制度など、実践的な内容を伝えています。

受講生がJVTAで学ぶきっかけはさまざまだ。友人や職場の同僚、家族らの口コミでJVTAを知ったという声も多い。30周年を迎える今では、親子や姉妹でプロになり活躍している例もある。それは、アットホームな校風の効用とも言えるだろう。「実は受講期間はJVTAとの繋がりのほんの一部であり、修了後からの付き合いこそが本番だ」と新楽はいう。プロデビュー後に仕事を通してより深い関係を構築していくのがJVTAならではの特長なのだ。

6.30年の中で、事業の方向性を大きく変えた「決断」は?
新楽:振り返ると最も大きな決断は2008年だったかもしれません。この年にロサンゼルスに法人を立ち上げました。ロサンゼルス校は、米国カリフォルニア州教育局より正規の学校として認可を受け、留学生(M-1ビザ)を迎え入れることができる公認の職業訓練校です。通訳や実務翻訳などの授業も行うほか、現地での日本の映像作品の英語字幕付きの放送や映画祭などにも大きく貢献してきました。

難民映画祭の支援がスタートしたのも2008年でした。これは映画祭の上映作品にプロボノ(職業の専門性に基づく知識や経験などを生かして行う無償の社会貢献活動)で字幕制作を行うというものです。はじまりは当時、受講生募集のセミナーに参加していた女性(東京の国連難民高等弁務官事務所のインターン)が「映画祭を立ち上げたが字幕を付けられない。JVTAがボランティアで字幕制作を請け負ってくれないか」という嘆願からでした。字幕がないまま上映されることを嘆く彼女の想いに共感はしたものの、それまで無償のプロボノ協力の実例はなく、私は困惑したのです。はたして無償で協力してくれる修了生や受講生はいるのだろうか。しかし、実際に呼び掛けると、そんな懸念とはうらはらに多くの方々が協力したい!と手を挙げてくれました。プロとして忙しく働いている修了生も、収入は度外視して難民映画祭に貢献したい、と。「言葉の力で豊かな社会づくりに貢献する」という私たちの理念を具現化したこのコラボレーションは現在も続いています。また、青山学院大学や明星大学の学生たちもこの字幕制作に参加し、JVTAが指導を行っています。この映画祭への協力は受講生、修了生、スタッフ、私自身にも大きな学びがありました。このご縁を機に国連難民高等弁務官を務め、私にとって唯一無二の‛尊敬すべき偉人’だった緒方貞子さんから20周年にお祝いの言葉を頂けたことが、これからも私たちの支えであり、誇りです。

提供元:難民映画祭

◆Tipping Point Returns Vol.10 追悼 緒方貞子さん ~難民支援と映像翻訳~
◆JVTAの教育機関へのプログラム導入、講師派遣
◆【難民映画祭20周年】わたしと難民映画祭(字幕翻訳者編)

創立から30年、ロサンゼルス法人の立ち上げも含めて、JVTAは新たなチャレンジの連続だった。当初は英日の映像翻訳のコースのみで開講したが、その後は、英語力に重点を置いた「English Clock」、日本の作品に英語の字幕を付ける「日英映像翻訳科」、日本語の文章力に特化した「日本語表現力強化コース」、聞こえづらい人や見えづらい人にバリアフリー字幕や音声ガイドをつくる「メディア・アクセシビリティ科」(旧バリアフリー講座)などを開講。言葉に関する多様な分野の学びが可能になり、修了生の仕事の幅も無限に広がっている。

7.新しく挑戦してきた「未知の領域」はありますか?
新楽:コロナ禍をきっかけに2020年ごろから世界中でリモート学習やテレワークが一気に普及しました。JVTAはそれに先んじて遠方の地方都市や海外に在住の入学希望者の声に応え、すでに教室のリアル受講とオンライン受講のハイブリッド形式を導入していました。その経験があったからこそ、コロナ禍になってもいち早く全面リモート受講を実現することができたのです。その結果、現在は国内外のあらゆる国や地域に受講生、修了生が点在しています。さらに、リモート受講をより快適にするラーニング・マネージメント・システム「JVTA Online」を独自に開発するなど、常に時代のニーズに即した学習環境を提供しています。

コロナ禍前に教室にオンライン受講用のカメラを設置

8.次の10年(40周年)に向けて、描いているビジョンは?
新楽:今後10 年の課題は、「AIの普及と加速するグローバル化」の時代にぴたりと一致した職業訓練コースと受注体制を作っていくことですね。AIと共存する未来を見越して、私たちは2022年にAI字幕翻訳ツール「Subit!」(サビット)をリリースしました。これは、2019年12月から国立大学法人奈良先端科学技術大学院大学(NAIST)の情報科学研究科知能コミュニケーション研究室(中村哲教授、須藤克仁准教授)とAI字幕翻訳に関する共同研究を行い、誕生したものです。最大の特長は、AIが出力する日本語が映像や動画の視聴に最適化されていること。昨今は実務でも機械翻訳したものを人間が修正し整えていくポストエディット(PE)といわれる手法が定着しつつあり、私たちも積極的に取り組んでいます。さらに、映像翻訳のカリキュラムにもAI翻訳の活用法を学ぶ授業を取り入れるなど、社会の最新ニーズに沿った内容にアップデートしています。

9.翻訳者はAIの進化とどのように共存すべきか?
新楽:AIは翻訳者にとって競合するものではなく、活用するものです。「AIを活用して品質と生産性を上げる」。AIを怖がるのではなく、AIを研究し尽くして利用し尽くすことも、今後の翻訳者のスキルの一つと言えるでしょう。とはいえ、AIは作品を深く解釈しセリフを紡ぎだす映像翻訳者には敵わない。すでに実務でもAIの活用は始まっていますが、最終的なメディア表現を編むのはどこまで行っても言葉のプロ、つまり映像翻訳者です。決してAIだけで代用はできません。AIと言葉のプロが共存することが今後の翻訳の在り方になります。


10.自身にとって「仕事の喜び」とは?
新楽:修了生の皆さんの活躍がやはり一番の喜びですね。「プロデビューした」「話題作の字幕を手がけた」「書籍を執筆した」「コンテストで入賞した」「イベントで通訳を担当した」といった声はもちろん、「映像翻訳ではないが今の仕事に役立っている」「表現力が増して周囲からの評価が上がった」など、JVTAで学んだスキルを活かしてキャリアを重ねているという報告が何より嬉しい。

創業から30年。JVTAからは多くの映像翻訳者が巣立ち、世界でもそのスキルを遺憾なく発揮する姿は、まさに私たちが創業から一貫して目指してきた「未来」だ。

後編ではもっとカジュアルな質問で新楽代表の素顔に迫る。どうぞお楽しみに。

◆【JVTA30周年記念 代表:新楽直樹に30の質問】始まりは映画への情熱 言葉のプロを育成する教育への想い

【関連記事】

【JVTA代表 新楽直樹コラム】Tipping Point Returns
学校代表・新楽直樹のコラム。映像翻訳者はもちろん、自立したプロフェッショナルはどうあるべきかを自身の経験から綴ります。気になる映画やテレビ番組、お薦めの本などについてのコメントも。ふと出会う小さな発見や気づきが、何かにつながって…。

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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第135回 “THE BEAST IN ME”(『BEAST ー私のなかの獣ー』)

“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi 

第135回“THE BEAST IN ME”(『BEAST ー私のなかの獣ー』)
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。

今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
 
予告編:『BEAST -私のなかの獣-』 本予告

 
スパイスリラーのエース対決が楽しめる極上のサイコスリラー!
年頭を飾る本作は、傑作スパイスリラーの主役2人“Homeland”のクレア・デインズと、“The Americans”のマシュー・リスが激突するNetflixのリミテッドシリーズ。本年度のゴールデングローブ賞作品賞、主演女優賞(デインズ)、主演男優賞(リス)にノミネートされた。
“The Beast in Me”は、引きこもりの作家とサイコパスの実業家による極限の頭脳戦・心理戦が展開する極上のサイコスリラーなのだ!
 
“What did you do?”
—ニューヨーク州郊外の町オイスターベイコーブ
アギー・ウィッグス(クレア・デインズ)は、7年前に自叙伝『病める子犬 父への手紙』でピューリッツァー賞を取ったベストセラー作家だ。彼女の父親はサイコパスの詐欺師だった。
 
4年前、アギーの人生は一変した。8歳の息子クーパーを交通事故で失ったのだ。彼女は精神的に追い詰められ、やがて妻のシェリー(ナタリー・モラレス)とも離婚した(アギーはゲイだ)。
今は修理の必要な屋敷に引きこもって、トイプードルと暮らす毎日だ。執筆は進まず、常に怒りを抱え、経済的にも困窮している。
 
ナイル&ニーナのジャーヴィス夫婦(マシュー・リス&ブリタニー・スノウ)が隣に引っ越してきた。ナイルは世間を騒がせている不動産王で、失踪した前妻の殺人容疑が不起訴になったばかりだ。
アギーとナイルは初対面で衝突した。ジャーヴィス家の2匹の大型番犬とセキュリティシステムの騒音がアギーをいらつかせ、さらにナイルが提案している地域のジョギングコース建設に彼女が反対したからだ。
 
ナイルは仲直りのためにアギーを強引にランチに誘った。席上でナイルは次作が行き詰ったアギーに、「僕の本を書けばいい」と持ちかけた。
多少打ち解けたアギーは、「息子を殺した若者テディ・フェニグを苦しめてやりたい」と本音を吐露した。テディは飲酒運転を疑われたが無実となっていた。激高してテディをストーキングしたアギーは、接近禁止令を言い渡されていた。
 
その夜、アギーの自宅に雨に濡れて酔っ払ったFBI捜査官ブライアン・アボット(デヴィッド・ライオンズ)が突然現れる。アボットは「ナイルには用心しろ」と伝えると去っていった。彼は、ナイルの元妻マディソン失踪事件の主任捜査官だった。
 
翌朝、テディ・フェニグの自殺が報じられた。
そして、アギーはナイルについての本を書く決心をする…。
 
“BrBa”のジョナサン・バンクスが参戦!
クレア・デインズは、17歳の時にレオナルド・ディカプリオと共演した『ロミオ+ジュリエット』(1996)で一躍アイドルとなった。8シーズン続いた傑作スパイスリラー“Homeland”では、双極性障害の辣腕CIAエージェント、キャリー・マトソンを演じてエミー賞&ゴールデングローブ賞に輝いた。主演・助演賞ノミネートはエミー賞8回(受賞3回)、ゴールデングローブ賞7回(受賞4回)を数え、今や大女優の風格だ。デインズはキャリーを髣髴させる今回のアギー役でも、鬼気迫る演技力で観る者を圧倒する。(得意の「顔芸」も健在。)
 
英国出身のマシュー・リスは、ケリー・ラッセル(!)と共演した冷戦下のスパイスリラー“The Americans”(本ブログ第6回参照)で、ソ連のスリーパーエージェントを演じて大ブレークした。タイトルロールを演じた“Perry Mason”も見応え十分で、両作品を中心にエミー賞5回(受賞1回)、ゴールデングローブ賞には4回ノミネートされている演技派だ。今回は、カリスマのあるナルシストでサイコパスの実業家ナイルを気持ちよさそうに演じている。(メーク強め。)
 
ワイルドカードとなるナイルの妻ニーナ役のブリタニー・スノウ、唯一正常に見えるアギーの元妻シェリー役のナタリー・モラレス、自己破滅型FBI捜査官アボット役のデヴィッド・ライオンズ、そして汚い仕事を一手に引き受けるナイルの叔父リックを演じるティム・ギニー。いずれも適材適所で、各役柄はエピソードが進むにつれて重要度が増す。
 
観逃せないのが78歳のジョナサン・バンクス。“Breaking Bad”およびスピンオフの“Better Call Saul”(本ブログ第19回参照)のフィクサー、マイク・エルマントラウトが一世一代のハマり役で、エミー賞に5回(トータル6回)ノミネートされている。本作では、ナイルの強面の父親マーティン・ジャーヴィスを圧倒的な存在感をもって演じてみせた。
 
「内なる獣」の対決!
クリエーター(兼共同脚本)のゲイブ・ロッターは、懐かしの“The X Files”最終シーズンに係わり、また作家でもある。ショーランナー(兼共同脚本)のハワード・ゴードンは“24”をメガヒットさせた後、前述の“Homeland”で絶賛された。
また製作総指揮には、(なぜか)ジョディ・フォスターと人気TVホストのコナン・オブライエンが名を連ねる。
 
力強さと脆弱さをオン/オフで切り替えるデインズと、温厚性と衝動性を行き来するリス。本作最大の見どころは、この2人が生み出すケミストリーだ。
そして、インタビューと駆け引きを通じて芽生える、アギーとナイルの歪んだ共感、友情、絆、愛情、—その危うさと気持ち悪さが、また何とも言えない作品の魅力となっている。
 
ストーリーは大胆で繊細な脚本に乗って、嘘と疑念を積み重ねながら深く静かに潜航する。散見されるご都合主義は、高まる緊迫感で巧みに覆い隠される。
次第に露呈するアギーとナイルの過去。
マディソンとテディに何が起きたのか?
そして衝撃のエンディングと不穏なエピローグまで、加速度的に面白くなる。
 
本作は、主人公2人が共に抱える「内なる獣」が対決する物語。
“The Beast in Me”は、引きこもりの作家とサイコパスの実業家による極限の頭脳戦・心理戦が展開する極上のサイコスリラーなのだ!
 
原題:The Beast in Me
配信:Netflix
配信開始日:2025年11月13日
話数:8(1話 41-54分)
 
<今月のおまけ> 「これは必携、アメリカン・ドラマを楽しむためのお役立ち本!」⑤
●『日本人が知っておくべきアメリカのこと』(中林美恵子、辰巳出版、2025)
日本人唯一の元米国連邦議会正規公務員の著者が、国家構造、政策、国民意識等からトランプ再選後のアメリカを分かりやすく多角的に分析する好著!
 
写真Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
 

【2026年1月】英日OJT修了生を紹介します 3

JVTAではスクールに併設された受発注部門が皆さんのデビューをサポートしています。さまざまなバックグラウンドを持つ多彩な人材が集結。映像翻訳のスキルを学んだことで、それぞれの経験を生かしたキャリアチェンジを実現してきました。今回はOJTを終え、英日の映像翻訳者としてデビューする修了生の皆さんをご紹介します。

◆杉田真樹さん(英日映像翻訳 実践コース修了) 
職歴:私立中高一貫校の英語科専任教諭(現在は非常勤講師として勤務しております)

【映像翻訳の魅力】
映像翻訳の魅力は、限られた文字数の中で言葉を組み立てていくパズルのような面白さにあると思います。映像や音楽、文化背景などを踏まえ、一つのセリフに何時間も向き合い、「これだ」と思える訳にたどり着いた瞬間は格別です。その答えが翻訳者ごとに違うのもまた魅力のひとつ。そうして生まれた言葉が、作品の一部として誰かの心に届いたら、とても幸せなことだと思います。

【今後どんな作品を手がけたい?】
映像翻訳者を目指すきっかけとなった『ビッグバン★セオリー/ギークなボクらの恋愛法則』のようなシットコム作品を、いつか翻訳してみたいです。文化の違いやギャグをどう訳出するかに魅力を感じ、日々さまざまなコメディ作品を観ながら勉強しています。また、関心のある医療やスポーツ分野の作品にも挑戦したいです。さらに、これまで触れてこなかった分野の作品にも積極的に取り組み、映像翻訳を通して自分の世界を広げ続けていけたらいいな、と思います。

◆N.N.さん(英日映像翻訳 実践コース修了)
職歴:マスコミ→実務翻訳(英日・中日)チェッカー

【JVTAを選んだ理由、JVTAの思い出】
受発注部門を併設していて、映像翻訳者としてデビューできるまでの道のりが明確に示されている点に惹かれました。トライアルの次点フィードバックで、自分では気づけなかった詰めの甘さを的確にご指摘いただいたうえで、「思いを尽くしたことは字幕から伝わった」と温かく励ましていただいたことは忘れられません。

【今後どんな作品を手がけたい?】
報道の現場で磨いたリサーチ力を活かして、事件事故や時事・社会問題、歴史、人物ものなど幅広くドキュメンタリー作品に関わりたいです。正確な事実を誤解のないように伝えることはもちろん、そこに関わる人たちの心の機微も伝わる字幕作りを目指しています。作品を通じて誰かの視野や価値観が少し広がる、その一助になれたらとても幸せです。

◆渡邊朗さん(英日映像翻訳 実践コース修了)
職歴:教育(TOEIC指導、アカデミックライティング指導、中学生の学習サポート)、食品卸売(営業事務)、WEBライティング(イベント開催記事、YouTube動画のスクリプト、広報記事)

【JVTAを選んだ理由、JVTAの思い出】
文章を訳す技術だけでなく、映像作品の構造を分析する技術も学べるのでJVTAを選びました。1つのセリフが作品全体の中で担う役割を意識することの重要性を学んだので、映像作品を観ながらその構造をメモすることが習慣となりました。また、毎週の授業前にオンラインでクラスメートと励まし合ったことが、かけがえのない思い出です。

【今後の目標】
教育での経験を活かし、複雑な内容を整理し、作品の没入感を阻害しない翻訳を目指します。私は映画史・航空機・近現代史を扱うドキュメンタリーに特に関心があり、航空検定や歴史能力検定等の学習を通じて知識を深めています。その一方で専門性を大切にしつつも視野を狭めず、様々な分野や吹替翻訳にも挑戦し、息の長い翻訳者になりたいです。

◆杷把優那さん(英日映像翻訳 実践コース 修了)

職歴:テーマパークにて海外来園者向けの接客・通訳業務に従事。現在はJVTAスクール部門に所属するほか、語学教育を中心とした教育分野での業務にも継続的に携わっている。

【映像翻訳を学ぶきっかけ】
幼い頃から宝塚やミュージカルに親しみ、「言葉でときめきを届ける仕事」に憧れてきました。中でも、訳詞家・岩谷時子さんが手がけたミュージカル翻訳に触れ、美しい日本語で歌詞や台詞を生き生きと輝かせる表現力に強く惹かれました。一方で、舞台翻訳の世界は入口が見えづらく、どのように近づけばよいのか模索していました。そんな中で出会ったのが映像翻訳です。舞台や演劇制作の経験から培った「耳に自然に届く言葉」への意識を活かし、表現の仕事として着実に学び重ねていける分野だと感じ、映像翻訳者を志しました。

【今後どんな作品を手がけたい?】
吹き替え翻訳を軸に、ミュージカル映画に携わることを一番の目標としています。視聴者の心に真っすぐ届く、飾らない台詞づくりを大切にしたいです。昨年、難民映画祭の字幕制作に携わった経験から、作品の背景や想いを丁寧にすくい取る訳出を、より強く意識するようになりました。字幕では、留学経験のある韓国のドラマやK-POP関連作品にも積極的に関わりたいと考えています。また、南インド映画に魅了され足を踏み入れたテルグ語の世界や、サンリオ・ディズニーといったキャラクターコンテンツへの愛情も、今後の仕事につなげていきたいです。

★JVTAスタッフ一同、これからの活躍を期待しています!
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【2026年1月】英日OJT修了生を紹介します 2

JVTAではスクールに併設された受発注部門が皆さんのデビューをサポートしています。さまざまなバックグラウンドを持つ多彩な人材が集結。映像翻訳のスキルを学んだことで、それぞれの経験を生かしたキャリアチェンジを実現してきました。今回はOJTを終え、英日の映像翻訳者としてデビューする修了生の皆さんをご紹介します。

◆糸川春菜さん(英日映像翻訳 実践コース修了)
職歴:重工メーカーで事務職

【映像翻訳を学ぶきっかけは?】
先の人生についていろいろと考えていたタイミングで、このまま何者でもない自分で終わってもいいのだろうか、自分だからこそできることを見つけたい、と思いを巡らせました。そこで、自分には遠い世界だと思いつつも憧れを抱いていた字幕翻訳に挑戦してみようと思い立ち、一歩を踏み出しました。

【JVTAの思い出】
クラスの仲間と一緒に学んだ時間が大きな財産になりました。作品の面白さをぐっと引き立てる表現やワードチョイス、構成を踏まえた分かりやすい流れなどなど…毎週のように自分に足りないものに気づかされました。たくさんの刺激をくれた仲間であり、共に奮闘した戦友に本当に感謝しています。

◆ダンカン久佳さん(LA校 英日映像翻訳 実践コース修了 LA校 日英映像翻訳 実践コース修了) 
【職歴】旅行会社(人事・秘書)、外資系IT・金融(エグゼクティブアシスタント)、アメリカの図書館にてESLのファシリテーターおよびチューター(ボランティア)

【映像翻訳を学ぶきっかけは?
夫の仕事で引越しが多かったため、場所を選ばずに仕事ができ、英語や海外生活の経験を活かせる映像翻訳に興味を持ちました。リモート受講したLA校では、現役の翻訳者である講師陣だけでなく、現地生や日本からの留学生など、様々なバックグラウンドを持つクラスメートからも新たな視点や表現を学ぶことができ、とても貴重な経験になりました。

【今後どんな作品を手がけたい?】

ドキュメンタリーや実話をもとにした作品、またヒューマンドラマの翻訳に携わりたいと考えています。息子たちの影響でバスケットボールの試合を見る機会が多く、アスリートの人生を描く作品にもいつか挑戦してみたいと思うようになりました。海外生活の中で日々感じる言葉のニュアンスの違いを翻訳に反映させ、作品に込められた思いをしっかり伝えられる翻訳者を目指しています。

◆モンドール恵利子さん(英日映像翻訳 実践コース修了)
職歴:書店勤務、外資マーケティング事務など

【映像翻訳の魅力】
映像翻訳の魅力は、物語を別の言語で作り直すことにあると思います。かつて小説家になりたいと思っていた時期もありましたが、物語をゼロから生み出すことの難しさを知りました。そんな中で出会ったのが映像翻訳です。すでにある物語を、映像の文脈や登場人物の感情を汲み取り、自分の言葉で語り直していく。その過程に、翻訳ならではの面白さとやりがいを感じています。

【今後の目標】
これからさまざまなジャンルの作品を翻訳し、スキルを磨くことで、「この字幕のおかげで作品にハマった」と思っていただける翻訳を手がけたいです。将来的には、本を読むことが好きなことを活かして文芸翻訳にも挑戦したいと考えています。

◆八重樫礼子さん(英日映像翻訳 実践コース修了)
職歴:都内ホテル勤務を経て、現在は通訳案内士業(英語・フランス語)に従事

【JVTAを選んだ理由、JVTAの思い出】
1学期を通して同じ先生が担当されるのではなく、いろいろな講師の方の授業を受けられること、また、「字幕」、「吹き替え」、とコースが分かれていないことも大きな魅力でした。クラスメートとは在学中から有志でオンライン勉強会も行い、一緒に頑張る仲間がいたことはとても大きかったです。

【今後どんな作品を手がけたい?】
舞台全般やクラシック音楽が好きなので、ミュージカル、ダンス、クラシック音楽や吹奏楽などに関連した作品に携わりたいです。また、VOにも興味があるので、いつかドキュメンタリー作品のVOを手がけられたら、と思っています。フランス語の知識を活かし、フランス語作品に携わることも目標の一つです。

★JVTAスタッフ一同、これからの活躍を期待しています!
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明けの明星が輝く空に 第192回 干支と特撮:ウマ

去る12月某日、不要品処分のため、リユースショップに行った時のこと。査定の間、店内をぶらついていて、ウマがモチーフの怪人、ホースオルフェノクのフィギュアを見つけた。もちろん“即買い”した。今回の記事の参考資料として・・・というより、その姿に惚れ込んでいたからだ。
※写真は本人所有のフィギュアを撮影

平成仮面ライダーシリーズ(2000年1月~2019年8月までの20作品)には、ユニコーンなどを含むウマ系の怪人が数体いる。ホースオルフェノクは2003年~2004年放送の『仮面ライダー555(ファイズ」)』に登場。甲冑をまとった、西洋の騎士のような出で立ちは、「怪人」という言葉が似合わないほど雄々しく凜としており、どこかの古城に飾っても違和感がないかもしれない。ライダーシリーズ、いや、あらゆる特撮作品の全ての怪人の中で、その魅力的な容姿は群を抜いている。

まず目につくのは、その落ち着いたカラーリング。特撮ヒーローや怪人は、子どもを対象にしたビジネス=キャラクター商品販売の都合上、カラフルなものが多いが、ホースオルフェノクはグレーのモノトーンだ。『仮面ライダー555』の設定では、「怪人=人類の進化形態として蘇った死者」という設定があり、「死」のイメージを喚起する色としてグレーが選ばれたのだが、これがホースオルフェノクの騎士のような甲冑姿と相まって、重厚感を生んでいる。

もちろん、派手な色使いがさまになる場合もある。たとえば『仮面ライダーキバ』(2008年~2009年)には、ステンドグラスをデザインコンセプトに取り入れた怪人たち=ファンガイアが登場。黒がベースカラーの身体に、鮮やかな色が散りばめられ、ちょっとしたアート作品のようだ。ウマ系の怪人で言えば、『仮面ライダーオーズ/OOO』(2010年~2011年)に登場するユニコーンヤミーは、ビジュアル系バンドのような、衝撃的な色彩が目を引く。薄い紫色の身体に、金色の角と銀色の顔。身体にも金色や銀色などを配し、ウェーブのかかった長いたてがみは赤紫色だ。

ファンガイアとユニコーンヤミー、そして僕の“推し怪人”であるホースオルフェノクも、同じデザイナー=篠原保氏が手がけた作品だ。ウマというのは鼻梁が長く、頭部が大きくなりがちなモチーフだが、ユニコーンヤミーとホースオルフェノクの場合、小顔でスタイリッシュなデザインにうまく落とし込んでいる。ただ、両者は首の長さが対照的だ。

ユニコーンヤミーの首にはヒトに似た顔があり、二つの顔が縦に並んでいるため、当然首は長くなる。長い首にもう一つの顔がある、と言った方がわかりやすいだろうか。顔が二つあるのは、ヤミーと呼ばれる怪人たちに共通した特徴だ。彼らが登場する『仮面ライダーオーズ/OOO』は、出渕裕氏――第189回『干支と特撮:ヘビ』(https://www.jvta.net/co/akenomyojo180/)で紹介したキャラクターデザイナー――がメインデザイナーを務めており、どうやら「二つの顔」は篠原氏のアイディアではなさそうだ。ただ、篠原氏はその7年前、『仮面ライダー555』のキャラクターデザインを単独で担当した際、同じコンセプトのデザインも考案していた。その一例が、ホースオルフェノクだ。

ホースオルフェノクの二つの顔は、ユニコーンヤミーのように、それぞれ独立したものとして存在しているわけではない。むしろ、二つが融合して一つになっているかのようだ。どういうことかというと、ウマの顔が仮面のようにもう一つの顔の前にあり、その重なり具合が絶妙なため、まるで一つの顔のように見えるのだ。この記事冒頭で、ホースオルフェノクの姿を「全身甲冑に覆われた、西洋の騎士」にたとえた。その頭部は、ローマ兵かギリシャ兵が着用したヘルメットをかぶっているように見える。特にその前面は、鼻を守るノーズガードが特徴的な、古代ギリシャのコリント式ヘルメットをモチーフにしたかのようなデザインだ。コリント式ヘルメットには、顔の側面を守る頬当てもあるため、兵士の顔で露出する部位は目のあたりと口元に限定される。ホースオルフェノクの場合は、額のあたりにウマの顔があり、その鼻梁がノーズガードのように鼻、さらには口元までも隠す形になっている。だから、その下に隠された顔で露出しているのは、二つの小さな目とその周辺だけだ。

ただ、この目は小さくとも、しっかりとした存在感がある。明るいグレーで彩色され、周囲が黒に近い色のため、まるで光を放っているようだ。生気を宿していると言ってもいい。それに比べ、ウマの目の方は漆黒で、まるで死んでいるかのように見える。もちろんこれは意図されたものだろう。おそらく、ウマの顔は単なる飾りで、その下がホースオルフェノクの本当の顔だということを示しているに違いない。それでも、顔面の大半を占めるウマの鼻梁の存在感が大きく、その下で輝くグレーの目とうまく融合して一つの顔に見えてくる。一種のだまし絵のようでもあり、なんとも巧みなデザインだ。

その他にも、正面からは耳に見えるが、横から見れば板状に後方に伸びる装飾や、ウマのたてがみのようでもあり、映画に出てくるローマ兵のヘルメット頭頂部に付けられた房飾りのようでもある装飾など、篠原氏のさまざまなアイディアが込められたディテールは見ていて楽しい。実は、控えめながら角も一本あり、だったらユニコーンオルフェノクでしょ、とツッコミたくもなるが、それは野暮というもの。特撮キャラクターの角については、4年前の記事(https://www.jvta.net/co/akenomyojo133/)にも書いたが、やはり角があるとグッと引き締まる(と思う)。これは完全な妄想だが、僕には見えるようだ。篠原氏がデザインの仕上げに角を加え、ひとこと、「これぞ画竜点睛・・・」と満足げにつぶやく姿が。

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Written by 田近裕志(たぢか・ひろし)
JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。

【最近の私】コラム記事仲間の土橋さんにいただいた『モスラの歌』のレコード。特注したシングル盤用フレームが完成し、早速飾りました。持ってること自体が奇跡的な半世紀以上前のお宝品。こうやって飾っている人間は他にいるまいと、悦に入っています。

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明けの明星が輝く空に
改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る 
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