世界のどこからでも参加可能 JVTAのOJT制度
JVTAは、映像作品の字幕や吹き替えを作るプロフェッショナルを育成する職業訓練校と、翻訳案件を受発注するエージェント部門を併設し、修了生がスクールで学んだスキルを活かして活躍するシステムを構築している。修了生には定期的にJVTA独自の「プロ化試験(トライアル)」を開催。合格者はOJT(On the Job Training)で、プロの映像翻訳者として仕事をするための最終確認を経て、プロデビューとなる。
◆実践コース修了時のトライアルに合格し、OJTを経てプロデビュー イギリス在住の修了生の狩野安奈さんは、2025年9月に初回のトライアルに合格し、OJTを経て日英映像翻訳者としてプロデビューを果たした。「せっかく映像翻訳を学ぶなら、仕事に繋げたい」と考えていた狩野さんは、プロまでの具体的なサポートがあることがJVTAに入学した決め手になったと話す。
「JVTAには受発注部門が併設されており、最終的に実際の仕事に繋がるシシステムがあります。また、公式YouTubeチャンネル やスクール開催の各種セミナー、外部の映像翻訳祭など、様々な場面で情報を発信していることからも映像翻訳者デビューまでをしっかりサポートしてもらえると感じ、受講を決めました。」(狩野安奈さん)
現在、狩野さんはドラマ、バラエティ、ドキュメンタリーなど、幅広い日本コンテンツの字幕のチェックや、企業向けのPRビデオの英語字幕などを手がけている。
「OJTは実際に字幕制作ソフトを使いスポッティング(字幕を表示するタイミングを決める作業)など行いながら進むので、実践を通して実務に必要なスキルを身につけることができました。慣れない作業もありましたが、実際に経験することで理解が深まると実感しました。」(狩野安奈さん)
◆OJTでの実務経験が初仕事でも活かされた JVTAのOJTはチーム翻訳で実施される。チーム翻訳とは、映画祭上映作品やアワード番組、スポーツ番組など即時性が求められる案件に多く用いられる手法。狩野さんは4人のメンバーで初のチーム翻訳に取りくんだ。このチーム翻訳では1つの作品を4つのパートに分け、各自が翻訳した字幕を合わせて1つの字幕にする。そのため、用語や表現の統一が必須であり、チーム内でのコミュニケーションが欠かせなかったと狩野さんは振り返る。
「プロデビュー後の最初の仕事もチームで取りくむものでした。そのためOJTで身につけたチームワークやコミュニケーションのスキルがすぐ役に立ちました。」(狩野安奈さん)
◆受講からOJTまでを日本国外から参加 イギリス在住の狩野さんは、コース受講からOJTまでをすべてイギリスからリモートで参加した。日本の夕方から夜にかけてのクラスはイギリスでは昼間の時間帯となる。狩野さんはフリーランスで英会話講師をしているため、仕事のスケジュールを調整して受講した。時差は特に大きな問題にならなかったという。
OJTでは、参加メンバーとJVTAの翻訳ディレクターが集まる「勉強会」も行われる。狩野さんが参加したOJTでは狩野さんがイギリス在住、その他のメンバーは北米在住と日本在住だったということで、3拠点を繋ぐ形での実施だった。狩野さんはイギリスの深夜の2時に参加することもあったが、苦にはならなかったそうだ。
「時差の関係で各自の作業時間がバラバラになるため、メールの返信のタイミングが合わず、作業が予定スケジュールから遅れてしまうこともありました。しかし、用語の統一表を作ることで、時差があってもお互いの意見や翻訳を共有できるように工夫。また、チームの方が親切にも、チーム内納品の締切時間などを各タイムゾーンでメールにまとめてくださったので、とても助かりました。」(狩野安奈さん)
◆好きなことを仕事にできることが嬉しい 映像翻訳は世界のどこにいてもできる仕事であり、JVTAの受講生、修了生は国内外のさまざまな場所に点在している。イギリス在住の狩野さんは、JVTAのYouTubeチャンネル で映像翻訳コースの存在を知り、「語学力を活かせること」「フリーランスとして世界中どこからでも働けること」、そして何より映像が好きという思いから、本格的に学ぶことを決意したと話す。最後に、映像翻訳者を目指す皆さんにメッセージを聞いてみた。
「好きなことを仕事にできるのは、とても嬉しいことです。普段から、興味のあるコンテンツの字幕や吹き替えを読んだり聞いたりすることが、自分の学びにもつながると思います。皆さんも楽しみながら映像翻訳に挑戦してほしいです。」(狩野安奈さん)
日英映像翻訳科では、英語ネイティブの受講生もおり、さまざまな国や地域で学んでいるため、JVTAでは時差があっても授業やOJTに参加できる体制を整えている。また、2026年4月期からは、リモート授業の録画映像を視聴して学習を進めることができる「タイムシフト受講」 も導入。さらに幅広いニーズに応えることができるようになった。狩野さんのように海外在住で英語力を活かせる職能を身につけたいという人は、この機会にぜひ挑戦してほしい。
HPでは、OJTを無事に修了しプロデビューした皆さんの声も紹介しているので、これから受講を検討している方はぜひ、先輩たちの声を参考にしてほしい。
※【プロデビューの翻訳者に聞く】映像翻訳の魅力、JVTAを選んだ理由、今後の目標…etc.
狩野安奈さん
イギリス・ロンドン生まれロンドン育ち。小学校6年生から中学卒業までの4年間を日本で過ごす。大学では教育心理学を専攻。その後スペインで外国語指導助手として3年間勤務。現在はオンライン英会話講師として活動中。映像と語学の両方への関心からJVTAの日英映像翻訳コースを受講し、2025年にプロデビュー。プロの日英映像翻訳者として日本のドラマやドキュメンタリーなどの字幕制作に携わっている。今後の目標は、いつか自分が手がけた字幕作品を映画館で観ること。
【関連記事】◆“映像翻訳者になるための最終調整” JVTA独自の「OJT」とは?
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明けの明星が輝く空に 第194回:『ウルトラマンF』
今年の1月、仮面ライダーシリーズ初の女性主人公が登場する作品、『仮面ライダーアインズ』の配信が始まった。ならば、ウルトラシリーズも女性が主役の作品がそろそろ出てもいいのではないか?これについては先日、ウルトラシリーズ最初期の2作品に出演した桜井浩子さんに、ご意見を伺う機会(白石雅彦著『「ウルトラQ」の誕生』と『「ウルトラマン」の飛翔』の増補版刊行を記念したトークショー)があった。その際、実写化の候補になるかもしれないとして桜井さんが名前を挙げたのが、小説『ウルトラマンF』だった。
ホラー小説作家として知られる小林泰三氏が書いた『ウルトラマンF』。僕は数年前に読んでいたのだが、正直な話、物語としてどこか消化不良な印象を受けた。ただ、10回以上の連載を想定した内容だった話を、4回分に縮小しなければならなかったという事情があったそうだから、物足りなかったのはそのせいなのだろう。
テレビ番組『ウルトラマン』の後日譚にあたる『ウルトラマンF』には、番組の主要キャラクターたちが登場する。今作品でウルトラマンになるのは、科学特捜隊の唯一の女性隊員、富士明子(『ウルトラマン』での表記はフジ・アキコ)だ。彼女は、『ウルトラマン』第33話「禁じられた言葉」で宇宙人によって巨大化させられた過去があるが、今回は巨大化は特殊なナノロボットの仕業だったという設定が加えられた。そして、ある事故が起きてナノロボットが発動。富士隊員は巨大化してしまう。事故が発生したのが科特隊の施設内だった上、巨大化の程度も抑えめだったため、外部に知られずに済んだが、その後の作戦行動中に再び巨大化。その事実は、すでに巨人兵士計画を進めていた、ある国連関係者の知るところとなり、結果として富士隊員はその計画に協力することとなる。
しかし巨大化しても、富士隊員の身体は人間のままだ。ウルトラマンではない。ただ、彼女は特別に開発された巨人兵士用のアーマーを装着しており、それにはどんなエネルギーでも吸収し成長する宇宙生物バルンガの能力が取り込まれていた。そのおかげで、“悪のウルトラマン”、ダークザギの破壊光線を浴びてしまった富士隊員だったが、特殊アーマーと細胞内のナノロボットとの相互作用により、肉体がウルトラマンへと変貌する。
実を言うと、宇宙生物バルンガはウルトラシリーズ第一作、『ウルトラQ』の登場怪獣だ。『ウルトラマンF』には、このほかにもシリーズ各作品の“ネタ”が効果的に織り込まれている。例をもうひとつ挙げると、富士隊員と江戸川由利子が双子の姉妹であるという設定。江戸川由利子は『ウルトラQ』の主人公の一人で、両人物とも同じ俳優=桜井浩子さんが演じていたのだが、小説終盤、双子という設定が生きてくる。富士隊員が人間の姿に戻るための細胞の再構成に、由利子のゲノムが利用されるのだ。
この小説を原作にして、映像作品を作るとしたらどうだろうか?素人なりに想像してみよう。もし映画化するなら、ダークザギらを倒す小説中盤の第3章までが良さそうだ。その理由は、敵の“ラスボス”感が強く、交戦中、偶然にも富士隊員がウルトラマンへと変貌を遂げて敵を倒すという、まさにクライマックスにふさわしい展開だからだ。その後、それぞれ新たな敵が現れる第4章と第5章は、続編という形で分けた方がいいだろう。ただし、敵が小ぶりになった印象がある上、富士隊員の内面の描写が少ない点は気になる。彼女はウルトラマンになろうと思っていたわけではない。結果として通常の人間ではなくなってしまった彼女がどう感じ、何を思うかといったことが、もっと語られるべきではないかと思う。
映像化に際しては、ネックになりそうな問題もある。それは、アーマーが開発される以前の、肉体が巨大化しただけの富士隊員の姿をどう見せるかということだ。小説ではぼかしているが、どうやら裸身のようなのだ。昔から、巨大ヒーローに変身した主人公の服はどうなるのかという問題を、僕ら視聴者は意識の外に追いやってきた。普通に考えれば、ビリビリに破けてしまうだろう。このことを念頭に置いた発言ではなかったが、桜井さんはAIによるフェイク画像の蔓延という近頃の風潮を懸念されていた。ましてや、裸となると…。
もちろん、女性登場人物の描き方で注意が必要なのは、映像の面だけではない。たとえば、富士隊員が理性より感情を優先させたかのように思える行動を取る場面があるが、これは固定化した古い発想の表れだと指摘できるのかもしれない。しかし、全般的に見れば、容姿についての言及がほぼないことや、愛を行動原理にしていないことなどは、男目線からの型にはまった作劇とは一線を画しており、評価されるべきだろう。
小林泰三氏は本作のあとがきで、面白いことを言っている。『ウルトラマン』のファンは怪獣派、ウルトラマン派、そして巨大フジ隊員派(!)に分類できるというのだ。小林氏本人は、もちろん巨大フジ隊員派。そんな派閥があることは初めて知ったが、サブカルチャー界隈では「巨大娘」に萌える人もいるらしい。そう言えば僕も、どちらかといえば背が高いアイドルが好きだった。巨大娘萌え…。もしかしたら、素養があるのかもしれない。
参考:過去記事
第127回:ウルトラ名作探訪3:「バルンガ」
第143回:ウルトラ名作探訪11「禁じられた言葉」
—————————————————————————————– Written by 田近裕志(たぢか・ひろし) JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
【最近の私】窓の外にバードフィーダーを吊ってひまわりの種やミカンを置いたら、シジュウカラやメジロが来るようになりました。でもこれも、自然のエサが少なくなる冬の間だけ。小鳥のレストランも、もうじき店仕舞いです。
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明けの明星が輝く空に 改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る バックナンバーはこちら
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“映像翻訳者になるための最終調整” JVTA独自の「OJT」とは?
映像翻訳者になるための一般的な道筋は、映像翻訳を学べるスクールに通った後、スクールや制作会社が設けている「プロ化試験(トライアル)」を受験するという流れである。JVTAでも独自のトライアルを設けており、修了生のみが受験できる。特にJVTAでは、トライアル合格後にOJT(On the Job Training)を用意。プロの映像翻訳者として仕事をするための「最後の確認」をOJTで行い、それが終わるとプロの映像翻訳者としてデビューとなる。
◆実務を想定したOJTで、プロデビューへ向けて最終調整
初谷亜希子さんは、2025年にOJTを修了し、映像翻訳者としてプロデビュー。現在は、カルチャーやライフスタイル系のドキュメンタリーや、アワード番組、映画などの字幕を手がけている。
初谷さんが映像翻訳を学ぶ場としてJVTAを選んだ理由のひとつに、このOJT制度がある。
「JVTAは映像翻訳に特化しており、受発注部門が併設されていること、さらにプロデビュー前のOJTなどサポート体制が整っていたため選びました。また、コース修了後も様々なセミナーや講座で学びを深めることができる点も魅力的でした。」(初谷亜希子さん)
初谷さんが参加したOJTでは、初谷さんを含めて4名のトライアル合格者で実施された。やはり、映画や音楽が好きな人たちが集まっていたが、仕事の経験では金融やIT関連、NPO、特許事務所などさまざまなバックグラウンドがあり、刺激を受けたという。
OJTでは約40分の動画をメンバーで約10分ずつ分担し、字幕制作を行った。定期的にお互いの翻訳をチェックしフィードバックをし合い、質の高いひとつの字幕を作り上げていく。
「チーム翻訳では他のメンバーから自分の訳に対して客観的なコメント(この訳文からは、自分が意図したものとは別の印象を受ける人もいる、など)をもらえて、非常に有意義でした。またJVTAの映像翻訳ディレクターの方からもフィードバックをもらえます。さらにOJTのメンバーと翻訳ディレクターと共にリモートで行う勉強会では、映像翻訳の作業に関する疑問や不安点を解消できました。」(初谷亜希子さん)
翻訳者にとって、コース受講中のクラスメートやOJTのチームメンバーは、プロデビュー後の「横の繋がり」としても貴重な存在だ。初谷さんもプロデビュー後、実際に受講生時代のクラスメートとチームで翻訳する機会に恵まれたそう。また、OJTのチームメンバーとの交流も続いているようで、「精神面でとても助かっている」と話す。
◆トライアル合格に向けてのサポートも充実 OJTに進むためには、2カ月ごとに行われているトライアルに合格する必要がある。JVTAではトライアル合格を目指す人たちに向け、「コマ単位受講制度 」や「日本語表現力強化コース 」「ロジカルリーディング力強化コース 」 など、様々なサポート制度を用意している。
初谷さんも合格を目指す間、翻訳者のための英文解釈力に特化した「ロジカルリーディング力強化コース」を受講し、英文解釈力の向上に努めた。また授業の課題に再度取り組み、講師やクラスメートの訳を見ながら分析を行ったという。
JVTAのトライアルでは、合格に加えて、合格一歩手前という「次点」も設けられている。この「次点」に入選すると、提出した翻訳原稿についてプロの映像翻訳ディレクターからフィードバックを直接受けることができる。初谷さんも、この次点に入ったことがある。
「次点フィードバックでは、改善の余地がある私の字幕案を取り上げ、解釈や訳文の方向性、単語の選び方などについてアドバイスをいただきました。セリフの背景にある話者の想いや、全体の流れを把握し、このセリフでは『つまり何が言いたいのか』を意識する、 というアドバイスが合格に繋がり、現在も仕事において役立っていると感じています。」(初谷亜希子さん)
◆映像翻訳は、これまでのどの仕事よりやりがいがある 最後に、映像翻訳者として活躍する初谷さんに、同じように映像翻訳者を目指す皆さんにメッセージを聞いてみた。
「大変なことも多いですが、これまでしてきたどの仕事よりも、映像翻訳にやりがいを感じています。何をするにも同じですが、諦めず地道に継続することが大切なのではないかと思います。」(初谷亜希子さん)
OJT制度は、翻訳受発注部門を併設しプロ化までの道筋が整っているJVTAならではの制度だ。JVTAでは「コース修了からが本番」とも受講生に伝えている。コース修了・トライアル・OJTと、順を追って進む中で、映像翻訳者として活動できるスキルが確実に身についていく。HPではOJTを無事に修了し、プロデビューした皆さんの声も紹介しているので、これから受講を検討している方はぜひ、初谷さんをはじめ、先輩たちの声を参考にしてほしい。
※【プロデビューの翻訳者に聞く】映像翻訳の魅力、JVTAを選んだ理由、今後の目標…etc.
初谷亜希子さん
学生の頃に映像翻訳という仕事を知り、英語と映画が好きな自分には天職なのではと感じるが、大学卒業後はゼネコンで経理、現場事務、人事などに従事。その後、JVTAの英日映像翻訳コースを受講し、2025年に映像翻訳者としてプロデビュー。現在は、カルチャーやライフスタイル系のドキュメンタリーや、アワード番組、映画などの字幕を手がける。今後の目標は、これまでの経験を活かし、イギリスの作品(留学経験あり)や、動物・芸術(アート、クラシック音楽、バレエ、建築など)・料理・陸上競技などに関する作品に携わること。
【関連記事】 ◆世界のどこからでも参加可能 JVTAのOJT制度
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花と果実のある暮らし in Chiang mai プチ・カルチャー集 Vol.99 ポン・デ・リングみたいな果物!?
★「花と果実のある暮らし in Chiang Mai」 インパクト大の写真をメインにタイのリアルなプチ・カルチャーをご紹介しています。
先日、パートナーの親戚が、南部の方から海の幸を沢山持ってきたというので、バーベキューにお呼ばれしました。こんがり焼かれた沢山の蟹や海老、いか、貝などのいい香りが庭中に行き渡り、お腹もそれに応えるように準備万端。お皿に山ほどの魚介類があり、日本だったらおいくらする!?というほどのご馳走っぷり。北部料理には海の幸がないため、久しぶりの魚介類をみんなで堪能しました。
そんな食後にご親戚の一人から「ヨーコ、マカムテー知ってる?」と聞かれました。マカムはタイ語で、いわゆるタマリンド(タイのフルーツ)のこと。我が家にも2本マカムの木があるので、「あ、うちにもあるよ!」と得意げに言ったのですが、みんな疑いの目。「マカムテーだよ!?」そして見せてくれたのが、きれいな黄緑とマゼンタピンクの、グルンと丸まったポン・デ・リング(ミスタードーナツの定番商品ポン・デ・リング)のような形のフルーツ。確かに我が家のマカムは茶色くて長い実で地味。さっそく、その柔らかい黄緑の皮を剥くと、ピンクがかった白い実が。サクサク&スカスカした食感でほんのり甘いかなあ!?我が家の茶色くねっとりしたマカム(タマリンド)とは全く別物。名前は一部一緒でも予想外の果物でした。マカムは日本のスーパーでも売っているくらいだいぶメジャーになって来ましたが、このマカムテーは傷みが早いのでなかなかお目にかかれないようです。まだまだ知らない食べ物があるなあ、国内食の旅にいつか行くのもいいなあと思った一コマでした。
まるでポン・デ・リングのようなマカムテー
先日公園に行ったら、珍しくこんな形のヤシの木が。
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Written by 馬場容子(ばば・ようこ)
東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。 —————————————————————————————–
花と果実のある暮らし in Chiang Mai チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美バックナンバーはこちら
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【2026年3月】映像翻訳者としてのこれからを考えるセミナー
※この講座は受講生・修了生限定です。
~英日・日英の合同開催!~ 映像翻訳者としての可能性をさらに広げる!
JVTA開校当時から毎期開催する「映像翻訳者としてのこれからを考えるセミナー」は受講生やトライアル合格を目指す修了生の皆さん必見の課外講座です。現役で活躍している修了生をゲストにお招きして毎回数多くの皆さんにご参加いただいています。
映像翻訳者として活躍する先輩のリアルなお話は本セミナーでしか聞けない情報満載!ぜひご参加ください!
<英日・日英の合同開催!> 今回は、英日映像翻訳科と日英映像翻訳科の修了生を各1名ずつお招きし、モデレーターの藤田奈緒(JVTA講師/JVTA翻訳事業推進部ディレクター)とジェシー・ナス (JVTA日英映像翻訳コースディレクター)が「トライアル合格からデビューまで」、「映像翻訳の具体的なお仕事」、「タイムスケジュール」、「フリーランスとして働くこと」…などについて切り込んでいきます。
<映像翻訳者としての可能性をさらに広げる!> 最近では英日映像翻訳科・日英映像翻訳科の両方のコースを修了後、ハイブリッドに活躍する修了生も少しずつ増えてきています。両言語に対応できれば、映像翻訳者としての可能性が広がること間違いなし!これまで聞くことのなかった情報を知ることで、ぜひ今後のキャリアアップにつなげてください。
<パネラー>
◆常本亜希子さん(英日映像翻訳者) 2011 年3月に英日映像翻訳科 実践コースを修了、同年 12 月にトライアルに合格しプロデビュー
短大の英文科を卒業後、アメリカの大学に編入。卒業後はサンフランシスコにて旅行業界で数年働き帰国。都内の特許事務所で働く傍ら、もっと英語に携わる仕事がしたい!と思い JVTA 東京校に入学。 デビュー後は、本職との兼業を続けながら、配信系ドラマ・映画・リアリティ番組、音楽番組、エンタメ情報番組、スポーツ番組、授賞式、企業案件等、多岐にわたる字幕翻訳に携わる。主な作品は『8月15日 -インド独立記念日-』、『エターナル・ラブ 三生三世』、『DEATH & DETAIL 事実は語る』の字幕など。
◆新田ありささん(日英映像翻訳者) 2021年10月に実践コース修了後、同年トライアルに合格し、2022年1月プロデビュー
アメリカに生まれ育ち、現在は日本国内在住。大学卒業後は日系自動車部品メーカーへ就職し、本業と共にバイリンガルとして翻訳・通訳を手掛けることから翻訳学校に興味を持つ。デビュー後は、映画、アニメ、ドラマ、企業用動画、ゲーム、大手配信サービスの翻訳チェックなどに携わる。手掛けた主な作品は『清風徐来』、『スティッチ!』、『うおっしゅ』、『瞼の転校生』、『莉の対』、『水の中で深呼吸』、『最強新コンビ決定戦 THEゴールデンコンビ』、『街に溶ける』の字幕など。
<モデレーター>
■藤田奈緒(JVTA講師/JVTA翻訳事業推進部ディレクター)
「映像翻訳者としてのこれからを考えるセミナー」(通称:これセミ)は、参加する皆さん自身がどのように映像翻訳者としてキャリアを築いていくのかを、“皆さん自身で考える”ためのセミナーです。皆さんと同じようにJVTAのクラスで学びプロデビューした先輩翻訳者をお招きし、様々な角度からお話を伺っていきます。参加したあとにはきっと、プロになってからの自分自身をより明確にイメージできるようになるはずです!
■ジェシー・ナス (JVTA日英映像翻訳コースディレクター)
日本のメディアコンテンツが世界中で人気を集めている今、日英映像翻訳のニーズはますます高まっています。日英翻訳の世界をまだよく知らない方にとって、その活躍の場の広さは想像以上かもしれません。今回のこれセミでは、多くの日英プロジェクトに携わってきたJVTA日英映像翻訳科の修了生も登壇し、日英翻訳のリアルについてお話しします。ぜひお気軽にご参加ください!
【開催概要】 ■日時 2026 年3月24日(火)19:30‐21:15(日本時間) ■定員 なし ■受講料 3,300 円(税込) ■受講対象 全受講生・修了生 ■支払い方法 クレジットカード、銀行振込(※詳細は受付後の自動返信メールに記載)
【参加条件】 パソコンやタブレットなどで安定して動画視聴のできる環境が整っていれば、ご参加いただけます。 また、音声を聞き取りやすくするために、イヤホン・ヘッドホンの使用をお勧めします。また質疑応答のタイミングもありますので、マイクをお持ちでしたらご用意ください。
※リモート受講(JVTAライブ)FAQ ~よくある質問~▶こちら ※リモート受講を体験した受講生・修了生の声▶こちら
【お申し込みの流れ】 ・下記お申し込みフォームよりお申し込みください。 ・お申し込み後に自動返信メールが届きます。もし届かない場合は、迷惑フォルダをご確認の上、お早目にご連絡ください。 ・前日17時まで申し込み受付可。それ以降は電話でお問い合わせください。 ※その他のお問い合わせはこちらのアドレスにてメールで受け付けております。 kouza(at)jvtacademy.com ※(at)は@に置き換えてください。
【キャンセルについて】 ・ご入金後はご返金をおこなっておりません。やむを得ない事情によるキャンセルの場合は別途対応をいたしますので、開催日前日までに必ずお電話もしくはメールでご連絡をお願いいたします。
◆変化の時代にこそ「これセミ」の知識が役立つ! 日本映像翻訳アカデミーグループ代表/新楽直樹
「映像翻訳者としてのこれからを考えるセミナー」、通称「これセミ」。日本映像翻訳アカデミー(JVTA)の設立時から20年以上の間、1つの期も欠かさず開催されている唯一の課外講座です。「これセミ」に参加した受講生・修了生やプロの皆さん、パネラーとして登壇した皆さんの歩みは、JVTAの発展そのものです。
今、フリーランスの働き方は大きく変化しています。国が支援に乗り出し、大手企業が副業を推奨する時代。映像翻訳業界も例外ではありません。クライアント企業では法令や商取引ルールの見直しが進み、映像翻訳者に対する評価やつき合い方も変わってきています。そんな環境下でデビューを果たした方、日々活躍するプロの皆さんは、どんな課題をどんな方法で乗り越えているのか--。日常得難いリアルな情報と最新の話題に触れることができるのが「これセミ」です。
それらに加え、時間の使い方や仕事場の様子、同業の仲間とのつき合い方などについて、本音や楽しいエピソードが飛び出すのもこのセミナーの魅力の一つです。
20年以上欠かさず行われているのには「学習効果や訓練へのモチベーションを高めるのはもちろん、プロとなった後も支えとなる知見を得られる」という明確な理由があります。
ぜひ積極的に参加して、日々の学習・訓練や実務に役立ててください。
【Cinema at Sea 2026 – 特集上映「Homecoming」が開催】沖縄やハワイ、日系移民のルーツや歴史を知る作品が一挙上映
「Cinema at Sea 沖縄環太平洋国際映画祭」は2023年11月に沖縄で誕生した映画祭だ。映画祭のテーマ「Cinema at Sea―太平洋、海のまなざし、海を知る」には、海に囲まれた沖縄から海を囲む島々と地域(=環太平洋)で活躍するアーティストとその作品を発信し、海によってつながる新たな文化交流の“環”を広げていきたいという思いが込められている。JVTAは第2回(2025年)から上映作品の字幕制作をサポート、第3回となる今年も4作品の字幕制作と映画祭会場での通訳などで翻訳者たちが活躍している。
今年は、Cinema at Sea 2026 – 特集上映「Homecoming」と題し、世界のウチナーンチュ(沖縄県出身者やその子孫)や日系移民が制作した映画がラインナップ。沖縄ハワイ移民125周年を記念したプログラム「ハワイ特集」や、沖縄に関連する注目作を集めた「オキナワパノラマ」など、この映画祭ならではの作品が上映される。
◆クロージングはパプアニューギニア初のアカデミー賞国際長編映画賞への公式出品作品
『ブカおじさんの話』 ©papabukafilm@gmail.com
クロージング作品『ブカおじさんの話』(英題:PAPA BUKA)は、パプアニューギニア初のアカデミー賞国際長編映画賞への公式出品となった話題作。日本語字幕を手がけた染野日名子さんと鳩野明子さんは、英日映像翻訳コースの受講生時代のクラスメートで今回は嬉しい“共演”となった。前半を担当した染野さんはこの作品の魅力について、パプアニューギニアを舞台に第二次世界大戦で戦ったインド人や先住民の記憶を辿る内容でありながら、決して重い雰囲気ではなく、パプアニューギニアの美しい森や豊かな伝統文化を紹介する「ご当地映画」の側面も併せ持つことだと話す。
「とりわけ前半は戦争関連の調べ物が多く、数字もたくさん出てきたのでリサーチにしっかり時間を費やしました。また、ご当地映画らしく固有名詞があちこちに散りばめられているので、制作側の意図を汲みつつ、一時停止できない映画祭来場者のために、それらをどこまで字幕に出すかというところも慎重に検討しました。」(染野日名子さん)
◆厳しい字数制限では一人称の選定も重要 国際映画祭ではよくあることだが、この作品も英語字幕と日本語字幕が併記される。その場合、英語字幕が画面下に横書きで表示され、日本語字幕は縦字幕となる。縦字幕の方が横字幕よりも表示できる文字数が少ないため、翻訳者にはより厳しい字数制限が課せられる。つまり、一人称や名前など頻出のワードを一文字でも短縮することが必要となる。
「登場人物が穏やかな人ばかりで、気づくと一人称がほとんど『私』になってしまいました。最初はパパ・ブカの一人称を『わし』に変えようかとも考えたのですが、文字数が増えるため、通訳として登場するシケの一人称を『僕』に変えることで、全員の一人称が『私』ばかりになるのを避けました。限られた文字数の中でいかに視聴者に分かりやすく伝えるか、情報の取捨選択とワードチョイスがとても難しかったです。」(鳩野明子さん)
作中には英語以外にパプアニューギニアの現地の言葉や、ヒンディー語も飛び交うため、彼らが「外国語」を話していることが分かるように字幕に山カッコ〈 〉をつける必要がある。そういった表記や記号も全体で統一したと後半を担当した鳩野さんは振り返る。前半と後半で違和感がないように、共通して出てくるワードや、登場人物の一人称、口調などについて二人で丁寧にすり合わせた。
二人に見どころを聞いた。
「本編の多くを占める森の中のシーンでは、どこまでも続く深い緑と空に響き渡る澄んだ鳥のさえずり声に包まれ、見ているだけで癒されます。ぜひ皆さんも、画面を通じてマイナスイオンを浴びてください。本作では個人個人が助け合い、その縁がつながっていく様子を感じ取ることができます。世界にそのような温かいつながりが広がっていきますように。」(染野日名子さん)
「個人的には、インド人女性のロミラとパパ・ブカとの間に芽生える心の絆と、言葉の架け橋・通訳としてサポートするシケの仕事ぶりにも、ぜひご注目いただきたいです。」(鳩野明子さん)
◆日系アメリカ人の女性がルーツの沖縄で紅型を学ぶ
『いちゃりばちょーでー』© Kaiya Laguardia-Yonamine
7分程度の短編作品『いちゃりばちょーでー』(英題 Ichariba Chōdē: Once We Meet, We Are Family)は、沖縄にルーツを持つ日系アメリカ人4世のエリカ・クニヒサ氏が、沖縄県で6カ月にわたり「紅型(びんがた)」の制作技術を学ぶに至った経緯とこれからの夢を語るドキュメンタリー作品だ。タイトルの『いちゃりばちょーでー』は、エリカさんが好きだというという沖縄の言葉で、「一度会えばみなきょうだい」という意味だそうだ(作品では「家族(”family”)」と翻訳)。字幕を手がけた春木美果さんは、この作品には、日本人の海外移住や沖縄の日本併合、第二次世界大戦末期の沖縄での地上戦、そして焼け野原から紅型を再興したことなど、近現代の歴史的なさまざまな要素がつまっていたと話す。短い作品だからこそ、エリカ氏の言葉や思いを字幕で表現することを心がけた。
「とくに、エリカさんがハワイを離れて自分は何者なのかを自問し始めたことや、沖縄での交流を思い出して涙する姿が印象的で、エリカさんの心情に見合う言葉選びをしようと思いました。ただし、私自身が感情移入しすぎて、ひとりよがりな翻訳にならないように心がけました。」(春木美果さん)
作中には、第二次世界大戦の沖縄の地上戦では多くの一般人が犠牲になったことをエリカ氏が話すシーンがある。春木さんも慎重に数字を調べて確認し、言葉を選んだ。
「調べたところ、エリカさんが話す数字と沖縄県などが公表している数字が少し違っていたので、どのように表現するか検討し、最終的には具体的な数字を出さないことにしました。今回は沖縄で開催の映画祭で上映される作品ということで、会場の観客にとってもご自身の家族や大切な方々に関する内容であるのではないかと考え、とくに気を配りました。」(春木美果さん)
画面に映し出される紅型の鮮やかな色合いやデザインの美しさにも、ぜひ注目してほしいと春木さんはいう。
「エリカさんがこれからアメリカで紅型の新たな形を作っていくのも楽しみです。この作品を見た方が、紅型について興味を持ったり、これまで関わりのあった人たちとのつながりについて改めて考えたりしてくれたら嬉しく思います。」(春木美果さん)
Cinema at Sea 2026 – 特集上映「Homecoming」では、他にも全19作品が一挙上映される。沖縄開催ならではのラインナップに注目したい。
Cinema at Sea 2026 – 特集上映「Homecoming」 2026年2月20日(金)〜2月28日(土) 那覇文化芸術劇場なはーと 那覇市ぶんかテンブス館テンブスホール 他 公式サイト:https://www.cinema-at-sea.com/
◆【2026年4月期の受講申込を受付中 ! 】学校説明会を随時開催! 映像翻訳業界の最新情報解説や字幕翻訳の体験ができる無料イベントを開催中。個別の相談も承っております。映像翻訳にご興味をお持ちの方はお気軽にご参加ください。
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第136回 “IT: WELCOME TO DERRY”
“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi
第136回 “IT: WELCOME TO DERRY”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。
今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
予告編:『IT / イット ウェルカム・トゥ・デリー“それ”が見えたら、終わり。』 本予告
VIDEO
“Pennywise, the Dancing Clown returns!”
本作はスティーヴン・キング原作の『IT/イット』シリーズ(2017&2019)の前日譚で、‘踊る殺人ピエロ’ことペニーワイズの誕生秘話が描かれる。
“IT: Welcome to Derry”は‘ドラマ界のレクサス’ことHBOによるオリジナル(配信はU-NEXT)。完璧に映画版を補完する、学園友情ホラーに軍事スリラーを掛け合わせた極上のスーパーエンタメ・ドラマなのだ!
“This is not America, this is Derry”
—メイン州デリー、1962年
雪の降る夜。なぜかおしゃぶりを咥えている男の子が、町の映画館に忍び込んだ。上映されているのは『ザ・ミュージックマン』。彼はほどなくマネージャーに追い出され、仕方なく国道でヒッチハイクを始めた。
その子の名前はマティ、デリー学園の生徒だ。彼を拾ってくれたのは、子連れの優しそうな中年夫婦だった。暖かい車内では、ラジオがソ連の核実験を伝えている。夫婦が卑猥なジョークを飛ばし始めた。弟はひたすら単語のスペルを唱え、姉はタッパーウェアに入った生レバーの臭いをかいでいる。何かがおかしい。
その夜、マティは行方不明になった。
—4か月後
デリー空軍基地に、リロイ・ハンロン少佐(ジョヴァン・アデポ)が赴任してきた。国防総省の極秘プロジェクト「プリセプト作戦」に参加するためだ。妻のシャーロット(テイラー・ペイジ)と12歳の息子ウィルもほどなく合流する。
黒人のハンロン少佐は、初日から基地内で差別を受けた。
リリーは1年前に父親を事故で失った。ピクルスの瓶詰工場で機械に挟まれたのだ。彼女はデリー学園のクラスメートにいじめられ、‘変人リリー’と呼ばれている。
実は、マティはリリーの秘密の友人だった。
デリーでは、マティだけでなく子供たちが次々と行方不明になっていた。
ある日、リリーは自宅の排水口からマティの声を聞いた。『ザ・ミュージックマン』の劇中歌だ。彼女はマティの友人2人を誘って捜索を始める。マティが最後に目撃された映画館に行く。そこで働くロニーも協力してくれた。
無人の館内で、ロニーは『ザ・ミュージックマン』を上映し始めた。すると、スクリーンにマティが映っているではないか。だがマティの顔はピエロに変わり、そいつは布でくるんでいた小さな怪物を解き放った。
怪物はスクリーンを突き破り、リリーたちを襲い始めた!
‘踊る殺人ピエロ’ことペニーワイズが27年ぶりに覚醒したことを、デリーの人々は知る由もない…。
“We’re losers and always will be”
本作の主役は、いじめられっ子5人組。
精神を病みながらも友人の救出を諦めないリリー(クララ・スタック)、軍人の父親からのプレッシャーに悩む理系の秀才ウィル(ブレイク・キャメロン・ジェームス)、父親の冤罪を晴らそうと奮闘するロニー(アマンダ・クリスティーン)、ちょっとズレてるリリーの親友マージ(マチルダ・ローラー)がドラマをけん引する。
そして、マージへの愛を貫き通す粋な気取り屋リッチ(アリアン・S・カルタヤ)には、不覚にも泣かされる。
彼らの合言葉は「勇気」だ。
映画版に続いてペニーワイズを演じたビル・スカルスガルドはスウェーデン出身。やはりS・キング原作の“Castle Rock”にも主演している。父親は“Star Wars: Andor”のステラン・スカルスガルド、兄は“Murderbot”(本ブログ第131回参照 )で主演したアレクサンダー・スカルスガルドだ。
リロイ・ハンロン少佐役のジョヴァン・アデポは、“Jack Ryan”(本ブログ第55回参照 )、“When They See Us”(本ブログ第57回参照 )で準主役を演じた。
“Thank you for visiting Derry”
立案および製作総指揮は、アンディ&バーバラ・ムスキエティの弟姉コンビ。映画版2作ではバーバラが製作、アンディが監督を務め、ドラマ版ではアンディは共同監督に名を連ねる。
エンタメ作家を「質x量」で評価すると、スティーヴン・キングは文句なしに史上最強だ。原作小説『IT』(1986)は、膨大なキング作品の中でもトップ3に入る屈指の名作。この一作がなければ、超人気の“Stranger Things”(本ブログ第32回参照 )も生まれなかった。
ムスキエティ弟姉は、その唸りを上げる‘キング節’を原作の雰囲気そのままに見事に映像化した。
本作は、『スタンド・バイ・ミー』(1986、これもキング原作)の美しいホラーバージョン。軍事スリラーの要素がスパイスとして効いている。
ストーリーは原作と映画版からインスピレーションを得たオリジナル。ジョン・F・ケネディが大統領で、ソ連との冷戦下にある時代。舞台は、警察の腐敗と黒人差別が未だ色濃く残る、メイン州の廃れた町。
レトロ調のオープニング・クレジットが秀逸。パイロット(第1話)の冒頭約10分間の‘キモ怖さ’は別格で、観る者を一気にこの数奇な物語に引きずり込む。現前の超常現象と登場人物の空想が混然一体となり、キングの世界観が広がってゆく。
エピソードが進むにつれ、リリーを中心とした5人の仲間は絆を深めていく。警察に助けを求めても、信じるはずがない。一方でハンロン少佐は、「プリセプト作戦」に深く係わっていく。彼らの運命が交錯するとき、ペニーワイズ誕生の謎が明らかになり、デリーの町は恐怖に支配される。
戦慄と感動の最終話は文句なしの出来栄えで、68分間がアッという間だ。
“IT”ユニバースは映画、ドラマ、小説、どれから入っても楽しめるが、できればセットですべて堪能して欲しい。
“IT: Welcome to Derry”は完璧に映画版を補完する、学園友情ホラーに軍事スリラーを掛け合わせた極上のスーパーエンタメ・ドラマなのだ!
ペニーワイズのあの高笑いはシーズン2で戻ってくるはずだ。(本稿執筆時点では、HBOによるシーズン2の制作発表はない。)
原題:IT Welcome to Derry
配信:U-NEXT
配信開始日:2025年10月27日~12月15日
話数:8(1話 53-68分)
<今月のおまけ> 「これもお勧め、S・キング原作の非ホラー系ドラマ!」
S・キング原作のドラマは「非ホラー系」も傑作ぞろいなので、この機会に押さえておこう。
●“The Dead Zone”(2002-2007):A
●“Under the Dome”(2013-2015):B+
●“11.22.63”(リミテッド・シリーズ、2016、本ブログ第25回参照 ):A+
●“Mr. Mercedes”(2017-2019、本ブログ第50回参照 ):A
●“The Outsider”(リミテッド・シリーズ、2020):B+
Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
2026年1月オープントライアル(英日・日英)、2025年10月期 英日日曜集中実践修了トライアル 合格発表
◆2026年1月英日 オープントライアル合格者発表
合格 6名、次点 21名です。
■合格者 6名
JOP006 JOP008 JOP027 JOP048 JOP088 JOP158
■次点 21名
JOP001 JOP014 JOP015 JOP020 JOP038 JOP039 JOP050 JOP051 JOP055 JOP058 JOP060 JOP074 JOP086 JOP087 JOP100 JOP102 JOP107 JOP112 JOP116 JOP141 JOP155
以上
◆2025年10月期英日 日曜集中実践修了トライアル合格者発表
合格者なし、次点3名
■次点 3名
JGR001 JGR002 JGR003
以上
◆2026年1月期日英 オープントライアル合格者発表
合格1名、次点5名
■合格者 1名
EOP009
■次点 5名
EOP001 EOP003 EOP004 EOP005 EOP008
以上
※※従来の「Q&Aセッション」を廃止し、 あらたに受験者全員に「ポイント解説」資料を配布しております。 送付日は「結果発表」の翌週内を予定しています。 詳細は、下記をご覧ください。※※
https://www.jvta.net/mtc/trial-new-rule20200219/
◆【2025年度 後期】トライアルスケジュールhttps://www.jvta.net/mtc/202510-trial-schedule/
【修了生制作の絵本「全世界灯火計画 はじまりの物語」が発売】創作の支えは翻訳で培った粘り強さでした
『ボヘミアン・ラプソディ』や『レヴェナント:蘇えりし者』などの吹き替え翻訳を手がける映像翻訳者、瀬尾友子さんは、JVTAの2期生として約30年前に学び、1998年にプロデビューしたベテランだ。映画やドラマなど多くの作品に携わってきた瀬尾さんだが、実は「絵師」というもう一つの顔がある。その作風は、緑や青の色彩が幻想的な独自の世界観が魅力となっている。大学で美術を専攻していた瀬尾さんは、映像翻訳と並行しながら2010年から再び本格的に絵を描き始め、2017年から作品の販売や個展を行っている。
そんな瀬尾さんが2026年1月、初の絵本「全世界灯火計画 はじまりの物語」を発売した。物語の冒頭はこんな言葉で始まる。
疫病、天変地異、たび重なる戦(いくさ)が起こった。 だれもが思った。「世界は〈かげ〉に覆われた」
「出会いの日」
絵本創作のきっかけは2020年にさかのぼる。
「2020年、突然コロナ禍が始まり、頭の中が真っ白になる経験をしました。映像翻訳の仕事が激変し、そこからもがきながら絵の制作を続けているうちに、翻訳の仕事が少しずつ戻り、気持ちを持ち直しました。そんな経験を踏まえて2024年、『灯火計画』と題し『個々の心に、そして世界に灯火を』のコンセプトで『灯火計画』というシリーズを描き始めました。われながらベタなコンセプトだなと思いつつも、描きたい場面が浮かび続けて2年となります。」(瀬尾友子さん)
◆絵本づくりの支えは翻訳の仕事で培った粘り強さ コロナ禍は世界全体に大きな混乱をもたらした。ステイホームや映画館閉鎖、イベントの中止、テレワークの開始、飲食店でのアルコール提供禁止など、これまで経験したことのない閉塞感が漂うなか、瀬尾さんと同じように不安を抱えた翻訳者は多いはずだ。一方でこのパンデミックは、映画祭やイベント、JVTAの授業がオンライン化されるなど新たな可能性が見えるきっかけにもなった。
「次なる地へ」
絵本「全世界灯火計画 はじまりの物語」は、2026年1月に立川の書店「狐弾亭 」で瀬尾さんがミニ個展を行うにあたり、描きためた作品を用いて「灯火計画」のはじまりを物語にしたもの(ZINEとして自費出版)。翻訳者と絵師は一見接点がないようだが、絵本の創作には翻訳者として培った経験が役立っているのだという。
「翻訳者は日々映画やシリーズ作品に向き合い、日本語を紡ぎます。その際はシーンの意味や原意をくみ取り、芯を食った台詞になるよう心血を注ぎます。翻訳の仕事は傍目よりもとにかく時間がかかります。その膨大な時間のなかで『粘る大切さ』『諦めない強さ』を学びました。今回の絵本作りには、その経験が支えとなりました。ご覧いただけましたら本当に嬉しいです。」(瀬尾友子さん)
「狐弾亭」の個展では、額絵の展示やポストカードとともにこの絵本も陳列され、多くのファンの手に渡った。〈かげ〉に覆われた世界は再び光を取り戻せるのか。その先の物語をぜひこの絵本でじっくりご覧いただきたい。
◆絵本「全世界灯火計画 はじまりの物語」 ・サイズ:A5(コピー用紙の半分の大きさ) ・ハードカバー ・全20ページ 詳細・購入はこちら
◆瀬尾友子さん 日本映像翻訳アカデミー第2期生。1997年 英日映像翻訳科実践コースを修了。現在は吹き替え翻訳を中心に多くの話題作の翻訳を手がける。
【過去に手がけた作品】
●映画 『ねこのガーフィールド』(劇場/ソニー・ピクチャーズ) 『セプテンバー5』(ゴールデングローブ賞ノミネート/パラマウント) 『ハウス・オブ・ダイナマイト』(Netflix/キャスリン・ビグロー監督) 『ボヘミアン・ラプソディ』(20世紀スタジオ) 『レヴェナント:蘇えりし者』(20世紀スタジオ) 『RWBY』シリーズ(Rooster Teeth&ワーナー) 『フェイブルマンズ』(ユニバーサル・ピクチャーズ/スティーヴン・スピルバーグ監督) 『タイラー・レイク』シリーズ(Netflix) 『グレイハウンド』(Apple TV) 『君の名前で僕を呼んで』(ファントム・フィルム) 『マレフィセント2』(ディズニー) 『ラーヤと龍の王国』ディズニー) 『北極のナヌー』(松竹)ほか
●TVシリーズ 『デアデビル:ボーン・アゲイン』(マーベル/ディズニープラス) 『ウィン or ルーズ』(ピクサー/ディズニープラス) 『アバター 伝説の少年アン』(Netflix) 『カウボーイビバップ』(Netflix) 『アンネの日記』(NHK版) 『冬のソナタ 完全版』(ソニー・ピクチャーズエンタテイメント)ほか
◆【2026年4月期の受講申込を受付中 ! 】学校説明会を随時開催! 映像翻訳業界の最新情報解説や字幕翻訳の体験ができる無料イベントを開催中。個別の相談も承っております。映像翻訳にご興味をお持ちの方はお気軽にご参加ください。
「ボケとツッコミ」のテンポ感をそのまま英語に!監督も認めた英語字幕のクオリティ
JVTAが英語字幕を制作した『お笑えない芸人』(西田祐香監督)が、京都国際学生映画祭にノミネート(英語字幕付きで上映)、さらに6月に劇場公開が決定した。この作品は、2025年のSKIPシティ国際Dシネマ映画祭で上映され「スペシャル・メンション」を受賞。その上映時に英語字幕を修了生の鈴木綾さんとローガン・ランプキンスさんが手がけている。劇場公開では英語字幕の表示はないが、英語字幕制作秘話と西田監督から届いた英語字幕に関するメッセージを紹介する。
VIDEO
芸人を目指す佐原は、相方の瀬戸口と「激甘酢豚」というコンビで活動してきたが、ある出来事をきっかけにコンビは解散。夢半ばで立ち止まった佐原の前に、ある日突然 “芸人として爆発的に売れた理想の自分” が現れる。分身は成功のノウハウを語り、佐原の人生に介入し始めるが……。(公式サイトより引用)
コメディは翻訳者にとって難しいジャンルだ。この作品は、全編にわたって大阪弁でコントのシーンも多い。しかし、翻訳者の鈴木さんは大阪在住の関西人で、関西弁の解釈に困ることはなかったという。日本語ネイティブと英語ネイティブの2人がチームで翻訳を手がけたことで両方の視点からセリフを考察することができた。2人が特に話しあったのは、コンビ名「激甘酢豚」の英訳。また2人の佐原の対照的な演技が魅力的だと思った鈴木さんは、それぞれのキャラクターに合わせて英語でもセリフの口調を訳し分けた。さらに、日本の漫才頂上決戦と言える『M-1グランプリ』について、ローガンさんは海外の人に伝えるための工夫をこらした。
©映画『お笑えない芸人』製作委員会
※「激甘酢豚」や『M-1グランプリ』をどう訳したか、英語字幕制作の裏側は過去の記事(こちらをクリック) で紹介している。
◆英語字幕を見た西田監督から届いたメッセージ SKIPシティ国際Dシネマ映画祭で、英語字幕付き上映を観た西田祐香監督は、「一文一文、時間をかけてじっくり翻訳字幕を見させていただきたいぐらい、とても興味深かった」と話す。特に印象的だったのが、コンビ名「激甘酢豚」の英訳だったそうだ。
「本作は漫才シーンや会話も多く、日本語の助詞(てにをは)の違和感をネタにする場面もあり、英語にするのがとても難しい映画だと制作当時から感じていました。ですが、日本語のボケとツッコミの掛け合いやテンポはそのままに、とても素敵に翻訳してくださいました!特に、劇中の主人公たちのコンビ名『激甘酢豚』もローマ字表記ではなく、2人の個性やコミカルさが伝わるように翻訳していただき、とても嬉しかったです。」(西田祐香監督)
©映画『お笑えない芸人』製作委員会
映像翻訳者が字幕の内容について監督からコメントをもらえる機会はなかなかない。SKIPシティ国際Dシネマ映画祭の上映後の新たな展開も翻訳者にとって嬉しいニュースとなった。
「本作の魅力は、テンポの良い掛け合いと、登場人物たちの人間味あふれる関係性にあると感じています。 日本語ならではのリズムやニュアンスを英語でも伝えるため、細部まで丁寧に検討しながら翻訳を進めました。監督のコメントを拝見し、翻訳の意図や工夫を受け取っていただけたことがとても嬉しく、励みになりました。 作品が多くの方に届くことを心より願っています。」(鈴木綾さん)
「漫才のボケ・ツッコミの関係をそのまま直訳すると不自然になりますし、字幕の文字数の制限も非常に厳しいため、ある程度省略・意訳しなければなりませんでした。このように西田監督にお褒めの言葉をいただけて大変嬉しいです。翻訳作業で確かに苦労しておりましたが、最終的に英語圏の視聴者でも楽しめる字幕ができたと思います。」(ローガン・ランプキンスさん)
©映画『お笑えない芸人』製作委員会
翻訳秘話の記事で翻訳者の想いを知った西田監督からも、下記の言葉をいただいた。
「とにかく会話量も映画内の文字量も多い映画なので、きっと長い時間をかけて翻訳してくださったのだと存じます。改めて、とても丁寧に訳していただき誠にありがとうございました。ぜひ、京都国際学生映画祭やヒューマントラストシネマ渋谷で、本作品をご覧いただけると嬉しいです!お待ちしています!」(西田祐香監督)
西田監督はこの映画をさらに多くの人に見てもらえるよう活動中とのこと。今後の展開が楽しみだ。
◆京都国際学生映画祭・公式サイト 紹介ページはこちら ※(2026年2月20日(金)~2月23日(月・祝)開催
◆『お笑えない芸人』公式サイトはこちら
2026年6月19日からヒューマントラストシネマ渋谷で劇場公開
◆【2026年4月期の受講申込を受付中 ! 】学校説明会を随時開催! 映像翻訳業界の最新情報解説や字幕翻訳の体験ができる無料イベントを開催中。個別の相談も承っております。映像翻訳にご興味をお持ちの方はお気軽にご参加ください。