花と果実のある暮らし in Chiang mai プチ・カルチャー集 Vol.105 ソムオーの季節
★「花と果実のある暮らし in Chiang Mai」 インパクト大の写真をメインにタイのリアルなプチ・カルチャーをご紹介しています。
みんなでテニスを楽しんだ後、リタイヤしたタイ人女性は、「今から市場に行かなくちゃ。ソムオー(ポメロ)の季節よ~。」と言ってそそくさと帰っていきました。「ソムオーの季節!?」。ソムオーは、ザポンや文旦のような、大きな柑橘系のフルーツ。バナナのように1年中見られる果物のような気がしていたので、今が旬とは知りませんでした。彼女はそれを目的に市場に行くなんて…。なんだか日本の夏に桃を買いに行く風景を思い出しました。
旬のタイのソムオーとライム
子どもの頃、大好きだった桃は、夏にしか食べられないのでとても貴重で楽しみにしていた果物でした。その日本の桃が先日高級スーパーで売られているのを見かけた時、「チェンマイにまで来たかあ!」と驚きました。一年中美味しい果物があるのはありがたいですが、自然のサイクルで育った果実、その土地の物を頂くことは、体にとっても大切な気がします。とはいえ、夏の果物代表「桃の季節」に南国タイの「ソムオーの季節」と出会えてちょっと心豊かになった一場面でした。さあ、私も真似して「ソムオーの季節」にソムオーを買いに行こうっと!
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Written by 馬場容子(ばば・ようこ)
東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。 —————————————————————————————–
花と果実のある暮らし in Chiang Mai チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美 バックナンバーはこちら
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◆2026年9月10日(木)19:30 – 20:30 ※日本時間 映画祭プロデューサーと考える!ユニバーサル時代の映像翻訳 映画祭プロデューサーの東野正剛氏を迎えてメディア・アクセシビリティの最前線を紐解きます。 ゲスト:東野正剛氏(SSFF&ASIA エグゼクティブ・プロデューサー) 進行:小笠原尚軌(JVTA メディア・アクセシビリティ科ディレクター) 料金:無料 対象者:どなたでも参加可
◆2026年9月12日(土)10:00 – 11:00 JST ※日本時間 How Manga Crosses Borders: Behind the Scenes of Localization and Publishing Award-winning manga translation editor Sarah Tangney shares her experience and gives us an inside look into the world of manga localization and publishing. ゲスト:Sarah Tangney(manga translation editor) 進行:Jessi Nuss (J-E Course Director and Instructor at JVTA) 料金:無料 対象者:どなたでも参加可
◆2026年9月15日(火)19:30 – 21:00 ※日本時間 AI時代の翻訳者の倫理 ~Code of Ethics入門編~ オーストラリア・アメリカ・EU圏の制度を比較しながらCode of Ethicsの全体像と主要な遵守ポイントを解説し、AI翻訳・PE(ポストエディット)が急速に普及する現状を倫理規定に照らして分析します。 登壇:井上泉氏(沖縄国際大学総合文化学部 英米言語文化学科教授・学科長) 料金:1,000円 対象者:どなたでも参加可
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【修了生・青井夕子さんインタビュー】プロデビューに必要なことはすべて、授業と講師のアドバイスにあった
JVTAでは2026年10月期より、映像翻訳コースがリニューアル。「映像翻訳VODプログラム」として、“オンデマンド授業+個別サポート”の新形式へと生まれ変わる。30年の映像翻訳者育成で培ったノウハウを詰め込んだ「VOD授業」と、JVTAが大切にしてきた“個別に寄り添う指導”をパワーアップさせたトレーナー&メンターによる面談で、プロの映像翻訳者を育成する。
JVTAでは課題のフィードバック、コース修了毎の個別面談、プロ化試験(トライアル)受験者への個別の評価表配布など、これまでも受講生一人ひとりのサポートに力を入れてきた。「映像翻訳VODプログラム」は、その個別サポートを“さらに手厚くする”ということになる。
JVTAの英日映像翻訳科を修了し、プロの映像翻訳者として活躍する青井夕子さんは、1年半の学習期間中に全ての課題や疑問に対して真摯に向き合ったことが、プロとしての仕事に直結していたと振り返る。受講中は、課題に取り組む中で疑問に思ったことをメモして授業や個別面談で講師に質問することでその都度解決。そのすべてを丁寧に書き残してきたノートが、現在も仕事の指針となっている。敢えて手書きで書いたことも記憶の定着に繋がったそうだ。
青井さんが、受講中にぶつかった大きな3つの壁 ・吹き替えの尺合わせが苦手。 ・納品前のチェックが不安。 ・課題の提出までに時間がかかりすぎる。
これらを克服するために役立ったのは講師から受けた親身で具体的なアドバイスだったという。具体的に話を聞いた。
◆吹き替え翻訳の尺合わせは、キッチンで音声を聞きながらトレーニング 字幕に字数制限があるように、吹き替え翻訳にも尺合わせ(原語の映像で登場人物が声を出し始めてから話し終えるまでの時間に、日本語訳の長さをピッタリと合わせる作業)がある。字幕には1秒に4文字という基本的なルールがあるが、吹き替えの場合、翻訳者はナレーターや声優のように自ら翻訳原稿を映像と合わせて読み上げながら言葉の長さ(尺)を調整していく。青井さんの悩みは早口だということだった。自分で読み合わせをすると、どうしてもセリフが長くなる。英語の原文は元々速いので、つられて日本語の吹き替えのセリフを読む速さがさらに速くなってしまい、視聴者には聞き取りづらいものになっていたと振り返る。
「ある面談で、吹き替え講座を担当されていた板垣七重講師に尺合わせの悩みを相談したところ、『5分でいいから毎日必ず日本語吹き替えを聞き、1文ごとに映像を止めて真似て声に出すという練習をすることで頭に叩き込んでください』というアドバイスを頂きました。早速キッチンで料理や洗い物をしながら、イヤホンでドキュメンタリー作品の音声を聞きながら毎日実践。すると本当に一定の速さがキープできるようになっていきました。おかげで次のコースに進級する頃には大分自信がついた気がします。」(青井夕子さん)
青井さんにとって、日々一定の時間を費やすキッチンは、有効な学習の場でもある。冷蔵庫の大きな扉も有効に活用。原稿を大きな用紙に印刷しマグネットで貼ると、全体の構成を可視化することができて見直しに役立っていたという。受講中は、とにかく翻訳のことを常に考えていた青井さんの熱心な姿勢がうかがえるエピソードだ。
◆納品前の最終確認をするチェックリストでミスを防ぐ 字幕制作には、視聴者が読みやすいように、表記や言葉の統一などの細かいルールがある。例えばテロップは「斜体」、画面情報は「斜体+引用符」など、ルールに従って全体の表記を整えることも映像翻訳者の重要な作業だ。しかし、青井さんは受講中、多くのルールを把握しきれず、課題提出前にいつも混乱していたと話す。この悩みを面談で相談したところ、板垣講師から課題提出前に最終確認するためのチェックリストを作ることを勧められた。板垣講師のアドバイスを青井さんは今もしっかり覚えている。「デビュー後は小さなミスでも1つあると信頼を失いかねないので、受講中に完璧に覚えてしまうべきです。ルールだけでなくこれまで指摘された部分を抽出したリストを作りましょう。課題提出前にはそのリストを確認し、同じ間違いは絶対にしない意気込みで臨んでください」。青井さんは、すぐにチェックリストの作成に取り組んだ。
「授業の中で学んだ字幕のルールと、指摘された事柄を全部抽出したチェックリストを作成し、その後もどんどん追記していきました。例えば、「『の』は繰り返さない(例:私の姉の~)」、「『すし詰め状態』『お陀仏だ』など和風な言い回しはNG」など、たくさんの具体例が可視化されたこのチェックリストは最強でした。提出前にこのリストを確認するようにしたら、字幕のルールやそれ以外のことも自然に頭に入るようになりました。」(青井夕子さん)
字幕用、VO用、リップシンク用、申し送り用など用途別にファイルを作成。今も実務で役に立っている。
実は青井さんは、かつて医療機器監査の監査員として「チェックリストを作成して細部を確認する」という業務を担当していた。その経験が思いがけない形で今実務に活かせているのだという。青井さんは字幕だけでなく、ボイスオーバーやリップシンク、申し送り用などジャンルや用途に合わせた複数のチェックリストを作成し、プロになった現在も時折見返している。
◆課題にかけた時間は、後から必ず活きてくる プロの翻訳者になって実務に取り組む際に、重要なのが納期(締切)だ。どんなによい原稿でも納期に間に合わないことは許されない。職業訓練校であるJVTAでは、学習中から自らの対応力を把握できるよう、授業で提出する課題完成までにかけた時間を明記するよう指導している。青井さんは、提出前に毎回長い時間を費やしていることに不安を感じていた。長い時間が必要だった理由は、授業で質問するために課題で悩んだことや疑問に感じたことを細かく整理していたことにある。しかし、板垣講師の「課題にはできるだけ時間をかけるべき」という言葉に自信を取り戻す。
「『多くの時間を費やしたことはそれだけ翻訳について考え悩み本気で向き合った時間なので、あとから必ず活きてきます。そして講義では、悩んだことをどんどん質問し、講師に教えてもらうべきです。プロデビューしてからはもう教えてくれる人はいないので。」という板垣講師のアドバイスに励まされました。実際に課題で悩んで講師に質問した内容は今でも記憶に残っているので、実務でも『あの時にこの質問してこんなことを教えてもらったな』と思い出しながら作業しています。今でもひとつの案件には可能な限りの時間をかけています。」(青井夕子さん)
映像翻訳は答えが一つではないことが、面白さでもあり、難しさでもある。それは、悩み始めたらきりがないということでもある。しかし、綿密なリサーチや表現の考察を重ねたからこそ、生み出せる言葉がある。時間をかけることは決して無駄ではないのだ。
◆教科書にはない実践的な指導を身につけ幅広いジャンルで活躍中 熱心な姿勢が功を奏し、コ―ス修了後にトライアルに合格した青井さんは、OJTを経てプロデビュー。現在は、ドキュメンタリー作品の字幕やボイスオーバー、映画祭の上映作品の字幕などさまざまな仕事を手がけている。受講中には苦手だった吹き替えの仕事も担当しており、先日は料理番組のボイスオーバーの収録現場に立ち会うという機会を得た。
「現場で声優さんが原稿を読み上げる中で、表現の変更や言い換えなどの依頼に対して翻訳者としてその場で対応するという貴重な経験でした。自分が翻訳原稿を納品した後、どのような工程を経て視聴者の基に届けられるのかを目の当たりにできたことは、身が引き締まる想いでしたし、その後仕事に取り組む際も現場での反応を意識するようになりました。」(青井夕子さん)
青井さんは、映画祭の上映作品の字幕も担当し、上映会場にも積極的に足を運び、観客と共に担当作品を会場で観たり、制作担当者と交流したりするなど原稿の納品後も積極的にその作品に向き合っている。国連UNHCR協会が主催する難民映画祭では、上映作品のチーム翻訳で2度にわたり、リーダーを務めたほか、広報サポーターとして、翻訳秘話のコラムの執筆 やインタビュー記事の取材協力 などを体験したことも貴重だったと話す。
◆人生を振り返ってもあの時ほど集中して学んだことはない 「マズイものはマズそうに訳すべし」「ひとつの表現を360度から考えよ」「仕事になったらどんな作品でも全力で応援せよ」「そのジャンルの“ぽさ”を出すべし」「原文にはなくても『接続詞』を入れてうまく流れを作るべし」…。青井さんが今も大切にしている資料には、授業中にメモした講師の言葉がぎっしりと書き込まれている。授業で教えてもらった内容はどれも実践的で生きた知識だったとプロになった今、実感している。
「大人になってからの学びは驚くほど楽しいです。その時間を最高に充実したものにするために、受講期間は家族の理解も得て可能な限り自分の勉強時間に充てられるような体制を整えるとベストだと思います。JVTAでは全講座を自宅で受けられたので、子育てや家事とも両立しながら、映像翻訳のスキルを身につけ、プロデビューすることができました。いつか動物系のドキュメンタリー作品にも携わりたいという夢も叶いました。」(青井夕子さん)
JVTAの「映像翻訳VODプログラム」では、これまで行ってきた個別サポートを「メンターの個別カウンセリング」「トレーナーのトレーニング・セッション」と明確に定義し、さらに強化して行っていく。青井さんのように疑問や不安をその都度解決できる学習環境が整うので、自身のライフスタイルに合わせてプロに必要なスキルを習得し、映像翻訳者としてのデビューを目指してほしい。
青井夕子さん
大学時代はハワイとアラスカで動物科学を学びながら、イルカの研究所の勤務やクジラウォッチングツアーのガイドなど経て、卒業後は医療機器メーカーの品質保証部にて監査業務を担当。結婚、出産を経てJVTAに入学し、映像翻訳者としてプロデビュー。ドキュメンタリー作品の字幕やボイスオーバー、映画祭の上映作品の字幕などさまざまな仕事を手がけている。難民映画祭では字幕翻訳のほか、広報サポーターとしても活躍している。
【関連記事】 ・【『バーバリアン狂騒曲』がオンライン上映】字幕翻訳チームリーダー、青井夕子さんが翻訳裏話と見どころをじっくり解説 ・俳優・中島唱子さんと翻訳チームが語る!『バーバリアン狂騒曲』の魅力 ※国連UNHCR協会にサイトにリンクします。
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2026年7月オープントライアル(英日・日英)、2026年4月期 日曜集中実践修了トライアル 合格発表
◆2026年7月英日 オープントライアル合格者発表 合格5名、次点22名です。
■合格者 5名 JOP032 JOP108 JOP132 JOP135 JOP141
■次点 22名 JOP015 JOP022 JOP026 JOP030 JOP034 JOP040 JOP047 JOP055 JOP057 JOP070 JOP073 JOP101 JOP104 JOP113 JOP115 JOP119 JOP120 JOP121 JOP128 JOP134 JOP136 JOP143 以上
◆2026年4月期英日 日曜集中実践コース修了トライアル合格者発表 合格なし、次点2名です。(受検者数4)
■次点 2名 JGR002 JGR003 以上
◆2026年7月日英 オープントライアル合格者発表 合格者1名、次点1名です。
■合格者 1名 EOP009
■次点 1名 EOP004
以上
※※従来の「Q&Aセッション」を廃止し、 あらたに受験者全員に「ポイント解説」資料を配布しております。 送付日は「結果発表」の翌週内を予定しています。 詳細は、下記をご覧ください。※※https://www.jvta.net/mtc/trial-new-rule20200219/
◆【2026年度 前期】トライアル スケジュールhttps://www.jvta.net/mtc/202604-trial-schedule/
【2026年9月】映像翻訳者としてのこれからを考えるセミナー
※この講座は受講生・修了生限定です。
~英日・日英の合同開催!~ 字幕・吹き替え・マンガ・バリア… 多彩なジャンルで活躍の幅を広げる!
JVTA開校以来、毎期開講している「映像翻訳者としてのこれからを考えるセミナー」は、受講生やトライアル合格を目指す修了生の皆さまにぜひご参加いただきたい課外講座です。第一線で活躍中の修了生をゲストにお迎えし、毎回大好評を博しています。
プロとして活躍する先輩の生の声や貴重なエピソードは、本セミナーだからこそ手に入る貴重な情報ばかり。皆さまのご参加を心よりお待ちしております!
<イベント概要 > 今回は、英日映像翻訳科と日英映像翻訳科の修了生を各1名ずつお招きし、モデレーターの藤田奈緒(JVTA講師/JVTA翻訳事業推進部ディレクター)とジェシー・ナス (JVTA日英映像翻訳コースディレクター)が「トライアル合格からデビューまで」、「映像翻訳の具体的なお仕事」、「仕事の幅の広げ方」、「日々のタイムスケジュール」…などについて伺っていきます。
<多様なジャンルで実績を重ね、翻訳者としての幅を広げる! > 最近では特定の領域にとどまらず、字幕や吹き替えをはじめ、バリアフリー字幕やマンガ翻訳など、多様な案件を柔軟にこなして精力的に活躍する修了生が増えてきています。ジャンルや形式を問わず幅広い仕事に対応できれば、映像翻訳者としての可能性がさらに広がることは間違いありません。今回は、様々な案件にチャレンジし、キャリアの幅を大きく広げている翻訳者をお招きします。現場で培われた貴重な経験談を聞き、ご自身の今後のステップアップにぜひお役立てください。
<パネラー>
◆八木真琴さん(英日映像翻訳者)
学生時代から映画と英語が好きで、大学卒業後は児童英語講師、語学スクールアシスタントマネジャー、通訳コーディネーターなど、語学関係のキャリアを積む。映像翻訳に興味を持ち、2017年にJVTA東京校に入学。2019年3月に英日映像翻訳科 実践コースを修了、同年8月に映像翻訳者としてデビュー。現在はフリーランスとして、主に配信系ドラマ・映画・アニメなどの字幕翻訳やチェックの他、バリアフリー字幕や吹き替えの仕事も始め、実績を積んでいる。主な作品は『コブラ会 シーズン3~6』(字幕)、『ペーパー・ハウス パート5』(字幕)、『ジャズマンズ・ブルース』(字幕)、『マーダー・ミステリー2』(字幕)など。
◆マーディ三宅さん(日英映像翻訳者)
日本在住のフリーランスの日英翻訳者。映画、アニメ、ドキュメンタリー、マンガ、アート・デザイン出版などの翻訳に携わる。字幕翻訳や吹替台本の翻訳、ローカライズなどを手がけている。作品のニュアンスやキャラクター、声を大切にしながら、日本のクリエイティブ作品を海外の観客に届けることに取り組んでいる。主な作品は、『♡≠2』『ぷにるんず』『First Virtual Suit』『ランポ』(漫画、全4巻)など。
<モデレーター> ■藤田奈緒(JVTA講師/JVTA翻訳事業推進部ディレクター)
「映像翻訳者としてのこれからを考えるセミナー」(通称:これセミ)は、参加する皆さん自身がどのように映像翻訳者としてキャリアを築いていくのかを、“皆さん自身で考える”ためのセミナーです。皆さんと同じようにJVTAのクラスで学びプロデビューした先輩翻訳者をお招きし、様々な角度からお話を伺っていきます。参加したあとにはきっと、プロになってからの自分自身をより明確にイメージできるようになるはずです!
■ジェシー・ナス (JVTA日英映像翻訳コースディレクター)
日本のメディアコンテンツが世界中で人気を集めている今、日英映像翻訳のニーズはますます高まっています。日英翻訳の世界をまだよく知らない方にとって、その活躍の場の広さは想像以上かもしれません。今回のこれセミでは、多くの日英プロジェクトに携わってきたJVTA日英映像翻訳科の修了生も登壇し、日英翻訳のリアルについてお話しします。ぜひお気軽にご参加ください!
【開催概要】 ■日時 2026 年9月29日(火)19:30‐21:15(日本時間) ■定員 なし ■受講料 3,300 円(税込) ■受講対象 全受講生・修了生 ■支払い方法 クレジットカード、銀行振込(※詳細は受付後の自動返信メールに記載)
【参加条件】 パソコンやタブレットなどで安定して動画視聴のできる環境が整っていれば、ご参加いただけます。 また、音声を聞き取りやすくするために、イヤホン・ヘッドホンの使用をお勧めします。また質疑応答のタイミングもありますので、マイクをお持ちでしたらご用意ください。
※リモート受講(JVTAライブ)FAQ ~よくある質問~▶こちら ※リモート受講を体験した受講生・修了生の声▶こちら
【お申し込みの流れ】 ・下記お申し込みフォームよりお申し込みください。 ・お申し込み後に自動返信メールが届きます。もし届かない場合は、迷惑フォルダをご確認の上、お早目にご連絡ください。 ・前日17時まで申し込み受付可。それ以降は電話でお問い合わせください。 ※その他のお問い合わせはこちらのアドレスにてメールで受け付けております。 kouza(at)jvtacademy.com ※(at)は@に置き換えてください。
【キャンセルについて】 ・ご入金後はご返金をおこなっておりません。やむを得ない事情によるキャンセルの場合は別途対応をいたしますので、開催日前日までに必ずお電話もしくはメールでご連絡をお願いいたします。
◆変化の時代にこそ「これセミ」の知識が役立つ! 日本映像翻訳アカデミーグループ代表/新楽直樹
「映像翻訳者としてのこれからを考えるセミナー」、通称「これセミ」。日本映像翻訳アカデミー(JVTA)の設立時から30年の間、1つの期も欠かさず開催されている唯一の課外講座です。「これセミ」に参加した受講生・修了生やプロの皆さん、パネラーとして登壇した皆さんの歩みは、JVTAの発展そのものです。
今、フリーランスの働き方は大きく変化しています。国が支援に乗り出し、大手企業が副業を推奨する時代。映像翻訳業界も例外ではありません。クライアント企業では法令や商取引ルールの見直しが進み、映像翻訳者に対する評価やつき合い方も変わってきています。そんな環境下でデビューを果たした方、日々活躍するプロの皆さんは、どんな課題をどんな方法で乗り越えているのか--。日常得難いリアルな情報と最新の話題に触れることができるのが「これセミ」です。
それらに加え、時間の使い方や仕事場の様子、同業の仲間とのつき合い方などについて、本音や楽しいエピソードが飛び出すのもこのセミナーの魅力の一つです。
30年欠かさず行われているのには「学習効果や訓練へのモチベーションを高めるのはもちろん、プロとなった後も支えとなる知見を得られる」という明確な理由があります。
ぜひ積極的に参加して、日々の学習・訓練や実務に役立ててください。
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第142回 “Ride or Die”(『ライド・オア・ダイ ~親友は暗殺者~』)
“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi
第142回 “Ride or Die”(『ライド・オア・ダイ ~親友は暗殺者~』)
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。
今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
予告編:『ライド・オア・ダイ ~親友は暗殺者~』 本予告
VIDEO
極上のバディ・アクションアドベンチャー・コメディ!
本作を観たら、『テルマ&ルイーズ』(1991)が懐かしくなった。スーザン・サランドン&ジーナ・デイヴィス主演、リドリー・スコットの代表作のひとつで、親友同士の女性の破滅を描くクライムドラメディだ(ブラピの出世作でもある)。
“Ride or Die”はAmazon Prime Videoのリミテッドシリーズ。ヨーロッパを舞台に女暗殺者と下院議員の妻が繰り広げる、底抜けに楽しくスリリングで深い感動を呼ぶ、極上のバディ・アクションアドベンチャー・コメディなのだ!
“No more lying. No more killing”
—ロンドン
デビー(オクタヴィア・スペンサー)は、下院議員デヴィッド・クレイボーン(ジェイミー・パーカー)の妻だ。アメリカ人のデビーは名門イェール大出身の弁護士だったが、キャリアを捨ててロンドンに移住してきた。結婚し、2度の出産を経て、25年間無能の夫を支え続けている。
子供たちは既に親離れした。首相を目指すデヴィッドのブレインとして、デビーは多忙な日々を送っている。
ジュディス・バートン(ハンナ・ワディンガム)は法廷会計士(“forensic accountant”)で、デビーとは20年来の親友だ。だがジュディスには秘密があった。彼女のコードネームは“Whiptail”、謎の組織“The Agency”の元で30年近く暗躍してきたエリート暗殺者なのだ。
最近加齢のせいか暴走気味のジュディスは、組織からやんわりと引退勧告を受けていた。
最新のターゲットは犯罪シンジケートの幹部ビリー・ドノヴァン(エド・スクライン)。失敗すれば引退させられるだろう。
デビーはデヴィッド主催の慈善パーティに向かう車の中で、突然夫から離婚を言い渡されてショックを受ける。所詮政治的に利用されただけだったのだ。
その頃ジュディスは、偶然にもこのパーティにゲストとして紛れ込んでいた。標的のビリー・ドノヴァンが支援者として出席するためだ。
ジュディスはビリーを追ってパーティ会場の空き部屋へ忍び込む。だがビリーは姿を消していて、そこにはデヴィッドを含む3つの惨殺死体が横たわっていた。
さらに、ヤケ酒を飲んで酔っ払っていたデビーまでもが暗殺グループに狙われる。ジュディスはデビーを救い出し、奪った車で逃走する。ロンドン市街で追手との激しいカーチェイスと銃撃戦が始まった!
デビーはジュディスの正体を知ってしまった。2人の友情に亀裂が入りかけていた。
だがその前にやることがあった。
生き延びることだ。
‘陰’のデビーと‘陽’のジュディスを体現する2大アクター!
ジュディスを演じたハンナ・ワディンガムはスポーツコメディの傑作“Ted Lasso”(本ブログ第76回参照 )で大ブレークし、エミー賞助演女優賞に輝いた。ミュージカル&舞台アクターとして長いキャリアを持つ彼女だが、今回はコメディドラマの暗殺者役で視聴者を感動させるという離れ業を演じた。
デビー役のオクタヴィア・スペンサーは、’60年代の黒人家政婦への差別を描いた『ヘルプ ~心がつなぐストーリー~』(2011)で、アカデミー&ゴールデングローブ賞の助演女優賞をダブル受賞している。
スペンサーとワディンガムとの間には磁力のようなケミストリーが働き、2人は‘陰’のデビーと‘陽’のジュディスを鮮やかに体現した。
ビリー・ドノヴァン役のエド・スクラインは、大ヒットしたアクション・コメディ『デッドプール』(2016)のサイコ・ミュータント、エイジャックスが当たり役だ。
舞台経験が豊富なジェイミー・パーカーは、2016年に舞台で成人となったハリー・ポッターを演じた。本作では、デビーのダメダメ夫デヴィッドを生き生きと演じている。
多彩なキャラを演じるわき役陣は力強い。
“The Agency”の局長を演じた名優ビル・ナイ、ジュディスのハンドラーであるサム役のカラム・リンチ、“The Agency”の暗殺者“Redback”役のシルヴィア・フークス、ジュディスの武器サプライヤーのクイニ―を演じたサヴァンナ・スタイン、インターポール捜査官ブーシェ役のジャッキー・イドらが、激しく存在感を競い合う。
『テルマ&ルイーズ』の完全エンタメバージョン!
クリエーターのテッサ・コーテスにとって本作は初の製作総指揮作品。ショーランナーは“Chuck”、“Lethal Weapon”(本ブログ第37回参照 )、“Peacemaker”を手掛けたマット・ミラーで、2人は共同脚本も担当している。
パイロットはオーストリアのスキーリゾートを舞台に007風のギャンビットで始まる。その後はロンドンを中心に、バルセロナ、モナコ、ジュネーブと舞台を移して国際色豊かなドラマが繰り広げられる。
ストーリーは、消えた政治資金を巡って命を狙われるジュディスとデビーの逃避行を中心に展開する。アルバニアン・マフィア、謎の暗殺者、“The Agency”、インターポールが入り乱れて予測不能、加速度的に面白くなる。ギャグは抑え目だが、ピンポイントでビシバシ決まる。
「完全無欠な殺人マシーン」だったはずのジュディスにとって、デビーという「守るべきもの」の出現が致命的な弱みとなる。孤児で家族を持たずに生きてきたジュディスにとって、デビーとの友情は心の糧だった。一方受け身で自分を偽って生きてきたデビーは、窮地に陥って初めて生来の強靭さを発揮し、自ら活路を見出していく。
互いを支え、高め合いながら絆を深めていく2人のキャラクターアークはコントラストが鮮やかで、強い説得力を持つ。
そしてエンディングは、実力派アクター2人のおかげでエンタメ作品に収まらない感動を呼ぶ。
“Ride or Die”は、『テルマ&ルイーズ』の完全エンタメバージョン。底抜けに楽しくてスリリングで深い感動を呼ぶ、極上のバディ・アクションアドベンチャー・コメディなのだ!
(一応リミッテッドシリーズだが、シーズン2の制作に期待したい。)
原題:Ride or Die
配信:Amazon Prime Video
配信開始日:2026年7月15日
話数:8(1話 48-55分)
Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
【修了生 加々美ヘナタさん】 映像翻訳者、字幕ガイドライターとして幅広く活躍中
修了生の加々美ヘナタさんは、英日映像翻訳科を修了後、字幕ガイド講座を受講、現在は、翻訳の日本語字幕と字幕ガイド(SDH、CC、バリアフリー字幕)の両方の分野で活躍している。
加々美ヘナタさん
◆乳児の育児中に字幕ガイドに助けられた 加々美さんは出産後、乳児がそばにいて、ドラマや映画を観るときに大きな音を出せない環境で邦画や日本のドラマを観る際に、字幕ガイドをよく利用していた。字幕ガイドでは、セリフだけでなく、話者名や音の情報も字幕にする。さらに「雨音」「ノック」などに加え、必要に応じて音楽の情報も入れることがある。加々美さんは、静かな部屋で映像の音が聞こえづらくても画面と字幕で作品を堪能できて育児の息抜きになっていたと振り返る。
「字幕ガイドは本来、聴覚障害当事者のために始まったものかと思いますが、私のように音を小さくして、もしくは無音で作品を見るしかない状況の人でも楽しめるのが魅力的だと感じました。翻訳字幕を一度習った私ならより習得しやすいのでは?と思い受講を決めました。」(加々美ヘナタさん)
◆聞こえる音すべてを字幕にすればいいというわけではない 映像翻訳や字幕ガイドの制作には、作品解釈のための念入りなリサーチと情報の取捨選択が欠かせない。字幕ガイドならではの難しさについて、加々美さんは音情報を挙げる。
「字幕ガイドだからといって聞こえる音すべてを字幕にすればいいというわけではなく、制作者はこのシーンで何を視聴者に伝えたいのか?という視点を常に持ちながら音情報の取捨選択をしています。また、字幕ガイドにおいては基本的に擬音語を使わないため、表現に悩むことが多々あります。例えば、ドアをドンドンと叩く音は(ノック)、ピンポーンは(チャイム)などと置き換えますが、どう言語化すればいいのか悩む時はインターネットで検索して適切な表現を探ったりします。」(加々美ヘナタさん)
◆字幕ガイド4割、翻訳字幕6割という割合で活躍中 字幕ガイドは、翻訳字幕とも親和性が高い。作品の魅力を余すところなく、視聴者に伝えるという役割は、映像翻訳も字幕ガイドも同じだ。加々美さんは現在、4割が字幕ガイド、6割が翻訳字幕という割合で、動画配信サイトのアニメ、ヒューマンドラマ、ロマンス、スリラー、アクション、お笑い、吹き替え作品のSDHなどさまざまな作品に携わっている。両方を手がけることで相互に役立つこともあるという。
「物語の展開をきちんと理解することが大事なのは両方に共通しています。翻訳ではここぞというシーンの訳文を練りに練って考えたりしますが、字幕ガイドではここぞという場面での、音情報を出すタイミングや表現に頭を悩ませます。どちらも、映像の隅々まで注意深く観察し、セリフ以外の情報や俳優さんの表情、演技からも制作者側の意図を汲み取って字幕に落とし込むようにしています。また、翻訳ではセリフがないシーンの映像は飛ばしながら作業しがちですが、字幕ガイドでは全編を注意深く見ながらどのタイミングで音情報を出すかという判断を下さなければならないので、翻訳の作業時も、セリフがない場面の映像の中に字幕に反映すべき情報がないか、以前よりも注意深く見るようになりました。」(加々美ヘナタさん)
◆海外作品の吹き替え版の字幕ガイドも手がける さまざまなポイントを熟考しながら、作品本来の魅力をそのまま伝えられるように、効果的かつ自然な字幕作りを心がけているという加々美さん。字幕ガイドは、主に日本語の作品に日本語の字幕をつけるニーズが高いが、昨今は海外の作品の吹き替え版に日本語の字幕ガイドをあわせて制作するケースもある。映像翻訳と字幕ガイドの両方のスキルがある加々美さんは、こうしたニーズにも対応できる人材として着実に活躍の場を拡げてきた。
「海外作品の吹き替えにつける字幕ガイドでは世界中に注目されるような人気作品を任されることもあり、やりがいを感じます。注目度の高い作品であれば洋画や海外ドラマの吹き替え版にも日本語の字幕ガイドが付くことがまれにありますが、吹き替えがない翻訳字幕作品にも字幕ガイドがついたら、もっとたくさんの人が多種多様な映像作品を楽しめるようになるのになあ、と思う時があります。」(加々美ヘナタさん)
加々美さんのように、映像翻訳者のキャリアに加えて字幕ガイドライターとしてのスキルを身につければ、受注できる仕事は確実に広がる。言葉のプロとしてフリーランスを目指す人はぜひ、挑戦してみてほしい。
◆メディア・アクセシビリティ科 字幕ガイドコース 次期は2026年9月2日に開講
※コースの詳細はこちら ※無料説明会の詳細とお申し込みはこちら
明けの明星が輝く空に 第199回:夢幻のヒロインたち9:春日藤千代
登場作品:映画『ガス人間第一号』(1960年) キャラクター設定:零落した日本舞踊の家元 “ガス人間”と運命を共にする
「幽玄」という言葉は、こんな光景のことを言うのだろう。『ガス人間第一号』の冒頭、銀行強盗犯を追った岡本警部補が、人里離れた夜の山中で鼓の音を耳にする。その音が聞こえてくる方向へ向かうと、やがて屋敷に辿り着いた。庭へと回り込む岡本。その目に飛び込んできたのは、戸が開け放たれた板の間で、般若の面を着けた女性が舞う姿だった。
舞っていたのは、昭和の名優、八千草薫さんが演じる春日藤千代。凜とした風情が美しい日本舞踊の家元だが、春日流は弟子がみな離れるなどして落ちぶれ、発表会を開くことすら危ぶまれる窮状にあった。逃走した強盗殺人犯、水野は、彼女のために金を工面しようと犯行に及んだのだ。彼はある科学者による実験の犠牲者で、結果的に、自分の意思で体をガス化できるようになっており、その特殊な能力を使って犯罪を重ねる。
先月初旬、Netflixで配信が開始された『ガス人間』(全8話)は、本作のリブート版で、設定やストーリーは別物だ。画面から漂う緊迫感はさすがだが、オリジナルが持つ趣や幻想性には乏しい。個人的な意見ではあるが、60年以上前に公開された『ガス人間第一号』は、こんにちに至るまで、特撮史上最もロマンティックかつ、悲劇的な物語だ。
水野は彼女を愛している。彼の愛には、どこにも利己的なところがない。金の出どころを知った藤千代に対し、僕を利用すればいいとさえ言う。そんなふうに言われ、普段は感情を表に出さない藤千代も、この時ばかりは恋する女の目になり、水野の胸に顔を埋めている。ただ、彼女も水野を愛していたのか。映画は意図的に、それを明確にしていない。
藤千代は、事件を追う記者、甲野京子に、水野を愛しているのかと問われると、少し驚いた表情を浮かべてから目線を反らし、諦めたかのような口調で「どうにもならないんです」とだけ答えている。愛していることを認めたように聞こえるが、映画全体を観ても、彼女が水野を愛している確証になるようなシーンはない。藤千代にとっては、踊りこそ全て。だからこそ、強盗によって手に入った金だと知った後も、発表会をやり遂げようとする。水野の胸に顔を埋めたのも、彼女を苦境から救ってくれる唯一の存在が目の前にいる男だったという実情を考えれば、思わず心がなびいたという解釈も可能だ。
実を言うと、本作のメガホンを取った本多猪四郎監督も、ラストの悲劇的結末を生む藤千代の心境について、「情にほだされた」という表現を使っていたらしい。水野役の土屋嘉男さんが、水野は愛されていたと解釈していることに対して、水野から見ればそうだろうとも言っていたようだ。その悲劇的結末とは――。
発表会の劇場で踊り終えた藤千代。客席には水野ただ一人。「すばらしかった」と言って藤千代を抱きしめる。しかしこの時、劇場内には引火性のガスが充満していた。警察は、捕まえることが不可能なガス人間を爆殺しようとしていたのだ。水野はそれを察知し、発火装置を壊していたが、藤千代が彼の背に回した手にはライターがあった。一瞬の躊躇。恋慕の激情に流されるかのように、水野を固く抱きしめる。それでも、彼女は意を決する。涙を浮かべた目を見開くと、中空を見つめたまま、ライターに火を点けた。
『情鬼』――それが、藤千代が披露した演目のタイトルだった。架空の演目であるが、踊りを見る限り、道成寺に伝わる安珍・清姫の物語と類似の内容のようだ。すなわち、悲しみの淵に沈んだ女性が、恨みから人ではないものに変化( へんげ ) する。当然、映画の作り手は、そこに何らかの意味を含ませているだろう。とすれば、情鬼とは藤千代自身のことだ。踊りの終盤、彼女は般若の面を被って舞う。手にしているのは、能の舞台で鬼や龍神役が使う打杖と呼ばれる小道具か。その先には藤の枝。まだ鬼へと変わる前、憎しみから花をむしり取った時のものだろう。それを狂おしく打ち振る。しかし、目の前の誰かを打つかのように振り上げたところで手が止まり、杖は足もとに落ちた。そして最後は、苦悶と悲しみの中に絶命する。(断っておくが、能や日本舞踊を見る目を僕は持ち合わせていないので、これは当てずっぽうに近い推測だ。ついでに言うと、女心を論ずるのも…。)
藤千代は、水野との心中を選んだ。彼女は、水野の犯行で得た金で発表会を開いた。もちろん、その罪は自覚していただろう。心中は贖罪のためだったのだろうか。同時に、狂気に染まった水野の魂を救済するという意味もあったかもしれない。それも「愛」のひとつの形だ。ただし、どちらかといえば慈悲の心に近い。いずれにせよ、映画は明確には語ってくれない。しかし、俳句の例を引くまでもなく、全てを説明せず余白を残した方が想像力は刺激される。そして人はそんなところにも、ロマンを感じるものだ。
春日藤千代の余白にも、ロマンがある。
参考:過去記事
第118回:特撮俳優列伝23 八千草薫 https://www.jvta.net/co/akenomyojo118/ 第97回:特撮俳優列伝8 土屋嘉男 https://www.jvta.net/co/akenomyojo97/
—————————————————————————————– Written by 田近裕志(たぢか・ひろし) JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
【最近の私】ジャン・リュック・ゴダール監督のことを描いた映画『ヌーヴェルヴァーグ』を観てから、ゴダール監督の長編デビュー作『勝手にしやがれ』を観ました。ちょっとだけ「映画通」っぽいことしてるなあと、自己満足した次第です。 —————————————————————————————–
明けの明星が輝く空に 改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る
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花と果実のある暮らし in Chiang mai プチ・カルチャー集 Vol.104 近所のマッサージ屋さん
★「花と果実のある暮らし in Chiang Mai」 インパクト大の写真をメインにタイのリアルなプチ・カルチャーをご紹介しています。
タイといえば、タイ古式マッサージが有名ですが、最近ビジネスライクなところも増えて質も落ちてきている気がします。そんな中、近所にいいマッサージ店はないだろうかとGoogle マップで探して試したお店が一軒ありました。
初めて訪れた時、ドアを開け「マッサージできますか。」と尋ねると、小柄な女性は、「普通のマッサージを受けたい場合は隣の店へどうぞ。どこかお悪いのであれば治療マッサージはお受けします。」と言いました。はっきり言ってくれた所が気に入って、少し気になっていた腰をお願いしたいと言ってそこで施術を受けました。部屋は殺風景だけれど、きちんと整理されていて、清潔感もありました。話をするとシングルマザーで2人の子どもを育て上げたとのこと。もちろん資格を持って教えられる立場でもありながら、今でもきちんと勉強を続けているという。そんな彼女のマッサージを受けた次の日、テニスの仲間から、「今日動きがいいね。」と言われ、それ以来約一年、疲れた時には、彼女の元へ駆け込むという私にとってありがたい場所になりました。
イメージ
お気に入りのバーム
そんな彼女が最近、「娘も手伝ってくれることになり、お店を移転し、スパ要素も入れるのよ。」という。彼女の実直なマッサージが好きだったので、私の中では応援したい気持ちと複雑な想いが交錯してしまいました。こういう所からも娘に継がせていきたい、もっと広げたいという気持ちが生まれるように、発展というのはその手綱を持つ人で大きく変わるもの。彼女と娘さんを信じて、ビジネスライクな今時のスパマッサージ店という発展に向かわないことを願っている今日この頃です。
雨季の合間の晴れ間
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Written by 馬場容子(ばば・ようこ)
東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。 —————————————————————————————–
花と果実のある暮らし in Chiang Mai チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美 バックナンバーはこちら
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