【フィンランド映画祭】姉妹の口調や関係の変化、縦字幕の厳しい字数制限、解釈の相違などを4人で精査した字幕翻訳秘話とは
フィンランド映画祭が11月8日(土)渋谷のユーロスペースで開催される。JVTAは毎年、この映画祭に字幕制作で協力。上映作品には、今フィンランドで話題の選りすぐりの傑作がラインナップされており、今年も全5作品の日本語字幕を担当した。
『100リットルのゴールド』(テーム・ニッキ監督)はニッキ監督の地元であるフィンランド中西部シュスマを舞台にした風刺コメディだ。主人公は、フィンランド名産である濃厚なビール、サハティを自家醸造する中年の姉妹、タイナとピルッコ。ある日、二人の妹、パイヴィの結婚式に100リットルのサハティを届ける依頼を受けるが、仲間と大騒ぎするうちに在庫をすべて飲み干してしまう…。結婚式まであと24時間。妹に贈る100リットルのサハティを求めて二人の豪快で無鉄砲な珍道中が始まる!ニッキ監督は、この作品で2026年アカデミー賞最優秀国際長編映画賞のフィンランド代表に選出された。ちなみに、ニッキ監督もシュスマの養豚農家の息子で家族がサハティを醸造しているそうだ。
『100リットルのゴールド』
日本語字幕は、JVTAで学んだ翻訳者、赤井雅美さん、川原田仁美さん、濱本佐宮良さん、福地奈緒子さんの4人がチームを組んで手掛けた。4つのパートに分けて各自が作った字幕を統合し、4人で話し合いながら細かい精査を行い、一つの字幕として完成させた。
「プロデビューしたばかりの翻訳者さん4人が、持てる力をすべて出し切って全身全霊で取り組んでくれました。どの字幕をとっても、一つひとつが選び抜かれた言葉で作られていていきいきとした表現が、キャラクターとストーリーにまさに命を吹き込んでくれています。ご覧になった方たちにきっと楽しんでいただけると思います。」(先崎進・JVTAディレクター)
翻訳チームで最も話し合ったのは、姉妹の口調だという。セリフを訳す映像翻訳の場合、口調は人物のキャラクターを表す重要なポイントとなる。基本的には全体を通して統一していくが、同じ人物でも相手やシチュエーションによって語尾などが変わってくる。
「特にタイナをどう描くかで意見が割れましたが、最終的には語尾をそろえるより、そのシーンの感情に合わせてトーンを考えることにしました。人間らしい感情の振れ幅があるキャラクターなので、場面に合った自然な口調を大事にしました。」(赤井雅美さん)
「物語が展開していく中で、登場人物にも変化が訪れるので、各パートでのキャラクター像も当然変わってきます。全体を通しての統一感を維持するために、“木を見て林を見て森を見て…”を繰り返すことを心掛けました。また、セリフの翻訳は感覚に頼りがちです。正しい日本語を使いながらも、硬すぎず、砕けすぎず、クセの強いキャラクターに合った表現を探すことに苦心しました。」(福地奈緒子さん)
濱本佐宮良さんは、一つの作品に4人で向き合う中で、ストーリーの解釈にも意見が分かれることがあったと話す。濱本さんが担当したパートでも別の解釈を提案された箇所もあり、改めて自身の解釈について深く考え直し、自分の伝えたいポイントが字幕にしっかり反映されているかどうかを徹底的に検討する、よい機会になったという。
「翻訳をするにあたっては当然自分なりに作品をしっかり観てから臨むわけですが、作業をするうちに自分のパートに集中しすぎて大局的な視点を失ってしまわないようにすることが大切だと感じました。」(濱本佐宮良さん)
各自が訳した言葉を一つの字幕にまとめるには、全体のトーンや言葉の統一も不可欠だ。川原田仁美さんは、各パートに出てくる同じ単語やフレーズの訳語を統一するのか、状況に応じた訳語にするのかなど、チームで細かく訳語をすり合わせたと振り返る。
「解釈が分かれる訳語については、納得がいくまでとことん意見を交わしました。その甲斐あってリライトを重ねるうちに訳がどんどん磨かれていき、最終的に無駄を削ぎ落とした濃い字幕になったのではないかと思います。」(川原田仁美さん)
オリジナルの言語はフィンランド語だが、こうした多言語の作品が映画祭で上映される場合、ほとんどが英語字幕を元に日本語に翻訳される。映画祭では英語字幕と日本語字幕は併記されることも珍しくない。この作品でも横字幕で英語字幕が表示されるため、必然的に日本語字幕は縦字幕となり、文字数がさらに限られ、翻訳者には難易度が増すことになった。
例えば、少ない文字数の中で、姉妹を馬鹿にしたような英語の言葉遊びを「タイナ タイナ めでたいな」と日本語にもうまく反映し傍点で強調した。また、作中に何度か出てくるキーワード「クルナ」に関しては、初出時に「ろ過槽」にクルナとフリガナをつけ、その後は「クルナ」に統一するなど簡潔ながら作品のニュアンスが伝わるための工夫も字幕に垣間見える。
「各セリフのメッセージやニュアンスを過不足なく伝える字幕を作ることに力を注ぎました。文字数が多いほうが伝えられる内容は増えますが、少ない文字数の中に本当に伝えなければいけない内容をぎゅっと凝縮する作業は翻訳者冥利に尽きる幸せな苦悩でしたし、最終的に無駄のない美しい字幕ができたのではないかと思っています。」(濱本佐宮良さん)
大量のサハティを手に入れるために姉妹はハチャメチャな作戦を繰り返すが、やがて父や親せき、地元の仲間などとのやり取りの中で二人が抱える問題が見えてくる。川原田さんは、「見どころは、サハティ騒動の中で描かれる姉妹の関係性や心情の変化。酒にだらしないのにどこか憎めない二人を応援したくなる」という。
「自分以外のパートをチェックしながら、思わずホロリとさせられるシーンもありました。ただのコメディではなく、心が揺さぶられる作品だと思います。」(川原田仁美さん)
「豪快な姉妹ですが、妹のために必死になる理由がそれぞれにあり、約束を果たすまでの過程で描かれる葛藤や決意など、心の動きにもご注目いただきたいです。」(福地奈緒子さん)
北欧の映画は静かな日常の中にシュールな笑いがあり、翻訳者の間でも人気がある。仲が良かった姉妹だが次第にほころび始め、最後には気持ちをぶつけ合う。その過程がすごく人間味があり、心に残ったと話すのは、赤井雅美さんだ。
「作品のいたるところにふっと笑える瞬間があって、静かなユーモアがフィンランドらしい作品だと思いました。字幕を通して、登場人物の息づかいや、フィンランドの空気のようなものが少しでも伝わればうれしいです。」(赤井雅美さん)
「フィンランドの片田舎の風景や素朴なインテリアなども印象的でした。散らかった部屋の壁に飾られた絵や置かれた小物たちがどれもかわいくて、北欧好きな方なら心をくすぐられるのではないでしょうか。」(濱本佐宮良さん)
福地さんは、最終稿が完成して全体を見た時に、始めに英語字幕だけで観たときとは比較にならないほど作品の魅力が伝わってきて、日本語字幕の持つパワーを強く感じたという。トラブルだらけの姉妹は妹のためにサハティを手に入れられるのか?
ぜひ、劇場で見届けてほしい。
◆フィンランド映画祭 2025年11月8日(土)~ 14日(金) ユーロスペース 公式サイト:http://eurospace.co.jp/works/detail.php?w_id=000934
明けの明星が輝く空に 第190回 ウルトラ名作探訪24 『恐怖のルート87』
ウルトラマン第20話「恐怖のルート87」の冒頭には、伊豆シャボテン動物公園が「大室山公園」として登場する。僕は大学生の頃、初めてそこに行ったとき驚いた。番組で見た「高原竜ヒドラの石像」が鎮座していたのだ。獣の体に、鷲のような頭と翼を持つ巨大な像。同公園のシンボルとなっているそれは、実際には「高原竜」という名で、「ヒドラ」は番組が付けた架空の名前である。
伊豆シャボテン動物公園(当時は伊豆シャボテン公園)には、『ウルトラマン』の制作スタッフがシナリオ準備段階で訪れたそうだ。そこで見た高原竜を元に、怪獣ヒドラが考案されたという。その姿は、多少の違いこそあれ、高原竜そのままだ。
ヒドラが登場する「恐怖のルート87」では、最後に不思議なことが起きる。ウルトラマンが戦うのをやめ、ヒドラを飛び去らせてしまうのだ。実はこのとき、ウルトラマンには、ヒドラの背中に乗る一人の少年の姿が見えていた。
「恐怖のルート87」は時代を反映し、交通戦争を物語の下敷きとしている。当時は、いわゆるモータリゼーションにともない、交通事故が社会問題となっていた。この作品でも、半年前にムトウ・アキラという少年が、国道87号線で轢き逃げの犠牲者となっていたことが語られる。彼が生前に描いた怪獣の絵は、大室山公園の石像のデザインに採用されていた。ヒドラである。
時系列が前後するが、この事実が発覚する前の物語冒頭で、すでに亡くなっていたはずのアキラ少年の姿が目撃されていた。彼は科学特捜隊本部に現れ、ヒドラが暴れ出すとだけ告げる。そしてその警告通り、大室山公園を見下ろす大室山から、ヒドラが出現する。念のため公園で警戒にあたっていた科特隊が攻撃すると、ヒドラは空へと飛びあがり、姿をくらましてしまった。
このあとヒドラは、国道87号線を走る車を次々に襲う。すでにアキラ少年の事情を聞かされていた主人公のハヤタ隊員は、ヒドラにはその少年の魂が乗り移っている可能性を指摘。続けて仲間の隊員が「呪われた国道87号線か」とつぶやいたところで、ムラマツ隊長から「魂だ、呪いだと言っている場合じゃないぞ」と注意を受ける。この台詞は暗に、オカルトは彼らの(そして『ウルトラマン』という番組の)管轄外であることを示唆しているが、その一方で霊魂の存在を真っ向から否定するものでもない。観る者を物語に引き込む神秘的な空気を残しつつ、番組本来の世界観を維持。巧みな脚本だ。
番組後半、ウルトラマンはヒドラと対決する。強敵相手に、さしものウルトラマンもノックアウト寸前にまで追い詰められた。体勢を立て直し、スペシウム光線を放つウルトラマン。ヒドラが空中へ飛び立つ。さらに続けてスペシウム光線を放とうとすると、ヒドラの背中にうっすらとアキラ少年の姿が浮かんだ。ウルトラマンは構えた手を下ろし、飛び去るヒドラをただ見送った。
「恐怖のルート87」は、『ウルトラマン』が単なる勧善懲悪の物語ではないことを示している。7月の記事で紹介した「怪獣墓場」(https://www.jvta.net/co/akenomyojo186/ )は、怪獣の悲哀がテーマになっていたが、今作も“怪獣=憎むべき存在”ではないことを教えている。紋切り型の勧善懲悪ではない物語。それを子どものころに観られた僕らは幸せだと思う。
ヒドラが飛び去る場面では、ウルトラマンのスーツアクター、古谷敏氏の演技も注目に値する。スペシウム光線を構えた手の指先から、フッと力が抜ける。ウルトラマンの心情が垣間見える瞬間だ。仮面で顔が隠され、台詞もない中、指先だけで内面を表現。動きに多少の不自然さが感じられないこともないが、演技とは表情やセリフ回しだけではない、ということを示す好例だ。
もう一点注目したいのは、半年前に亡くなっていたアキラ少年と会い、言葉を交わしたのが女性であるフジ・アキコ隊員だけだったということだ。アキラ少年が部屋を出て行った直後、同じドアから入ってきた男性隊員は、その姿を見ていない。また、フジ隊員は、ヒドラの背中にアキラ少年の姿を見た唯一の人間でもある。古来、女性は異界とチャネリングできる能力があると見られてきた。たとえばイタコは巫女同様、全員女性だ。そう考えると、アキラ少年にちなんだフジ隊員の描写は、ステレオタイプな発想に基づいたものと言える。ただ、60年近く前の作品なのだから、今の価値基準だけで論じるのはフェアではない。それでも、今はそういったことに鈍感でいることが許されない時代だ。その点は、留意しておく必要があるだろう。
「恐怖のルート87」のエピローグでは、轢き逃げ犯人が捕まったことが明らかになる。これでアキラくんも天国へ行けると、無邪気に喜ぶ科特隊の面々だったが、ちょっと待った。それじゃあヒドラの攻撃を受けた車の運転手たちは、全く無関係なのに命を奪われたということに…。昔の作品であっても、ここはツッコミを入れてもいいだろう。怪獣だけじゃなく、人間にも優しい物語をお願いします!
「恐怖のルート87」(『ウルトラマン』第20話) 監督:樋口祐三、脚本:金城哲夫、特殊技術:高野宏一
—————————————————————————————– Written by 田近裕志(たぢか・ひろし) JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
【最近の私】スーパー戦隊シリーズ終了という記事を読んで驚きました。出演者同士の不倫問題が取りざたされていますが、今放送中の番組ではなく、50年も続くシリーズ自体を終わらせるほどのことなのかどうか。とにかく公式発表が待たれます。
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明けの明星が輝く空に 改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る バックナンバーはこちら
◆【映像翻訳科 次期開講は2026年4月予定】 映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。 ※詳細・お申し込みはこちら
【第20回難民映画祭】字幕翻訳と広報サポーターで修了生が活躍中!」
第20回難民映画祭が11月6日に開幕。JVTAは今年も上映作品の字幕制作で協力しています。さらに今年は映画祭が公募した広報サポーターに、JVTAの修了生7名(青井夕子さん、中島唱子さん、中原美香さん、梶原阿子さん、長谷川睦さん、丸山綾さん、松井敏さん)とJVTAの広報スタッフが参加し、チラシやポスターの設置の交渉や送付といったPR活動や記事コンテンツの制作などを手掛けています。JVTAが関連したものをこちらで紹介していきます。
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また、こちらにはサポーターの皆さんによる作品のレビューも掲載されています。字幕を担当された翻訳者の皆さんも要チェックです!
◆第20回難民映画祭 公式サイト
◆第20回難民映画祭が11月6日に開幕 青いバラにこめた思いを字幕で伝える
※同映画祭担当の山崎玲子さん(国連UNHCR協会・渉外担当シニアオフィサー)から翻訳者の皆さんにメッセージを頂きました。
◆第20回難民映画祭・広報サポーターによる公式note 「みて考えよう!難民映画祭」
『バーバリアン協奏曲』
◆上映作品『バーバリアン狂騒曲』翻訳の裏話①
※字幕翻訳チームの青井夕子さんが執筆しています。
花と果実のある暮らし in Chiang Mai プチ・カルチャー集 Vol.95 偶然
★「花と果実のある暮らし in Chiang Mai」 インパクト大の写真をメインにタイのリアルなプチ・カルチャーをご紹介しています。
「ヨーコ!」。空港で手を振る姿は、まさに30年前、アメリカの大学で皮肉交じりに教えていた先生でした。30年という月日が一瞬のうちに吹き飛んでいき、私たちは長いハグをしました。バリ島のウブドに向かう車の中で、彼女の人生に起きたことをじっくりと聞きながら、運命的なことを感じました。
ウブドの街角のガネーシャ
彼女がウブドに来始めたのは20年前。それから、ウブドには毎年のように訪れていたそうです。
「ウブドの仲間たちでHIVの患者さんを助けているお医者さんをサポートしているの。彼のヴィラにいつも泊まっているのよ。素敵な所だからあなたも気に入るわ。」
「え、私も20年前にチェンマイに来て、HIV感染施設孤児施設に関わったんです。」
彼女も私もこの偶然にとても驚きました。お互い何も知らずに、我々は同じ時期に同じようにHIV関係のサポートをしていたのです。振り返れば、彼女の同僚の一人、つまり私の先生の一人はLGBTであり、私が在学中にAIDSを発症し、この世を去りました。きっと私たちの中に、少なからずこの経験が残っていたのでしょう。当時(90年代)のAIDSという病は、社会でも大きく取り上げられていた問題でしたが、30年経った今では医療の進歩や社会の理解により、その状況は大きく変わりました。ウブドに向かう車窓の外を見ながら、同時期に世界のあちこちでポツポツと何かが動いていたんだというこの現象に感慨深いものを感じると共に不思議と明るい気持ちが込み上げてきました。
ヒンドゥーの結婚式
【関連記事】
花と果実のある暮らしin Chiang mai プチ・カルチャー集 Vol.94 再会
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Written by 馬場容子(ばば・ようこ)
東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。 —————————————————————————————–
花と果実のある暮らし in Chiang Mai チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美 バックナンバーはこちら
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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第132回 “ALIEN:EARTH”
“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi
第132回 “ALIEN:EARTH”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。
今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
予告編:『エイリアン:アース』 本予告
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“The Alien Has Landed!”
リドリー・スコットが製作総指揮に名を連ねる本作は、昨年公開された『エイリアン:ロムルス』の22年前、オリジナル『エイリアン』(1979)の2年前を描く前日譚。エイリアンが遂に地球に到達する。
(シガニー・ウィーバーがいないと、こういう悲劇が起こるのよ。)
“Alien: Earth”はDisney傘下のFXが制作、マンネリ気味のエイリアン・フランチャイズに新風を吹き込むスーパーエンタメ・Sci-Fiホラーなのだ!
“They can sense fear!”
—西暦2120年
強欲なメガ企業5社が、地球と植民地化した太陽系惑星を支配する世界。
そこでは「人間」、「サイボーグ」(マシン強化型ヒューマン)、「シンセティック」(AI搭載のヒューマノイド型ロボット)が共存している。
—地球から8億500万マイル離れた宇宙空間
ウェイランド・ユタニ社の深宇宙調査船マジノ号は、65年にわたる探査を終えて地球に帰還するところだった。
クルーは当初の目的通り、5種の捕食性生命体を捕獲していた。だが封じ込めに失敗し、サイボーグの保安責任者モロー(バブー・シーセイ)以外は、全員が虐殺された。航空システムが故障したマジノ号は、凶暴な生命体を乗せたまま地球に向かっている。
—地球
プロディジー社が保有するネバーランド研究島では、史上初めて「ハイブリッド」の誕生を迎えるところだ。被験者は余命わずかな11歳の少女マーシー。彼女は革新的技術によって、意識を取り込んだ強靭なシンセティックとして生まれ変わる。このハイブリッド技術は、近々同社の主力商品になるはずだ。
マーシーは自分の新しい名を‘ウェンディ’に決めた。
数か月後、マジノ号が地球に墜落し、プロディジーシティの高層タワーに突き刺さった。生存者救出のために、同社の軍隊が投入された。
ウェンディ(シドニー・チャンドラー)はニュースを見て愕然とした。兄のジョー(アレックス・ローサー)は軍の衛生兵なのだ。妹が死んだと思っているジョーは、ウェンディの存在を知らない。
ウェンディは救出任務を志願する。プロディジー社の若き天才CEOボーイ・カヴァリエ(サミュエル・ブレンキン)は、ゴーサインを出した。カヴァリエは、船内の生命体を横取りするつもりだった。
隊長を務めるシンセティックの科学者カーシュ(ティモシー・オリファント)、リーダーのウェンディ、「ロストボーイズ」と呼ばれる新米のハイブリッド5名からなる、即席の特殊部隊が組織された。
戦闘経験の乏しい彼らは、これから5種のエイリアンと対峙することになる…。
“Now I’m a forever girl!”
ウェンディを演じるシドニー・チャンドラーはカイル・チャンドラー(“Friday Night Lights”)の娘。ハードボイルド・ドラマ“Sugar”(本ブログ第116回参照 )では、行方不明になるティーンエージャーを印象的に演じた。本役では、エキセントリックな魅力と高い演技力で、エイリアンたちと互角の存在感をアピールする。
ウェンディの兄ジョー役のアレックス・ローサーは英国出身。青春ブラックコメディ“The End of the F***ing World”(『このサイテーな世界の終わり』)では、主役のサイコパス少年を演じた。優しいがヌルいジョーのキャラにぴったりだ。
プロディジー社のCEOカヴァリエ役のサミュエル・ブレンキンも英国出身で、舞台版『ハリー・ポッター』ではスコーピウス・マルフォイを演じた。ピーター・パン症候群の天才サイコパス役に上手くハマった。
サイボーグの保安責任者モローを演じたバブー・シーセイは、怒涛のカンフードラマ“Into the Badlands”のピルグリム役が懐かしい。孤独な復讐者となるモローの重要性は、エピソードを重ねるごとに高まっていく。
シンセティックの科学者カーシュ役のティモシー・オリファントは、主役の連邦保安官ギヴンズを演じた“Justified”が代表作。無表情でクールなカーシュは、『ブレードランナー』でルトガー・ハウアーが演じたレプリカントを髣髴させる。
『エイリアン』のテーマパーク・バージョン!
ショーランナー(兼共同監督兼共同脚本)のノア・ホーリーは、ドラマ版“Fargo”(本ブログ第13回参照 )全5シーズンの製作、監督、脚本でエミー賞に計11回ノミネートされている才人だ(受賞は1回)。
オリジナルシリーズの魅力は、①宇宙船内の閉塞感から生まれる恐怖、②戦うヒロイン、③H・R・ギーガーによるエイリアン(ゼノモーフ)のメタリックな造形美だろう。
この3点は本作でも忠実に踏襲されている。特に第5話で解き明かされるマジノ号の惨劇は圧巻で、『エイリアン』のリブートのような完成度だ。
また、本作には新たな世界観が導入されている。マグセブン(Microsoft、NVIDIA、TeslaなどのメガIT企業7社)を思わせる5大企業が支配し、人間と不老不死のサイボーグ、シンセティック(およびハイブリッド)が共存する世界だ。プロディジーシティに『ブレードランナー』の退廃的な雰囲気が漂うのは、リドリー・スコットへのオマージュか。
ストーリーはウェイランド・ユタニ社とプロディジー社の支配権争いを背景に、エイリアン5種の脅威とウェンディの成長が交錯する。さらに、「ゼノモーフとウェンディとの交流」「人間の兄ジョーとハイブリッドの妹ウェンディとの絆」「ハイブリッドの反乱」など、魅力的なサブストーリーが走る。
終盤はさながら『エイリアン』のテーマパーク・バージョンの様相で、劇的なシーズン・フィナーレへ突入する。
『エイリアン』のドラマ化はハードルが高い。閉塞空間で襲いかかる生命体だけでは間が持たないからだ。ウェンディという魅力的なキャラクターを創造して‘エイリアン5種盛り’との「2本立て」とし、よりエンタメ性の高いエイリアン・ドラマにまとめ上げたホーリーの手腕には唸らされる。
“Alien: Earth”は、マンネリ気味のエイリアン・フランチャイズに新風を吹き込むスーパーエンタメ・Sci-Fiホラーなのだ!
原題:Alien: Earth
配信:Disney+
配信開始日:2025年8月13日~9月24日
話数:8(1話 46-66分)
Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
【東京国際映画祭が開催】映画祭ガイドと公式プログラムの英訳でも映像翻訳者が活躍
10月27日(月)、第38回東京国際映画祭(TIFF)が開幕する。TIFFは、1985年に日本ではじめて大規模な映画の祭典として誕生。才能溢れる新人監督から熟練の監督の作品まで、世界中から厳選された映画が集結し、毎年メディアでも大きく報道される人気のイベントだ。JVTAは今年も公式プログラムの英訳やデイリーペーパーの翻訳などを担当し、JVTAで映像翻訳を学んだ翻訳者が活躍している。公式プログラムと映画祭ガイドの英訳を手がけたキンチョ・コスタさんに話を聞いた。
◆東京国際映画祭 トレイラー
VIDEO
歴史ある国際映画祭とあって、公式プログラムと会場で配布される映画祭ガイドは2カ国語となっており、昨今JVTAがその英訳を担当している。映画祭ガイドでは、作品名、監督名、出演者、作品の解説などが英語と日本語で併記されているが、2つの言語は同じスペースに配置され、同じ字数制限に合わせることが必須だ。英訳には漢字が使えないうえ、題名や人名の場合は字数がすでに決まっている。キンチョ・コスタさんは、なるべく簡潔に情報を伝えようとしたが、結局、英訳には情報を省略することが必須だったと話す。
東京国際映画祭の映画祭ガイド
「最も難しかったのは、作品に関するネタを徹底的に調べながら、その情報を取捨選択し、文章のトーン、そして書き手が伝えたいことをきちんと守りつつ、情報を削ることでした」(キンチョ・コスタさん)
映画祭では、プレミア上映作品、初めて英語字幕付きで上映される作品、過去の古い名作などさまざまな作品が上映される。翻訳者はただ日本語のテキストを訳すだけではなく、各作品の背景やストーリーの詳細を詳しく調べたうえで英訳に反映していく。コスタさんは、JVTAの授業で学んだテキスト翻訳やストーリー分析などの知識を活かし、リサーチで得た情報をもとに作品とキャラクターを理解し、最も中心的な情報を抜き出した。
「日本語のガイドには載っていない情報をリサーチで得た場合、英語でそのニュアンスを伝えるべきか、それともネタバレになるのかという判断も難しかったです。」(キンチョ・コスタさん)
東京国際映画祭 公式プログラム
また、会場で販売される公式プログラムには、作品の概要だけでなく、映画祭関係者の挨拶や上映プログラムの解説なども記載されている。こうした英訳には、コスタさんが日頃手がけるビジネス系動画の字幕制作やアニメプロジェクトの経験も役立った。
「映画祭関係者の挨拶などを英訳する際には、英語の自然さを保ちながら、一人ひとりの個性的な文章の表現や口調を伝えることを大切にしました」(キンチョ・コスタさん)
◆東京国際映画祭 映画祭ガイド
※下記からダウンロードはこちら (映画祭公式サイトにリンクします)
東京国際映画祭では、国内外の映画祭の受賞作品も上映される。コスタさんは、今年の「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025」に出品され、コンペティション部門SKIPシティアワードを受賞した『長い夜』(草刈悠生監督)の英語字幕制作にも携わった。2年前に海に消えたカイと恋人の真理、親友の光一の複雑な心の動きを追った注目作。この作品についてコスタさんは、演出が繊細で、メインキャストの自然主義的な演技も素晴らしかったと振り返る。
◆『長い夜』(草刈悠生監督 )詳細はこちら (映画祭公式サイトにリンクします)
「長い夜」Yui Kusakari©
字幕を作るうえでチャレンジングだったのは、非常にゆっくりとした対話のペースだという。セリフの間に長いポーズが挟まれているがセリフ自体は短く簡潔で、日本語のニュアンスを英語でも簡潔に伝える必要があった。
「3人のチームで字幕を担当したのですが、私のパートでは真理と光一の喧嘩のシーンも含まれていました。そのシーンの対話やキャラクターの怒りが非常にリアルに感じられたので、そのクオリティを英語字幕でも保ちたいと思いました。しかし、このシーンではセリフがパパパと続くため、それまでのゆっくりしたペースで読める字幕のリズムを崩さないよう、さまざまな工夫を凝らしました」(キンチョ・コスタさん)
キャラクターの立場に立って、彼らの「声」を探す過程で、欠点も含めて各キャラクターに親しみを感じるようになったというコスタさん。最後の海のシーンで彼らを見て心が浄化されるような気持ちになったと話す。
今年の東京国際映画祭では、ほかにもJVTAで学んだ翻訳者が字幕を手掛けた作品が上映される。国内外の映画祭の受賞作品にも注目したい。
◆『空回りする直美』(中里ふく監督) 詳細はこちら (映画祭公式サイトにリンクします)
「空回りする直美」©『空回りする直美』製作委員会/東放学園映画専門学校
父親と発達障害のある兄、慎吾と暮らす直美の日常を描いた同作は、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)「PFFアワード2025」でグランプリを受賞。英語字幕は、リー・スタビングスさんが手掛けている。スタビングスさんは、クリエイティブなライティングに注力し、映画やドラマの字幕翻訳だけでなく、ビデオゲームの翻訳やプロジェクト・マネージャーなど幅広く活躍中だ。
「この映画は一緒に暮らすことに苦悩する兄妹の関係を描いていますので、翻訳では登場人物の感情をできるだけ汲み取り、英語でも忠実に表現することを心がけました。特に兄によるラップの部分は、兄の創造性とユーモアのセンスを示す重要な要素であり、時間をかけて翻訳しました。」(リー・スタビングスさん)
◆『Little Amélie or the Character of Rain(英題)』(メイリス・ヴァラード監督、リアン=チョー・ハン監督) 詳細はこちら (映画祭公式サイトにリンクします)
『Little Amélie or the Character of Rain(英題)』© 2025 Maybe Movies, Ikki Films, 2 Minutes, France 3 Cinéma, Puffin Pictures, 22D Music
アヌシー国際アニメーション映画祭2025審査員賞受賞作品。日本語字幕を担当したのは、JVTAで学んだベテラン翻訳者、今井祥子さんだ。今井さんは東京国際映画祭のプログラミンググループのスタッフとして、運営に携わっている。今井さんによると、原作者のアメリー・ノートンはフランス語圏では大人気の作家で、原作は、ベルギーの外交官の娘として神戸で幼少期を過ごした彼女の自伝的小説だという。それをレミ・シャイエ(『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』『カラミティ』の監督)の下で経験を積んだフランス人アニメーターコンビが映画化したという注目作だ。
「アニメーションならではの色彩・光・サウンドで描かれる70年代の日本の風景が、なんとも郷愁を誘います。自分も子どもの頃はこんなふうに世界が見えていたのかもしれないなぁ、と思いながら翻訳しました。」(今井祥子さん)
東京国際映画祭に出かけたら、ぜひ映画祭ガイドも手に取って2カ国の解説も注視してほしい。
◆東京国際映画祭 2025年10月27日(月)~11月5日(水)
シネスイッチ銀座(中央区)、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ 日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、ヒューリックホール東京、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場、LEXUS MEETS…、三菱ビル1F M+サクセス、東京宝塚劇場(千代田区)ほか、都内の各劇場及び施設・ホールを使用
公式サイト:https://2025.tiff-jp.net/ja/
◆【映像翻訳科 次期開講は2026年4月予定】 映像翻訳にご興味をお持ちの方に向け、リモート個別相談を開催しています。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明します。お気軽にご参加ください。 ※詳細・お申し込みはこちら
2025年9月オープントライアル(英日・日英)、2025年4月期 実践修了トライアル 合格発表
◆2025年9月英日 オープントライアル合格者発表 合格7名、次点18名です。
■合格者 7名 JOP018 JOP024 JOP055 JOP067 JOP082 JOP083 JOP112
■次点 18名 JOP001 JOP002 JOP019 JOP027 JOP029 JOP030 JOP040 JOP050 JOP064 JOP066 JOP068 JOP085 JOP091 JOP103 JOP106 JOP114 JOP137 JOP156
以上
◆2025年4月期英日 実践コース修了トライアル合格者発表 合格5名、次点2名です。
■合格者 5名 JGR001 JGR002 JGR004 JGR007 JGR016
■次点 2名 JGR019 JGR027
以上
◆2025年9月日英 オープントライアル合格者発表 合格1名、次点3名です。
■合格者 1名 EOP003
■次点 3名 EOP001 EOP004 EOP009
以上
◆2025年4月期日英 実践コース修了トライアル合格者発表 合格者4名、次点2名
■合格者 4名 EGR001 EGR002 EGR005 EGR006
■次点 2名 EGR003 EGR010
以上
※※従来の「Q&Aセッション」を廃止し、 あらたに受験者全員に「ポイント解説」資料を配布しております。 送付日は「結果発表」の翌週内を予定しています。 詳細は、下記をご覧ください。※※ https://www.jvta.net/mtc/trial-new-rule20200219/
◆【2025年度 後期】トライアル スケジュールhttps://www.jvta.net/mtc/202510-trial-schedule/
2025年10月期がスタート! 英日・日英 映像翻訳科スクールスタッフからのメッセージ
2025年10月期がスタート。映像翻訳という新たな学習を始める新入生の皆さんや、進級してさらにスキルアップを目指す皆さんは、期待と不安でいっぱいのことと思います。
JVTAの授業の特徴は、字幕や吹き替えなど映像翻訳のスキルはもちろん、プロの映像翻訳者が身につけておくべき英語力や日本語力、AI翻訳やフリーランスの働き方など実践的な内容を総合的に学べることにあります。映像素材は制作元に許諾を得たものを使用しています。
JVTAでは「映像翻訳スクール部門」を設置し、専任のスタッフが受講生・修了生の皆さんをしっかりとサポート。今回は英日・日英の映像翻訳科の担当スタッフからのメッセージを紹介します!
◆英日映像翻訳 この秋からJVTAに入学し英日映像翻訳の学びを始める皆さま、そして進級して更なるスキルアップを目指す皆さま、いよいよ10月期がスタートしましたね!様々な手法やジャンルの翻訳に取り組みながら、プロの映像翻訳者を目指して頑張りましょう。JVTAでの学びが充実したものとなるよう、皆さまを全力で応援し、サポートしてまいります。クラス運営に携わるスタッフは全員JVTAの修了生です。ご不安なことやお困りごとがございましたら、私たちスタッフにいつでもお気軽にご相談ください。どうぞよろしくお願いいたします!(山名)
◆日英映像翻訳 Welcome! We’re glad to have you with us at JVTA. Our J-E Media Translation course is where you will learn all of the basic skills that you need in order to get started as a J-E media translator. Together we’ll work with a wide range of fascinating and fun Japanese media content and discuss the most effective approaches for translating it into English for a global audience. This is an amazing opportunity to learn from both your teachers and classmates, and so we really hope you enjoy this interactive and international class that brings together students from all over the world. Join us in making this fun content accessible to the world! (Jessi)
◆コマ単位受講制度もご利用ください コマ単位受講制度導入から1年。これまで、英日映像翻訳、日英映像翻訳、映像翻訳Web講座を受講された方が現在の授業を1コマから受講することができる制度です。受講生、修了生の方でご興味のある方はぜひ、こちらもぜひご活用ください。現在は全面リモート受講なので遠方からの参加も可能です。かつて通学で受講中に地方都市や海外への引っ越しで進級をあきらめた方も受講できますので、ぜひ学び直しにご利用くださいね。
◆コマ単位受講制度 の詳細はこちら
◆タイプ別におすすめの講座を紹介英日映像翻訳編は こちら 日英映像翻訳編は こちら
◆【コマ単位受講制度】おすすめ授業&体験談を紹介
講師スタッフがおすすめ授業を動画で紹介。コマ単位で受講した修了生の声も聞きました。
詳細は こちら
【ロジカルリーディング力強化コース 修了生インタビュー】翻訳者として何を受け取って、どう訳すのか
小池陽子さんは英日映像翻訳 実践コース修了後、1年ほどトライアルを受験するがなかなか合格できず悩んでいた。クラスメートの勧めもあり、2024年4月期の「ロジカルリーディング力強化コース」を受講し修了後に見事トライアルに合格、2025年7月にプロとしてのキャリアをスタートした。現在は企業研修用映像の翻訳、配信映画の字幕などを手掛けている。「もっと良い翻訳をしたい。そのためには何をどう考え、どんな取り組みが必要なのか、そのヒントが欲しい」という切実な思いが、同コース受講の原動力だったという小池さんが、このコースで何を身につけたのか、話を聞いた。
◆先に合格したクラスメートの勧めが受講のきっかけ
小池さんは、トライアルの突破口が見つからないとき、先に合格したクラスメートの数人が「ロジカルリーディング強化コースを受講して、とても勉強になった」と話していたことを思い出す。メールマガジンで友人の同コースの体験談を読み、受講を具体的に検討するようになった。
さらに背中を押したのは、小池さんにJVTAを教えてくれた友人の存在だった。小池さんと同じようにトライアルに挑戦していた彼女が同コースを受講すると聞き、自身も受講を決めたという。
「不合格続きでどんよりとした気持ちでのスタートでしたが、毎回授業のテーマに沿って課題に取り組むうちに、『翻訳が好き』という気持ちを思い出すことができました。受講して本当に良かったです。」(小池陽子さん)
◆翻訳者として何を受け取って、どう訳すのか
小池さんが授業で特に印象に残っているのが、「翻訳者として何を受け取って、どう訳すのか」という山根克之講師の言葉だ。原文の構文や単語、表現がすでに知っているものであっても、安易に済ませてはいけない。特に、その単語で最初に覚えた訳語は危険だということを学んだ。
例えば、受講し始めて間もない授業には、「英語のクセや日本語との距離を考える」というテーマがあり、比喩表現やユーモアを含む文章の課題に取り組んだ。英語圏で暮らした経験のない小池さんには、この課題は特に難しく感じられたという。
ある問題に出てきた「In fact」の訳し方は印象に残っている出来事の一つだ。一般的には「実際に(は)」や「要するに」など、前文の内容を補足・強化する訳がまず思い浮かぶが、その課題文では「それどころか、むしろ」というように、前文を否定・訂正する意味で使われていた。
また、ある課題では、特定の単語が使われている意図を考えることの大切さを学んだ。野球チームの監督の業績を語る場面で出てきた「sail」という動詞を、文脈から「チームを監督する、指揮する」という意味合いで捉え、「指揮官」と訳したところ、山根講師から「それならなぜ ‘manage’ ではなく、野球と関係ないと思われる ‘sail’ が使われているのか?もっと全体を見て考えて、訳すように」という指摘を受けた。
「この課題文は大航海時代の話から始まって、この監督の話に行き着くユニークなものでした。それまでの話の流れと絡めて『sail』が使われている意図を汲み取り、それが伝わるように訳すことが大切だと教わりました。シンプルな単語でもどう訳すかは翻訳者の技術であり、それを磨いていくことが大切なのだと学びました。」(小池陽子さん)
◆和やかなクラスで疑問点をその場で解決
平日午後のクラスだったこともあり、ロジカルリーディング力強化コースでは4名、さらに進級したロジカルリーディング・アディショナル5では3名という少人数でのクラスで学んだ小池さん。質問の時間も十分にあり、疑問点をその場で解消しながら進めることができたという。
「毎回、授業の冒頭に山根先生がアイスブレイクとして面白い話をしてくださるので、自然と和やかな雰囲気になり、リラックスして学ぶことができました。また、クラスメートの訳と自分の訳を比較できるのはもちろん、他者の調べものに対する向き合い方や情報の探し方にも学ぶ点が多くありました。」(小池陽子さん)
◆原文の情報を正確に理解できるようになった
受講を通じて、原文に使われている単語や文法、表現といった細部はもちろん、作品全体の流れやシーンの役割といった構造にも目を向けるようになり、一つひとつの言葉を丁寧に受け取る意識が芽生えたと小池さんは話す。
「受講前より、原文の情報を正確に理解できるようになったと感じています。教えていただいたことがきちんとできているかを自分に問いかけながら、今後も一作品一作品に向き合い、丁寧に訳していきたいと思っています。」(小池陽子さん)
【関連記事】
・ロジカルリーディング力強化コース主任 山根克之講師のコラムはこちら ・ロジカルリーディング力強化コース 修了生のインタビュー アーカイブはこちら
ロジカルリーディング力強化コース 2025年11月4日から順次開講
無料体験レッスンの詳細とお申し込みはこちら
映像翻訳Web講座受講生がリモート受講でAI、日本語、英文解釈を学ぶ
【コマ単位受講 体験談】石岡久美子さん 英日映像翻訳 総合コース・Ⅰ「AI翻訳 基礎」 英日映像翻訳 総合コース・Ⅰ「日本語表現力 基礎」 英日映像翻訳 総合コース・Ⅰ「映像翻訳者に求められる英語力」
JVTAでは、最新のニーズに合わせて授業内容を常に更新している。2023年には「AI翻訳」や「吹き替え翻訳」「ゲーム翻訳」などの授業が新たに追加された。こうした最新の授業を、過去の修了生も受けられる機会の創出として2024年秋から「コマ単位受講制度」を開始した。
◆映像翻訳Web講座の受講生もリモートの授業に参加できる 石岡久美子さんは、JVTAとアルクが共同運営する通信講座「映像翻訳Web講座」のアドバンスコースを修了。英語力の不足を感じる中で、この後どのように学習し、進級していくのかを検討しているときにJTVAのメールマガジンで「コマ単位受講制度」 を知った。この制度を利用すれば、映像翻訳Web講座の受講生・修了生もJVTAのリモート授業に参加できる。さらに石岡さんは、Web講座のカリキュラムにはない授業があることにも興味を持つ。早速英日映像翻訳科の総合コース・Iのカリキュラムから「AI翻訳 基礎」「日本語表現力 基礎」「映像翻訳者に求められる英語力」の3コマを選び受講を申し込んだ。
◆リモート受講の一番のメリットは他の受講生の翻訳原稿が共有されること 映像翻訳Web講座では、自分の生活のペースで無理せずに課題に取り組める。質問すると講師が個別に書面で質問に丁寧に答えて添削してくれるというメリットもある。一方、リモート受講では他の受講生の提出物および、それに対する講師の添削内容がクラス全体に共有される。石岡さんはこれがとても新鮮で勉強になったと話す。
「リモート授業では、先生と他の受講生のやりとりや質疑応答を聴けるので、Web講座の課題に一人で向き合っていた時には気が付かなかった部分にも目を向けることができました。また、先生のお話に臨場感があるため、画面越しではありますが、先生と受講生の発する熱を感じることができ、勉強するモチベーションを保つ手助けになりました。」(石岡久美子さん)
◆AI翻訳の現状が理解できて安心した AIの進化と今後の翻訳業界の変化について興味を持っていたという石岡さんが、まず選んだのは「AI翻訳の基礎」だ。これまでは映像翻訳を学ぶ中でAIの台頭を不安に感じていたが、授業を受けたことで「このまま、映像翻訳の勉強を続けても大丈夫」と安心したという。
「授業では、3種類の機械翻訳で訳した日本語を比較検討します。それぞれのツールで得手不得手の分野があり『なるほどね』と納得するものと『う~ん…』と疑問が残るものが混在していることが分かりました。現在勉強中の身としては親近感を覚えて安心するとともに、人間としてAIの仕事の良し悪しを判断できる側になることが大切だと実感しました。」(石岡久美子さん)
◆山根講師の授業で自分がいかにぼんやりと訳していたかを自覚 JVTAのリモート授業では英文解釈に特化した授業も行っている。指導にあたるのは、「ロジカルリーディング力強化コース」の主任で自らもベテランの映像翻訳者である山根克之講師だ。
Web講座の課題に取り組むなかで、自身の英語力の不足を感じた石岡さんは、JVTAのメールマガジンで山根講師のコラム「ロジカルリーディング力を鍛える」を読み、同講師の「映像翻訳者に求められる英語力」をコマで受講した。リモート授業で山根講師の指導を受け、今までいかに自身がぼんやりと訳していたのかを自覚したと石岡さんは話す。
「授業ではリスニング、読解、文法等様々な角度から『必要な英語力とは?』を話してくださいます。それは、翻訳する上での細かいコツやポイントから、翻訳者として常にご自身が実践されている準備や心構えの話まで多岐にわたりました。特に印象的だったのは、『誤訳を防ぐには引っかかりを大事にする』という言葉です。その引っかかる場所に気が付くことのできる英語力が必要なのだと理解することができました。」(石岡久美子さん)
◆英語だけでなく、日本語の表現を学ぶ機会が持てた JVTAの英日映像翻訳のコースには日本語表現力強化にフォーカスした授業も組み込まれている。これは映像翻訳Web講座にはない授業だ。英日の映像翻訳の場合、視聴者が目にするのは日本語の字幕であり、翻訳者がどんなに英文を正しく解釈していても、日本語で正しい表現ができなければ、作品の意図を伝えることはできない。
「選ばれる翻訳者はどのような日本語表現をするのか、その特徴や注意すべきポイントなど具体的なお話が多く、日常生活のコミュニケーションでも日本語を意識しようと思いました。」(石岡久美子さん)
石岡さんは、翻訳の勉強をする中で、改めて諸々の基礎を学び直すことの大切さと楽しさを実感している。英語力に不安を抱えたまま進級せずに、コマ単位受講で3つの講座を受講したのは正解だった話す。今後はこの制度を利用して、「翻訳スキル 基礎」と「作品構成 基礎」を受講したいと考えている。映像翻訳Web講座は地方都市在住の受講生も多いが、コロナ禍後、全面リモートになったことで教室の授業にも参加しやすくなった。石岡さんも話しているように、コマ単位受講でリモート受講を利用し、他の受講生の翻訳原稿を見ることで映像翻訳は答えが一つではないことを実感できるはずだ。
JVTAのリモート授業にはWeb講座にはない内容のカリキュラムもあるので、映像翻訳Web講座の受講生・修了生の皆さんもぜひ積極的に活用してほしい。
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【コマ単位受講制度】 おすすめ授業&体験談を紹介
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