これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第132回 “ALIEN:EARTH”
“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi
第132回 “ALIEN:EARTH”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。
今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
予告編:『エイリアン:アース』 本予告
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“The Alien Has Landed!”
リドリー・スコットが製作総指揮に名を連ねる本作は、昨年公開された『エイリアン:ロムルス』の22年前、オリジナル『エイリアン』(1979)の2年前を描く前日譚。エイリアンが遂に地球に到達する。
(シガニー・ウィーバーがいないと、こういう悲劇が起こるのよ。)
“Alien: Earth”はDisney傘下のFXが制作、マンネリ気味のエイリアン・フランチャイズに新風を吹き込むスーパーエンタメ・Sci-Fiホラーなのだ!
“They can sense fear!”
—西暦2120年
強欲なメガ企業5社が、地球と植民地化した太陽系惑星を支配する世界。
そこでは「人間」、「サイボーグ」(マシン強化型ヒューマン)、「シンセティック」(AI搭載のヒューマノイド型ロボット)が共存している。
—地球から8億500万マイル離れた宇宙空間
ウェイランド・ユタニ社の深宇宙調査船マジノ号は、65年にわたる探査を終えて地球に帰還するところだった。
クルーは当初の目的通り、5種の捕食性生命体を捕獲していた。だが封じ込めに失敗し、サイボーグの保安責任者モロー(バブー・シーセイ)以外は、全員が虐殺された。航空システムが故障したマジノ号は、凶暴な生命体を乗せたまま地球に向かっている。
—地球
プロディジー社が保有するネバーランド研究島では、史上初めて「ハイブリッド」の誕生を迎えるところだ。被験者は余命わずかな11歳の少女マーシー。彼女は革新的技術によって、意識を取り込んだ強靭なシンセティックとして生まれ変わる。このハイブリッド技術は、近々同社の主力商品になるはずだ。
マーシーは自分の新しい名を‘ウェンディ’に決めた。
数か月後、マジノ号が地球に墜落し、プロディジーシティの高層タワーに突き刺さった。生存者救出のために、同社の軍隊が投入された。
ウェンディ(シドニー・チャンドラー)はニュースを見て愕然とした。兄のジョー(アレックス・ローサー)は軍の衛生兵なのだ。妹が死んだと思っているジョーは、ウェンディの存在を知らない。
ウェンディは救出任務を志願する。プロディジー社の若き天才CEOボーイ・カヴァリエ(サミュエル・ブレンキン)は、ゴーサインを出した。カヴァリエは、船内の生命体を横取りするつもりだった。
隊長を務めるシンセティックの科学者カーシュ(ティモシー・オリファント)、リーダーのウェンディ、「ロストボーイズ」と呼ばれる新米のハイブリッド5名からなる、即席の特殊部隊が組織された。
戦闘経験の乏しい彼らは、これから5種のエイリアンと対峙することになる…。
“Now I’m a forever girl!”
ウェンディを演じるシドニー・チャンドラーはカイル・チャンドラー(“Friday Night Lights”)の娘。ハードボイルド・ドラマ“Sugar”(本ブログ第116回参照 )では、行方不明になるティーンエージャーを印象的に演じた。本役では、エキセントリックな魅力と高い演技力で、エイリアンたちと互角の存在感をアピールする。
ウェンディの兄ジョー役のアレックス・ローサーは英国出身。青春ブラックコメディ“The End of the F***ing World”(『このサイテーな世界の終わり』)では、主役のサイコパス少年を演じた。優しいがヌルいジョーのキャラにぴったりだ。
プロディジー社のCEOカヴァリエ役のサミュエル・ブレンキンも英国出身で、舞台版『ハリー・ポッター』ではスコーピウス・マルフォイを演じた。ピーター・パン症候群の天才サイコパス役に上手くハマった。
サイボーグの保安責任者モローを演じたバブー・シーセイは、怒涛のカンフードラマ“Into the Badlands”のピルグリム役が懐かしい。孤独な復讐者となるモローの重要性は、エピソードを重ねるごとに高まっていく。
シンセティックの科学者カーシュ役のティモシー・オリファントは、主役の連邦保安官ギヴンズを演じた“Justified”が代表作。無表情でクールなカーシュは、『ブレードランナー』でルトガー・ハウアーが演じたレプリカントを髣髴させる。
『エイリアン』のテーマパーク・バージョン!
ショーランナー(兼共同監督兼共同脚本)のノア・ホーリーは、ドラマ版“Fargo”(本ブログ第13回参照 )全5シーズンの製作、監督、脚本でエミー賞に計11回ノミネートされている才人だ(受賞は1回)。
オリジナルシリーズの魅力は、①宇宙船内の閉塞感から生まれる恐怖、②戦うヒロイン、③H・R・ギーガーによるエイリアン(ゼノモーフ)のメタリックな造形美だろう。
この3点は本作でも忠実に踏襲されている。特に第5話で解き明かされるマジノ号の惨劇は圧巻で、『エイリアン』のリブートのような完成度だ。
また、本作には新たな世界観が導入されている。マグセブン(Microsoft、NVIDIA、TeslaなどのメガIT企業7社)を思わせる5大企業が支配し、人間と不老不死のサイボーグ、シンセティック(およびハイブリッド)が共存する世界だ。プロディジーシティに『ブレードランナー』の退廃的な雰囲気が漂うのは、リドリー・スコットへのオマージュか。
ストーリーはウェイランド・ユタニ社とプロディジー社の支配権争いを背景に、エイリアン5種の脅威とウェンディの成長が交錯する。さらに、「ゼノモーフとウェンディとの交流」「人間の兄ジョーとハイブリッドの妹ウェンディとの絆」「ハイブリッドの反乱」など、魅力的なサブストーリーが走る。
終盤はさながら『エイリアン』のテーマパーク・バージョンの様相で、劇的なシーズン・フィナーレへ突入する。
『エイリアン』のドラマ化はハードルが高い。閉塞空間で襲いかかる生命体だけでは間が持たないからだ。ウェンディという魅力的なキャラクターを創造して‘エイリアン5種盛り’との「2本立て」とし、よりエンタメ性の高いエイリアン・ドラマにまとめ上げたホーリーの手腕には唸らされる。
“Alien: Earth”は、マンネリ気味のエイリアン・フランチャイズに新風を吹き込むスーパーエンタメ・Sci-Fiホラーなのだ!
原題:Alien: Earth
配信:Disney+
配信開始日:2025年8月13日~9月24日
話数:8(1話 46-66分)
Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
【東京国際映画祭が開催】映画祭ガイドと公式プログラムの英訳でも映像翻訳者が活躍
10月27日(月)、第38回東京国際映画祭(TIFF)が開幕する。TIFFは、1985年に日本ではじめて大規模な映画の祭典として誕生。才能溢れる新人監督から熟練の監督の作品まで、世界中から厳選された映画が集結し、毎年メディアでも大きく報道される人気のイベントだ。JVTAは今年も公式プログラムの英訳やデイリーペーパーの翻訳などを担当し、JVTAで映像翻訳を学んだ翻訳者が活躍している。公式プログラムと映画祭ガイドの英訳を手がけたキンチョ・コスタさんに話を聞いた。
◆東京国際映画祭 トレイラー
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歴史ある国際映画祭とあって、公式プログラムと会場で配布される映画祭ガイドは2カ国語となっており、昨今JVTAがその英訳を担当している。映画祭ガイドでは、作品名、監督名、出演者、作品の解説などが英語と日本語で併記されているが、2つの言語は同じスペースに配置され、同じ字数制限に合わせることが必須だ。英訳には漢字が使えないうえ、題名や人名の場合は字数がすでに決まっている。キンチョ・コスタさんは、なるべく簡潔に情報を伝えようとしたが、結局、英訳には情報を省略することが必須だったと話す。
東京国際映画祭の映画祭ガイド
「最も難しかったのは、作品に関するネタを徹底的に調べながら、その情報を取捨選択し、文章のトーン、そして書き手が伝えたいことをきちんと守りつつ、情報を削ることでした」(キンチョ・コスタさん)
映画祭では、プレミア上映作品、初めて英語字幕付きで上映される作品、過去の古い名作などさまざまな作品が上映される。翻訳者はただ日本語のテキストを訳すだけではなく、各作品の背景やストーリーの詳細を詳しく調べたうえで英訳に反映していく。コスタさんは、JVTAの授業で学んだテキスト翻訳やストーリー分析などの知識を活かし、リサーチで得た情報をもとに作品とキャラクターを理解し、最も中心的な情報を抜き出した。
「日本語のガイドには載っていない情報をリサーチで得た場合、英語でそのニュアンスを伝えるべきか、それともネタバレになるのかという判断も難しかったです。」(キンチョ・コスタさん)
東京国際映画祭 公式プログラム
また、会場で販売される公式プログラムには、作品の概要だけでなく、映画祭関係者の挨拶や上映プログラムの解説なども記載されている。こうした英訳には、コスタさんが日頃手がけるビジネス系動画の字幕制作やアニメプロジェクトの経験も役立った。
「映画祭関係者の挨拶などを英訳する際には、英語の自然さを保ちながら、一人ひとりの個性的な文章の表現や口調を伝えることを大切にしました」(キンチョ・コスタさん)
◆東京国際映画祭 映画祭ガイド
※下記からダウンロードはこちら (映画祭公式サイトにリンクします)
東京国際映画祭では、国内外の映画祭の受賞作品も上映される。コスタさんは、今年の「SKIPシティ国際Dシネマ映画祭2025」に出品され、コンペティション部門SKIPシティアワードを受賞した『長い夜』(草刈悠生監督)の英語字幕制作にも携わった。2年前に海に消えたカイと恋人の真理、親友の光一の複雑な心の動きを追った注目作。この作品についてコスタさんは、演出が繊細で、メインキャストの自然主義的な演技も素晴らしかったと振り返る。
◆『長い夜』(草刈悠生監督 )詳細はこちら (映画祭公式サイトにリンクします)
「長い夜」Yui Kusakari©
字幕を作るうえでチャレンジングだったのは、非常にゆっくりとした対話のペースだという。セリフの間に長いポーズが挟まれているがセリフ自体は短く簡潔で、日本語のニュアンスを英語でも簡潔に伝える必要があった。
「3人のチームで字幕を担当したのですが、私のパートでは真理と光一の喧嘩のシーンも含まれていました。そのシーンの対話やキャラクターの怒りが非常にリアルに感じられたので、そのクオリティを英語字幕でも保ちたいと思いました。しかし、このシーンではセリフがパパパと続くため、それまでのゆっくりしたペースで読める字幕のリズムを崩さないよう、さまざまな工夫を凝らしました」(キンチョ・コスタさん)
キャラクターの立場に立って、彼らの「声」を探す過程で、欠点も含めて各キャラクターに親しみを感じるようになったというコスタさん。最後の海のシーンで彼らを見て心が浄化されるような気持ちになったと話す。
今年の東京国際映画祭では、ほかにもJVTAで学んだ翻訳者が字幕を手掛けた作品が上映される。国内外の映画祭の受賞作品にも注目したい。
◆『空回りする直美』(中里ふく監督) 詳細はこちら (映画祭公式サイトにリンクします)
「空回りする直美」©『空回りする直美』製作委員会/東放学園映画専門学校
父親と発達障害のある兄、慎吾と暮らす直美の日常を描いた同作は、ぴあフィルムフェスティバル(PFF)「PFFアワード2025」でグランプリを受賞。英語字幕は、リー・スタビングスさんが手掛けている。スタビングスさんは、クリエイティブなライティングに注力し、映画やドラマの字幕翻訳だけでなく、ビデオゲームの翻訳やプロジェクト・マネージャーなど幅広く活躍中だ。
「この映画は一緒に暮らすことに苦悩する兄妹の関係を描いていますので、翻訳では登場人物の感情をできるだけ汲み取り、英語でも忠実に表現することを心がけました。特に兄によるラップの部分は、兄の創造性とユーモアのセンスを示す重要な要素であり、時間をかけて翻訳しました。」(リー・スタビングスさん)
◆『Little Amélie or the Character of Rain(英題)』(メイリス・ヴァラード監督、リアン=チョー・ハン監督) 詳細はこちら (映画祭公式サイトにリンクします)
『Little Amélie or the Character of Rain(英題)』© 2025 Maybe Movies, Ikki Films, 2 Minutes, France 3 Cinéma, Puffin Pictures, 22D Music
アヌシー国際アニメーション映画祭2025審査員賞受賞作品。日本語字幕を担当したのは、JVTAで学んだベテラン翻訳者、今井祥子さんだ。今井さんは東京国際映画祭のプログラミンググループのスタッフとして、運営に携わっている。今井さんによると、原作者のアメリー・ノートンはフランス語圏では大人気の作家で、原作は、ベルギーの外交官の娘として神戸で幼少期を過ごした彼女の自伝的小説だという。それをレミ・シャイエ(『ロング・ウェイ・ノース 地球のてっぺん』『カラミティ』の監督)の下で経験を積んだフランス人アニメーターコンビが映画化したという注目作だ。
「アニメーションならではの色彩・光・サウンドで描かれる70年代の日本の風景が、なんとも郷愁を誘います。自分も子どもの頃はこんなふうに世界が見えていたのかもしれないなぁ、と思いながら翻訳しました。」(今井祥子さん)
東京国際映画祭に出かけたら、ぜひ映画祭ガイドも手に取って2カ国の解説も注視してほしい。
◆東京国際映画祭 2025年10月27日(月)~11月5日(水)
シネスイッチ銀座(中央区)、角川シネマ有楽町、TOHOシネマズ シャンテ、TOHOシネマズ 日比谷、ヒューマントラストシネマ有楽町、丸の内ピカデリー、ヒューリックホール東京、東京ミッドタウン日比谷 日比谷ステップ広場、LEXUS MEETS…、三菱ビル1F M+サクセス、東京宝塚劇場(千代田区)ほか、都内の各劇場及び施設・ホールを使用
公式サイト:https://2025.tiff-jp.net/ja/
◆【2025年10月期受講生 入学受付 締切間近!】 入学をご検討中の方を対象にリモート個別相談を開催中。映像翻訳の詳細はJVTAのカリキュラム等についてマンツーマンでご説明しています。 ※詳細・お申し込みはこちら
2025年9月オープントライアル(英日・日英)、2025年4月期 実践修了トライアル 合格発表
◆2025年9月英日 オープントライアル合格者発表 合格7名、次点18名です。
■合格者 7名 JOP018 JOP024 JOP055 JOP067 JOP082 JOP083 JOP112
■次点 18名 JOP001 JOP002 JOP019 JOP027 JOP029 JOP030 JOP040 JOP050 JOP064 JOP066 JOP068 JOP085 JOP091 JOP103 JOP106 JOP114 JOP137 JOP156
以上
◆2025年4月期英日 実践コース修了トライアル合格者発表 合格5名、次点2名です。
■合格者 5名 JGR001 JGR002 JGR004 JGR007 JGR016
■次点 2名 JGR019 JGR027
以上
◆2025年9月日英 オープントライアル合格者発表 合格1名、次点3名です。
■合格者 1名 EOP003
■次点 3名 EOP001 EOP004 EOP009
以上
◆2025年4月期日英 実践コース修了トライアル合格者発表 合格者4名、次点2名
■合格者 4名 EGR001 EGR002 EGR005 EGR006
■次点 2名 EGR003 EGR010
以上
※※従来の「Q&Aセッション」を廃止し、 あらたに受験者全員に「ポイント解説」資料を配布しております。 送付日は「結果発表」の翌週内を予定しています。 詳細は、下記をご覧ください。※※ https://www.jvta.net/mtc/trial-new-rule20200219/
◆【2025年度 後期】トライアル スケジュールhttps://www.jvta.net/mtc/202510-trial-schedule/
【2025年度 後期】トライアル スケジュール
2025年10月期の英日・日英のオープントライアルのスケジュールは下記の通りです。
■2025年11月
10/27(月)メール受付開始 ↓ 11/3(月)18:00 受付・入金締切 ↓ 11/10(月) 課題配信 ↓ 11/21(金)10:00 課題原稿締切 ↓ 12/12(金)結果発表
※課題は配信日の23:59までに送付 ※評価表・訳出ポイントは結果発表後3営業日以内に順次送付
■2026年1月
12/22(月)メール受付開始 ↓ 1/5(月)18:00 受付・入金締切 ↓ 1/12(月)課題配信 ↓ 1/23(金)10:00課題原稿締切 ↓ 2/13(金)結果発表
※課題は配信日の23:59までに送付 ※評価表・訳出ポイントは結果発表後3営業日以内に順次送付
■2026年3月 3/2(月)メール受付開始 ↓ 3/9(月)18:00 受付・入金締切 ↓ 3/16(月)課題配信 ↓ 3/27(金)10:00課題原稿締切 ↓ 4/17(金)結果発表
※課題は配信日の23:59までに送付 ※評価表・訳出ポイントは結果発表後3営業日以内に順次送付
2025年10月期がスタート! 英日・日英 映像翻訳科スクールスタッフからのメッセージ
2025年10月期がスタート。映像翻訳という新たな学習を始める新入生の皆さんや、進級してさらにスキルアップを目指す皆さんは、期待と不安でいっぱいのことと思います。
JVTAの授業の特徴は、字幕や吹き替えなど映像翻訳のスキルはもちろん、プロの映像翻訳者が身につけておくべき英語力や日本語力、AI翻訳やフリーランスの働き方など実践的な内容を総合的に学べることにあります。映像素材は制作元に許諾を得たものを使用しています。
JVTAでは「映像翻訳スクール部門」を設置し、専任のスタッフが受講生・修了生の皆さんをしっかりとサポート。今回は英日・日英の映像翻訳科の担当スタッフからのメッセージを紹介します!
◆英日映像翻訳 この秋からJVTAに入学し英日映像翻訳の学びを始める皆さま、そして進級して更なるスキルアップを目指す皆さま、いよいよ10月期がスタートしましたね!様々な手法やジャンルの翻訳に取り組みながら、プロの映像翻訳者を目指して頑張りましょう。JVTAでの学びが充実したものとなるよう、皆さまを全力で応援し、サポートしてまいります。クラス運営に携わるスタッフは全員JVTAの修了生です。ご不安なことやお困りごとがございましたら、私たちスタッフにいつでもお気軽にご相談ください。どうぞよろしくお願いいたします!(山名)
◆日英映像翻訳 Welcome! We’re glad to have you with us at JVTA. Our J-E Media Translation course is where you will learn all of the basic skills that you need in order to get started as a J-E media translator. Together we’ll work with a wide range of fascinating and fun Japanese media content and discuss the most effective approaches for translating it into English for a global audience. This is an amazing opportunity to learn from both your teachers and classmates, and so we really hope you enjoy this interactive and international class that brings together students from all over the world. Join us in making this fun content accessible to the world! (Jessi)
◆コマ単位受講制度もご利用ください コマ単位受講制度導入から1年。これまで、英日映像翻訳、日英映像翻訳、映像翻訳Web講座を受講された方が現在の授業を1コマから受講することができる制度です。受講生、修了生の方でご興味のある方はぜひ、こちらもぜひご活用ください。現在は全面リモート受講なので遠方からの参加も可能です。かつて通学で受講中に地方都市や海外への引っ越しで進級をあきらめた方も受講できますので、ぜひ学び直しにご利用くださいね。
◆コマ単位受講制度 の詳細はこちら
◆タイプ別におすすめの講座を紹介英日映像翻訳編は こちら 日英映像翻訳編は こちら
◆【コマ単位受講制度】おすすめ授業&体験談を紹介
講師スタッフがおすすめ授業を動画で紹介。コマ単位で受講した修了生の声も聞きました。
詳細は こちら
【ロジカルリーディング力強化コース 修了生インタビュー】翻訳者として何を受け取って、どう訳すのか
小池陽子さんは英日映像翻訳 実践コース修了後、1年ほどトライアルを受験するがなかなか合格できず悩んでいた。クラスメートの勧めもあり、2024年4月期の「ロジカルリーディング力強化コース」を受講し修了後に見事トライアルに合格、2025年7月にプロとしてのキャリアをスタートした。現在は企業研修用映像の翻訳、配信映画の字幕などを手掛けている。「もっと良い翻訳をしたい。そのためには何をどう考え、どんな取り組みが必要なのか、そのヒントが欲しい」という切実な思いが、同コース受講の原動力だったという小池さんが、このコースで何を身につけたのか、話を聞いた。
◆先に合格したクラスメートの勧めが受講のきっかけ
小池さんは、トライアルの突破口が見つからないとき、先に合格したクラスメートの数人が「ロジカルリーディング強化コースを受講して、とても勉強になった」と話していたことを思い出す。メールマガジンで友人の同コースの体験談を読み、受講を具体的に検討するようになった。
さらに背中を押したのは、小池さんにJVTAを教えてくれた友人の存在だった。小池さんと同じようにトライアルに挑戦していた彼女が同コースを受講すると聞き、自身も受講を決めたという。
「不合格続きでどんよりとした気持ちでのスタートでしたが、毎回授業のテーマに沿って課題に取り組むうちに、『翻訳が好き』という気持ちを思い出すことができました。受講して本当に良かったです。」(小池陽子さん)
◆翻訳者として何を受け取って、どう訳すのか
小池さんが授業で特に印象に残っているのが、「翻訳者として何を受け取って、どう訳すのか」という山根克之講師の言葉だ。原文の構文や単語、表現がすでに知っているものであっても、安易に済ませてはいけない。特に、その単語で最初に覚えた訳語は危険だということを学んだ。
例えば、受講し始めて間もない授業には、「英語のクセや日本語との距離を考える」というテーマがあり、比喩表現やユーモアを含む文章の課題に取り組んだ。英語圏で暮らした経験のない小池さんには、この課題は特に難しく感じられたという。
ある問題に出てきた「In fact」の訳し方は印象に残っている出来事の一つだ。一般的には「実際に(は)」や「要するに」など、前文の内容を補足・強化する訳がまず思い浮かぶが、その課題文では「それどころか、むしろ」というように、前文を否定・訂正する意味で使われていた。
また、ある課題では、特定の単語が使われている意図を考えることの大切さを学んだ。野球チームの監督の業績を語る場面で出てきた「sail」という動詞を、文脈から「チームを監督する、指揮する」という意味合いで捉え、「指揮官」と訳したところ、山根講師から「それならなぜ ‘manage’ ではなく、野球と関係ないと思われる ‘sail’ が使われているのか?もっと全体を見て考えて、訳すように」という指摘を受けた。
「この課題文は大航海時代の話から始まって、この監督の話に行き着くユニークなものでした。それまでの話の流れと絡めて『sail』が使われている意図を汲み取り、それが伝わるように訳すことが大切だと教わりました。シンプルな単語でもどう訳すかは翻訳者の技術であり、それを磨いていくことが大切なのだと学びました。」(小池陽子さん)
◆和やかなクラスで疑問点をその場で解決
平日午後のクラスだったこともあり、ロジカルリーディング力強化コースでは4名、さらに進級したロジカルリーディング・アディショナル5では3名という少人数でのクラスで学んだ小池さん。質問の時間も十分にあり、疑問点をその場で解消しながら進めることができたという。
「毎回、授業の冒頭に山根先生がアイスブレイクとして面白い話をしてくださるので、自然と和やかな雰囲気になり、リラックスして学ぶことができました。また、クラスメートの訳と自分の訳を比較できるのはもちろん、他者の調べものに対する向き合い方や情報の探し方にも学ぶ点が多くありました。」(小池陽子さん)
◆原文の情報を正確に理解できるようになった
受講を通じて、原文に使われている単語や文法、表現といった細部はもちろん、作品全体の流れやシーンの役割といった構造にも目を向けるようになり、一つひとつの言葉を丁寧に受け取る意識が芽生えたと小池さんは話す。
「受講前より、原文の情報を正確に理解できるようになったと感じています。教えていただいたことがきちんとできているかを自分に問いかけながら、今後も一作品一作品に向き合い、丁寧に訳していきたいと思っています。」(小池陽子さん)
【関連記事】
・ロジカルリーディング力強化コース主任 山根克之講師のコラムはこちら ・ロジカルリーディング力強化コース 修了生のインタビュー アーカイブはこちら
ロジカルリーディング力強化コース 2025年11月4日から順次開講
無料体験レッスンの詳細とお申し込みはこちら
映像翻訳Web講座受講生がリモート受講でAI、日本語、英文解釈を学ぶ
【コマ単位受講 体験談】石岡久美子さん 英日映像翻訳 総合コース・Ⅰ「AI翻訳 基礎」 英日映像翻訳 総合コース・Ⅰ「日本語表現力 基礎」 英日映像翻訳 総合コース・Ⅰ「映像翻訳者に求められる英語力」
JVTAでは、最新のニーズに合わせて授業内容を常に更新している。2023年には「AI翻訳」や「吹き替え翻訳」「ゲーム翻訳」などの授業が新たに追加された。こうした最新の授業を、過去の修了生も受けられる機会の創出として2024年秋から「コマ単位受講制度」を開始した。
◆映像翻訳Web講座の受講生もリモートの授業に参加できる 石岡久美子さんは、JVTAとアルクが共同運営する通信講座「映像翻訳Web講座」のアドバンスコースを修了。英語力の不足を感じる中で、この後どのように学習し、進級していくのかを検討しているときにJTVAのメールマガジンで「コマ単位受講制度」 を知った。この制度を利用すれば、映像翻訳Web講座の受講生・修了生もJVTAのリモート授業に参加できる。さらに石岡さんは、Web講座のカリキュラムにはない授業があることにも興味を持つ。早速英日映像翻訳科の総合コース・Iのカリキュラムから「AI翻訳 基礎」「日本語表現力 基礎」「映像翻訳者に求められる英語力」の3コマを選び受講を申し込んだ。
◆リモート受講の一番のメリットは他の受講生の翻訳原稿が共有されること 映像翻訳Web講座では、自分の生活のペースで無理せずに課題に取り組める。質問すると講師が個別に書面で質問に丁寧に答えて添削してくれるというメリットもある。一方、リモート受講では他の受講生の提出物および、それに対する講師の添削内容がクラス全体に共有される。石岡さんはこれがとても新鮮で勉強になったと話す。
「リモート授業では、先生と他の受講生のやりとりや質疑応答を聴けるので、Web講座の課題に一人で向き合っていた時には気が付かなかった部分にも目を向けることができました。また、先生のお話に臨場感があるため、画面越しではありますが、先生と受講生の発する熱を感じることができ、勉強するモチベーションを保つ手助けになりました。」(石岡久美子さん)
◆AI翻訳の現状が理解できて安心した AIの進化と今後の翻訳業界の変化について興味を持っていたという石岡さんが、まず選んだのは「AI翻訳の基礎」だ。これまでは映像翻訳を学ぶ中でAIの台頭を不安に感じていたが、授業を受けたことで「このまま、映像翻訳の勉強を続けても大丈夫」と安心したという。
「授業では、3種類の機械翻訳で訳した日本語を比較検討します。それぞれのツールで得手不得手の分野があり『なるほどね』と納得するものと『う~ん…』と疑問が残るものが混在していることが分かりました。現在勉強中の身としては親近感を覚えて安心するとともに、人間としてAIの仕事の良し悪しを判断できる側になることが大切だと実感しました。」(石岡久美子さん)
◆山根講師の授業で自分がいかにぼんやりと訳していたかを自覚 JVTAのリモート授業では英文解釈に特化した授業も行っている。指導にあたるのは、「ロジカルリーディング力強化コース」の主任で自らもベテランの映像翻訳者である山根克之講師だ。
Web講座の課題に取り組むなかで、自身の英語力の不足を感じた石岡さんは、JVTAのメールマガジンで山根講師のコラム「ロジカルリーディング力を鍛える」を読み、同講師の「映像翻訳者に求められる英語力」をコマで受講した。リモート授業で山根講師の指導を受け、今までいかに自身がぼんやりと訳していたのかを自覚したと石岡さんは話す。
「授業ではリスニング、読解、文法等様々な角度から『必要な英語力とは?』を話してくださいます。それは、翻訳する上での細かいコツやポイントから、翻訳者として常にご自身が実践されている準備や心構えの話まで多岐にわたりました。特に印象的だったのは、『誤訳を防ぐには引っかかりを大事にする』という言葉です。その引っかかる場所に気が付くことのできる英語力が必要なのだと理解することができました。」(石岡久美子さん)
◆英語だけでなく、日本語の表現を学ぶ機会が持てた JVTAの英日映像翻訳のコースには日本語表現力強化にフォーカスした授業も組み込まれている。これは映像翻訳Web講座にはない授業だ。英日の映像翻訳の場合、視聴者が目にするのは日本語の字幕であり、翻訳者がどんなに英文を正しく解釈していても、日本語で正しい表現ができなければ、作品の意図を伝えることはできない。
「選ばれる翻訳者はどのような日本語表現をするのか、その特徴や注意すべきポイントなど具体的なお話が多く、日常生活のコミュニケーションでも日本語を意識しようと思いました。」(石岡久美子さん)
石岡さんは、翻訳の勉強をする中で、改めて諸々の基礎を学び直すことの大切さと楽しさを実感している。英語力に不安を抱えたまま進級せずに、コマ単位受講で3つの講座を受講したのは正解だった話す。今後はこの制度を利用して、「翻訳スキル 基礎」と「作品構成 基礎」を受講したいと考えている。映像翻訳Web講座は地方都市在住の受講生も多いが、コロナ禍後、全面リモートになったことで教室の授業にも参加しやすくなった。石岡さんも話しているように、コマ単位受講でリモート受講を利用し、他の受講生の翻訳原稿を見ることで映像翻訳は答えが一つではないことを実感できるはずだ。
JVTAのリモート授業にはWeb講座にはない内容のカリキュラムもあるので、映像翻訳Web講座の受講生・修了生の皆さんもぜひ積極的に活用してほしい。
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コマ単位受講制度 制度の詳細やカリキュラム 受講の申し込みはこちら
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【コマ単位受講制度】 おすすめ授業&体験談を紹介
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明けの明星が輝く空に 第189回 『新幹線大爆破』
僕は、樋口真嗣監督に謝らなくてはいけない。『新幹線大爆破』(2025年)に期待していなかったからだ。(理由は、10年前の樋口監督作品、実写版『進撃の巨人』2部作、とだけ言っておこう。)Netflixで2回に分けて観たが、続きが楽しみになるぐらい面白かった。
『新幹線大爆破』は、1975年に公開された同名作品のリブート版である。爆弾が仕掛けられたのが東京発、博多行きのひかり109号から、青森発、東京行きのはやぶさ60号に変更されたが、ある速度(旧作は時速80km、新作は100km)を下回ると爆発する、という点は同じだ。
旧作は、米映画界にインスピレーションを与え、アクション映画『スピード』(1994年)が作られたことでも知られる。爆弾犯人、沖田(演じたのは高倉健!)を、単なる悪人として描いていないことは評価されるべき点だろう。しかし、その一方、途中から沖田の回想シーンがたびたび挿入され、新幹線を巡るドラマが途切れがちなのも事実だ。さらに映画終盤には、警察が町中で犯人を追い詰める過程が中心になる。映画公開当時、『新幹線大爆破』というタイトルを見て期待したものとは違った、という観客もいたのではないだろうか。
それは、小学校をサボって観に行ったという樋口監督も同じだったかもしれない。リブート版では、ドラマの大半が新幹線を舞台に展開する。おかげで、映画全編を通して緊迫感が維持された。その点は、ミュンヘン五輪の選手村占拠事件をモチーフにしながら、ほぼ放送局内の場面だけで構成されていた『セプテンバー5』(2024年)に似ていると言っていい。
リブート版『新幹線大爆破』においても、犯人には同情すべき事情がある。しかし、その説明は最小限に抑えられ、その一方で新幹線の走行シーンが増えた。面白いことに、ただ走っているだけでも、爆弾が仕掛けられていると思うと、映像から緊迫感があふれ出す。途中駅を通過する場面など、何か起こるわけでもないのにドキドキしてしまった。(駅を通過する新幹線をホームから見たことがあるが、あれは恐い。ひとつ隣の線路で距離があったにもかかわらず、在来線とは迫力がケタ違いなのだ。その記憶があるから、余計に緊張したのかもしれない。)
映画序盤の山場に、上り線から下り線に入る場面がある。盛岡駅の先で、前方を走行中の新幹線が故障で立ち往生したため、回避せざるを得なくなったのだ。しかし、下り線は新函館北斗・秋田行が走行している。爆弾が爆発してしまうため、速度を落としてやり過ごすことはできない。それでも計算上は、ギリギリのタイミングで衝突を避け、下り線に入れることがわかった。関係者が固唾をのんで見守る中、猛スピードですれ違う2つの新幹線。はやぶさ60号が、線路の転轍(てつ)器、いわゆるポイントに差しかかり、下り線に入る。一瞬、下り列車の最後尾と接触。火花が飛び散るも、大事には至らなかった。
この後も、併走する車両から救出作戦のために必要な機材を受け取る場面や、後方から来た救助車両と走行しながら連結する場面など、映画の「動」の部分は新幹線を中心に回る。似たような場面は旧作にもあったが、50年前と比べて映像技術が進化したリブート版は迫力が数段アップ。通常の走行シーン以外、実際の車両を使うわけはないとわかっていても、物語に引き込まれていると、どれも本物にしか見えない。いや、改めて作り物っぽさを探そうとしても、いまやVFXによる映像を素人の目で見破ることは難しい。
ただ、さすがは樋口監督だ。日本特撮伝統のミニチュア撮影も、しっかり取り入れている。ミニチュアと言っても、1/6のスケールで作られた新幹線は、1両の長さが4m以上。スタッフ10人がかりで運ぶぐらいだから、重量も相当あるだろう。それを走らせて脱線させ、障害物にぶつける。なかなかの迫力だ。まして樋口監督は、特技監督を務めた平成ガメラ3部作で日本アカデミー賞、特別賞特殊技術賞を贈られた特撮界の第一人者。着ぐるみのガメラが巨大怪獣に見える映像を撮ったように、アナログ手法で人の目をだますのはお手のものだ。
樋口監督の強みは、もうひとつある。本人曰く、「鉄道オタク」なのだそうだ。当然、新幹線の映像は全て魅力的に仕上がっている。車両を美しく見せるだけでなく、至近距離からのローアングルショットや、並行して移動するトラッキングショットで迫力を演出。通常では見られない映像の数々に、鉄道ファンでなくとも魅了される。そういった意味で、このリブート版は新幹線のための映画であり、新幹線が主役の映画と言えるのかもしれない。
ごく個人的に、残念な点もあった。それは、舞台が秋田新幹線ではなかったことだ。なんといっても、あの赤い車体は映える。スーパー戦隊のセンターがレッドであるように、“主役”に相応しいではないか!ただし、東北新幹線になったのには、相応の理由があったようだ。JR東日本から「東北を世界にアピールできる」という話があり、制作陣がその意を汲んだのだ。それはそれで大変意義深いことだし、異論はない。ただ、一面緑の田園風景の中、赤い新幹線が疾走する映像は、この上なく美しかっただろうとも思うのである。
—————————————————————————————– Written by 田近裕志(たぢか・ひろし) JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
【最近の私】JVTAのコラムを卒業された、鈴木純一さんのお疲れ様会に出席しました。ほかのコラム仲間である土橋さんや扇原さん、JVTAの新楽代表はじめスタッフの方々にも、久々にお会いできました。改めて鈴木さん、お疲れ様でした。気が向いたら、特別寄稿とかスポット参戦みたいな形で、また書いてください。
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明けの明星が輝く空に 改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る バックナンバーはこちら
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ロジカルリーディング力を鍛える⑱ 文字の表面ではなく、その裏に見える情景を訳す
ロジカルリーディング力 強化コースは“プロの映像翻訳者が持つ思考プロセス”を伝授し、映像翻訳に必須の「英文解釈力」を着実にレベルアップさせることを目的としています。
英文読解を高度な知的活動と捉え、英文を「何となく読める」レベルから脱却し、確実な根拠に基づいて理解した内容を自分の言葉で説明できるようになるまで考え抜くトレーニングを行います。英字紙の社説やコラム、政治家のインタビューなど、深い内容の素材を訳しながら、英文を貫く論理の見出し方、筋の通った訳文の作り方を学びます。具体的にどんな講座なのか、山根克之講師が解説します。
<文字の表面ではなく、その裏に見える情景を訳す> タイトルを見て難しい話と思われた方もいるかもしれませんが、複雑な話をするつもりはありません。むしろ極めて単純な話です。ナショナルジオグラフィックのサイトに双子のテレパシーはあるのかという問題を論じた記事が掲載 されています。
冒頭にこう書かれていました。自分なりに頭の中で訳してみてください。
They finish each other’s sentences, show up wearing the same outfit without planning it, and sometimes even claim to feel each other’s pain.
JVTAの受講生・修了生、翻訳に興味のある方であれば、文頭のThey finish each other’s sentences を「彼らは互いの文を終わらせる」 と訳すことはないでしょう。日本語として意味の通じない文は訳文とは言えないからです。
「互いの文を終わらせる」 とはどういうことでしょう?もちろんfinish each other’s sentences をネットで検索すれば、解説しているサイトがいくつも見つかります。でも機械的に意味を調べるだけでは「文字(英語)」から「文字(日本語)」への単なる変換に終わってしまいます。もっと深くイメージをとらえるために、2人が会話をしている情景を思い浮かべてみましょう。
A「小学校時代にいろいろなハプニングがあったけど、忘れられないのが…」 B「学芸会のセリフ飛び事件ね。主役の子がいきなり震え出したんだよね。しかも…」 A「それを見て担任の先生も顔が真っ青になってた」 B「そうそう、あれで緊張が連鎖して、みんな声が出なくなったり、セリフをかんだりしてたよね」
Aの「忘れられないのが…」を受けてBが「セリフ飛び事件」、Bの「しかも…」を受けてAが「それを見て担任の先生も顔が真っ青になってた」というように、相手が言おうとしていることを先回りして言っています。これが「互いの文を終わらせる」のイメージです。この状況を想像できれば、「同時に同じことを思いつく」「言いたいことを先読みできる」「考えがシンクロする」など、いろいろな訳し方が出てくると思います。情景が思い浮かべば、辞書や解説サイトに出てくる定義に縛られることもなく、「こんなふうに訳してもいいかもしれない」と選択肢をいくつも持てるようになります。翻訳とは文字から文字への単なる変換ではなく、情景を訳すのだと考えてみましょう。
ロジカルリーディング力強化コースは、英語で読んだ内容を頭の中で整理し、自分の言葉(日本語)で再構築して説明する力(=ロジカルリーディング力)を養う方法を毎回さまざまな角度から考えていきます。情景を丁寧に思い浮かべることは「英語で読んだ内容を頭の中で整理」するために大切な要素の1つです。
(Text by ロジカルリーディング力強化コース 主任講師 山根克之)
◆山根講師の連載コラム「ロジカルリーディング力を鍛える」のアーカイブはこちら
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【JVTA発!世界で活躍する人たち―翻訳者編 ―】オーストラリア・アデレード在住 リシェル・ブリテンさん(フリーランスの翻訳者)
JVTAでは現在、全面リモートで授業を行っており、国内外のさまざまな国や地域で受講生が学んでいる。海外で暮らしながら日本の授業を受講、修了後のトライアルやOJTもオンラインで参加し、現地で映像翻訳者として活躍する修了生も少なくない。そこで、実際にどんな人がどのように海外で学び、仕事に取り組んでいるのか、紹介する。
オーストラリア・アデレード在住 リシェル・ブリテンさん(フリーランスの翻訳者)
◆コロナ禍をきっかけにオーストラリアからJVTAで学ぶ リシェル・ブリテンさんは、大学生のころに一年間、関西外国語大学に留学。当時からエンタメ系の翻訳者に憧れていたものの、オーストラリアに帰国後は、医療受付や整形外科で管理スタッフ、法廷転写など翻訳ではない仕事に従事していたという。転機はコロナ禍。以前から気になっていたJVTAの授業が全面リモートになったことを知り、日英映像翻訳コースの受講を始める。
「当時は法廷転写の仕事をしていましたが、今後の仕事をどうすべきか悩んでいた時期でした。まずは副業で翻訳の仕事を始めようと考えたときにJVTAの日英映像翻訳のコースを見つけ、『憧れのエンタメ業界に入れるチャンスになるかも』と思い入学しました。総合コースと実践コースに分かれていてまずは半年から受講できるのも魅力でした。ずっとやりたかった字幕翻訳にやっと触れることができて受講中はとても楽しかったです。」
ブリテンさんはJVTAで学びながら、オンラインでいくつかのエージェンシーに登録してトライアルを受けるなど翻訳の仕事をしていく準備も進めていく。その中の1社にJVTAと縁のある人がいて仕事を依頼されるきっかけにもなった。そして、JVTAのコース修了後は法廷転写の仕事を退職して翻訳者としてフリーランスになり、それからは順調に進んでいるという。
◆フリーランスは自分のペースで働ける オーストラリア在住だが、自国のクライアントはなく、日本をメインに世界各国の会社と一緒に仕事をしているというブリテンさん。メールやオンラインプラットフォームなどを使い、仕事はすべてオンラインで完結している。
「仕事は水曜~日曜、朝11時から夜まで、休憩も適宜取りながら働いています。会社勤めの時は朝早く起きるのが苦手でしたが、今は自分のペースで仕事の開始時間を決め、好きな曜日に働けます。フリーランスの仕事は、大半が時給ではなく、プロジェクト単位の報酬です。時給制の仕事で一定の時間オフィスにいなければならないという状況はありません。定時の勤務時間に縛られることなく、効率よく仕事をするほど稼働時間が短縮され、収入も上がるというのは、フリーランスならではの働き方だと思います。」
◆時差も納期の味方 に アデレードと日本の時差は30分(サマータイムは1時間30分)なので、時差の問題はまったくないと言うブリテンさん。逆にアメリカの会社と一緒に仕事をする場合、時差があることが便利だ。 アメリカの夜に依頼を受け、オーストラリアの昼間に作業をして、アメリカの翌日朝までに納品することができる。日本に住むか、海外に住むか、どちらにもそれぞれの長所があるという。
「日本在住であれば、クライアントとの関係を築きやすい、会議にも参加しやすいというメリットがあります。第二言語である日本語に慣れることもできます。一方、ターゲット言語である英語が主要言語である国に住む場合、ターゲット層に囲まれた環境にいるので、英語へのローカライズはしやすいと思います。英語は直接的な表現が主ですが、日本語は間接的な表現が多い言語です。英語ネイティブだとしても、日本に暮らすうちに『正しい文法だけど丁寧すぎる英語表現』になることがあると感じます。また、スラングや流行に常に気付けるのもメリットです。コロナ禍以降、オンラインで仕事をするのが当たり前になったので、以前よりずっと世界とのコミュニケーションが簡単になりました。」
◆過去の職歴も活かして幅広く活動 ブリテンさんは現在、日英映像翻訳者として字幕翻訳をメインに、テキスト翻訳(スクリプト、マーケティング関連、ビジネス、ツーリズム)なども手掛ける。かつて裁判所で英語文字起こしに従事しタイピングするのが早いことから、日本の会社が英日翻訳をするための英語文字起こし、英語のデータ入力、プルーフリーディング、ネイティブチェックなど多彩な仕事に携わっている。また、これまでの経験を活かして日本翻訳者協会(JAT)のエンタメ系分野別分科会(SIG)というJATENTの共同代表(ボランティア)を務める。
「JATENTは、字幕、文学、漫画、ゲームなど、エンターテインメント分野に関係する翻訳・通訳を専門とした分科会です。エンタメ業界は、若い参入者も多く、JATENTでは、スキルを磨いたり、経験や知識を共有したりできる場として、特にワークショップやネットワーキングに力を入れ、イベントを開催しています。日本のエンタメにかかわる翻訳者たちが集まって、アイデアや意見を共有したり、新しいことを学んだり、仲間とつながったりするコミュニティを作りたいと思っています。最近はスポッティング入門やゲームローカライゼーションについてのセミナーなどを行いました。」
自国のオーストラリアからJVTAのリモート授業に参加し、日英映像翻訳者のスキルを身につけたことで世界に活躍の場を広げたブリテンさん。今後もさらなる展開を期待したい。
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