明けの明星が輝く空に 第184回 音楽が語るもの
たとえば皆さんが映画監督だったとしたら、人類の脅威である怪獣が倒される場面で、どんな音楽を劇伴(BGM)として使うだろうか。力強く勇壮なものか、勝利を予感させる晴れやかなものか。興味深いことに、『ゴジラ』(1954年)で使われたのは、そのどちらでもない。「海底下のゴジラ」と名付けられたその曲は、悲哀に満ちた鎮魂歌と呼べるようなものだった。
ゴジラは、ある科学者(芹沢博士)が、偶然作り出していた薬剤によって倒される。それは酸素を破壊し、物体を溶解させてしまうという恐ろしいもので、破壊兵器などに利用されてはならない。そんな思いから、芹沢博士は全ての研究資料を火の中に投じ、唯一製造方法を知る自分自身も、この世から消し去ることを決意する。潜水服に身を包み、海底で息を潜めるゴジラに近づく芹沢博士。この段階では、彼の意図は登場人物たちだけでなく、映画を観る者にも明かされていない。そして、ここで流れる曲が「海底下のゴジラ」だ。
芹沢博士はゴジラに十分近づくと、恐るべき薬剤の入った装置を起動し、命綱とともに空気供給ホースを切断。それが最後の姿となった。一方、ゴジラは海面に浮上し、苦しげな雄叫びをあげる。このカットでは「海底下のゴジラ」はほとんど聞こえないが、ゴジラが海中に没していくところで、再び聞こえてくる。ゴジラが忌むべき存在でしかなかったら、この演出は余計だろう。
ゴジラは核の犠牲者である。水爆実験による放射能を浴びて怪物化した、哀しい存在だ。東京を焼け野原にするのは、人間に対する復讐に違いない。しかし、それが許されるわけもなく、再び人間の手によって苦しみを与えられてしまう。なんと理不尽なことか。本多猪四郎監督は「海底下のゴジラ」を使うことで、ゴジラがどんな存在なのかを示しているのかもしれない。
残念なことに、2作目以降のゴジラは悲劇性が薄れ、作品は娯楽性を高めていく。それでも、ゴジラ登場場面で使われた楽曲の中には、どこか哀しげな調べを持つものもあった。それは、シリーズ4作目『モスラ対ゴジラ』(1964年)での、「ゴジラ進撃す」という一曲だ。管楽器などが重厚で不穏な響きを持つメロディーを奏でた後、主役をヴァイオリンに譲ったところで転調。なんとも叙情的な雰囲気を醸し出す。どこか哀しげな主旋律の裏では、低音のピアノの連打が心をざわつかせるような音を響かせてはいるが、それがなければ、まるで葬送曲のようだ。『ゴジラ』でも音楽を担当した伊福部明氏は、シリーズがエンターテイメント色を強めていく中、ゴジラの悲劇性を忘れないでほしいというメッセージを込めたのかもしれない。
ところで劇場映画とは違い、テレビ番組にはいわゆる主題歌があるが、作品のイメージ形成に大きな役割を果たすという意味では、劇判以上に重要だろう。その点、同じ1971年に放送が始まった『仮面ライダー』と『帰ってきたウルトラマン』は対照的だった。
奇しくも、両番組ともに主題歌を歌ったのは主演俳優だ。仮面ライダー役の藤岡弘(現在の表記は「藤岡弘、」)氏は、眉毛が太く、タフガイといったタイプ。声も低音で、野太かった。担当したのは第1~13話だけだが、藤岡さんの歌う「レッツゴー!!ライダーキック」は、ヒーローものの主題歌にふさわしく、トランペットの音色が印象的な力強い曲調だ。藤岡氏はプロの歌手ではないため、いい意味で無骨であり粗野。低音のパートになると、力を込めて声を出そうとしている様子が感じ取れるのだが、それが逆に歌唱に力強さをもたらしている。
ウルトラマンを演じたのは、残念ながら2023年に鬼籍に入られた団次郎(のち「団時朗」に改名)氏。英国系の血が入っていた団さんは、細身で背が高く、どちらかと言えば繊細そうな表情が印象的な俳優だった。主題歌「帰ってきたウルトラマン」は、『レッツゴー!!ライダーキック』に比べてキーが高く、児童合唱団と一緒に歌う団さんの、力みのない優しい歌声が、明るい曲調に合っていてなんとも爽やかだ。また控えめな伴奏の中には、ハープだろうか、ときおり澄んだ音が響いて、テレビの前の子どもたちを夢の世界に誘っているようでもあった。
これら2曲の主題歌には、両作品の方向性の違いが投影されていたと言っていい。アクション志向の強い『仮面ライダー』は、主人公が変身する前から敵との戦いが繰り広げられる。基本的には変身後も素手での戦いで、どちらかと言えば華麗ではなく泥臭い。それに比べると、ウルトラマンの戦いはスマートだった。もちろん、怪獣と取っ組み合って地面に転がりもするが、最終的には煌びやかな光線技で決着。ライダーキックに比べて虚構性の高いこの決め技は、(怪獣という虚構の象徴とあいまって)より現実から遠い世界に僕らを連れて行ってくれた。
ところで、特撮とは関係ないのだが、現在NHKで放送中の朝ドラ『あんぱん』の主題歌は、ドラマの世界観やテイストと合っているのだろうか?批判的な声がある一方、誰よりも作品を理解している主演の今田美桜さんが「ぴったりだと感じました」と言っているのだから、とやかく言うことではないかもしれない。しかし僕は個人的に、朝ドラを観てほっこりした気分を味わいたい。少なくともそういった意味からいうと、ちょっと違うなあというのが、正直な感想である。
—————————————————————————————– Written by 田近裕志(たぢか・ひろし) JVTA修了生。子供の頃から「ウルトラセブン」などの特撮もの・ヒーローものをこよなく愛す。スポーツ番組の翻訳ディレクターを務める今も、初期衝動を忘れず、制作者目線で考察を深めている。
【最近の私】アーティストと曲名を最近になって知った歌が、YOASOBIの「舞台に立って」。最初に聞いたのはパリ五輪のときで、アスリートたちが奮闘するハイライト映像とマッチしていてシビれました。多分、曲だけ聴いても感動しなかったでしょう。音楽と映像の相乗効果ってスゴイ。
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明けの明星が輝く空に 改めて知る特撮もの・ヒーローものの奥深さ。子供番組に隠された、作り手の思いを探る
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2025年4月期がスタート! 英日・日英 映像翻訳科クラス担当者からのメッセージ
2025年4月期がスタート。映像翻訳という新たな学習を始める新入生の皆さんや、進級してさらにスキルアップを目指す皆さんは、期待と不安でいっぱいのことと思います。JVTAでは「映像翻訳スクール部門」を設置し、専任のスタッフが受講生・修了生の皆さんをしっかりとサポート。今回は英日・日英の映像翻訳科の担当スタッフからのメッセージを紹介します!
◆英日映像翻訳
この春から新たに英日映像翻訳の学びを始める皆さま、そして進級して更なるスキルアップを目指す皆さま、いよいよ4月期がスタートしましたね!各種スキルをバランスよく身につけて プロへの道のりを歩んでいきましょう。充実した時間をお過ごしいただけるよう、皆さまの学びを全力で応援し、サポートしてまいります。クラス運営に携わるスタッフは全員JVTAの修了生です。ご不安なことやお困りごとがございましたら、私たちスタッフにいつでもお気軽にご相談ください。半年間どうぞよろしくお願いいたします!(山名)
◆日英映像翻訳
Welcome to JVTA! Our J-E Media Translation course is where you will learn all of the skills that you need in order to get started as a J-E media translator. Together we’ll work with a wide range of fascinating and fun Japanese media content (including films, documentaries, TV dramas, manga, and more!) and discuss the most effective approaches for translating it into English for a global audience. We hope you enjoy this very interactive and international class that brings together students from all over the world. Join us in making Japanese media content accessible to English-speaking audiences around the globe! (Jessi)
★コマ単位での受講も可能です!
JVTAではこれまでに英日映像翻訳、日英映像翻訳、映像翻訳Web講座を受講された方を対象に、現在の授業を1コマから受講することができる「コマ単位受講制度」を設けています。受講生、修了生の方でご興味のある方はぜひ、そちらもご活用ください。現在は全面リモート受講なので遠方からの参加も可能です。かつて通学で受講中に地方都市や海外への引っ越しで進級をあきらめた方も受講できますので、ぜひ学び直しにご利用くださいね。
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【2025年5月】日英OJT修了生を紹介します
JVTAではスクールに併設された受発注部門が皆さんのデビューをサポートしています。映像翻訳の仕事は映画やドラマだけではありません。特に日英映像翻訳ではマンガやゲーム、企業のPR動画など幅広いジャンルがあり、翻訳者が体験してきた職歴や趣味などを生かして活躍しています。今回はOJTを終え、日英の映像翻訳者としてデビューする修了生を紹介します。
◆蔦谷光香子さん(日英映像翻訳実践コース修了)
職歴:法律事務所にて翻訳を含むパラリーガル業務
【今後どんな作品を手がけたい?】
元々英語のコンテンツを見ることが多かったため、日本のコンテンツに詳しいと言えない反面、海外の映画やドラマを多く鑑賞することで身についた英語の自然な会話やセリフの流れを日英映像翻訳に活かせていると思っています。そのため、ヒューマンドラマなど、人間の何気ない様子を描いた映画やドラマを翻訳するのが夢です。
【日英翻訳の魅力】
必ずしも難しい単語をたくさん知らなくても、良い英語の字幕や吹き替えの原稿が作れるところが日英映像翻訳の魅力だと思います。例えば動詞を一つ差し替えるだけで伝わり方を大きく変えることができたり、語順を入れ替えることでニュアンスを調整できたりするところが英語でアウトプットすることの面白さだと感じています。
◆Gabor Sacharovskyさん(日英映像翻訳実践コース修了)
職歴:イベントスタッフ
【JVTAを選んだ理由、JVTAでの思い出】
After finishing my degree in Japanese Studies I decided to start looking for a job in translation. I went to live in Japan for a year after graduation and decided to do a course at JVTA during that time since it seemed a perfect fit for my goals of becoming a translator. I really enjoyed the course and how flexible it was due it being online. The high emphasis on practical knowledge was really beneficial as it made me feel ready for tackling actual jobs now that I finished the course. I have been hugely invested in Japanese media since I was a child. JVTA granted me the opportunity to see the type of work that goes into my favorite shows in the background when they bring them to a foreign audience.
【今後どんな作品を手がけたい?】
Since I am just starting out, I would like to translate videos from many different genres to hone my skills. In the long term though, I would like to focus on fictional stories, especially fantasy and sci-fi ones. Given the chance, I would also like to contribute to bringing yet-to-be-translated retro anime to the English-speaking world. I enjoyed the manga translation classes as well so I would like to try my hands at that too in the future. In recent years, I became interested in video games so translating them is another challenge I would like to tackle in the course of my career. Lastly, I would be very happy to take on projects that involve my native language, Hungarian.
★JVTAスタッフ一同、これからの活躍を期待しています!
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花と果実のある暮らし in Chiang Mai プチ・カルチャー集 Vol.89 日曜日の電話
★「花と果実のある暮らし in Chiang Mai」 インパクト大の写真をメインにタイのリアルなプチ・カルチャーをご紹介しています。
日曜日の朝、香港の友人から久しぶりにガラガラ声で電話がありました。彼女とは知り合ってから約15年。人生の苦い部分を話せた友人の一人です。香港の情勢のこと、恋の話、経済状況、家族などいろいろな話をしてきました。私は心を開くのに時間がかかるタイプですが、彼女は最初っからオープン。ズケズケ入ってくるのでみんなからちょっと問題児扱いされていましたが、逆に言うと人の目を気にせず自分を通す部分はとても魅力でした。彼女の人生の節々の話を聞いているうちに私も段々と打ち解けていき、今では程よく刺激しあいながら相談しながらという関係が積みあがっています。地球上のどこかに話ができる人がいる。そして毎日会わなくても、ちょっと心が窮屈に感じた時に国を越えてフリーで電話ができるという今はすごい時代だと思う。
そして、朝の電話の最後に「あー、風邪で休日も台無しだわ…。でもイースターホリデーの最初に話したのはあなたよ。」という一言を言われ、今日一日の活力が出たのでありました。
のびのびと生きる植物たち
のびのびと生きる植物たち
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Written by 馬場容子(ばば・ようこ)
東京生まれ。米国大学でコミュニケーション学専攻。タイ、チェンマイに移住し、現在は郊外にある鉄工房でものづくりをするタイ人パートナーと犬と暮らす。日本映像翻訳アカデミー代々木八幡・渋谷校時代の修了生。 —————————————————————————————–
花と果実のある暮らし in Chiang Mai チェンマイ・スローライフで見つけた小さな日常美バックナンバーはこちら
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【制作者や観客に字幕が届く瞬間を体感できる】映画祭へ行こう!
皆さんは映画祭に参加したことがあるだろうか?
映画祭といえば、世界三大映画祭(カンヌ国際映画祭、ベルリン国際映画祭、ヴェネツィア国際映画祭)が日本でも大きく報道されるが、日本国内でも毎年多くの映画祭が開催されている。米国アカデミー賞公認・アジア最大級の国際短編映画祭「ショートショート フィルムフェスティバル & アジア」やLGBTQに関する作品を集めた「レインボー・リール東京 ~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~」、世界の難民問題にフォーカスした「難民映画祭」など、そのラインナップは多彩だ。
短期間で世界の映画が一斉に上映される映画祭では字幕が必須となる。JVTAも上記の映画祭をはじめ、毎年いくつもの映画祭を字幕制作でサポートしており、JVTAで学んだ多くの映像翻訳者が活躍している。
◆2024年 JVTAの映画祭サポートはこちら
映像翻訳者として豊富な経験を重ね、JVTAで講師も務める屋鋪桂子さんは、映画祭は映像翻訳者としての原点や初心を思い出せる貴重な場だと話す。屋鋪さんは今年も4月開催のダマー国際映画祭の上映作品10作のチェックを担当し、会場に足を運んだばかりだ。
「私がデビューしたての頃、『ショートショート フィルムフェスティバル & アジア』で短編映画を担当させていただく機会がありました。友達を大勢引き連れて会場入りし、誇らしげに自慢したりして…。振り返れば小っ恥ずかしい行動ですが、今も鮮明に残る楽しい思い出です。自分が作った字幕をスクリーン上で観るのは、他と比べようのないステキな体験です。映画祭のお仕事を担当された方は、ぜひ会場まで足を運んでみてください。一生の思い出になることは間違いありませんから。」(屋鋪桂子さん)
2025年のダマー国際映画祭の上映作品『A Summer’s End Poem』の日本語字幕を担当した修了生の河井敦さんは今年、初めて映画祭に参加した。自分の作った字幕がどのように、どんな人に届いているのか。それを改めて知ることができた貴重な体験となった。
河井敦さん ダマー国際映画祭の会場にて
「自分の作った字幕が大きなスクリーンに映っていて、それを他の観客が暗い劇場の中で観ている…。映画好き・映画館好き・字幕好きにとっては忘れられない体験となりました。
上映中は、あの表現で伝わった?あの字数で読み切れた?あのフォントのほうが合うのになあ…。あの人、今あくびした?と気が気じゃなかったです。でもストーリーの要所要所で笑いやどよめきが起こると、そんな心配は、『よかった、伝わってた~』という安堵と達成感に変わりました。」(河井敦さん)
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河井敦さん ダマー国際映画祭の関係者の皆さんとの集合写真に参加
映像翻訳者が映画やドラマの制作者と会える機会は極めて稀だ。映画祭には監督や出演者、プロデューサーなど多くの映画関係者が集う。作品上映後にトークショーがあったり、なかにはロビーで関係者と話したりできることもある。
2024年の難民映画祭のオープニングでは、JVTAが字幕を手がけた『ザ・ウォーク ~少女アマル、8000キロの旅~』が上映された。会場にはこの作品の字幕チームでリーダーを務めた翻訳者の児山亜美さんが駆け付け、トークショーに登壇したタマラ・コテフスカ監督 とジャン・ダカール撮影監督と対面する機会に恵まれた。
児山亜美さん 難民映画祭の会場にて
「お話できたのは少しの時間でしたが、目を見て感謝の言葉を述べていただき、翻訳者として身に余る光栄でした。トークイベントでは、力強い言葉で『希望はある』とおっしゃられた姿が印象に残っています。映画の力を心の底から信じる監督の思いを生で聞き、翻訳者である私もとても刺激を受けました。」(児山亜美さん)
自分が字幕を担当した作品の受賞シーンに立ち会えた人もいる。2017年の「レインボー・リール東京~東京国際レズビアン&ゲイ映画祭~」では、修了生の磯貝さおりさんが英語字幕を担当した『カランコエの花』(中川駿監督) が見事グランプリを獲得。この作品は、現在放送中のNHK朝の連続テレビ小説『あんぱん』で主役を務める今田美桜さんがヒロインを演じた名作だ。翻訳者の磯貝さんは会場で受賞の瞬間を同作の関係者の皆さんと共にわかちあい、記念撮影にも参加することができた。
「お写真の撮影に私も入れていただき、監督が『翻訳をしてくださった方で、スタッフです』 と出演者の皆さんにご紹介くださったときは、本当に嬉しかったです。私が『(優勝されて)少し、ほっとしました。訳させていただいて、有難うございました』と申し上げたところ、「いやいや、“少し”ではないですよ!」とのお言葉。翻訳者としてこうした場に立ち会えて本当に光栄です。』(磯貝さおりさん)
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これから映画祭が目白押しの季節がやってくる。今まさに映画祭の上映作品の字幕を作っている人もいるかもしれない。映像翻訳者ならぜひ映画祭の会場に足を運び、スクリーンで映画を味わってほしい。そこには新たな世界が広がり、思いもしなかった出会いが待っているに違いない。
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美しい世界の裏にうごめくものは… デニス・ホッパー in 『ブルーベルベット』
【最近の私】予告編コラムで紹介した『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』 が日本でヒットしています。ファンと観客の情熱で香港映画がまた活性化すればと期待しています。
今年1月、ディヴィッド・リンチ監督が亡くなった。彼が撮った映画やドラマだけではなく、絵画などの作品で、その特異なビジュアルやセンスに魅了された人たちも多いのではないか。今回はリンチ監督の作品の中から、『ブルーベルベット』(1986年)に登場したデニス・ホッパーを紹介したい。
映画の舞台は、アメリカの地方にある町ランバートン。主人公ジェフリー(カイル・マクラクラン)はこの町を出て大学に通っていた。だが彼の父親が急病で倒れたため、ランバートンに戻ってくる。入院している父を見舞ったジェフリーは、帰り道の草むらに切断された人間の耳が落ちているのを発見する。ジェフリーは刑事の娘サンディ(ローラ・ダーン)と一緒にこの事件を調べ始める。
この事件の裏に、クラブで歌う歌手ドロシー(イザベラ・ロッセリーニ)が関係していると聞いたジェフリーは、ある夜、彼女の自宅に忍び込む。だがドロシーが帰宅してきたので、ジェフリーは急いでクローゼットの中に隠れる。そこで彼が見たのは、異常な犯罪者フランク(デニス・ホッパー)とドロシーの倒錯した背徳的な行為だった。フランクはこの町で麻薬や売春を仕切る男で、ドロシーの夫と子どもを誘拐し、強制的にドロシーを自分の愛人として関係を結んでいるのだ。この夜を境に、ジェフリーは異様な暴力の世界に巻き込まれていく。
本作に登場する町は、1950年代で止まっているような風景だ。青い空に白いフェンス、丁寧に手入れされた庭には、鮮やかな色の花が咲いていて、古き良きアメリカを思わせる。だが、その美しく見える庭の芝生の下には、無数の黒い虫がうごめいている。一見、美しく見える世界の裏には、誰も知らない闇の世界が広がっているのだ。フランクも、平和で明るい町の裏側にひそむ邪悪な存在だ。この世界観は、大ヒットTVドラマ『ツイン・ピークス』(1990年~1991年、2017年)でも引き継がれている。架空の町で起こった殺人事件を発端に、その町の住人の抱えている秘密が描かれていた。
フランクを演じたデニス・ホッパーは1936年生まれ。俳優としてジェームズ・ディーン主演の『理由なき反抗』(1955年)『ジャイアンツ』(1956年)などに出演する。1969年には、監督・脚本・出演を兼ねた『イージー・ライダー』が高い評価を得て、アメリカン・ニューシネマを代表する1本になった。だがその後『ラストムービー』(1971年)で興行的に失敗し、以降は長い間、ドラッグとアルコール依存に苦しむことになる。だが『ブルーベルベット』で強烈な悪役を演じて脚光を浴びる。同じ1986年には『リバーズ・エッジ』『悪魔のいけにえ2』そして『勝利への旅たち』(アカデミー賞助演男優賞にノミネート)し、カムバックを果たす。以降は『カラーズ 天使の消えた街』(1988年)で監督も務めている。
デニス・ホッパーは数々の作品に出演していて、どの作品が好きかは人それぞれだろう。個人的には前述の『悪魔のいけにえ2』で復讐に燃える狂気をはらんだ男も好きだし、『トゥルー・ロマンス』(1993年)でクリスチャン・スレイターの父親を演じていたのも印象的だ。ホッパーは2010年に亡くなった。もう彼の出る新作を見ることはできないが、今までに出演した作品を見れば、彼に再び出会うことができる。ホッパーが長い苦悩の時期から復活した『ブルーベルベット』は、リンチ監督の独自の世界観に、見る人選ぶだろう。だが、他の映画では見られない世界を見たい人にはおすすめである。自分も、『ブルーベルベット』でリンチ作品に初めて出会った。まだ見ていない人がいれば、ぜひリンチの世界へようこそ。
—————————————————————————————– Written by 鈴木 純一(すずき・じゅんいち) 映画を心の糧にして生きている男。『バタリアン』や『ターミネーター』などホラーやアクションが好きだが、『ローマの休日』も好き。 —————————————————————————————–
戦え!シネマッハ!!!!
ある時は予告編を一刀両断。またある時は悪役を熱く語る。大胆な切り口に注目せよ!
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これがイチ押し、アメリカン・ドラマ 第126回 “HIGH POTENTIAL”
“Viewer Discretion Advised!”
これがイチ押し、アメリカン・ドラマ
Written by Shuichiro Dobashi
第126回 “HIGH POTENTIAL”
“Viewer Discretion Advised”は海外の映画・テレビ番組等の冒頭で見かける注意書き。「バイオレンスやセックス等のコンテンツが含まれているため、視聴の可否はご自身で判断して下さい」という意味。
今、アメリカ発のテレビドラマが最高に熱い。民放系・ケーブル系に加えてストリーミング系が参戦、生き馬の目を抜く視聴率レースを日々繰り広げている。その結果、ジャンルが多岐に渡り、キャラクターが深く掘り下げられ、ストーリーが縦横無尽に展開する、とてつもなく面白いドラマが次々と誕生しているのだ。このコラムでは、そんな「勝ち組ドラマ」から厳選した、止められない作品群を紹介する。
予告編:『ハイ・ポテンシャル』 本予告
VIDEO
美魔女の天才シングルマザー降臨!!!
本作は、Disney傘下の民放大手ABCが制作しDisney+が配信する、フランスの大ヒットドラマのリメーク。
“High Potential”は美魔女の天才シングルマザーがスカッと謎を解く、痛快なハイパー・ミステリーコメディなのだ!
“I have an IQ of 160 with high potential intellectual”
—ロサンゼルス、ダウンタウン
モルガン・ギロリー(ケイトリン・オルソン)はバツ2のシングルマザー。反抗期のエバ、10歳のエリオット、赤ん坊のクロエと毎日格闘している。モルガンの仕事は、LAPD(ロサンゼルス市警)の夜間清掃員(“cleaning lady”)だ。
モルガンはいつものようにイヤホンから流れる音楽に合わせて、踊りながら仕事をしている。すると、お尻をデスクに当てて、捜査資料を床にばら撒いてしまった。死体の写真が目に入る。モルガンがいるのは、重大犯罪課(“Major Crimes Division”)のオフィスだった。
興味を引かれたモルガンは資料にざっと目を通すと、今度は捜査ボードを見やる。被害者の妻の写真が貼ってあり、“SUSPECT”(容疑者)と書かれている。モルガンは赤いマーカーを取ると、その文字を二重線で消して“VICTIM”(被害者)と書き込んだ。
翌朝、担当刑事のアダム・カラデック(ダニエル・サンジャタ)は、捜査ボードの書き込みを見て激怒した。オフィスの監視カメラからいたずらの犯人を割り出す。モルガンは捜査妨害の容疑で拘束された。
アダムと上司のセレナ・ソート(ジュディ・レイエス)がモルガンを詰問する。すると彼女は、被害者の妻は犯人ではなく第2の被害者で、殺されたか誘拐されていることをスラスラと証明してみせた。
アダムとセレナは顔を見合わせる。
実はモルガンはIQ160、HPI(“High Potential Intellectual”)と呼ばれるギフテッドで、高度な認知能力、知的創造力、映像記憶を持っている。だが会話が苦手なうえに、小さな問題であっても解決するまで自分を制御できなくなる。だから仕事も人間関係も長続きしない。
その事件は行き詰まり、セレナは突破口を求めてモルガンをコンサルタントとして起用する。彼女とペアを組まされたアダムはまたまた激怒するが、上司の命令は絶対だ。
こうして、ド素人の天才シングルマザーと有能だが堅物のベテラン刑事の凸凹コンビが誕生した!
“You see a cleaning lady, I see more” (Selena Soto)
モルガン役のケイトリン・オルソンは、FXの破壊的シットコム“It’s Always Sunny in Philadelphia”で、イケてるバーテンダーのディーを全16シーズン演じている(継続中)。オルソンは、明るくて傍若無人、派手な衣装でいつもミニスカートの天才美魔女役にピタリとハマった。
アダム・カラデック役のダニエル・サンジャタは、消防隊ドラマ“Rescue Me”でレギュラーを全7シーズン務め、また渾身の実話ミニシリーズ“The Bronx is Burning”ではヤンキースのスラッガー、レジー・ジャクソンを演じた。
サンジャタとオルソンとの間にはケミストリーが働き、観ていて楽しい。
重大犯罪課を率いるセレナ・ソート役のジュディ・レイエスは、メガヒット医療コメディ“Scrubs”で看護師長カーラを8シーズン演じた。本役は久しぶりの準主役級で、オルソンの才能を見抜くタフな上司を好演する。
また、バイカー・ギャングドラマ“Mayans M.C.”(本ブログ第61回参照 )で主演したJ・D・パルドが、モルガンのボーイフレンドとなるLAPDの用務員トム役でいい味を出している。
「エンタメの達人」の会心作!
クリエーター(兼共同脚本)のドリュー・ゴダードは、メガヒットした“Buffy the Vampire Slayer”の脚本でキャリアをスタート。その後もJ・ガーナーをスターにした”Alias”、社会現象化した“Lost”、マーベル・ドラマの最高作“Daredevil”、ユニークな哲学コメディ“The Good Place”(本ブログ第44回参照)などを手がけた。また、マット・デイモン主演のSci-Fi映画『オデッセイ』(2015)の脚色でアカデミー賞にノミネート、『マトリックス・シリーズ』の次作では監督・脚本を務める。本作は、そんな「エンタメの鉄人」の最新作だ。
「主人公が警察/FBIを助ける天才」という設定のドラマは意外と多い。ユニークなキャラの天才たちが、オールドファッションの刑事や傲慢な連邦捜査官をやり込める爽快感は格別だ。“Psych”、“The Mentalist”、“White Collar”、“Numbers”、“Elsbeth”(本ブログ第44回参照 )などが成功例だが、ハードルは結構高い。視聴者が主人公の天才ぶりにすぐに慣れてしまうので、何らかの差別化が必須となる。
本作を差別化するキーは、チャーミングなモルガンのキャラだ。彼女はその魅力を振りまいて視聴者を混乱させ、マシンガントークで直感的な推理や飛躍した論理を強引に納得させる。展開がスピーディなので、筆者のような凡人はこの技巧に翻弄され、多少論理が破綻していても気が付かないか、忘れてしまう。
モルガンとアダムとの微妙な関係も見どころのひとつ。直感型のアマチュア探偵と強面のベテラン刑事は、反発し合いながらも互いの欠点を補い、信頼関係を築き、成長し、最強のペアとなる。さらに、用務員トムが参戦して形成される三角関係も微笑ましい。
民放のプライムタイム(東部標準時で通常8:00PM~11:00PM)の番組らしく、1話完結で全13話。バックストーリーとして、モルガンの最初の夫ローマンが失踪した経緯が徐々に明かされる。
各エピソードには映画名をもじったタイトルが付き、終盤には気の利いたツイストが用意されている。シーズンフィナーレでは、ゲーム狂の犯人vs.モルガンの超絶な頭脳戦が展開する。
シーズン2の制作も決まった。“High Potential”は美魔女の天才シングルマザーがスカッと謎を解く、痛快なハイパー・ミステリーコメディなのだ!
原題:High Potential
配信:Disney+
配信開始日:2025年1月23日~4月10日
話数:13(1話 42-46分)
<今月のおまけ> 「これは必携、アメリカン・ドラマを楽しむためのお役立ち本!」④
●『地図で見る アメリカハンドブック<第3版>』
(C・モンテス&P・ネデレク著、原書房、2024)
地理学・都市学の専門家2人が、現代のアメリカ社会を図表中心のエビデンスベースで俯瞰する、信頼できる参考書!
Written by 土橋秀一郎(どばし・しゅういちろう)’58年東京生まれ。日本映像翻訳アカデミー第4期修了生。シナリオ・センター’87年卒業(新井一に学ぶ)。マルタの鷹協会会員。’99年から10年間米国に駐在、この間JVTAのウェブサイトに「テキサス映画通信:“Houston, we have a problem!”」のタイトルで、約800本の新作映画評を執筆した。映画・テレビドラマのDVD約1300本を所有。推理・ハードボイルド小説の蔵書8千冊。’14年7月には夫婦でメジャーリーグ全球場を制覇した。
【ロジカルリーディング力強化コース 修了生インタビュー】「読解力は漠然とした能力ではなく、テクニックだと実感しました」
JVTAの英日映像翻訳の総合コース・Ⅰのカリキュラムには、英文解釈力を高めることに特化した授業がある。指導するのは、ロジカルリーディング力 強化コース主任の山根克之講師。この授業では、字数制限などに囚われず、まずは原文を正しく理解した上で翻訳原稿をよりブラッシュアップしていくことにフォーカスしている。英語解釈力に苦手意識があった修了生のJ.N.さんは、この授業で山根講師の丁寧で論理的な説明に魅かれ、さらに深く学びたいと映像翻訳の本科修了後にロジカルリーディング強化コースを受講。翻訳への取り組み方が変わったという。
◆なんとなく分かったつもりで訳して誤訳を指摘された
ロジカルリーディング力 強化コースの修了生の多くが、「これまではなんとなく分かったつもりで訳していたことに気づいた」と話す。J.N.さんも授業の中でそれを実感する。
「英文をざっと読んで全体の意味をつかんだと思い、勢いですらすら訳した時ほど、思い込みによる誤訳を指摘されることが多かったです。逆に、意味が取れず悩んで絞り出した訳の方が実は訳としては正しかったこともありました。正しく解釈した後で、よりこなれた日本語訳にするために講師が一緒に考えてくださったことも印象に残っています。」(J.N.さん)
◆少人数で丁寧な講評がもらえる
映像翻訳のコースに比べると比較的小人数でアットホームな雰囲気もこのコースの特徴だ。映像翻訳のコースで、英文の解釈のついて細かく質問することは憚れると遠慮してしまう人もいるが、このコースではそこにフォーカスしているため、どんな質問もできる。
「少人数であったこともあり、講師から一人ひとりの訳に対してじっくり講評をいただけたことがとてもありがたかったです。受講生は真面目な方ばかりでしたが、比較的おっとりした和やかな雰囲気でした。また、振替として他の曜日のクラスに参加した時は、普段のクラスと雰囲気がかなり違い、よい意味で刺激をもらいました。」(J.N.さん)
◆読解力は漠然とした能力ではなくテクニック
原文を正しく理解し、翻訳においてなぜその言葉を選んだのかという根拠を自らの言葉で説明する。このコースではそのトレーニングを徹底的に行っていく。J.N.さんは受講する中で実践的なプロのスキルを学んだ。
「読解力は漠然とした能力ではなく、時制などの文法事項、指示語、対比表現と言った具体的なことに注意することで、テーマや文脈が見えてくる、いわばテクニックでもあるということを実践として学びました。苦手意識の強かった読解力や英文解釈力について、どこに問題があり、どう対策をすればよいかが見える化されたことは、今後の学習のための大きな助けとなりました。英文の細部にまで細心の注意を払うことと、テーマや全体の流れをつかむことは別々ではなく、相互補完的な作業であると自分なりに理解し、トライアルでも意識して取り組むようにしています。また講師は日本語を含め 文章を読むことと、日本語(表現)力の大切さを強調されていましたので、新聞やいろいろなジャンルの本を読むように心がけています。」(J.N.さん)
ロジカルリーディング力を身につけることで、苦手だった英文解釈力を克服したJ.N.さん。今後の翻訳原稿には自信を持って取り組めるはずだ。プロデビュー前に確かなスキルを身につけたい人にぜひ受講をおすすめしたい。
◆「English Clock ロジカルリーディング力 強化コース」(全8回)
次期は2025年5月に開講です。(全面リモート受講)
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詳細・お申込みはこちら
◆山根克之講師のコラム「ロジカルリーディング力を鍛える」
アーカイブはこちら
2025年3月オープントライアル(英日・日英)、2024年10月期(英日・日英)実践修了トライアル 合格発表
◆2025年3月英日 オープントライアル合格者発表
合格5名、次点27名です。
■合格者
JOP013 JOP014 JOP048 JOP119 JOP126
■次点
JOP002 JOP006 JOP008 JOP019 JOP024 JOP026 JOP027 JOP034 JOP040 JOP041 JOP046 JOP058 JOP069 JOP071 JOP074 JOP080 JOP082 JOP083 JOP084 JOP101 JOP103 JOP105 JOP127 JOP130 JOP133 JOP134 JOP143
以上
2024年10月期英日 実践修了トライアル合格者発表
合格7名、次点6名です。
■合格者
JGR002 JGR004 JGR006 JGR013 JGR016 JGR025 JGR038
■次点
JGR003 JGR014 JGR034 JGR036 JGR037 JGR045
以上
◆2025年3月日 英 オープントライアル合格者発表
合格なし、次点4名です。
■合格者
なし
■次点
EOP002 EOP006 EOP008 EOP012
2024年10月期日 英 実践修了トライアル合格者発表
合格2名、次点3名です。
■合格者
EGR001 EGR012
■次点
EGR004 EGR005 EGR015
以上
※※従来の「Q&Aセッション」を廃止し、 あらたに受験者全員に「ポイント解説」資料を配布しております。 送付日は「結果発表」の翌週内を予定しています。 詳細は、下記をご覧ください。※※
https://www.jvta.net/mtc/trial-new-rule20200219/
◆【2025年度 前期】トライアルスケジュール
https://www.jvta.net/mtc/202504-trial-schedule/
【ロジカルリーディング力強化コース 修了生インタビュー】一人ひとりの翻訳の傾向を把握した的確なフィードバックで自分の弱点に気づけました
ロジカルリーディング力強化コースを受講する皆さんは多くがトライアル合格を目指している。しかし、修了生の川瀬綾乃さんが受講した時は、すでにトライアルに合格し、OJTを終えたタイミングだった。それでもさらに学びたいと思ったきっかけは、映像翻訳の本科で受講した山根克之講師(同コース主任)の授業だったという。とても分かりやすく、英文の解釈や伝わりやすい日本語を書くという点において、翻訳原稿のさらなるブラッシュアップにつながると確信したと話す。ロジカルリーディングを集中的に学んでどのように翻訳に取り組む意識や原稿が変わったのか、話を聞いた。
◆自分の訳文について論理的に考え、その根拠を伝える力がついた
ロジカルリーディングは文字通り、英文の文法および構成を理解した上で論理的に読み解いていくというスキルだ。映像翻訳者は常に映像に合わせた尺や字数制限に向き合いながら情報の取捨選択をする必要があるが、原文を読む段階で正しい解釈ができず、深く考えることができていないと、的確な訳文は作れない。
「授業では何かを頭ごなしに否定したり指摘したりすることはありません。受講生は自分の訳について、どうしてそうしたのかを説明する機会をもらえるため、論理的に考える力や、他人に自分の訳の根拠を伝える力を養えます。実際クラスで幾度か講師と受講生とで意見を交わし、新たな解釈を見つけるという場面もありました。」(川瀬綾乃さん)
◆一人ひとりの翻訳の傾向を把握した的確なフィードバック
受講生は事前に前課題に取り組み、クラス内では山根講師がそれを基により良い訳文にするためのフィードバックを行う。最後の授業で、クラス全員のそれぞれに贈ったこれまでの総評とも言える言葉があまりにも的確で驚いたと川瀬さん。
「常に的確にそして子細に、解釈の道筋を示していただけるので“指摘”や“フィードバック”こそが大きな糧になると感じました。山根講師はその人がもつクセや訳の傾向、ウィークポイントなどを細かく把握してくださっていたのです。私が頂いたアドバイスで特に印象に残っているのが、『原文のワードチョイスや表現に疑問を持って調べてみないと、自分の知識の外にある情報を見落としますよ』という言葉です。確かに私は文字通りの意味だけを見て訳し、その裏にある別の意味や背景、意図に気づけていないことが多くあり、調べ物の大切さが身に染みました。」(川瀬綾乃さん)
◆真剣だが和やかな雰囲気のクラス
このコースの修了生の多くが「とても質問しやすいクラスだった」と話す。川瀬さんも毎週、授業の時間が楽しみでならなかったという。
「受講生も講師も真剣で、発言を求められることも多いのですが、クラスには、みんなが思わず微笑んでしまうような温かさと和やかな雰囲気がありました。」(川瀬綾乃さん)
◆解釈に自信が持てたら「がんじがらめ」だった訳が自由になった
ロジカルリーディングを受講する前は、「情報を一字一句正確に、誤訳をせず、意訳を避け、“ちゃんと”訳さなければ!」という気持ちが強く、良くも悪くも「がんじがらめ」だった。受講を経て、それはそもそも解釈に自信がなかったからだということに気づいたという。
「きちんと解釈ができて、訳に根拠を持てると、情報の取捨選択が正しくできるようになります。その文章が伝えたいことは何で、段落の中、または全体の流れの中でどういった役割を果たしているものなのかが理解できるからです。そうすれば、『意訳』も『意訳』ではなくなり、原文の意図が訳文で伝わりやすくなります。この授業を通して英文解釈の大切さに気づけたことは、「がんじがらめ」だった私自身の訳を少し自由にしてくれたように思います。プロとして翻訳に取り組むうえで大きな指針になりました。」(川瀬綾乃さん)
トライアルに挑戦中の人はもちろん、すでにプロデビューしているがさらなるスキルアップを目指したい人にもおすすめのコースだ。
◆「English Clock ロジカルリーディング力 強化コース」(全8回)
次期は2025年5月に開講です。(全面リモート受講)
まずは無料体験レッスン(リモート開催)にご参加ください!
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◆山根克之講師のコラム「ロジカルリーディング力を鍛える」
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