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今週の1本
『奇跡のリンゴ』 

今週の1本<br>『奇跡のリンゴ』 
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2月のテーマ:ぬくもり

秋から冬にかけて、スーパーの果物売り場にはリンゴがずらりと並ぶ。正直、特別大好きな果物というわけではない。しかし、小さい頃よく母親が食後のデザートにリンゴをむいてくれていたので、私にとってはとても親しみのある果物だ。

 
リンゴは農薬や肥料を与えなければ実らせることができないと言われている。害虫や腐敗にとても弱い植物だからだそうだ。そんな植物だからこそ、実は“リンゴ”には“困った”問題がある。リンゴの生産者にとっても消費者にとっても、農薬による体への影響などが懸念されているのだ。
 

映画『奇跡のリンゴ』の主人公秋則の妻、美栄子も長年農薬による体調不良に悩まされている一人だ。婿入りした秋則は義父からリンゴ農家の経営を任される。当時、リンゴは高く売れる果物であり、金のなる木とまで言われ、リンゴ農家は景気が良かった。しかし、秋則は妻のために不可能といわれたリンゴの無農薬栽培に挑むことを決意する。そして、秋則の長く苦しい挑戦が始まる。決意は固かったものの、その挑戦は順調には行かず、何年も何年もリンゴの木は花をつけないという失敗の繰り返し。収入はなく、貯金も底をつく。家族は貧乏生活を強いられ、周囲からも白い目で見られるようになっていく。しかし、家族だけは秋則を励まし続ける。秋則の熱い想いや努力をそばで見続けてきたからこそ、諦めてほしくなかったのだ。苦難の末に、秋則が見つけた答えとは何か? リンゴの白い花が咲く日はおとずれるのか? ただ、奇跡を祈る想いで見てしまう、感動の物語だ。
 

木村秋則さんは実在の人物である。数年前に放送された『プロフェッショナル 仕事の流儀』(NHK総合テレビ)では、苦労を重ねたとは思えない明るさで、終始笑顔で問いかけに答えていた。また、リンゴの木を我が子のように愛し可愛がる姿を見せていた。劇中でも、秋則がリンゴの木に話しかけるシーンがあった。もしかすると木村さんは、周りからとちょっとおかしな人に見えたかもしれない。でも、そこまでの思いを寄せていたからこそ、不可能と言われたリンゴを誕生させることができたのだろう。
 

今も昔もスーパーに行けばリンゴは手に入る。よほど不作の年とならない限り、リンゴが食べられないと困ることはないだろう。それは言うまでもなく、毎年農家の方々が一生懸命生産してくれているからだ。今年はいつものリンゴに加えて、この奇跡のリンゴに注がれたぬくもりを味わってみたいと思う。
 
 

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『奇跡のリンゴ』
監督:中村義洋
出演:阿部サダヲ、管野美穂
製作国:日本
製作年:2013年
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Written by 諸江美樹
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[JVTA発] 今週の1本☆
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

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