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[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の1本 『アイスクリーム』

今週の1本 『アイスクリーム』
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8月のテーマ:FESTIVAL
 

8月11日から15日まで開催された「キネコ国際映画祭」 にて、本作『アイスクリーム』の音声ガイド制作とライブナレーションを手がける機会に恵まれた。ちなみに、音声ガイドとは、視覚から情報を得ることが難しい方に向けて、映画やドラマなどの映像作品の内容を言葉で説明し、映像をバリアフリー化する手法のひとつだ。
 

上映時間16分の映画の内容は実に単純に思えた。ある村の少年が、アイスクリームを手に入れるまでを描いた作品で、盛り上がりも明快なオチもない。ラストは、アイスクリームを食べて満足した少年が、友達が遊んでいる湖に合流… という物語。
 

音声ガイドは、よく「映画の実況中継」と言われる。ただし、単に画面に写っている風景や登場人物の表情などを描写していればいいわけではない。一番大切なのは、“なぜ、この画が撮られたのか”を理解すること。その映像作品を作った(撮った)人の気持ちになる、つまり作品解釈が原稿の良し悪しを決めるキモになる。これができて初めて、各シーンに含まれている膨大な情報の取捨選択ができるのだ。
 

今回の作品については、「アイスクリーム好きな少年」が本当のテーマなのか、それともその裏になにか深い意味があるのかということに、かなり議論の時間を費やした。万一、「アイスクリーム」がメタファーだったりした場合、映っているものがことごとく別の意味を持ってくることも考えられる。結果的に取捨選択するポイントが変わり、ガイドの内容も大幅に変わるということ。取りも直さず、鑑賞者に誤った映画の情報を伝えてしまうことにもなりかねない。
 

音声ガイド執筆者はありとあらゆる資料を調べた。最終的には、やはり「アイスクリーム好きな少年」というシンプルなテーマであるという結論に至った。
 

当校JVTAの音声ガイド講座では、“自分の感性を疑う”ということを教えられる。もちろんファースト・インプレッションは大事なのだが、果たして、その印象が本当に正しいのかを多方面から見直すことが必要なのだ。
 

今回、鍛え上げられた“プロの感性”に接して、ますます音声ガイドの難しさ、それにも増して面白さをあらためて実感した。
 

『アイスクリーム』 (原題 Ice Cream)
監督:Serhat Karaaslan
製作年:2014年
製作国:トルコ

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Written by 浅野一郎
JVTA バリアフリー事業部 チーフ・ディレクター
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[JVTA発] 今週の1本☆ 8月のテーマ:FESTIVAL

当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

キネコ国際映画祭
http://www.kinder.co.jp/

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