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[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の1本
『カッコーの巣の上で』

今週の1本<Br>『カッコーの巣の上で』
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3月のテーマ:空気
 

空気がおいしいと思ったことがありますか?
 
 

私が中国から日本に来た日、空気がこんなにおいしいなんて信じられない気持ちでした。飛行場から電車に乗り、目的地の横浜に着いたとき、そこにあったのは甘い花の香りでした。いつも吸っていた空気と全く違う空気を初めて味わったときの衝撃はいまだに忘れられません。長年日本で生活している人は理解できないかもしれませんが、空気の悪いところで20年生活すればこの違いは分かるようになるはず。もっとも当時、あれほど日本の空気をおいしいと感じたのは、厳しい親からやっと逃れたという解放感もあったからだと思います。
 

今回紹介したい映画は『カッコーの巣の上で』。主人公のマクマーフィは自由な“空気”を吸いたくて、精神異常を装い刑務所での強制労働を逃れます。精神病院に着いたときには、思わず「やった、やっと自由だ、解放された」といわんばかりの表情を浮かべます。私が日本に着いたときも同じ表情だったかもしれません(笑)。しかし、そこはマクマーフィが想像していた自由な場所ではなく、病院の婦長がたくさんのルールをつくり、患者たちはその厳しいルールに従わざるを得ない状況でした。マクマーフィたちは時々侮辱され、痛めつけられることもありました。彼にとって、婦長は自由の前に立ちはだかる大きな壁のような存在。彼は婦長に反撃を開始します。他の患者と無断で外出して船に乗り、マクマーフィの女友達とともに海へ釣りに行ったり、病棟に女友達を連れ込み、酒を持ち込んだりという反抗的な態度を繰り返します。婦長は激怒し、彼女はマクマーフィが病院から出られないようにしてしまいます。そしてマクマーフィのこうした行動が、病院内に悲劇的な事件を引き起こしていくのです。
 

この映画は第48回アカデミー賞の主要5部門(作品賞、監督賞、主演男優賞、主演女優賞、脚色賞)を独占しました。しかし、私がこの作品を皆さんに勧めるのはたくさんの賞を取ったからではありません。ストーリーを通して、社会の中で与えられた役割と社会の中で形成された自我のぶつかり合いが描かれているからです。内容の良し悪しや好き嫌いに関わらず、ぜひ一度観る価値がある作品だと思います。
 

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『カッコーの巣の上で』
監督:ミロス・フォアマン
出演:ジャック・ニコルソン、ルイーズ・フレッチャー
製作国:アメリカ合衆国
製作年:1975年
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今週の1本 by JVTAスタッフ
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

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