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[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の1本 コートニー・コックス監督作品『Just Before I Go』

今週の1本 コートニー・コックス監督作品『Just Before I Go』
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10月のテーマ:流れ
 
 

今年5月、有力な人権団体の米国自由人権協会(ACLU)は、ハリウッドの女性監督たちが不当な差別を受けており監督の仕事を得られないとして、連邦政府とカリフォルニア州に調査を要求する書簡を送り、話題となった。ACLUによると、2013年-2014年の興行収入上位100本の映画の監督のうち、女性監督が占める割合はわずか1.9%で、テレビ業界では2013年-2014年のシーズンに制作された220番組、3,500話のうちで14%であったという。また、2014年は、興行収入上位250本の映画の監督のうち、女性が占める割合は7%で、これは1998年に比べ2%低くなっていると指摘している。
 
 

女性監督には不利で望ましくない流れがある一方で、ハリウッドの女優たちが長編映画の監督業に挑戦する流れも出てきている。以前から、ペニー・マーシャルやバーブラ・ストライサンド(監督作品はオスカーやゴールデン・グローブ作品賞候補になり、ゴールデン・グローブ監督賞を受賞)、ジョディ・フォスター、ソフィア・コッポラ(女優と言っていいかは微妙だが)、ドリュー・バリモアなどの例もあったが、ここ数年でも、アンジェリーナ・ジョリーはドキュメンタリー1本と長編劇場映画2本をリリースしていて、今年11月にも監督・製作・脚本・主演をした新作のプレミアが予定されているし、ヘレン・ハントやジュリー・デルピー、レイク・ベルの監督作品も公開され、エリザベス・バンクスが監督した『ピッチ・パーフェクト2』は興行的にも大成功した。今年9月には、ナタリー・ポートマンの監督・製作・主演映画のプレミアがイスラエルで行われたばかりだし、メグ・ライアンの主演・初監督作品も公開間近で、ケイティ・ホームズの監督・製作・主演映画は今まさに撮影中。スカーレット・ヨハンソンの監督作品は、現在プリ・プロダクション中だという。テレビ映画やテレビ番組、短編映画、セグメントの監督なども入れたら、その数はもっと多くなる。
 
 

コートニー・コックスも監督業に進出した女優の一人だ。10シーズン続いたテレビ・シリーズ『フレンズ』のモニカ役で人気スターとなったコートニーだが、その後も活躍を続け、6シーズン続いているテレビ・シリーズ『クーガータウン』では製作総指揮、主演を務めるほか、これまでに12話を監督している。そして短編やテレビ映画などの監督を経て、4月に公開された『Just Before I Go』で長編映画の監督デビューを果たした。
 
 

この映画は、自殺を決意したテッド(演じるのは『アメリカン・パイ』のショーン・ウィリアム・スコット)が、死ぬ前に故郷に戻り、過去に自分を酷い目にあわせて、自分の人生に多大な悪影響を与えた人たちと決着をつけようとするコメディ・ドラマだ。テッドの不幸の根源にある人々も、実はそれぞれに深刻な問題を抱えていて、かなりきわどいセリフやジョークが随所に出てくるが、ちゃんと笑えるように作られている。共演は、ギャレット・ディラハント、ケイト・ウォルシュ、オリヴィア・サールビー、デヴィッド・アークエット、コニー・スティーブンス、ココ・アークエット(コートニーと元夫デヴィッドの娘)。いくつものストーリーラインが最後に一つになって結末を迎える。
 
 

本作品の公開時に、たまたまコートニーから直接話を聞ける機会があったのだが、コートニーも、ハリウッドでは、もっと女性監督が機会を得られるべきだと語っていた。
 
 

この作品は、なんとコートニーの自己資金で制作したそうだ。「キャストが決まっていないと製作費が出ないし、製作費がないとキャストがつかない。その上、撮影は『クーガータウン』のシーズンの合間にしなければいけなかったので、製作費を集めている時間がなかった。個人のお金を使うのはよくないと言われているけれど、どうしても撮りたかった映画なので、自己資金を使った。これで長編映画監督の実績ができれば、次につながっていくから」と作品に寄せる想いを語ってくれた。
 
 

監督としてはまだ経験が浅いコートニーだが、以前、テレビ映画を監督する際に、友人のデヴィッド・フィンチャー監督がアドバイスをくれ、今回は、仮編集が終わった同作をガス・ヴァン・サント監督が見てくれ、トーン設定や音楽などについても指南してくれたそうだ。
 
 

私がコートニーに、「テレビ・シリーズを監督するのと長編映画では、どのようなことが違うか?」と聞いたところ、「テレビ・シリーズでは、すでに決まっている設定やシリーズを通してのストーリーの流れなどがあるのでさまざまな制約があるが、映画では、どのように表現するかは監督次第という自由がある。また『クーガータウン』は撮影期間が1話につき4日しかないが、映画はもっと長く時間が取れる」と話してくれた。といっても、この作品の撮影日数はたった23日だったということで、 長編映画の撮影にしてはものすごく短い。プロデューサーのガブリエル・コーワンは、「コートニーは、何をどう撮りたいか、どうすればいいのかを明確にわかっているので、撮影も編集も、ものすごく速い」という。ほとんどのシーンは、2~3テイクしかしていないそうだ。
 
 

また、今後はもっと監督業をしていくのかとコートニーに聞いたところ、「これからもずっと監督をしていきたい、演技も続けていくが、監督は自分にとても合っているし本当にやりがいがある」と意欲的な答えがかえってきた。
 
 

コートニーは『フレンズ』の時からのアイドルのイメージが強いが、積極的に自分のプロジェクトをプロデュースしているし、実際に会って話してみると、明確なビジョンを持って意欲的かつしなやかに仕事をしている、とても素敵な人だった。
 
 

LA校留学生の坂田朗子さんとのツーショットにも気軽に応じてくれたコートニー

LA校留学生の坂田朗子さんとのツーショットにも気軽に応じてくれたコートニー


 

女性フィルムメーカーに対してのアドバイスは?という問いには、いろいろな人から、こうしなさい、ああしなさい、と実にさまざまなことを言われるだろうけれど、そんな時には、「You don’t have to explain yourself. Just say, thank you for that, but no.」と話していたのが、印象的だった。
 
 

日本でのリリースについては、デジタル配信の予定とのこと(コートニーがその場で調べてくれた!)。ぜひご覧ください。
 
 

『Just Before I Go』のオフィシャルFacebookページとツイッターはこちら
https://www.facebook.com/JustBeforeIGo
https://twitter.com/jbigmovie
 

『Just Before I Go』
監督: コートニー・コックス
製作: コートニー・コックス、デヴィッド・アークエット、ガブリエル・コーワン
脚本: デヴィッド・フレボット
出演: ショーン・ウィリアム・スコット、ギャレット・ディラハント、ケイト・ウォルシュ、オリヴィア・サールビー、デヴィッド・アークエット、コニー・スティーブンス、ココ・アークエット
製作国: アメリカ
アメリカ一般公開年: 2015年
 

Written by 黒澤桂子
 

[JVTA発] 今週の1本☆ 10月のテーマ:流れ

当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

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