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発見!キラリ  ジャケ買いの思い出

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11月のテーマ:追憶
 

僕がロックや海外の音楽に興味を持ち始めたのは中学生の頃だ。当時は、CDやiTunesの登場などを誰もが想像すらしなかったアナログレコードの時代。好きなアーティストの情報を得たければ、音楽雑誌を読むかラジオをチェックするしかなかった。現代のように好きな1曲だけを手軽にダウンロードするなんてこともできなかったので、聴きたい1曲のためだけにアルバムを買ったり、友達に借りたレコードをせっせとカセットテープにダビングしたりといろいろ面倒が多かった。しかし、情報が少ない分、素性がベールに包まれたアーティストはカリスマ性を帯び、期待に胸を膨らませるファンは熱狂的な支持者となった。当時、アーティストの新譜がリリースされる場合、アルバムに先駆け、まずはシングル盤がリリースされた。シングル盤はA面B面の2曲入り。それを聴いてアルバムへの期待を高めたファンは、レコード店に予約を入れる。発売前日にはそわそわして眠れなかった。そして、いざレコードに針を落とした瞬間、1曲目が始まるまでのかすかな“チリチリ音”に興奮はピークに達した。アルバムにもA面とB面があり、それぞれに考え抜かれた曲構成を、まるで1冊の本を読むように楽しんだ。
 

また、レコードには音楽以外にも楽しみがあった。アルバムジャケット、いわゆるレコードを収納する紙製のケースのことだ。アルバムジャケットには楽曲の内容だけでなく、アーティストのメッセージが込められたさまざまなデザインや写真があしらわれていた。よく見られるアーティストの顔写真やバンドメンバーの集合写真に始まり、なかには得体のしれない怪物やモンスターを描いたホラー調のオドロオドロしいものや、親には見せられないセクシーなもの、何が言いたいのかを考えさせられる禅問答的デザインのものまでいろいろあった(JVTAの2階ロビーには顔写真のアルバムジャケットが数枚、3階のロビーにはイギリスのロックバンド、クイーンのアルバムが数枚飾られている。いずれも当校代表の新楽の私物だが、レコードジャケットを見たことがないという方は、是非手に取ってご覧あれ)。当時の音楽ファンの間では、「ジャケットデザインが素敵なアルバムは、音楽そのものも素晴らしい」というまことしやかな理論が囁かれるようになり、 アーティストやその曲をまったく知らない状態で、ジャケットのデザインのみに惹かれてレコードを買う“ジャケ買い”という言葉がいつの間にか浸透していった。
 

今のように情報が溢れ、インターネットで調べればそのアーティストのすべてが分かる現代なら、そのようなリスキーな買い方が支持されることはないだろう。最近流行っている“大人買い”とも訳が違う。当時、中学生だった僕は、お年玉で2枚のアルバムをジャケ買いした記憶がある。1枚はアメリカン・ロックバンド、ヴァン・ヘイレンの『1984』。天使が微笑みながら煙草を吸っているという、まるで宗教画を冒涜するような危うさに目が釘付けになり、“どんなサウンドか聴いてみたい!”という衝動に駆られ購入した。今でも大好きなアルバムだが、1曲目の「ジャンプ」は全米ナンバー1ヒットの名曲となり、『1984』はヴァン・ヘイレンの代表作とされている。
 

『1984 』ヴァン・ヘイレン

『1984 』ヴァン・ヘイレン


 

もう1枚がイギリスのパンクバンド、ザ・クラッシュの『ロンドン・コーリング』だ。ライヴの最中に、ステージ上でベースギターを叩き壊すポール・シムノンの姿が写ったジャケットだ。「なんで楽器を壊すの?」という野暮な疑問は抜きに、何だか分からないがその瞬間が放つ凄まじいパワーを収めた写真に圧倒された。このアルバムは米ローリング・ストーン誌が選ぶオールタイムベストアルバム8位に選ばれている。
 

『ロンドン・コーリング』ザ・クラッシュ

『ロンドン・コーリング』ザ・クラッシュ


 

『1984』と『ロンドン・コーリング』の2枚は間違いなく名盤で、僕がジャケ買い理論を納得するきっかけとなった思い出深いレコードである。
 

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Written by 藤田 庸司
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[JVTA発] 発見!キラリ☆  11月のテーマ:追憶
日本映像翻訳アカデミーのスタッフが、月替わりのテーマをヒントに「キラリ☆と光るヒト・コト・モノ」について綴るリレー・コラム。修了生・受講生にたくさんのヒントや共感を提供しています。
 

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