今週の1本 『はじまりのうた』
4月のテーマ:始まり
ここしばらく、仕事の関係もあってたくさんのラブストーリー作品を見た。個人的な嗜好としては陰のある作品やどこか淡々としたストーリーのものが好きなので、普段はラブストーリーに手を伸ばすことはほとんどない。だから僕がこれまで見たことがない最近のラブストーリー作品はそれこそ山のようにあった。この『はじまりのうた』もそんな1本だ。
主人公のグレタと、恋人でもあり、曲作りのパートナーでもあるデイヴはレコード契約を結ぶためにニューヨークにやってくる。2人は夢のような新生活をスタートさせ、デイヴは念願のデビューを果たし、瞬く間に人気者になる。しかし、デイヴが浮気していたことが発覚。家を出たグレタは旧友の売れないミュージシャンの家に転がり込む。失意の毎日の中、グレタはその友人の勧めで小さなバーで歌を披露することに。そんな彼女の歌を元・敏腕音楽プロデューサーのダンが見初め、アルバムデビューを持ちかけられる。ダンとグレタは、ある時はビジネス上のパートナー、ある時は恋人のような微妙な距離感を保ちながら、アルバム作りを進めていく。
すごくおおざっぱに言ってしまえば、「音楽での成功を目指す女性を軸にしたラブストーリー」である。僕が10代の頃なら「こんな夢見がちでハッピーな映画なんてしゃらくさいぜ、ぺっぺっぺっ」と言っていたような映画だけど、実際に見てみたらそんなことはなかった。…というより、結構いい映画だな、と思ったのは自分でも意外だった。歳を重ねることでの良き変化というのはいろいろあると思うけど、こういうのもその1つなのかもしれない。
でもよくよく考えてみたら、学生の頃もラブストーリーをわりと見ていた時期があったのを思い出した。エリック・ストルツ主演の『恋しくて』なんて、かなり好きな作品だった(メアリー・スチュアート・マスターソンが超クールで素敵なのだ)。そう考えると、やはり人間は歳を重ねても思ったほど変わらないということなのかもしれない…。まあいいや、とりあえず久しぶりに『恋しくて』を借りてこよう。
『はじまりのうた』
2013年・アメリカ
監督:ジョン・カーニー
出演:キーラ・ナイトレイ、マーク・ラファロ、アダム・レヴィーン
Written by 桜井 徹二
[JVTA発] 今週の1本☆ 4月のテーマ:始まり
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。