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[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の1本 『真珠の耳飾りの少女』

今週の1本 『真珠の耳飾りの少女』
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12月のテーマ:ご褒美
 

「真珠の耳飾りの少女」という絵画をご存知だろうか? 「青いターバンの少女」と呼ばれることもある、寡作の画家ヨハネス・フェルメールの作品だ。黒い背景に浮かび上がるように、大粒の真珠を耳につけた少女が、視線を寄越している。この絵の制作過程や由来は明らかになっておらず、少女のモデルが誰かも分からない。瑞々しい唇を薄く開いている様子は、何かを語りかけているかのようで、鑑賞者の想像力を刺激する。この絵が描かれた背景に何があったのか? モデルと画家の関係は? そんな想いから『真珠の耳飾りの少女』という小説が生まれ、コリン・ファースとスカーレット・ヨハンソンによって映画化されている。
 

フェルメール家で使用人として住み込みで働く少女、グリートはタイルの絵付け職人の父の影響で、芸術に対する理解と才能があった。無口で気難しい画家の主人、ヤン(ヨハネス・フェルメール)とグリートは絵画の話をするようになる。2人は互いに理解し合い、尊重し合っていることを感じ取りながらも、雇い主と使用人の距離感を保っていた。ある日、遅筆で寡作のヤンはパトロンに新作を頼まれる。グリートの耳に手ずからピアスの穴を開け、妻のお気に入りの耳飾りをこっそりと付けさせて、絵を描き始めた。青いターバンを巻き、真珠の耳飾りを付けたグリートがじっとヤンを見つめ、ヤンはグリートの姿をじっくりとカンバスに写し取っていく。それまでの制作と異なり、絵筆が進むヤンはグリートと共にアトリエにこもりきりになった。2人の仲を怪しんだ妻は、アトリエに踏み込み、自分の耳飾りをつけたグリートの肖像画を見つけ出す。嫉妬に狂った妻によってグリートはフェルメール家を追われ、実家へ戻った。そこへ、青いターバンの切れ端に包まれた真珠の耳飾りが届けられる。
 

この映画の映像は光や色彩、構図が考え抜かれたものであることがよく分かる。全編を通して、フェルメールの絵画のように美しい。スカーレット・ヨハンソンが演じるグリートの無垢な美しさも、思わずはっと息を飲むほどだ。「フェルメール 光の王国」(福岡伸一著)で解説されている通り、フェルメールの絵画を間近で見ると、光を粒のように表現していることが分かる。絵画「真珠の耳飾りの少女」では少女の唇や瞳、そして真珠の耳飾りに鑑賞者の視線を誘う光の粒が散りばめられている。作品の中でも特に粒立って印象的な真珠の耳飾り。グリートの元に届けられたこの真珠は、絵のモデルに対するご褒美なのか、それともヤンの想いの“結露”なのか。
 

『真珠の耳飾りの少女』
監督:ピーター・ウェーバー
キャスト:スカーレット・ヨハンソン、コリン・ファース、トム・ウィルキンソンほか
製作年:2003年
製作国 イギリス/ルクセンブルク
 

Written by 星屋 優美
 

[JVTA発] 今週の1本☆ 12月のテーマ:ご褒美
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

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