News
NEWS
[JVTA発] 今週の1本☆inBLG

今週の1本 『チャーリーとチョコレート工場』

今週の1本 『チャーリーとチョコレート工場』
Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page

2月のテーマ:スイーツ
 

僕がチョコレートを好んで食べるようになったのは大人になってからだ。子供の頃からケーキや饅頭、キャンディといった甘いお菓子が苦手で、おやつといえばお年寄りが好む(?)煎餅やスルメイカなど子供らしからぬものが好きだった。
 

ただ、甘いお菓子が苦手な子供ではあったが、お菓子にまつわる楽しい思い出はたくさんある。例えば学校行事の遠足がその一つ。僕の通っていた小学校では、遠足に持って行っても良いおやつは200円分までと決まっていた。前日に母から授かった100円玉2枚を握りしめて、ワクワクしながら駄菓子屋に走った記憶がある。
 

10円のクジ付きガムや、絵具を水で溶かしたような色鮮やかなチューブ入りジュース、プロ野球選手のカードが入ったスナック菓子など、チープな駄菓子を沢山買うのが楽しかった。そして購入したお菓子の半分を、次の日が待てずに食べて叱られたり、遠足当日に「フルーツはおやつに入るから、それを踏まえて200円を超えた分は没収する」などと、訳の分からないルールを制定した先生がクラスに混乱を招くなどのハプニングがあったり…。なんだかんだ言いながらも楽しい思い出である。
 

そんな少年時代に思いを馳せていると、1本のファンタジー・コメディを思い出した。
映画『チャーリーとチョコレート工場』だ。
 

両親や祖父母たちと一緒に、貧しい家庭で細々と暮らす少年チャーリー(フレディ・ハイモア)。彼の楽しみは、年に一度の誕生日だけに買ってもらえる“ウォンカ”印のチョコレートだった。世界中で大人気の“ウォンカ”チョコレートだが、実は誰一人として工場に人が出入りしているところを見た事がなかった。そんなある日、「チョコレート工場に5人の子供を招待する!」と工場長のウィリー・ウォンカ(ジョニー・デップ)が発表する。招待状となるゴールデンチケットを手に入れたチャーリーと4人の子供たちは工場内を見て歩くツアーに招かれるが、そこには摩訶不思議な世界が待ち受けていた…。
 

一見、子供向けのポップなファンタジー映画に見える本作だが、そこは『シザーハンズ』や『エド・ウッド』を世に送り出した奇才ティム・バートンと、ハリウッドの反逆児ジョニー・デップの黄金コンビ。作品にはある種の社会批判ともいえる毒々しいユーモアや、大人社会をあざ笑うかのような皮肉がたっぷりと詰め込まれている。
 

工場見学ツアーに参加するチャーリー以外の4人の子供が強烈だ。お金持ちのワガママ娘ベルーカ、食いしん坊のオーガスタス、男勝りの女の子バイオレット、へ理屈ばかりの生意気少年マイク。財産や権力に物を言わせる大人顔負けのクソガキたちだ。それに対して天使のようなハートを持つチャーリー。そして、両者をからかうように絶えずおどけてみせるピエロのようなウィリー・ウォンカ。そこにウンパ・ルンパという奇妙なこびとが加わり、ストーリーを盛り上げる。一見複雑そうな作品だが、コンセプトはいたってシンプルなうえ、キャラクターがはっきりしているので物語は分かりやすい。
 

ホンワカした温かさの中に、トラップのように散りばめられた皮肉や批判。その絶妙なコントラストが心地いい。夢のような世界の中で、人にとっての幸せや、人として忘れてはいけない教訓を説くティム・バートンは実にエキセントリックな監督だと思う。劇中、屁理屈少年マイクの”Why is everything here completely pointless?” という言葉に対して、チャーリーが”Candy doesn’t have to have a point. That’s why it’s candy.”と応える。
 

大人になり、社会の荒波にもまれていくと、利益や損得で物事を考えなければならない場面に多々出くわす。この作品を見て、理屈抜きに、そこにあるものをあるがままに受け入れる純粋無垢なチャーリーに、遠足前日に駄菓子屋に走った、あの日の自分が重なった。
 

──────────────────────────────
『チャーリーとチョコレート工場』
監督:ティム・バートン
製作:ブラッド・グレイ、リチャード・D・ザナック
出演:ジョニー・デップ、フレディ・ハイモアほか
制作国:アメリカ/イギリス
制作年:2005年
──────────────────────────────
 

Written by 藤田庸司
 

[JVTA発] 今週の1本☆ 2月のテーマ:スイーツ
当校のスタッフが、月替わりのテーマに合わせて選んだ映画やテレビ番組について思いのままに綴るリレー・コラム。最新作から歴史的名作、そしてマニアックなあの作品まで、映像作品ファンの心をやさしく刺激する評論や感想です。次に観る「1本」を探すヒントにどうぞ。

Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page