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【コラム】JUICE #14「時代を越えても、錆びない人でいたい」●中塚真子

【コラム】JUICE #14「時代を越えても、錆びない人でいたい」●中塚真子
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2019年4月1日、新しい元号が発表されましたね。
 
令和―― まだぎこちないその響きも、数年後にはすっかり馴染むのでしょうか。当たり前だったことも別れの日がやって来ると、その存在に気付かされるものです。約30年間慣れ親しんだ平成という時代を改めて振り返ると、人生の大半を、しかも多感な時期を過ごした平成が愛おしく思えてきます。そのせいなのか、平成の時代によく聞いた、ユーミンこと松任谷由実さんのステージを見たくなりました。なんとも運良く、公演3日前にチケットが手に入り、4月6日ひとり横浜アリーナへと向かいました。
 

●YUMI MATSUTOYA TIME MACHINE TOUR 公演情報
https://yuming.co.jp/y45/#y45tour
 


 

1972年のデビューから、楽曲制作とライブエンターテイメントの両軸を基盤に活動し、数え切れない程の名曲と様々な伝説のショーを繰り広げてきたユーミンですが、今回のツアーはその名も『タイムマシーンツアー』と、これまでのステージ演出を再現させた曲目とパフォーマンスの数々。はるか遠い未来の遺跡発掘場で、タイムマシーンが発見されたところからショーはスタートし、45年のユーミンの歴史から歩んできた時代や世界観が楽曲と共に視覚的にも蘇る、という“音楽”というタイムマシーンに乗ったかのような演出でした。
 

アンコール、鳴り止まぬ喝采と共に駈足でステージに戻ってきたユーミンは、涙をこらえこう語りました。
 

――14歳で私は曲を書き始めました。
ソングライターとしてのプライドは45年経った今でも変わりません。
あの時の少女の夢は叶いました――
 

昭和から平成へ時代をつなぎ、時代を越えても錆びない強い女性が今でもそこにいました。
 

私より少し上の世代に人気だったユーミンの音楽を、中学の頃から背伸びをして聞き始めました。実はあまりユーミンが好きだということを公言したくありません。やや語弊があるかもしれませんが、いわゆる“ありがちな女性心理”というイメージで一括りにされることに抵抗があるからです(笑)。
 

とはいえ、私はユーミンの描くこんな世界観がたまらなく好きです。
 

“ペイヴメントは夜更けの通り雨 みんな急ぎ足 孤独のドアを叩き合いはしない”
(「NIGHT WALKER」/1983年アルバム「REINCARNATION」収録)
 

どうですか? たった35文字で書かれたフレーズなのに、一瞬にして情景が描き出され、ふわっと包み込まれてしまいませんか? 私にとってユーミンの最大の魅力って、こんな感じの“一見見落としそうな”隠れ名フレーズたちなのです。
 

■松任谷由実/名フレーズ

“アスファルトをひたす あのネオンと影の渦は変わらないけれど
娘たちはやがて踊りすぎた金曜日を卒業してゆく”
(「街角のペシミスト」/1981年アルバム「昨晩お会いしましょう」収録)
 

“想い出にひかれてここまで来たけれども あのころの二人はもうどこにもいない”
(「カンナ8号線」/1981年アルバム「昨晩お会いしましょう」収録)
 

“どこかで半分失くしたら役には立たないものがある。
Broken heart それはあの時、蒼い心の海にひとつぶ投げた真珠のピアス”
(「真珠のピアス」/1982年アルバム「PEARL PIERCE」収録)
 

“コピーマシンのように流れて落ちる 日々もいつしか
クリップではさんだ青春になる私だけのファイル”
(「メトロポリスの片隅で」/1985年アルバム「DA・DI・DA」収録)
 

“笑って話せるね そのうちにって握手した
彼のシャツの色がまぎれた人混み
バスは煙り残し小さく咳こんだら目の前が滲んだ黄昏”
(「青春のリグレット」/1985年アルバム「DA・DI・DA」収録)
 

“一夜限りのポロシャツ娘たち今頃どうしてるだろう?
お嫁に持ってゆかない思い出はアルバムに貼りはしない”
(「LATE SUMMER LAKE」/1987年アルバム「ダイアモンドダストが消えぬまに」収録)
 

“人は忘れられぬ景色をいくどかさまよううちに後悔しなくなれるの?”
(「リフレインが叫んでる」/1988年アルバム「Delight Slight Light KISS」収録)
 

“ふとあなたの声が 去年の恋が 歌いながら光りながら耳をかすめた。
ペダルをこいで並んだならしばらくそばにいて
(「残暑」/1990年アルバム「天国のドア」収録)
 

“おしえて 大人になるっていうのはもう 平気になる心
死にたい程傷ついてもなつかしいこと”
(「9月の蝉しぐれ」/1991年アルバム「DAWN PURPLE」収録)
 

“僕が生き急ぐときには そっとたしなめておくれよ”
(「Hello, my friend」/1994年アルバム「THE DANCING SUN」収録)
 

*全曲 作詞・作曲/松任谷由実
 

ステージの最後、ユーミンは大きく手を上げこう締めくくりました。
 
――私はやめません。これからも歌い続けます!
私には、まだまだやりたいことがたくさんあるんです!――
 

今年で65歳になったユーミン。
時代を越えてもこんな風にいつまでも錆びない人でいられたら、なんとも幸せですね。
令和という新たな時代に突入しても、ずっとずっと輝き続けてほしい人です。
 

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Written by 中塚真子
 

なかつか・まさこ●日本映像翻訳アカデミー・映像翻訳スクール部門スタッフ。JVTAが運営する国際コミュニケーションアーツ学院(GCAI)の運営、子ども向けグローバル英語教育の企画などを担当する。

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「JUICE」は日々、世界中のコンテンツと対面する日本映像翻訳アカデミーの講師・スタッフがとっておきのトピックをお届けするフリースタイル・コラム。映画・音楽・本・ビデオゲーム・旬の人、etc…。JVTAならではのフレーバーをお楽しみください!
 

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