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【コラム】JUICE #48「『スター・ウォーズ』42年の歴史 ~ホントに終わる!? 物語に終止符がうたれる。」●塩崎邦宏

【コラム】JUICE #48「『スター・ウォーズ』42年の歴史 ~ホントに終わる!? 物語に終止符がうたれる。」●塩崎邦宏
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今年も残りが見えてきた。あと数日で2019年も終わってしまう。師走というだけあって毎年、この時季は何かと忙しい。
 

ただ、今年はいつもと少し違う。厳密にいうと、ここ数年は2年に1回のペースで特に忙しい。なぜかというと、私の“人生の一部”である「スター・ウォーズ」の年だからである。しかも、1977年*に『スター・ウォーズ/新たなる希望』が全米で公開されてから42年がたった今年、第9作目にして“ひとつの終わり”を迎えた。
 


 

居ても立ってもいられない私は、12月20日午前0時(19日深夜)のカウントダウン上映を観てきた。初見の感想は大満足! 前2作でちりばめられた謎のほとんどすべてをきれいに回収し、見事に2時間22分に収めている。もちろん、ツッコミどころはたくさんあるけど、それを酒の肴に議論するのが「スター・ウォーズ」の楽しみのひとつ。ファンのために作られた映画だ。前作は批評家の評判は良かったが、ファンの感想はイマイチ。しかし、今作の出だしは逆。ファンとしては良い兆候だ。
 

私の心にすみ着いた「スター・ウォーズ」の42年
すべての始まりは1977年に公開された『スター・ウォーズ/新たなる希望』である。低予算で製作された同作は大ヒットを記録する。1980年には続編である『スター・ウォーズ/帝国の逆襲』、1983年には『スター・ウォーズ/ジェダイの帰還』が公開され、こちらも世界的に大ヒットした。「ルーク・スカイウォーカー」が主人公のこのシリーズは後に「オリジナル・トリロジー(旧三部作)」と呼ばれるようになり、子どもだった私の心にすみ着いてしまった。
 

シリーズの生みの親であるジョージ・ルーカスは9部作(後に6部作に訂正)として構想していたが、いつまで待っても新作の話がないまま16年の月日がたっていた。そして、公開されたのがルークの父「アナキン・スカイウォーカー」を主人公とする「プリクエル・トリロジー(新三部作)」である。1999年に『スター・ウォーズ/ファントム・メナス』、2002年に『スター・ウォーズ/クローンの攻撃』、2005年に『スター・ウォーズ/シスの復讐』が公開されるが、旧三部作のファンにとっては受け入れがたいシーンがいくつもあり賛否両論となった。
 

その後、2008年からアニメ映画『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』が公開され、続編としてテレビアニメシリーズも作られた。ただ、映画としての「スター・ウォーズ」は終わっており、私は生涯前述の6作品を糧に生きていくのだろう、と思っていた(笑)。
 

しかし、2012年にとんでもないことが起こる。ウォルト・ディズニー・カンパニーがルーカスフィルムを40億ドルで買収をして、「スター・ウォーズ」の続編の製作を発表する。「シークエル・トリロジー(続三部作)」と呼ばれ、2015年に『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』、2017年に『スター・ウォーズ/最後のジェダイ』が公開された。
 

そんな42年の思い(あるいは、念)を受け継ぎ、今年12月20日より公開をされている『スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け』をもって、ルークとアナキンが紡いできたスカイウォーカー家の物語が完結した。私が子どもの頃より観つづけてきた「スター・ウォーズ」が終わったのだ。
 

『~スカイウォーカーの夜明け』が気付かせてくれたこと
鉄道ファンに“乗り鉄”や“撮り鉄”があるように「スター・ウォーズ」の楽しみ方もさまざまある。“ビーグル”と呼ばれる乗り物が好きなファン、“ストーム・トルーパー”という兵士が大好きなファンなど自分の好きな観方ができる。
 

私は「スター・ウォーズ」の世界観が大好きである。モデルとなる歴史観や宗教観があり、決してそれに片寄ることがなく、新しい世界観を作っている「スター・ウォーズの世界」に想いをはせている。ヒーローやヴィラン(悪役)の言葉に耳を傾け、その意味を考える。そんな楽しみ方をしている。だからか、何度観ても飽きることなく、新しい発見をしている。
 

私にとって「スター・ウォーズ」シリーズすべてが“一つの作品”である。もちろん、大好きなタイトルとあまり好きでないタイトルがあるが、その一つひとつをとって文句を言うつもりはない。例えるなら、シェイクスピアの『ハムレット』を読んで、第三幕第一場が嫌いだ、と言って作品をののしることはないだろう。疑問や嫌悪感はあっても、それは作品の一部を構成するものであってすべてではない。それがあるからこそ、作品全体の完成度が上がる。
 

かつて私も「プリクエル・トリロジー(新三部作)」が作られた時になかなか受け入れられず、「オリジナル・トリロジー(旧三部作)」だけが「スター・ウォーズ」だと信じていた。今考えるとなんと浅はかだったことか。それを気付かせてくれたのが『~スカイウォーカーの夜明け』を含む「シークエル・トリロジー(続三部作)」だった。3世代にわたってファンを魅了してきたからこそ、いろいろな意見や価値観があり、それらはすべて「スター・ウォーズ」である。
 

「スター・ウォーズ」は終わらない
ただ、冒頭に書いた“ひとつの終わり”というのがポイントで、今後も「スター・ウォーズ」は続いていく。2019年11月12日から動画配信サービスに参入したウォルト・ディズニー・カンパニーは「Disney+(ディズニー・プラス)」で新たなシリーズを展開している(日本へのサービス提供時期は未定)。その第一弾が「The Mandalorian(原題)」である。そして、2020年2月からは『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』の続編「The seventh season of the Clone Wars」が控えている。その後も、「Obi-Wan Kenobi(タイトル未定)」**シリーズの計画がある。そして、新たな映画シリーズの製作もある。つまり、ずーっと、「スター・ウォーズ」は終わらないのである。ファンとしては嬉しいのだか、悲しいのだか分からない。
 

これだけ人気の作品なので、パロディやオマージュもたくさんある。その中でも、私がお薦めするのは2008年に製作された「ファン・ボーイズ」である。末期がんにより、余命3カ月が宣告された友達のために、ルーカスフィルムの本社があるスカイウォーカーランチに侵入し、封切り前の新作を見せようとするロード・ムービーである。作品の中には故キャリー・フィッシャーやビリー・ディー・ウィリアムズなど「スター・ウォーズ」の俳優陣も本人役で参加している。
 


 

翻訳者の方は、「スター・ウォーズ」とまったく関係のない翻訳案件を扱っていても、同シリーズのことが出てきた経験はないだろうか? 登場人物のセリフを引用したり、「スター・ウォーズ」をネタにしたり――。少しでもシリーズのことを知っていたら作業がスムーズに進んだり、名訳が生まれたりするかもしれない。この機会にぜひ、観ることをお勧めする。翻訳スキルの向上に少しは役に立つかもしれない。
 

今年の良いことは来年に生かし、悪いことはきれいに忘れて、来年も皆さんにとって良い年になりますように! MAY THE FORCE BE WITH YOU!
 

* * *
 

*本稿のすべての公開年は米国のものです。
**Obi-Wan Kenobi オビ=ワン・ケノービ。アナキン・スカイウォーカーとルーク・スカイウォーカーの二世代の主人公に師としてフォースの道を教えた人物。
 

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Written by 塩崎邦宏
 

しおさき・くにひろ●日本映像翻訳アカデミー・管理部門。英日映像翻訳科修了生。

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「JUICE」は日々、世界中のコンテンツと対面する日本映像翻訳アカデミーの講師・スタッフがとっておきのトピックをお届けするフリースタイル・コラム。映画・音楽・本・ビデオゲーム・旬の人、etc…。JVTAならではのフレーバーをお楽しみください!
 

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