News
NEWS
JUICEinBLG

【コラム】JUICE #55「『カタカナ』ってどう?」●小笠原ヒトシ

【コラム】JUICE #55「『カタカナ』ってどう?」●小笠原ヒトシ
Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page

友達同士のメールやLINEで文字を入力するときに、漢字、ひらがな、カタカナの使い分けで悩んだりしますか? 特に気にすることなく、指が動くまま、時には予測変換におまかせで打っていますよね。
 

それが仕事となると話は別。私が日々関わっているバリアフリー字幕の場合は細かなルールが決まっています。外国語の地名や人名はカタカナというのはほぼ共通。植物名をカタカナで表記するのも一般的で、それに魚介類を含める場合もあります。作品や制作会社によって独自の基準がありますが、「キラキラ」「ザーザー」といった擬態語・擬音語、「アハハッ」「ハア~」など笑い声やため息、「マジ」「ネタ」「ブツ」「キター!」など隠語や俗語はカタカナにすることが多いです。
 

では、こうしたルールがない場合、どういう基準でカタカナを使い、なぜカタカナを選択するのでしょうか。
 

ひらがなとカタカナはどちらも漢字ベースで作られた日本特有の文字です。ひらがな(平仮名)は漢字全体を丸ごと省略・変形したもの。曲線が多いため柔らかく優しいイメージがあります。(歌のおねえさん、体操のおにいさんは“ひらがな”が多いですね。)
 

一方のカタカナ(片仮名)は「片」が完全ではない欠けたものという意味であることからも分かるように、「加」が「カ」、「多」が「タ」など、漢字の一部を省略して作られました。直線が多くシャープなイメージがありますね。(ヒトシは“丸い”ですが…)
 

ということは、ひらがなもカタカナも、それらが持つイメージを意識して使い分けられていると考えられるのです。
 

「トヨタ」や「ホンダ」など自動車メーカーにカタカナ表記が多いのは、カタカナの持つグローバルなイメージを意識してのことでしょう。「ニトリ」「ツルハ」という北海道のローカル企業もカタカナになってからどんどん大きくなりました。驚いたのは、なんと日本で登記されている企業名の上位のほとんどがカタカナだということ。アシスト、ライズ、アドバンス、サンライズ、トラストというのがトップ5だそうです。ちなみに日本のプロスポーツチームのニックネームは、ほぼすべてカタカナですね。最近ではタイトルやキャッチコピーも、もともとは日本語表記のものをあえてカタカナにしているものが目立ちます。「キモチ」「カワイイ」「ジブン」「ゲンキ」「キブン」「キズナ」などなど。
 

そこで結論。「カタカナを使うのはかっこいいイメージがあるから」。これは、少年時代に洋画や洋楽にあこがれ、大好きなアメリカに十数年住んでしまった私の意見。ところが、若い世代に聞いたところ、別にかっこいいとは思わないが、簡単だから、読みやすいから、意味がないから使うという。さらに宇宙人のセリフもカタカナだよね、と。確かに「ワレワレハ…」という表記、よく目にします。
 

では検証。「本当にカタカナはかっこいいのか?」。ちょっと気になった最近目にしたカタカナの話です。
 

「ブラックドラゴンナイト」。人気アニメ『斉木楠雄のψ難』で中二病キャラの海藤瞬が作ったマンガ原作のタイトルです。彼はこれが本当にかっこいいと思っています。ですが、主人公の楠雄に“タイトルからしてダメそう”と心の声でツッコまれます。
 

「アーバンパークライン」。正式名称は東武野田線、カタカナは愛称です。東急田園都市線の南町田駅が南町田グランベリーパーク駅になり、今度は山手線に高輪ゲートウェイ駅が誕生しますね。おじさん世代が、かっこいい名称をと思って付けたのでしょうか。ただネットでは、残念な路線名の1位として紹介されています。
 

「ホワイトインパルス」。直訳すると「白い衝撃」。青森空港の除雪隊のことで、スノーブラウやスノースイーパー、ホイールドーザー(すべて除雪車の名称&カタカナ)を駆使して空港の除雪作業を担う集団の愛称です。自衛隊のアクロバット飛行隊「ブルーインパルス」を連想させてくれますが、ある意味“衝撃”です。
 

さて、再度の結論。「カタカナを使うのはイメージを良くしたいから。ただし、使い方には気をつけましょう」。薬は治してくれるが、クスリは滅ぼすということですかね。
 

—————————————————————————————–
Written by 小笠原ヒトシ
 

おがさわら・ひとし●JVTAバリアフリー事業部プロデューサー。北海道生まれ。ハリウッドでの映像制作などを経て、現在はバリアフリー字幕と音声ガイド制作の指揮をとるかたわら、MASC×JVTA バリアフリー視聴用音声ガイド&字幕ライター養成講座で字幕制作者の育成を行う。「M-1ビザLA留学コース」のアドバイザーも担当。
—————————————————————————————–
 

「JUICE」は日々、世界中のコンテンツと対面する日本映像翻訳アカデミーの講師・スタッフがとっておきのトピックをお届けするフリースタイル・コラム。映画・音楽・本・ビデオゲーム・旬の人、etc…。JVTAならではのフレーバーをお楽しみください!
 

バックナンバーはこちら

Tweet about this on TwitterShare on Google+Share on FacebookShare on TumblrPin on PinterestDigg thisEmail this to someonePrint this page